交渉の冒頭、桜井議長は「春闘で大手の回答も出そろいつつあるが、中小企業や非正規の労働者の賃金改善にまでは及んでいない。政府みずからが決定できる公務員賃金を引き上げ、中小企業や非正規雇用労働者の賃上げを推進するよう求める」とのべ、現時点における春闘要求に対する中間的な回答を求めました。
これに対して森田総括参事官補佐は、以下のような中間回答を示しました。
● 賃金・昇格等の改善に関し、国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の適正な処遇の確保や、国民の理解を得る観点からも、また、労働基本権制約の代償措置といった観点からも、第三者機関としての人事院が専門的見地から行った官民比較に基づく人事院勧告を尊重することが政府としての基本姿勢である。
今後も、国の財政状況、経済社会情勢などを踏まえて対応していく。
● 非常勤職員の雇用の安定・処遇改善に関し、非常勤職員の常勤化・定員化については、国家公務員の場合、
・非常勤職員の官職は、常勤の官職とは、業務の性質や職務の内容が異なるものであること
・また、非常勤職員を常勤職員の官職に任用するためには、国家公務員法に基づき、採用試験などにより、常勤職員としての能力の実証を行う必要があること
から、困難であると考えている。
無期転換制度については、民間の有期雇用労働者のように、通算5年を超えて雇用される非常勤職員について無期転換をするということは、実質的に見れば、その者を常勤化することと同じである。
しかしながら、国家公務員の場合、常勤職員として採用するには、国家公務員法に基づき、採用試験などによって、常勤職員としての能力の実証を行う必要があることから、困難であることを御理解いただきたい。
なお、非常勤職員についても、公開・平等の採用試験など常勤職員としての能力の実証を行う手続に応募する機会は広く与えられており、こうした手続を経て常勤職員として採用されることはあり得るものと考えている。
また、昨年の人事院の「公務員人事管理に関する報告」において、「近年、有効求人倍率が上昇し官民問わず人材獲得競争がし烈になる中、非常勤職員の人材確保も厳しさを増しているとの意見が一部府省から寄せられ(略)、各府省が引き続き行政サービスの提供を支える有為な人材を安定的に確保することができるような環境を整備することが重要」であり、人事院において、「各府省の実態等を把握しつつ、非常勤職員制度の適切な運用の在り方等について検討を行っていく」とされている。内閣人事局としては、人事院における検討を踏まえ、適切に対応してまいりたい。
非常勤職員の処遇改善に係る取組として、まず、給与については、人事院において、常勤職員との均衡をより一層確保することを目的として、昨年4月に非常勤職員の給与に関する指針を改正し、給与法等の改正により常勤職員の給与が改定された場合には、非常勤職員の給与についても、常勤職員に準じて改定するよう努める旨を追加し、この指針に沿った適切な給与支給が行われるよう、各府省を指導していくものと承知している。
なお、給与の遡及改定については、昨年11月に人事院と内閣人事局から改めて周知を図ったところ。
また、休暇・休業についても、これまでにも育児休業の取得回数の制限緩和や介護休暇の分割取得等を可能とする制度改正が行われるなど、着実に制度の整備を進めてきているところである。
引き続き、人事院とも連携し、各府省に対して、非常勤職員に関する給与や休暇等の制度の適切な運用を促してまいりたい。
● 国民本位の行財政・司法の確立と要員確保等に関し、定員管理については、国民のニーズを踏まえて、新たな行政需要に的確に対応していくためには、既存の業務を不断に見直し、定員の再配置を推進していくことが重要である。
その上で、新たな行政課題や既存業務の増大に対応するため、各府省官房等から現場の実情を聴取しつつ必要な行政分野に必要な増員を行っているところ。
引き続き、既存業務の見直しに積極的に取り組みながら、内閣の重要政策に適切に対応できる体制の構築を図ることとしている。
● 高齢期雇用・定年延長について、シニア職員がその知識・経験を存分に発揮し、働き方改革等にもつながるよう、一昨年3月に策定した「国家公務員の定年引上げに向けた取組指針」を踏まえた取組を計画的かつ着実に進めてまいりたい。
