内閣人事局との交渉は、近藤寿喜総括参事官補佐ほかが対応しました。交渉の冒頭、桜井議長(写真右)からこの間とりくんできた「高齢期公務員の処遇改善を求める署名」を46,465筆提出し、組合員の切実な要求を受け止めるよう求めたうえ、政府・内閣人事局近藤寿喜総括参事官補佐から最終回答を受けました。
近藤総括参事官補佐は、「本日は、二之湯大臣多忙のため、私から最終回答をさせていただく」とのべ、次の回答を示しました。
(内閣人事局最終回答)
● 令和4年度の給与については、人事院勧告を踏まえ、国政全般の観点から検討を行い、方針を決定したいと考えています。その際には、皆様とも十分に意見交換を行いたいと考えます。
● 非常勤職員については、引き続き、適正な処遇が確保されるよう、関係機関とも連携して、必要な取組を進めてまいりたいと考えています。
● 長時間労働の是正については、各府省における勤務時間の状況の客観的把握や、既存業務の廃止・効率化をはじめとした働き方改革をしっかりと進めてまいります。
● 自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、皆様と誠実に意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたいと考えています。
● 最後になりますが、今後とも職員団体とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努めてまいります。なお、その他の課題については、前回、私から申し上げたとおりです。
これに対して、秋山事務局長は、主に以下の点をあらためて主張しました。
◯ 経済対策としての賃上げを、政府として決断するよう強く求める。政府として、最低賃金の引き上げに向けた積極的な努力を求める。また、賃金の地域間格差の是正を図るために、内閣人事局として、人事院に対し地域間の格差是正について検討を求めるべきだ。
◯ 非常勤職員の雇用安定と処遇改善について、生活や健康と密接に関わる病気休暇の有給化は切実な問題だ。病休の有給化と年次有給休暇の採用時からの付与をはかるよう強く求める。
◯ 現行の定員管理政策を改め、定員削減計画の中止、総定員法の廃止、専門的・恒常的非常勤労働者の常勤化などを求める。なお、障がい者が働きやすい職場環境をつくるために、引き続きとりくみの推進を求める。
◯ 労働時間短縮・休暇制度の課題では、災害対応を含め、恒常的な時間外勤務となっている公務職場の現状は看過できない。若手職員の離職の高まりが注目されているが、健康で安心して働き続けられる職場づくりとあわせ、長時間労働の是正のため、人員体制の拡充を求める。
近藤総括参事官補佐は、「ご意見はしっかりと承った。今後とも、みなさまと意見交換を行ってまいりたい」とのべました。最後に桜井議長は、「中間回答からの前進を感じる回答が乏しく不満だ」とのべたうえ、夏の人事院勧告時期にむけて引き続き真摯な対応を求めて、春闘期の最終交渉を閉めました。
人事院との最終交渉は、給与局第一課・福田圭介課長補佐、職員福祉局職員福祉課・本田英章課長補佐ほかが対応しました。人事院交渉の冒頭、この間とりくんできた「公務員の高齢期における賃金などの改善を求める署名」45,349筆を提出し、切実な処遇改善を求める声を示したものであり、しっかりと受け止めるよう求めました。その上で、春闘統一要求に対する人事院の最終回答を求めました。これに対して、人事院側は以下の通り回答しました。
(人事院最終回答)
1.賃金の改善について
人事院としては、労働基本権制約の代償措置としての勧告制度の意義及び役割を踏まえ、情勢適応の原則に基づき、必要な勧告を行うことを基本に臨むこととしています。
俸給及び一時金については、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査した上で、その精確な比較を行い、適切に対処します。
諸手当については、民間の状況、官民較差の状況等を踏まえ、必要となる検討を行っていきます。
2.労働時間の短縮、休暇等について
長時間労働の是正については、平成31年4月から、人事院規則により超過勤務の上限を設定しており、各府省からその運用状況等を聴取の上、必要な指導等を行っているところです。
引き続き、制度の適切な運用が図られるよう、取組を進めていきます。
また、両立支援、職員の休暇、休業等については、これまで民間の普及状況等を見ながら改善を行ってきたところです。
引き続き、職員団体の皆さんの御意見もお聴きしながら必要な検討を行っていきたいと考えています。
3.非常勤職員の処遇改善について
非常勤職員の給与については、非常勤職員の給与に関する指針に基づく各府省の取組が進んでいるところです。各府省に必要な指導を行うなど、引き続き、常勤職員の給与との権衡をより確保しうるよう取り組んでいきます。
非常勤職員の休暇については、民間の状況等を見ながら、引き続き適切に対応していきます。
