物価高騰に対応した緊急勧告を出せ
= 25春闘要求で人事院と中間交渉 =
公務労組連絡会は3月14日、「2025年春闘統一要求書」をめぐる中間交渉に取り組みました。
交渉には、公務労組連絡会の桜井議長を先頭に、宮下副議長、香月事務局長以下幹事会6名が参加、人事院は職員福祉課の上村課長補佐、給与局給与第一課の橋本課長補佐ほかが対応しました。
平等取扱いの原則は非常勤職員にも適用
はじめに桜井議長は、「民間大手の労使交渉はヤマ場を超えたが、中小企業や非正規労働者の賃金改善にまでは及んでいない。私たちはこの春闘で、政府に対して政策的賃上げを要求しているが、人事院には物価高騰に対応した緊急な勧告を強く求めます」とのべ、現時点における人事院での中間的な回答を促しました。
これに対し、人事院側は以下の中間的な回答を示しました。
1.賃金の改善について
国家公務員の給与改定については、今後とも、情勢適応の原則に基づき、民間準拠により適正な給与水準を確保するという基本姿勢に立ったうえで、職員団体の意見も聴きながら、適切に対処してまいりたい。
官民給与の比較を行う際の企業規模については様々な議論があるが、国家公務員の給与については、社会的な御理解、関係各方面の御理解が得られるものであることが重要と考えている。比較対象とする企業規模の在り方については、人材確保の要請も考慮した適切な報酬水準を設定していく必要性を踏まえつつ、各方面の意見を伺いながら、検討を行ってまいりたい。
諸手当については、給与制度のアップデートの中で見直しを行ったところであるが、引き続き、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、職員団体の意見も聴きながら、必要となる検討を行っていくこととしたい。
2.非常勤職員制度の抜本改善について
○ 非常勤職員制度の抜本改善について
非常勤職員の任用、勤務条件等については、その適切な処遇等を確保するため、法律や人事院規則等で規定しており、これまでも職員団体の意見も聴きながら見直しを行ってきているところである。
○ 雇用の安定と身分保障の確立について
国家公務員法において、公正な人事管理を行うために、平等取扱いの原則(第27条)や、任免の根本基準(成績主義の原則・第33条)等が定められており、これは非常勤職員の任用に対しても適用される。
国家公務員法の平等取扱いの原則及び任免の根本基準に照らし、非常勤職員を含む職員の採用・再採用に当たっては、国民に広く平等に官職を公開し、最も能力・適性の面から優れた者を公正に任用することが求められることから、原則として公募を経ることが必要である。その場合であっても、非常勤職員である者が、新たな非常勤職員の官職の公募に応募し、能力実証の結果任用されることも可能であり、勤務年数等を理由とした「雇い止め」を行う仕組みではない。
人事院としては、昨年、各府省の実態を踏まえ、公募によらない再度の採用の上限回数を連続2回までとする人事院人材局長通知の記載を削除したほか、各府省における円滑な制度運用に資するよう、期間業務職員の採用等に関するQ&Aを発出したところ。今後とも、期間業務職員制度が各府省において適切に運用されるよう、制度の周知や理解増進を図ってまいりたい。
○ 均等・均衡待遇の確立について
非常勤職員の給与については、平成20年8月に非常勤職員の給与に関する指針を発出し、各府省において適正な給与の支給が行われるよう、必要な指導を行ってきている。この指針については、非常勤職員の処遇を確保する観点から累次改定を行ってきており、令和5年4月からは、給与法等の改正により常勤職員の給与が改定された場合には、非常勤職員の給与についても、常勤職員に準じて遡及改定するよう努める旨を追加したところである。各府省においては、この指針に基づく取組が進んでいるところであり、引き続き、常勤職員の給与との権衡をより確保し得るよう取り組んでまいりたい。
非常勤職員の休暇制度等については、業務の必要に応じてその都度任期や勤務時間が設定されて任用されるという非常勤職員の性格を考慮しつつ、民間の状況等を考慮し、必要な措置を行っている。近年の措置を挙げれば、夏季休暇の新設、出生サポート休暇、配偶者出産休暇及び育児参加のための休暇の新設並びに産前休暇・産後休暇の有給化などがある。また、令和6年12月には、病気休暇(私傷病)について有給の休暇へ見直すとともに、子の看護休暇等及び短期介護休暇の取得要件の緩和などの見直し(令和7年4月施行)を行ったところである。
今後も、引き続き民間の状況等について注視し、必要に応じて検討を行ってまいりたい。
