25年人事院勧告への声明

2025年人事院勧告にあたっての幹事会声明

2025年8月7日
公務労組連絡会幹事会

1、人事院は本日、政府と国会に対して、2025年の国家公務員の給与に関する勧告と人事管理に関する報告をおこなった。

 給与に関する勧告は、本俸について、官民較差が15,014円(3.62%)であることから、高卒初任給を12,300円、大卒初任給を12,000円引き上げるとともに全体の俸給表の改定を行った。また、一時金については、0.05月分、今年度については、12月期の期末手当及び勤勉手当に配分し、来年度以降については、6月期及び12月期が均等になるよう配分するとしている。

 昨年を上回るベア勧告であり、その対象者も昨年に続いて再任用職員も含めた全ての級・号俸を対象としたこと、とりわけ中高年層については昨年を大幅に上回る引上げ改定となったことは、8万筆を超える「大幅賃上げ署名」、500名が結集した中央行動など、春闘期からの官民共同による大幅賃上げを求めるたたかいの成果である。

 なかでも職種別民間給与実態調査における「官民給与の比較対象となる企業規模」を「100人以上」に引き上げたことは、遅きに失したとはいえ、私たちの強い要求を一定反映したものとして評価できる。

 しかし、今回の俸給引き上げ額は、食料品をはじめとする異常な物価高のもとで、厚労省「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」の5.52%、「地域別最低賃金額改定の目安」の引上げ率6.0%と比較しても見劣りする水準であり、公務労働者の生活改善にはまったく不十分と言わざるを得ない。また、度重なる災害や事故、感染症拡大などから国民の安全・安心を守るために奮闘する公務労働者の職務や責任に応えるものではなく、非常に不満な勧告であると同時に、人勧制度の限界が明らかになったと言わざるを得ない。

2、勧告は、比較対象企業規模を約20年ぶりに「50人以上」から「100人以上」に回復させたものの、全世代の賃金改善には不十分な水準にとどまっている。

 一方で、本府省に対応する企業規模を東京23区本店「1000人以上」に引上げたことで生じる較差を、主に本府省業務調整手当の引き上げや支給対象の拡大に用いるとしている。本府省業務の特殊性や困難性は認めつつも、地方の職場とのバランスを欠いた格差の拡大は、第一線で働く職員の誇りを傷つけ、モチベーションの低下を招きかねない。そのことは地方の人員不足に拍車をかけ、全ての国民・住民に等しく公務・公共サービスを提供することを困難にするものである、あらためて全ての職員の比較企業規模を1000人以上に引き上げることを求める、

3、公務労組連絡会は、職場の厳しい実態や組合員の切実な声をもとに、初任給や若年層だけでなく中高年層もふくめた全ての世代の大幅賃上げを重点的に要求してきた。勧告において、中高年層賃金について、決して十分ではないが、昨年を大きく上回る引上げを実現したことは、私たちの運動と交渉の貴重な成果である。引き続き、世代間の不均衡をはじめ、地域間や性別、正規と非正規など、あらゆる格差の解消のために奮闘する。

4、自動車等使用者の通勤手当の改善については、駐車場料金を手当化するなど、職場からの強い要求が実現したものと受け止める。引き続き上限額の水準などについて検証が必要である。

 昇格における在級期間廃止は、級別定数の不足のために長期間にわたって昇格できない実態がある中で、機関間格差や職員間の不公平感を増大させる可能性が大きい。

 特地勤務手当等については、いわゆる生活不便地にも国の行政機関を設置していることの意義を重視し、官署等の指定の拡充が必要である。

 非常勤職員の処遇改善について何ら言及がされなかったことは極めて不満である。政府が「望まない非正規雇用を減らし、同一労働同一賃金を実現する」ことを目標に掲げているもとで、公務職場においても迅速な改善が求められている。

 月例給が「地域別最低賃金に相当する額」を下回る場合の措置については、そもそも国家公務員の賃金が地域の最低賃金近傍にあることが異常であって、この間の公務員賃金抑制政策を根本から転換し、全体の底上げを図るなかで改善すべきである。

5、人事院は、人事行政諮問会議の「最終提言」にもとづき、「新たな人事制度」を検討するとしている。その方向性は、「職務・職責をより重視した給与体系」などであり、能力・実績主義のさらなる強化やいわゆる「ジョブ型」賃金、裁量労働制の導入などが狙われている。チームによる行政執行が中心となる公務の特性を踏まえれば、公務職場に分断と格差を持ち込む「新たな人事制度」の導入は断じて容認できない。検討にあたっては、労働組合の理解と合意を前提とした真摯な協議を求める。

6、公務員人事管理に関する報告において、超過勤務の縮減に向けたとりくみが掲げられているが、根本的な要因である職場の人的体制不足を解消することなしには解決しない。人材確保と併行してとりくむ必要がある。

 カスタマー・ハラスメントについて必要となるとりくみを人事院規則に明記するとしている。これも職場の実態を踏まえた運動・追及が実ったものであり、国としてハラスメントを許さない基本姿勢を示させるとともに、実効性のある具体的措置を講じさせるために引き続き追及を強化していく。

7、本来、労働条件は、労使協議によって決定すべきものだが、労働基本権制約の「代償措置」とされる人事院勧告が形骸化、制度疲労を来しているため、公務員の賃金・労働条件の改善が周回遅れの対応となっている。今こそ労働基本権の回復と自律的労使関係制度の確立によって、労使対等の立場で労働条件を決定すべきである。

 その実現を展望しつつ、当面、政府に対して「物価上昇を上回る賃上げ」を提案することを求める。さらに、世代間、地域間、非正規と正規などの格差是正を図ることは、政府の責任であり、国家公務員の賃金改善は大きな意味を持つ。勧告の取扱いについて政府で検討を進めるにあたっては、民間の範となる先駆的な改善を求める。

8、多発する災害や新型感染症の拡大により、公務の民営化や委託化などの問題点が明らかとなり、全労連として「公共の再生」のとりくみが展開されるなど公務に対する注目と期待が高まっている。国民のいのちとくらしを守るために、公務が果たすべき役割は大きい。国会においては公務の役割を存分に発揮させる観点で充実した議論を求める。

9、今後のたたかいは、政府との交渉へと移る。また、地方人事委員会での改善勧告をめざすとともに、確定闘争、独立行政法人での賃金改善を勝ちとるため、公務大産別の団結を強めてたたかいを継続・強化していく。

 わたしたちの要求と運動により、比較対象企業規模を引き上げさせ、中高年層も含めた全世代の賃金引き上げを勝ち取ることができた。このことに確信を持ち、さらなる前進に向けて職場から運動を広げよう。

 公務労組連絡会は、大企業優先、新自由主義経済を推進する政治からの転換をめざし、みずからの要求と結びつけて、軍拡・憲法改悪を阻止するために全力をあげる。そして、憲法を擁護し、遵守する責務を負う公務労働者として、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の三原則を守りいかすために職場と地域から奮闘する決意である。

以 上

(参考資料)(PDFファイル)
  25年人事院勧告・報告の概要
  

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