また、定年引上げ期間中においては、令和6年度から2年に1度、定年退職者が発生しないことによる新規採用への影響を緩和するための措置を行うこととしており、令和6年度は、特例的な定員を1年間の期限付の定員として1,829人措置することとした。
● 民主的公務員制度と労働基本権の確立に関して、自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、皆様と誠実に意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたいと考えている。
● 労働時間短縮、休暇制度など働くルールの確立に関し、超過勤務の縮減のため、各府省等は、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づき、ルーティン業務の廃止・効率化・デジタル化、マネジメント改革推進のための取組等を進めている。今後とも、勤務時間などの基準を定めている人事院と連携して超過勤務の縮減に取り組んでまいりたい。
障害者雇用については、人事院が策定した合理的配慮に関する指針等を踏まえ、「公務部門における障害者雇用マニュアル」を1月に改訂するなど、環境の整備に取り組んでいるところ。
また、多様性の確保については、平成28年以降、各府省等の人事担当者・ハラスメント担当者を含む全職員を対象とした勉強会等を開催し、国家公務員の性的指向・ジェンダーアイデンティティの多様性に関する理解の促進やハラスメントの防止を一層積極的に推進しているところ。
今後も全ての職員が働きづらさや不安を感じることなく、安心して働き続けることができる職場にしていくよう取り組んでまいりたい。
● 両立支援制度の拡充、男女平等・共同参画の推進について、育児休業については、国家公務員の育児休業等に関する法律や人事院規則の改正により、一昨年10月から育児休業・育児参加のための休暇が取得しやすくなったことを踏まえ、内閣人事局としても、人事院と連携し、引き続き、各府省に対して休暇・休業制度及び育児時間・育児短時間勤務制度の適切な運用を促してまいりたい。
● 健康・安全確保、母性保護等に関し、内閣人事局としては、各府省の取組を補完するため、メンタルヘルス及びハラスメント防止講習を提供しているところ。
また、「国家公務員健康増進等基本計画」では、各府省における相談窓口の実施状況や利便性等をフォローアップすることとしており、この結果を踏まえ、各府省の取組を支援してまいりたい。
以上の回答に対して、交渉団から次のような点を追及しました。
○ 賃金改善については、日本経済を立て直すためにも、記録的な物価高から職員の生活を守るためにも、使用者である政府が人事院勧告を待たずに、国家公務員の賃金をただちに大幅に引き上げることを強く要求する。
○ 地域手当は格差が拡大しており、このことによってとくに地方での人材確保に影響が出ている。それが全国一律であるべき公務・公共サービスの提供にも支障を及ぼす問題となっている。大幅賃上げ、底上げによる格差解消を求める。
○ 非常勤職員の賃金改善とともに、休暇制度などの処遇改善は均等待遇の観点からも重要だ。恒常的・専門的・継続的業務に従事する非常勤職員を常勤化・定員化すべきだ。少なくとも改正労働契約法で定められている無期雇用への転換が、公務職場でも可能となるような制度を早急に整備を求める。
○ 能登半島地震のように、大規模な自然災害などが発生するたびに、過剰な行政「合理化」の弊害があらわになる。定員削減に伴う弊害などを政府として徹底的に検証し、その定員管理政策を定めた「国家公務員の総人件費に関する基本方針」などの閣議決定を撤廃することを求る。国民、住民のいのち、くらし、教育を守り、公務の魅力を取りもどすために、人員を増やし体制を強化することを求める。
○ 労働基本権について、ILOから再三勧告を受けているにもかかわらず、労使協議の場すら持とうとしない政府の姿勢はきわめて不誠実だ。政府は頑なな姿勢を改め、速やかに労働組合との議論を開始すべだ。あらためて公務員の労働基本権の全面回復にむけた労使のテーブルを設置することを求める。
最後に桜井議長は、「本日の回答は極めて不満だ。賃金改善、公務職場の人員不足、長時間過密労働の問題など、私たちの切実な要求について政府・内閣人事局として真摯な検討を行い、今回提出した要求書に対する最終的な回答を行うよう求める」とのべ、中間交渉を終わりました。