3.高齢期雇用について
○ 高齢期雇用・定年延長について
定年の段階的引上げに係る各種制度が各府省において円滑に運用されるよう、引き続き、制度の周知や理解促進を図るとともに、運用状況の把握に努め、必要に応じて適切に対応してまいりたい。
令和3年に成立した定年引上げに係る国家公務員法等の改正の基となった平成30年の意見の申出においては、定年引上げ後の60歳を超える職員の給与水準について、民間企業における高齢期雇用の実情を考慮し、当分の間の措置として、60歳前の7割の水準となるよう、給与制度を設計することとしたものである。
他方、改正法に設けられた検討条項では、給与水準が60歳前後で連続的なものとなるよう、定年の段階的引上げが完成するまでに給与制度について所要の措置を講ずることとされている。
人事院としては、60歳前も含めた給与カーブの在り方について、段階的に定年が引き上げられる中での公務における人事管理の在り方の変化や、民間における高齢期雇用や高齢層従業員の給与水準の状況を注視しつつ、職員団体の意見も聴きながら、職員の役割・貢献に応じた処遇の観点から、人事管理に係る他の制度と一体で引き続き検討を行ってまいりたい。
定年引上げに伴う級別定数措置については、今後とも、役降り後の職務や異動先、ポスト数のほか、定年引上げ後の昇格ペースを含む人事運用などに関する各府省・人事グループの検討を踏まえた上で、必要な級別定数を措置することとしている。
○ 再任用職員制度について
再任用職員の給与については、民間の再雇用者の状況も踏まえつつ、俸給と特別給を合わせて適正な年間の給与水準を確保し得るように設定されており、公務における人事運用の実態や民間企業の再雇用者の手当の支給状況を踏まえ、これまでも見直しを行ってきているところである。
近年、高齢層職員の能力及び経験の活用が進められてきている中で、再任用職員が公務上の必要性により転居を伴う異動を行う場合があるなど、人事運用の変化が生じてきている。こうした状況を踏まえ、人事院としては、給与制度のアップデートの一環として、定年前再任用短時間勤務職員や暫定再任用職員について多様な人事配置を可能とし、その活躍を支援するため、再任用職員に支給される手当の範囲を拡大した。再任用の給与については、引き続き、民間の高齢層従業員の給与の状況や定年前の職員に係る状況を踏まえつつ、適切に対応してまいりたい。
なお、再任用職員の年次休暇については、再任用は、一旦、退職した職員を新たに職員として採用するものであるため、新たに年次休暇を付与するものとなっている。
4.労働時間短縮、休暇制度等について
○ 超過勤務の縮減等について
超過勤務の縮減等については、勤務時間調査・指導室において、各府省を直接訪問して勤務時間の管理等に関する調査を令和4年度から実施しており、他律部署・特例業務の範囲が必要最小限のものとなるよう指導するなどしている。令和6年度は、調査・指導を更に充実させる観点から、対象となる職員数を増やして実施しており、引き続き、適切に各府省に対する指導を行ってまいりたい。
勤務間のインターバル確保については、人事院規則や局長通知の内容を各職場へ浸透させることが重要と考えており、職員向けの分かりやすい周知資料を作成・公表しているほか、各府省に対しても、現在実施している勤務間のインターバル確保に係る調査・研究事業などの機会を通じ、随時周知依頼を行っているところである。
○ 休暇・休業制度について
職員の休暇、休業については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきたところである。今後も社会情勢等を踏まえつつ、制度の改善や環境整備に努めてまいりたい。
○ 性的マイノリティをめぐる職場環境の改善等について
性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性については、人事院規則10―10(セクシュアル・ハラスメントの防止等)において職員はセクシュアル・ハラスメントをしてはならないと規定するとともに、同規則運用通知において偏見に基づく言動がセクシュアル・ハラスメントに含まれることを制度上明確にしており、令和2年4月には、「性的指向・性自認を本人の承諾なしに第三者に漏らしたりすること」(いわゆるアウティング)をセクシュアル・ハラスメントになり得る言動として例示するなどの施策を講じた。また、これらの施策について研修等により各府省への周知・啓発を行うとともに、ハラスメントに係る相談体制も整備している。