4.高齢者雇用について
定年の引上げについては、本年2月18日に人事院規則の制定・改正等を行ったところです。定年の引上げが円滑に行われるよう、規則等の内容を周知するなど、必要な準備を進めていきます。
定年引上げに伴う給与制度の在り方については、今後とも、民間企業における状況等や公務の人事管理の状況等を踏まえ、職員団体の皆さんの意見も聞きながら、60歳前の給与カーブも含めた給与カーブの在り方について検討を進めていきたいと考えています。
再任用職員の給与については、民間企業における定年制や高齢従業員の給与の状況、定年引上げに伴い設けられる定年前再任用短時間勤務制等も含めた、各府省における再任用制度の運用状況を踏まえつつ、引き続きその給与の在り方について必要な検討を行っていきたいと考えています。
5.障害者雇用について
障害者雇用に関しては、人事院として、フレックスタイム制の柔軟化等を実現するための人事院規則等の改正や「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針」の発出等の措置を講じています。
このほか、厚生労働省と連携して、各府省における合理的配慮事例の情報共有などの支援を行っており、今後とも、必要に応じて適切に対応していきます。
6.女性の活躍推進について
人事院としては、公務における女性の活躍推進を人事行政における重要な課題の一つと認識しており、第5次男女共同参画基本計画が決定されたことを踏まえ、令和3年2月1日、「女性国家公務員の採用・登用の拡大等に向けて」の一部改正を行い、女性を対象とした人材確保活動や女性職員の登用に向けた研修、両立支援策、ハラスメント防止対策等により、引き続き各府省の取組を支援しているところです。
今後とも、各府省の具体的な取組が進むよう支援していきたいと考えています。
7.健康・安全確保等について
最後に、健康・安全確保等についてです。ハラスメント防止対策について、人事院は、令和2年4月、パワー・ハラスメントの防止等の措置を講じるための人事院規則を制定しました。
あわせて、セクシュアル・ハラスメント及び妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントに係る人事院規則についても、所要の規定の整備を行いました。
これらは、同年6月に施行したところです。
人事院としては、今後も、各府省においてハラスメント防止対策が適切に実施されるよう、必要な支援・指導を行っていきます。
また、苦情相談を含めた公平審査制度において、パワー・ハラスメントに関する事案についても人事院の役割を果たしていきたいと考えています。
新型コロナウイルス感染症への対応については、感染拡大防止に資するよう、これまで、いわゆる出勤困難休暇や時差出勤に関する休憩時間の特例の措置を行うとともに、職場における感染拡大防止対策の周知や予防接種を受ける場合等における職務専念義務の免除などの対策を講じてきたところです。今後とも、感染状況等を注視しつつ、必要な対応を行っていきたいと考えています。
以上の回答を受けて秋山事務局長は、主に以下の点にかかわって人事院を追及しました。
○ 人事院勧告は、地方自治体はもとより、独立行政法人をはじめ公益法人など関連法人など多くの労働者に影響を与える。そのことをふまえ、人事院としても積極的な賃金引き上げを求める。とりわけ、初任給の引き上げ、実質賃金の低下が著しい高齢層の賃金引き上げを求める。
○ 非常勤職員の雇用安定と処遇改善について、公募の廃止は強い要求であることを重ねて申し上げる。また、病気休暇の有給化と年次有給休暇の採用時からの付与を強く求める。
○ 本日署名を提出した高齢期雇用の改善を強く求める。とりわけ再任用者の処遇は、あまりにも定年前との賃金格差が大きすぎることからも、格差是正にむけた改善を求める。
○ 労働時間短縮・休暇制度について、恒常的な時間外勤務を強いられる公務職場の現状は看過できない問題だ。長時間労働の是正は、家庭的責任を有する労働者が働き続けることができるためにも重要だ。健康で安心して働き続けられるような体制づくりとあわせ、長時間労働の是正を求める。
○ 健康・安全確保等については、心の健康づくり、ハラスメント防止など課題は山積している。ハラスメントに関する相談が気軽にできる体制づくりを求める。
これに対して人事院側は、「民間の賃上げ状況をつぶさに見て勧告することが基本であるが、生計費の変動などもしっかりと見ていきたい。安心して働ける環境整備が重要である点は、みなさんとも認識が一致している。勧告に向け、問題意識を持ってとりくみたい」とのべました。
最後に桜井議長は、「中間回答からも前進的なものが見受けられず、われわれの要求からほど遠い回答であり不満だ。公務労働者の生活を守る上で、人事院勧告が果たす役割は大きい。勧告期の要求については、改めてとりまとめたうえで提出することになるが、引き続き誠意ある対応を求める」とのべ、統一要求をめぐる春闘期の交渉を閉じました。