交渉のはじめに桜井議長はまず、ロシアがウクライナの侵略をめざして戦争を続けているなかで、「ただちに侵略をやめ、罪のない市民のいのちを奪う戦争をやめるように、日本政府としてロシア政府に毅然たる対応をとるべき」と求めたうえ、「2年を超えていつ収束するのか見通しがつかないコロナ禍のもと、公務労働者は、国民の命と健康、安心・安全を守るため、日々奮闘をしている。処遇改善と職場環境改善、人員体制の拡充が必要だ」とのべ、春闘要求に対する現時点での検討状況について質しました。
これに対して近藤総括参事官補佐は、以下のような中間回答を示しました。
● 賃金・昇格等の改善について、国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。
こうした考えに基づき、人事院勧告を踏まえた給与法改正案を今国会に提出し、ご審議いただいているところである。
今後も、給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えている。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。
● 非常勤職員の雇用の安定・処遇改善に関して、給与については、平成29年5月に行った各府省間での申合せに沿って取組を行った結果、特別給(期末手当/勤勉手当)に相当する給与について、確実に支給がなされているところ。
また、休暇・休業についても、これまでにも育児休業等の取得や介護休暇の分割取得等を可能とする制度改正が行われるなど、着実に制度の整備を進めてきており、非常勤職員も含む育児休業の取得回数の制限を緩和するため、本年の通常国会に国家公務員の育児休業法改正案を提出し、ご審議いただいているところである。加えて、人事院において本年(令和4年)1月から出産や育児に関する非常勤職員の休暇について新設・有給化されていると承知している。
引き続き、人事院とも連携し、各府省に対して、給与や休暇等非常勤職員に関する制度の適切な運用を促してまいりたい。
● 国民本位の行財政・司法の確立と要員確保等に関して、障害者雇用については、「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」に基づき、障害のある職員が意欲と能力を発揮し、活躍できる環境の整備に取り組んできたところ。
引き続き、関係機関と連携しながら、各府省において障害者雇用が適切に進むよう、取り組んでまいりたい。
● 高齢期雇用・定年延長に関して、定年の引上げに当たっては、皆様方の御意見も十分に伺いながら、制度を運用してまいりたい。
また、令和5年度からの段階的な定年の引上げの円滑な運用が行われるよう、各府省の意見を聞きながら検討を行っているところであり、各府省における定年の段階的な引上げを見据えた計画的な取組を推進するため、来年度及び再来年度に重点的に取り組む事項等の指針を定める予定である。
● 民主的公務員制度と労働基本権の確立に関し、自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があり、引き続き慎重に検討する必要があると考えている。皆様とは、引き続き意見交換をさせていただきたい。
人事評価制度については、人材育成・マネジメントの強化を目的とする人事評価の改善を令和3年10月より実施しており、令和4年10月からは、評語区分の細分化等を行い、職員の状況をきめ細かく把握し、育成等にも活用しやすいものにしていくこととしている。引き続き、皆様とも十分意見交換し、ご理解をいただきつつ、円滑かつ効果的に制度を運用していきたいと考えている。
● 労働時間短縮、休暇制度など働くルールの確立に関し、長時間労働の是正と職員のやりがい向上のため、各府省は、昨年(令和3年)1月に改正した「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づき、取組を行っているところである。
具体的には、勤務時間管理について、各府省等において、勤務時間の状況の客観的把握を、本府省では原則として昨年8月までに開始しており、地方支分部局等についても、業務に応じた勤務形態の多様性に配慮しつつ、最も効果的な方法を遅滞なく措置するよう進めているところである。今後とも、勤務時間などの基準を定めている人事院と連携して超過勤務の縮減に取り組んでまいりたい。
また、超過勤務手当予算について、令和4年度当初案において必要十分な額が措置されたものと承知しているが、予算があるからと超過勤務をさせてよいということではなく、既存業務の廃止・効率化をはじめとした働き方改革をしっかりと進めてまいりたい。特に管理職のマネジメントについては、研修の実施や人事評価で重点的に評価を行うことで徹底を図ってまいりたい。加えて、人事院で開催されている勤務時間制度等の在り方に関する研究会において、長時間労働是正に資する方策が取りまとめられるよう、当該研究会のオブザーバーである内閣人事局としても協力してまいりたい。
