公務ネットニュースNO.1149(8/5)

3.6%台のベア、本府省をあからさまに優遇
= 「夏季重点要求」に対して人事院が最終回答 =

 公務労組連絡会は8月5日、「25年夏季重点要求」をめぐって人事院との最終交渉に臨みました。人事院側は「3.6%台前半」の官民較差にもとづいて、俸給表全般にわたる賃上げを実施、0.05月分の一時金引き上げを8月7日に勧告したいと回答しました。
 交渉には、公務労組連絡会から檀原副議長を先頭に5人が参加、人事院は黒木給与第一課課長補佐と佐藤職員福祉課課長補佐が対応しました。
 なお、交渉に先立って、「公務労働者の大幅賃上げ等を求める署名」2,100人分を追加提出、累計では80,843人分となりました。

最賃にも届かない職員に差額支給で対応

最終交渉 檀原副議長が、夏季要求に対する最終回答を求めたことに対して、人事院側は以下の通り回答しました。

【人事院最終回答(要旨)】
(給与改定について)
 勧告日は、8月7日木曜日となる予定である。

 既に報道発表したが、本年の勧告にあたっては、人事行政諮問会議の最終提言も踏まえ、官民給与の比較方法の見直しを行う。行政課題の複雑化・多様化や今日の厳しい人材獲得競争を前提にすれば、公務の職務・職責を重視するとともに、より規模の大きい企業と比較する必要があることから、比較対象とする企業規模を「50人以上」から「100人以上」とし、本府省と対応させる企業規模を東京23区本店「500人以上」から「1,000人以上」とした。

 月例給の民間給与との較差は、民間企業の賃上げの状況を反映して、3.6%台前半の引上げとなる見込みである。

 特別給は、0.05月分の引上げとなる見込みである。引上げ分は、期末手当及び勤勉手当に均等に配分し、令和7年度については、12月期の期末手当及び勤勉手当に配分する。令和8年度以降は、6月期及び12月期が均等になるよう配分する。

 俸給表の改定は、行政職俸給表(一)について、民間における初任給の動向や、公務において人材確保が喫緊の課題であること等を踏まえ、総合職試験(大卒程度)及び一般職試験(大卒程度)に係る初任給を12,000円、一般職試験(高卒者)に係る初任給を12,300円引き上げることとする。これを踏まえ、おおむね30歳台後半までの職員が在職する号俸に重点を置いた引上げ改定を行うとともに、その他の職員が在職する号俸については、改定率を逓減させつつも、昨年を上回る引上げ改定を行う。

 その他の俸給表については、行政職俸給表(一)との均衡を基本に所要の引上げ改定を行う。定年前再任用短時間勤務職員の基準俸給月額は、各級の改定額を踏まえ、所要の引上げ改定を行う。

 自動車等使用者に対する通勤手当について、本年の職種別民間給与実態調査の結果を踏まえ、自動車等により通勤することが必要な職員の負担に配慮して、令和8年4月から、距離区分の上限を「100km以上」とし、「60km以上」の部分について5km刻みで新たな距離区分を設け、その上限額は66,400円とする。また、現行の「60km以上」までの距離区分についても、200円から7,100円までの幅で引上げ改定を行い、令和7年4月に遡及して実施する。

 また、1か月当たり5,000円を上限とする駐車場等の利用に対する通勤手当を令和8年4月より新設する。なお、職員に対して適時適切に通勤手当を支給するため、月の途中で採用された職員等に対し、採用日等から通勤手当を支給できるよう所要の措置を講じ、令和8年10月から実施する。

 人材獲得競争が激しくなる中、最低賃金の上昇が続いていることを踏まえ、職員の月例給与水準を適切に確保するための措置として、令和8年4月以降、月例給与の水準が地域別最低賃金に相当する額を下回る場合に、その差額を補填するための手当を支給することとする。

(「新たな人事制度」の構築に向けた先行的見直しについて)
 人事院では、人事行政諮問会議の最終提言も踏まえた新たな人事制度の構築に向けて検討を進めているが、職務・職責を重視した給与を実現し、公務にとって必要不可欠な転勤をする職員に対する給与上の課題に速やかに対処する観点から、先ほど言及した官民給与の比較対象の見直しのほかにも、先行して見直しを行うものがある。

