内閣人事局との交渉には、公務労組連絡会から桜井議長を先頭に、宮下副議長、香月事務局長以下幹事会7名が参加、内閣人事局は森田総括参事官補佐ほかが対応しました。
交渉の冒頭、この間とりくんできた「政府の責任で物価高騰から生活を守る大幅賃上げ等を求める署名」1,851筆(計41,357筆)を政府に追加提出し、桜井議長は2月に提出した統一要求書に対する最終回答を求めました。
森田総括参事官補佐は以下のような最終回答を示しました。
【内閣人事局・最終回答】
● 令和6年度の給与については、人事院勧告を踏まえ、国政全般の観点から検討を行い、方針を決定したいと考えています。その際には、皆様とも十分に意見交換を行いたいと考えます。
● 非常勤職員については、引き続き、適正な処遇が確保されるよう、関係機関とも連携して、必要な取組を進めてまいりたいと考えています。
● 自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、皆様と誠実に意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたいと考えています。
● 最後になりますが、今後とも職員団体とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努めてまいります。
● なお、その他の課題については、前回、私から申し上げたとおりです。
これに対して交渉団は主に以下の点を強調して追及しました。
○ 人事院勧告を踏まえると言うが、現行制度のままでは物価高を上回る大幅賃上げがなされるとは思えない。しかも、仮に引き上げ勧告が出されても、賃金改定実施は速くとも12月となる。使用者である政府として、勧告を待たず主体的に賃上げをすみやかに実施すべきだ。
○ 非常勤職員の処遇改善では、同一労働・同一賃金の原則の徹底などを繰り返し求めてきたが、最終交渉では具体的な回答はなかった。少なくとも民間同様に無期雇用化を図ることや、公募の義務づけの解消を強く求める。
○ 能登半島地震の対応を例にとるまでもなく、人手不足の問題は深刻だ。被災地に応援に行く職員ばかりか、送り出した側も人員が少ない中で業務はこなさなければならず、すでに職場は限界を超えている。大幅増員を強く求める。
その後、桜井議長は、労働基本権にかかわって、政府のこの間の対応の不誠実さを厳しく指摘、参事官補佐は「ご意見はしっかりと承った。今後とも、みなさまと意見交換を行ってまいりたい」とのべ、春闘期の最終交渉を閉じました。
人事院は、給与局第一課課長補佐、職員福祉局職員福祉課課長補佐ほかが対応しました。人事院側は、「本年の民間の春闘は、今月13日の大手企業の集中回答日以降、順次明らかになっている。ここまでの状況をみると、高水準の要求に対し、満額回答がなされている例が見られる。今後、大手企業の妥結・回答状況に加えて、中小企業を含めた民間の動向を注視していきたいと考えている」とのべたうえ、以下の回答を示しました。
【人事院最終回答】
1.賃金の改善について
労働基本権制約の代償措置としての勧告制度の意義や役割を踏まえ、情勢適応の原則に基づき、必要な勧告を行うことを基本に臨むこととしています。
俸給や一時金は、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査した上で、その精確な比較を行い、適切に対処します。
諸手当は、民間の状況、官民較差の状況等を踏まえ、必要となる検討を行っていきます。
社会と公務の変化に応じた給与制度の整備については、現下の人事管理上の重点課題に対応するため、(1)人材の確保への対応、(2)組織パフォーマンスの向上、(3)働き方やライフスタイルの多様化への対応のために必要な制度整備に取り組むこととしています。
取組に当たっては、関係者の御意見をお聴きしながら検討作業を進めることとしており、措置内容の具体化に向けて、既に議論を始めさせていただいているところです。引き続き職員団体の皆さんの御意見も伺ってまいります。
2.労働時間の短縮、休暇等について
超過勤務の縮減については、引き続き、勤務時間調査・指導室の調査において、超過勤務時間の適正な管理について指導を行うとともに、他律部署と特例業務の範囲が必要最小限のものとなるよう指導を行っていきます。
また、令和6年度以降、調査対象を増加させるなど、調査・指導を更に充実させていきます。
両立支援、職員の休暇、休業等については、これまで民間の普及状況等を見ながら改善を行ってきました。引き続き、職員団体の皆さんの御意見もお聴きしながら必要な検討を行っていきます。
公務における勤務間のインターバル確保については、昨年の勧告時に報告したとおり、国家公務員についても早期に取組を推進していく必要があるため、本年4月に、勤務間のインターバル確保に関する努力義務規定を人事院規則に設けることとします。各府省の参考となるよう「11時間」を確保の目安と示すことも検討しています。
