物価高のもと賃金改善は使用者の責任だ
= 夏季重点要求をめぐって内閣人事局と中間交渉 =
公務労組連絡会は7月17日、政府・内閣人事局と「2025年夏季重点要求書」に対する中間交渉を行いました。
交渉には、桜井議長を先頭に、檀原(だんばら)副議長、香月事務局長以下6名が参加、内閣人事局は次田亜美総括参事官補佐ほかが対応しました。
切実な増員要求には何ら言及なし
中間交渉にあたって桜井議長は、「物価高のもと消費税減税が参議院選挙の争点となっている。生活改善へ大幅な賃上げが切実に求められている。また、長時間過密労働を解消するため、業務量に見合った人員配置を求める」とのべ、夏季重点要求に対する中間的な回答を求めました。
「1 賃金の改善等」に関し、国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の適正な処遇の確保や、国民の理解を得る観点からも、また、労働基本権制約の代償措置といった観点からも、第三者機関としての人事院が専門的見地から行った官民比較に基づく人事院勧告を尊重することが政府としての基本姿勢である。今後も、諸情勢を踏まえつつ、対応していく。
「2 非常勤職員制度の抜本改善」に関し、非常勤職員の常勤化・定員化については、国家公務員の場合、
・ 非常勤職員の官職は、常勤の官職とは、業務の性質や職務の内容が異なるものであること
・ また、非常勤職員を常勤職員の官職に任用するためには、国家公務員法に基づき、採用試験などにより、常勤職員としての能力の実証を行う必要があること
から、困難であると考えている。
無期転換制度については、国家公務員の場合、常勤職員として採用するには、国家公務員法に基づき、採用試験などによって、常勤職員としての能力の実証を行う必要があることから、困難であることを御理解いただきたい。なお、非常勤職員についても、公開・平等の採用試験など常勤職員としての能力の実証を行う手続に応募する機会は広く与えられており、こうした手続を経て常勤職員として採用されることはあり得るものと考えている。
非常勤職員の任用については、例えば期間業務職員に関して、人事院において、各府省や職員団体の意見等も踏まえながら、制度官庁と協議をした上、各府省における円滑な運用に資するよう「期間業務職員の採用等に関するQ&A」を昨年11月に作成したと承知している。これを踏まえ、内閣人事局としては、昨年11月に各府省に対し、期間業務職員の再採用に当たって適切に運用を行うよう周知を行ったところであり、引き続き各府省の運用を注視しつつ、必要に応じて適切な対応を検討してまいりたい。
非常勤職員の処遇改善に係る取組として、まず、給与については、人事院において、常勤職員との均衡をより一層確保することを目的として、一昨年4月に非常勤職員の給与に関する指針を改正し、給与法等の改正により常勤職員の給与が改定された場合には、非常勤職員の給与についても、常勤職員に準じて改定するよう努める旨を追加し、この指針に沿った適切な給与支給が行われるよう、各府省を指導していくものと承知している。なお、給与の遡及改定については、昨年12月に人事院と内閣人事局から改めて周知を図ったところ。
休暇・休業については、昨年の国家公務員の育児休業等に関する法律の改正により、育児時間について、新たな選択肢を追加し、対象となる子の範囲を拡大するとともに介護休暇等の取得要件の緩和などの制度改正を行うなど、着実に整備を進めてきているところである。
引き続き、人事院とも連携し、各府省に対して、非常勤職員に関する給与や休暇等の制度の適切な運用を促してまいりたい。
「3、国民本位の行財政・司法の確立」に関し、定員管理については、国民のニーズを踏まえて、新たな行政需要に的確に対応していくためには、既存の業務を不断に見直し、定員の再配置を推進していくことが重要である。
その上で、新たな行政課題や既存業務の増大に対応するため、各府省官房等から現場の実情を聴取しつつ必要な行政分野に必要な増員を行っているところ。
引き続き、既存業務の見直しに積極的に取り組みながら、内閣の重要政策に適切に対応できる体制の構築を図ることとしている。
「4 高齢期雇用・定年延長」に関しては、シニア職員がその知識・経験を存分に発揮し、働き方改革等にもつながるよう、「国家公務員の定年引上げに向けた取組指針」を踏まえた取組を計画的かつ着実に進めてまいりたい。