 まず、本府省の業務の特殊性・困難性の高まりに伴い、本府省の職員の職務・職責が重くなっていることを踏まえ、本府省業務調整手当の支給対象に本府省の幹部・管理職員を加え、51,800円を支給するほか、本府省の課長補佐級職員の手当額を10,000円、係長級以下の職員の手当額を2,000円引き上げる。なお、この改定は、官民給与の比較における本府省部分の対応関係の見直しにより生じた較差の範囲内で行い、対応関係の見直しにより生じる較差の一部は、俸給表の改定に用いることとする。

 また、職務給の原則の下、職務・職責に見合った給与処遇が確保できるよう、職員が昇格するために原則として一定の期間昇格前の級に在級することを求める在級期間に係る制度を廃止する。

 さらに、異動の円滑化を図るため、著しく不便な地に所在する官署に勤務する職員に支給される特地勤務手当等と他の手当との減額調整措置を廃止するとともに、特地官署等への採用に伴い転居を行った職員には、特地勤務手当に準ずる手当を新たに支給することとする。

(勤務環境の整備について)
 過重な超過勤務は、職員の心身の健康を損ない、組織の活力を低下させるものであり、職員のWell-beingや「選ばれる」公務職場を実現するためにも、超過勤務の縮減が最重要課題である。長時間労働の是正、とりわけ月100時間などの上限を超える超過勤務の最小化に向けて、不退転の決意で取組を進める。

 具体的には、個々の職場の実情をくみ取った縮減策を示し、その着実な実施を伴走支援していくほか、超過勤務時間の適正な管理や長時間の超過勤務の縮減に関する調査・指導を行っても取組が不十分な場合は、新たに実施する臨時調査などでより一層の取組と改善状況の報告を求めていく。また、上限を超えて超過勤務をすることができる特例業務の範囲に関する判断を厳格にするよう各府省への指導を強化する。

 さらに、各府省の実情を把握できるデータや各府省からの改善要望等を関係部局に示し、各府省の柔軟な要員確保が進むよう支援していくとともに、行政部内を超えた取組が必要と判断されるものについては、国会を始めとする関係各方面のご協力もお願いしていく。

 また、柔軟な働き方を整備するため、自己実現や社会貢献につながるような自営兼業を可能とする見直しを行うほか、昨年の公務員人事管理に関する報告において言及した、育児や介護などに限らない職員の様々な事情に応じた無給の休暇の新設等について具体的な検討を進める。

 一人一人の職員が生き生きと働き、パフォーマンスを最大限に発揮できるよう、Well-beingの土台となる職場環境を整備していくことは、引き続き急務である。このため、勤務間のインターバル確保や職員の健康増進に向けた健康管理、ゼロ・ハラスメントの実現に向けた取組としてカスタマー・ハラスメントへの対策も進める。

 今後とも、職務・職責をより重視した給与体系を含む、新たな人事制度の構築に向けて、職員団体の意見も伺いながら、検討を進める。

全職員対象に比較企業規模を1,000人にせよ

 人事院の最終回答を受けて檀原副議長は、「3%台の賃上げは、この間の物価上昇分をも下回るもので、生活改善には極めて不十分な水準でしかない」とのべ、交渉団は主に以下の点を追及しました。

○ 民間の春闘結果や最賃目安額の改善率6%ともかけ離れている。なぜそんな勧告になるのか。比較対象企業規模を「50人以上」から「100人以上」に戻したというが、民間相場に公務員賃金が追い付くことは制度的に困難なことが明らかになった。すべての職員を対象にして、比較企業規模を1,000人以上に引き上げることを求める。

○ とりわけ問題なのは、本府省業務調整手当の対象拡大を通して、本府省と地方の賃金格差をさらに拡大させようとしていることだ。地方の第一線で働く職員の誇りを傷つけ、士気の低下を招くことなどからも認められない。官民較差の改善で生じた原資は、一部の職員だけに限定することなく、年代や地域など、あらゆる格差を解消するために配分せよ。

○ 繰り返し要求してきた非常勤職員の処遇改善には何ら言及がなかった。非正規公務員の正規職員化、「任期の定めのない短時間勤務公務員制度」の創設など、雇用不安を根本からなくすべきだ。また、依然として休暇制度等に常勤職員との不合理な格差があり、改善を重ねて求める。

 最後に檀原副議長は、「本日の回答は不満だ。引き続き、われわれの声を受け止めよ」とのべ、交渉を終えました。

以 上

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