令和6年度以降も各府省の実態等を踏まえ、必要な取組を検討していきます。
3.非常勤職員の処遇改善について
給与については、非常勤職員の給与に関する指針に基づく各府省の取組が進んでいます。昨年4月には、給与法等の改正により常勤職員の給与が改定された場合には、非常勤職員の給与についても常勤職員に準じて改定するよう努める旨を追加しました。指針に基づく各府省の取組状況については、定期的にフォローアップし必要な指導を行うなど、引き続き、常勤職員の給与とのバランスをより確保しうるよう取り組んでいきます。
その他の非常勤職員の任用、勤務条件等についても、その適切な処遇等を確保するため、法律や人事院規則等で規定しており、これまでも職員団体の皆さんの御意見もお聴きしながら必要な見直しを行ってきているところです。なお、令和5年の勧告時報告において言及した「非常勤職員制度の運用等の在り方の検討」については、各府省の実態や関係者からの御意見等を踏まえつつ、公募要件の在り方を含め適切な運用等の在り方について検討を進めているところです。
4.高齢者雇用について
定年の引上げについては、定年の段階的引上げに係る各種制度が各府省において円滑に運用されるよう、引き続き、制度の周知や理解促進を図るとともに、運用状況の把握に努め、適切に対応します。
定年引上げに伴う給与制度の在り方については、今後とも、民間企業における状況等や公務の人事管理の状況等を踏まえ、職員団体の皆さんの御意見もお聴きしながら、60歳前も含めた給与カーブの在り方について検討を行っていきます。
再任用職員の給与についてですが、近年 、高齢層職員の能力や経験の活用が進められてきている中で、公務上の必要性により再任用職員の人事運用の変化が生じてきています。多様な人事配置を可能とし、その活躍を支援するため、社会と公務の変化に応じた給与制度の整備の一環として、再任用職員に支給される手当の範囲について拡大することを検討しており、各府省における人事管理の状況を踏まえつつ、職員団体の皆さんの御意見もお聴きしながら必要な検討を行っていきます。
5.障害者雇用について
平成30年度に、障害者の方の柔軟な働き方ができるようフレックスタイム制の柔軟化等を実現するための人事院規則等の改正を行ったほか、各府省が採用時や採用後に適正な運用をすることができるよう指針を発出しています。
このほかにも、厚生労働省と連携して、各府省における合理的配慮の事例共有などの支援を行っており、今後とも、必要に応じて適切に対応していきます。
6.女性の活躍推進について
公務における女性の活躍推進を人事行政における重要な課題の一つと認識しています。人事院としても、これまで柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の整備、超過勤務の縮減、仕事と生活の両立支援策の拡充やハラスメント防止対策など、男女ともに働きやすい勤務環境の整備を積極的に進めており、女性の採用・登用の拡大に向けた様々な施策を行ってきているところです。
今後とも、各府省の具体的な取組が進むよう支援していきます。
7.健康・安全確保等について
ハラスメント防止等の措置を講じるための人事院規則等に基づき、これまで、研修教材の作成・提供や、ハラスメント相談員を対象としたセミナーの開催など、各府省に対する支援を行ってきています。
人事院としては、今後も、ハラスメント防止対策が適切に実施されるよう、必要な支援・指導を行っていきます。
また、苦情相談を含めた公平審査制度において、パワー・ハラスメント事案に取り組み、人事院の役割を果たしていきます。
以上の回答を受け、主に以下の点を中心に追及しました。
○ 中間回答から前進的なものが見受けられず、われわれの要求からほど遠い回答であり、不満だ。賃上げが官民あげての課題になっていることに加え、公的賃上げが政策的課題となっているなかで、官民比較方法の改善へ調査対象の企業規模の引き上げを強く求める。
○ 人事院が「アップデート」「アップグレード」などと称して、初任給や地域手当、非常勤職員の任用などの検討をすすめるもと、当事者である公務労働者が検討の場に参加できていないことは不満だ。労働条件の変更にあたっては労使協議を尽くせ。
○ 非常勤職員の休暇制度では、具体的な回答は示されなかった。生活とも密接に関わる病気休暇の有給化、年次有給休暇の採用時からの付与をはかるようあらためて強く求める。
以上のやりとりののち桜井議長は、「公務労働者の生活を守る上で人事院勧告が果たす役割は大きい。勧告に向けた要求については、あらためてとりまとめたうえで提出する。引き続き誠意ある対応を求める」とのべ、最終交渉を終えました。