今後も、「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」(LGBT理解増進法)に基づく基本計画や指針等の策定に向けた政府全体での検討を踏まえながら、適切に取り組んでまいりたい。
勤務条件等に関わる各種制度において、配偶者に加えて「届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者」も対象としている場合に、同性パートナーが含まれ得るかどうかについては、国家公務員法に定める情勢適応の原則に基づき、民法上の考え方や民間労働法制における整理も踏まえて検討する必要があると考えている。
5.民主的公務員制度等について
○ 人事評価について
人事評価については、令和3年10月から、人材育成・マネジメントを強化するための組織改革・育成ツールとして活用することとされている。具体的には、人事評価において、職員の秀でている点(強み)・改善点(弱み)を明確に把握できるようにするとともに、面談を職員の中長期のキャリア形成支援の場として活用するため、その充実等が行われたものと承知している。
また、国家公務員法においては、人事評価が「任用、給与、分限その他の人事管理の基礎」となるものとして位置付けられており、人事院規則等において、能力・実績に基づく人事管理を推進する観点から、評価結果を任免や給与の決定に活用する基準を定めているところである。
6.両立支援制度の拡充等について
○ 両立支援制度について
育児や介護と仕事の両立支援制度については、昨年5月に成立した育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律(令和6年法律第42号)の内容も踏まえ、国家公務員育児休業法の改正についての意見の申出を国会・内閣に提出し、昨年12月にこれを踏まえた改正育児休業法が成立したところ。これに加え、人事院規則の改正等を行うことにより各種の拡充を行うこととしている。
人事院は、これまでも、両立支援制度を含む職員の休暇、休業等については、情勢適応の原則の下、民間における状況等を踏まえて、必要な見直しを行ってきており、社会情勢等も踏まえながら、引き続き必要な制度改善の検討を行ってまいりたい。
○ 男女平等・共同参画について
女性参画の推進については、人事院としても、これまで柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の整備、超過勤務の縮減、仕事と生活の両立支援策の拡充やハラスメント防止対策など、男女ともに働きやすい勤務環境の整備を積極的に進めており、女性の採用・登用の拡大に向けた様々な施策を行ってきているところである。引き続き、各府省の具体的な取組が進むよう支援してまいりたい。
7.健康・安全確保等について
○ ハラスメント防止対策について
ハラスメント防止対策については、ハラスメント防止等の措置を講じるための人事院規則等に基づき、これまで、研修教材の作成・提供や、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーの開催など、各府省に対する支援を行ってきている。
また、昨年度から「幹部・管理職員ハラスメント防止研修」について、組織マネジメントの観点も反映したより実効性のあるものとなるよう見直して実施する等の取組を行っている。
今後も、各府省のハラスメント防止対策の実施状況を把握するほか、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーの開催、研修用教材の改訂等を外部の専門家と連携しつつ行うなど、各府省においてハラスメント防止対策が適切に実施されるよう、必要な支援・指導を行ってまいりたい。
「民間準拠」ならば比較企業規模を見直せ
この回答に対して、公務労組連絡会側は、民調での比較企業規模を1000人以上に引上げることや、中高年層をふくめてすべての世代の賃金を上げること、非正規公務員の均等待遇による安定した雇用を確保することなどを求めました。
また、「給与制度のアップデート」にかかわって、当事者のいない人事行政諮問会議で議論されていることに強い不満を表明しつつ、誠実な労使協議の実現を求め、とりわけ、一方的な不利益変更は認められないことを強調しました。
最後に桜井議長は「昨年の域を超えておらず、不満な中間回答」としたうえ、「物価高騰のもとで、生活を守るための大幅賃上げを求める声はますます強まっている。さらなる検討をおこない、誠意ある最終回答を示すよう求める」とのべて、中間交渉を閉じました。
以 上