また、人手が足りないという部署については、なお不足する定員や、業務見直し・効率化やマネジメント改革を行うための定員を措置することとしている。
● 両立支援制度の拡充、男女平等・共同参画の推進に関し、男女双方のワークライフバランス及び女性職員の活躍推進については、女性活躍推進法及び令和2年12月閣議決定の「第5次男女共同参画基本計画」を踏まえ、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づき、女性の採用・登用の拡大、男性職員の育休取得促進等の取組を進めているところ。また、昨年の人事院の意見の申出に沿って、育児休業の取得回数制限を緩和するための国家公務員育児休業法等改正案を今国会に提出し、ご審議いただいているところであり、これにより、男性職員の育休取得促進の効果も期待しているところである。
引き続き、各府省の取組のフォローアップ等により、男女問わず全ての職員のワークライフバランスを実現し、女性活躍の動きを更に加速してまいりたい。
● 健康・安全確保、母性保護等については、「国家公務員健康増進等基本計画」等に基づき、取組を着実に進めているところ。引き続き、各府省における基本計画の実施状況を把握し、必要な措置が講じられるよう取り組んでまいりたい。
また、新型コロナウイルス感染症への対応については、「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(令和2年3月28日新型コロナウイルス感染症対策本部決定)や都道府県の要請を踏まえ、人事院とも連携しながら、各府省に対しテレワークや時差通勤等の活用により、感染拡大防止に向けた取組を依頼してきたところ。引き続き、関係機関と連携しながら、適切に対応してまいりたい。
なお、ワクチン接種については、ワクチン接種する場合及び副反応が生じた場合に職務専念義務の免除を行えるよう、当局から働きかけた結果、昨年5月に人事院により措置がなされているところである。さらに、昨年夏に引き続き、当局が全体の調整を行い、国家公務員を対象とした職域でのワクチン接種に関して、3回目の追加接種についても開始したところである。
以上の回答に対し、秋山事務局長は主に以下の点を追及しました。
◯ 世界情勢が激動するなか、諸物価の高騰が続いている。実質賃金は減少し続けているなかで、給与法が成立すれば、一時金も2016年の水準に逆戻りとなる。「月額21,000円以上」の春闘要求に沿った賃上げを求める。また、「勤務地主義」が時代に合わなくなった地域手当の見直し、厳しい生活を強いられている再任用者の賃金水準の引上げ、手当の同等支給を求める。
◯ 非常勤職員の雇用安定と処遇改善について、病休の有給化と年次有給休暇の採用時からの取得を求める。労働条件の改善は、仕事へのやりがいとあわせて大きな問題だ。若年層の雇用拡大とあわせ、優秀な人材を確保していくためにも正規職員との格差是正を図るべき。
◯ 労働時間短縮の問題では、長時間労働の是正が最大の課題だ。終わりの見えないコロナ禍が、公務員労働者の精神に悪影響を与えている。心身が壊れるようなことになってはならない。また、両立支援へ特別休暇制度などが拡充されてきたが、職場からは人員不足で休めないという声が多く寄せられている。これを解消するには、増員が必要だ。さらなる増員を強く求める。
◯ 子の看護休暇と育児時間の適用対象について、小学校卒業時までに要件を緩和するよう求めてきた。子どもに対するワクチン接種も進められているが、親の帯同が欠かせない。子の看護休暇について、小学校入学前までとする適用対象を子どもが小学校を卒業するまでに要件緩和すべきだ。
これに対して近藤総括参事官補佐は、「給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢だ」「再任用職員の給与水準や諸手当の措置については、政府としても人事院における所要の検討を踏まえ、適切に対応していく」「地域手当は、民間給与の調査に基づく人事院勧告を受け、地域間の適正な給与配分の実現を図る観点から行っている」「定員の問題では、厳しい中ではあるが令和3年度の査定から、純減基調から純増になってはきた。ご意見は担当に伝える」とのべました。
最後に桜井議長は、「コロナ禍のなか国民のために奮闘している公務労働者の立場をふまえ、その視点を持って検討をおこなってもらいたい。組合員のアンケートでも、賃金引き上げを求める声よりも人員増を求める声の方が高くなっている。利用者のためにも、人員増は切実な要求だ」とのべ、統一要求に対して真摯に検討し、最終的な回答を行うよう求めて中間交渉を終わりました。