最終交渉にあたり、この間とりくんできた「再任用職員の賃金・労働条件の改善を求める署名」3,800筆(計51,874筆)を政府と人事院に提出しました。また、人事院との交渉では、「物価高騰に対応した緊急勧告を行うことを求める職場決議・団体署名」591団体(計925団体)を提出しました。
内閣人事局との交渉では、桜井議長が「3月17日の中間交渉では私たちの切実な要求を改めて申し上げ、再検討を求めたところだ。最終回答を伺いたい」と求めると、森田総括参事官補佐が、「本日は、大臣多忙のため、これまでの検討結果を踏まえた大臣の最終回答をさせていただく」とのべ、次の回答を示しました。
【内閣人事局・最終回答】
● 長時間労働を是正することは、優秀な人材の確保のためにも必要なことと考えています。国家公務員の働き方改革を実現するため、様々な取組を進めてまいりますので、皆様方のご協力をお願いします。
● 令和5年度の給与については、人事院勧告を踏まえ、国政全般の観点から検討を行い、方針を決定したいと考えています。その際には、皆様とも十分に意見交換を行いたいと考えます。
● 非常勤職員の処遇改善については、常勤職員の給与改定に準じて改定することを基本とするよう、各府省申合せの改正を行いました。引き続き、適正な処遇が確保されるよう、関係機関とも連携して、必要な取組を進めてまいりたいと考えています。
● 自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、皆様と誠実に意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたいと考えています。
● その他の課題については、前回、私から申し上げたとおりです。最後になりますが、今後とも職員団体とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努めてまいります。
この回答に対して、香月事務局長は「前向きで具体的な内容が見られなかったことはきわめて残念」ののべつつ、主に以下の点を追及しました。
○ 岸田首相は「インフレ率を上回る賃上げの実現」とのべてきたが、医療や介護、保育、福祉など、ケア労働者については昨年と同じレベル、もしくは下回っている実態だ。公務員賃金を引き上げることが、公務労働者の生活を物価高騰から守るだけでなく、経済対策としても、特に地方経済に好循環をもたらす。使用者として、国家公務員の大幅賃上げを速やかに決断せよ。
○ 非常勤職員の給与改定を常勤職員に準じて改定するとの回答(常勤職員と同様に遡及改定を各府省統一で実施する)は、これまでも私たちが要求してきた内容であり、評価したい。あわせて、公募の廃止、病休の有給化と年次有給休暇の採用時からの付与を強く求める。
○ エッセンシャルワーカーとしての公務員の増員は、多くの国民の認めるところだ。定員管理政策を改め、機械的な定員削減計画の中止、総定員法の廃止、専門的・恒常的非常勤労働者の常勤化などをあらためて求める。
○ 恒常的な時間外勤務となっている公務職場の現状は看過できない。若手職員の離職の高まりが注目されるもと、安心して働き続けられるような体制づくりとあわせ、長時間労働の是正のため、増員による行政体制の拡充を求める。
森田総括参事官補佐は「ご意見はしっかりと承った。今後とも、みなさまと意見交換を行ってまいりたい」とのべました。最後に桜井議長は、「非常勤職員の給与改定を除けば、中間回答からの前進を感じる回答が乏しく不満だ。人事院勧告、2024年度予算に向けたわれわれの要求を提出することを予定している。その際は改めて真摯な対応を求める」とのべ、政府交渉を締めくくりました。
交渉の冒頭、桜井議長は「中間回答を受けて私たちの切実な要求を伝え、さらなる検討をお願いしたところだ。その点もふまえた最終回答を求める」とのべ、これに対して、人事院側は以下の通り回答しました。
【人事院最終回答】
本年の民間の春闘は、今月15日の大手企業の集中回答日以降、順次明らかになっている。ここまでの状況をみると、昨年を上回る要求に対して満額回答がなされるなど、昨年を上回る賃上げがなされている状況にある。また、年間の一時金についても、昨年の実績を上回る回答が見られる。人事院は、今後、大手企業の妥結・回答状況に加えて、中小企業を含めた民間の動向を注視していきたいと考えている。
(賃金の改善について)
人事院は、労働基本権制約の代償措置としての勧告制度の意義や役割を踏まえ、情勢適応の原則に基づき、必要な勧告を行うことを基本に臨むこととしています。
俸給や一時金は、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査した上で、その精確な比較を行い、適切に対処します。