なお、定年引上げ期間中においては、令和6年度から2年に1度、定年退職者が発生しないことによる新規採用への影響を緩和するための措置を行うこととしており、令和6年度は、特例的な定員を1年間の期限付の定員として1,829人措置することとしたところ。
「5、民主的公務員制度と労働基本権の確立」に関して、自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、皆様と誠実に意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたいと考えている。
「6 労働時間短縮など働くルールの確立」に関し、超過勤務の縮減のため、各府省等は、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づき、業務の廃止・効率化、デジタル化、マネジメント改革推進のための取組等を進めている。今後とも、勤務時間などの基準を定めている人事院と連携して超過勤務の縮減に取り組んでまいりたい。
障害者雇用については、人事院が策定した合理的配慮に関する指針等を踏まえ、「公務部門における障害者雇用マニュアル」を令和6年1月に改訂するなど、環境の整備に取り組んでいるところ。
また、性的マイノリティをめぐる職場環境の改善等については、平成28年以降、各府省等の人事担当者等を含む全職員を対象とした勉強会等を開催し、国家公務員の性的指向・ジェンダーアイデンティティの多様性に関する理解の促進に取り組んでいるところ。
今後も全ての職員が働きづらさや不安を感じることなく、安心して働き続けることができる職場にしていくよう取り組んでまいりたい。
「7 両立支援制度の拡充、男女平等・共同参画の推進」に関し、育児休業については、昨年の民間労働法制の改正により民間労働者に認められた措置に相当するものとして、国家公務員の育児休業等に関する法律を改正し、新たな選択肢を追加するなどの制度改正を行ったところである。引き続き、民間労働法制の動きを注視してまいりたい。
「8 健康・安全確保等」に関し、内閣人事局としては、各府省の取組を補完するため、パワー・ハラスメントやカスタマー・ハラスメントを含むハラスメント防止講習を提供しているところ。なお、ハラスメント防止に関する研修は管理職員、課長補佐、係長に加え、幹部職員、課長等への昇任時にも受講を必修としている。
また、「国家公務員健康増進等基本計画」では、各府省における相談窓口の実施状況や利便性等をフォローアップすることとしており、この結果を踏まえ、各府省の取組を支援してまいりたい。
非常勤職員の無期雇用転換と処遇改善を
これに対して公務労組連絡会側は、職場実態をふまえつつ主に以下の点について追及しました。
〇 物価高の一方、実質賃金は下がり続けるなか、公務員賃金が低水準なまま放置されている事態は、使用者・政府として直視すべきだ。すべての世代の公務労働者の大幅賃上げを求める。人事行政諮問会議の「最終提言」では、官民賃金の比較企業規模を「1,000人以上」とすることが示されており、政府としても賃上げを加速させることを求める。
○ 多くの非常勤職員は、これまで定員内職員が行っていた業務を代わって担っている。正規職員との格差是正をすすめ、希望する職員は正規化すべき。非正規職員の賃上げをはじめ処遇改善は、地方経済の活性化だけでなく男女格差の解消をはかる観点から真摯に検討せよ。
○ 長時間過密労働の解消は、公務・公共サービスの拡充において喫緊の課題であることは、労使共有の認識だ。つらつらと施策がのべられたが、何よりも増員が不可欠であり、そのために定員管理政策の抜本的な見直しと必要な定員措置を求める。
〇 昨年のILO(国際労働機関)総会では、第87号条約(結社の自由・団結権保護)に関する日本の適用状況が議論された。労働基本権回復にむけた労使協議をただちに開始せよ。「多岐にわたる課題」があるならば、課題別に整理して具体的な協議を行う場を設けよ。
最後に桜井議長が「基本権回復にむけた具体的な議論をすみやかに開始することを再度強く要求する。本日示された中間回答はきわめて不満だ。最終交渉では納得できる具体的な回答を求める」とのべ、交渉を終えました。
以 上