公務ネットニュースNO.1152(9/18)

賃金・労働条件めぐって使用者責任を追及
= 人勧の取り扱いで内閣人事局と中間交渉 =

 公務労組連絡会は9月18日、人事院勧告直後に提出した「公務員賃金等に関する要求書」の実現を求めて、政府・内閣人事局と中間回答交渉を行いました。
 交渉には、公務労組連絡会からは桜井議長を先頭に、檀原副議長、香月事務局長以下幹事会5名が参加、内閣人事局は次田総括参事官補佐ほかが対応しました。

「必要な分野は増員している」と強弁

追及する桜井議長(左から2番目) 交渉にあたって桜井議長は、「人事院勧告は、民間の賃上げや最賃引き上げ率とくらべても不満が残る内容となった。とりわけ臨時・非常勤職員の処遇改善はゼロ回答で、使用者として改善にむけた努力を求める」とのべ、現在、検討中の内容について質しました。

 これに対して次田総括参事官補佐は、要求書の各項目に沿って中間的な回答を示しました。

【内閣人事局・中間回答】
1、賃金の改善等について
 本年の給与の取扱いについては、去る8月7日に人事院から国家公務員の給与についての報告及び勧告があったことを受け、同日、第1回の給与関係閣僚会議が持ち回りで開催されたところ。同会議においては、人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢に立って、国政全般の観点から給与関係閣僚会議において検討を進め、早急に結論を出す必要がある旨、確認されたところである。今後、適切な時期に改めて給与関係閣僚会議が開催されることとなっている。

2、非常勤職員の処遇改善について
 国家公務員の場合、
・非常勤職員の官職は、常勤の官職とは、業務の性質や職務の内容が異なるものであること
・また、非常勤職員を任期の定めのない常勤職員の官職に任用するためには、国家公務員法に基づき、採用試験などにより、常勤職員としての能力の実証を行う必要があること
 から非常勤職員の常勤化・定員化や任期の定めのない非常勤職員の任用は困難であることを御理解いただきたい。

 なお、非常勤職員についても、公開・平等の採用試験など常勤職員としての能力の実証を行う手続に応募する機会は広く与えられており、こうした手続を経て常勤職員として採用されることはあり得るものと考えている。

 非常勤職員の処遇改善に係る取組として、まず、給与については、人事院において、常勤職員との均衡をより一層確保することを目的として、一昨年4月に非常勤職員の給与に関する指針を改正し、給与法等の改正により常勤職員の給与が改定された場合には、非常勤職員の給与についても、常勤職員に準じて改定するよう努める旨を追加し、この指針に沿った適切な給与支給が行われるよう、各府省を指導していくものと承知している。なお、給与の遡及改定については、昨年12月に人事院と内閣人事局から改めて周知を図ったところ。

 非常勤職員の休暇等 については、人事院において検討されるべきものと承知しているが、令和7年4月に子の看護等休暇の利用対象拡大や病気休暇の有給化といった制度改正が行われるなど、着実に制度の整備を進めてきているところ。

3、60歳を超える職員の賃金について
 60歳を超える職員の給与については、令和3年に成立した「国家公務員法等の一部を改正する法律」において、人事院の意見の申出に基づき、60歳を超える職員の俸給月額は、当分の間、60歳時点の俸給月額の7割とされたもの。

 なお60歳前・60歳超の各職員層の給与水準(給与カーブ)の在り方については、令和5年8月の人事院勧告時の報告において、段階的に定年が引き上げられる中での公務における人事管理の在り方の変化や、民間における高齢期雇用や高齢層従業員の給与水準の状況を注視しつつ、職員の役割・貢献に応じた処遇の確保の観点から、人事管理に係る他の制度と一体で引き続き検討を行っていくこととされており、政府としても、人事院における所要の検討の内容を踏まえ、適切に対応してまいりたい 。

4、再任用職員について
 給与水準や諸手当の措置は、今後の職務・働き方の実情や民間の給与実態等を踏まえて人事院において検討されるべきものと考える。政府は平成25年3月の閣議決定で人事院へ 給与制度上の措置についての検討を要請し、これに対し平成29年8月の人事院勧告時の報告では再任用職員の給与について、民間企業の再雇用者の給与の動向、各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえつつ、引き続き、その在り方について必要な検討を行っていくこととされている。

 こうした中で、昨年の人事院勧告に基づき、給与法改正により再任用職員に対し新たに住居手当や特地勤務手当等の支給を可能とする制度改正を行ったところ。引き続き 内閣人事局としては人事院における所要の検討を踏まえ、適切に対応してまいりたい。

 また、「国家公務員の定年引上げに向けた取組指針」では定年の段階的な引上げ期間中に、定年退職者が再任用を希望する場合には、平成25年3月の閣議決定に準じて、当該職員を公的年金の支給開始年齢に達するまでの間、再任用するものとしていることを踏まえ、各任命権者を含め、政府全体で適切に対応してまいりたい 。

5、客観的な勤務時間管理・長時間労働の是正について
 超過勤務の縮減のため、各府省等は、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づき、 業務の廃止・効率化、デジタル化、マネジメント改革推進のための取組等を進めている。

 今後とも、勤務時間などの基準を定めている人事院と連携して超過勤務の縮減に取り組んでまいりたい。なお、勤務時間管理に関しては、本年8月の「公務員人事管理に関する報告」でも言及されているが、人事院、デジタル庁と連携して、令和8年度までに勤務時間管理共通システムの基本機能を整備することとしている。

 これらのデジタル化の推進により、客観的な方法により取得したデータの活用や、部下の超過勤務や勤務間インターバルの確保の状況等の勤務時間の見える化を実現し、上司による適正なマネジメントを促進してまいりたい 。

 定員管理については、国民のニーズを踏まえて、新たな行政需要に的確に対応していくためには、既存の業務を不断に見直し、定員の再配置を推進していくことが重要である。その上で、新たな行政課題や既存業務の増大に対応するため、各府省官房等から現場の実情を聴取しつつ必要な行政分野に必要な増員を行っているところ。引き続き、既存業務の見直しに積極的に取り組みながら、内閣の重要政策に適切に対応できる体制の構築を図ってまいりたい。

6、両立支援について
 両立支援に係る休暇・休業等の国家公務員の勤務条件については、一義的には人事院において検討されるべきものと認識している。いずれにしても、男性の育児休業の取得推進など、男女問わず仕事と生活の両立支援を推進するとともに、フレックスタイムを活用するなどの柔軟な働き方の推進等、働きやすい職場環境の整備についても取組を進めてまいりたい。

7、労働基本権について
 自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があると認識しており、皆様と誠実に意見交換しつつ、これからも更に意思疎通を深めてまいりたいと考えている。

常勤的な非常勤職員は無期雇用せよ

 これに対して、公務労組連絡会側は主に以下の点を追及しました。
○ 物価高騰のもとで、4%にも満たない賃上げ勧告では生活改善には不十分だ。しかも、中高年層職員は改定率が逓減された。勧告尊重にとどまるのではなく、経済対策としての側面からも、使用者として勧告にとどまらない賃金改善を求める。

○ 非常勤職員の処遇改善を強く求める。本日の回答では、常勤職員と業務の性質や職務の内容が異なるとして、非常勤職員の無期雇用化や常勤化を拒否したが、ならば、常勤職員と同様の業務を命じられている非常勤職員を、常勤化できない理由はなくなる。ただちに常勤化せよ。

○ 超過勤務の縮減の方策が縷々のべられたが、増員なくして長時間労働の根本的解消につながらないのは自明の理だ。小手先の改善策ではなく、使用者・政府として大幅な増員へ努力せよ。

 その他、高齢者雇用、性別による賃金格差の解消、労働基本権の回復などにかかわって、各単産の現状も示しながら、要求の実現を求めました。

 これに対して内閣人事局側は、「非常勤職員の任用については、人事院が昨年11月に作成した『期間業務職員の採用等に関するQ&A』も踏まえつつ、引き続き適切に対応していく。常勤化は、能力の実証が必要となることから困難だ」「要員配置は、現場の実情を聴取しつつ必要な行政分野に必要な増員を行っている」とのべ、労働基本権回復をめぐっては、「労働組合とも誠実に意見交換しつつ、これからも更に意思疎通を深めていきたい」と従来通りの回答を繰り返しました。

 最後に桜井議長は、「鳥取県が人材確保を目的に独自の制度を創設したり、高知県では時間外勤務手当の引き上げが条例として議論されるなど、地方自治体で新たな動きが見られる。内閣人事局としても、公務労働者の生活と権利を守るために、使用者としての責任を果たせ」とのべ、諸要求の実現へ最終回答にむけてさらなる検討を求めて交渉を終えました。

以 上

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