諸手当は、民間の状況、官民較差の状況等を踏まえ、必要となる検討を行っていきます。
社会と公務の変化に応じた給与制度の整備については、公務における人員構成の変化や各府省の人事管理、民間における給与の状況等を踏まえつつ、制度の様々な側面から一体的に取組を進めていきます。
テレワークに関する給与面での対応については、光熱費・水道費等の職員の負担軽減の観点から、テレワークを行う場合に支給する新たな手当について、具体的な枠組みの検討を行っていきます。
(労働時間の短縮、休暇、休業について)
長時間労働の是正については、先日、令和3年度の超過勤務の上限を超えた要因の整理、分析、検証の結果を公表しました。制度の適切な運用が図られるよう、引き続き、勤務時間調査・指導室の調査や各府省人事担当課長等へのヒアリングの機会を通じて、他律的な業務の比重が高い部署の指定の考え方など、必要な指導等を行っていきます。
(勤務時間制度の在り方について)
昨年1月から学識経験者により構成する研究会を開催しています。職員団体の皆さんからの御意見も踏まえて最終報告について議論して頂き、本年度内に報告書を取りまとめて頂きたいと考えています。
また、両立支援、職員の休暇、休業等については、これまで民間の普及状況等を見ながら改善を行ってきました。引き続き、職員団体の皆さんの御意見もお聴きしながら必要な検討を行っていきます。
(非常勤職員の処遇改善について)
給与については、非常勤職員の給与に関する指針に基づく各府省の取組が進んでいます。今般、この指針を改正し、非常勤職員の給与の改定について、常勤職員の取扱いに準じて改定するよう努めることを定めました。各府省に必要な指導を行うなど、引き続き、常勤職員の給与とのバランスをより確保しうるよう取り組んでいきます。
非常勤職員の休暇については、民間の状況等を見ながら、引き続き適切に対応していきます。
(定年の引上げについて)
定年の段階的引上げに係る各種制度が各府省において円滑に運用されるよう、引き続き、制度の周知や理解促進を図るとともに、運用状況の把握に努め、適切に対応します。
定年引上げに伴う給与制度の在り方については、今後とも、民間企業における状況等や公務の人事管理の状況等を踏まえ、職員団体の皆さんの御意見も聴きながら、60歳前の給与カーブも含めた給与カーブの在り方について検討を行っていきます。
再任用職員の給与は、定年前再任用短時間勤務職員等をめぐる状況を踏まえた再任用職員の給与について取組が必要と考えています。各府省における人事管理の状況を踏まえつつ、引き続きその給与の在り方について必要な検討を行っていきます。
(障害者雇用について)
障害者雇用に関しては、人事院として、フレックスタイム制の柔軟化等を実現するための人事院規則等の改正や各府省が採用時や採用後に適正な運用をすることができるよう指針を発出しました。
このほか、厚生労働省と連携して、各府省における合理的配慮の事例共有などの支援を行っており、今後とも、必要に応じて適切に対応していきます。
(女性の活躍推進について)
人事院としては、公務における女性の活躍推進を人事行政における重要な課題の一つと認識しています。国家公務員法に定める平等取扱の原則、成績主義の原則の枠組みを前提とした女性の採用・登用の拡大、両立支援、ハラスメント防止対策など様々な施策を行ってきています。
今後とも、各府省の具体的な取組が進むよう支援していきます。
(健康・安全確保等について)
人事院は、ハラスメント防止等の措置を講じるための人事院規則等に基づき、これまで、研修教材の作成・提供や、ハラスメント相談員を対象としたセミナーの開催など、各府省に対する支援を行ってきています。
人事院としては、今後も、ハラスメント防止対策が適切に実施されるよう、各府省の相談体制や研修内容について検討を行い、必要な支援・指導を行っていきます。
また、苦情相談を含めた公平審査制度において、パワー・ハラスメント事案に取り組み、人事院の役割を果たしていきます。
新型コロナウイルス感染症への対応については、先日、政府において進められている感染症法上の位置付けの変更を踏まえて、マスクの取扱いについて通知を発出しました。マスク以外の対応についても必要な検討を行っていきます。
この回答に対して、香月事務局長ほか交渉団はからは、主に以下の点を強調しました。
○ 私たちは国公法28条に基づく「緊急勧告」を求めてきたが、最終回答では言及はなかった。公務労働者の生活をいま以上に悪化させないために、労働基本権制約の「代償機関」たる人事院として、できることはないのか引き続いての真剣な検討を求める。
○ 非常勤職員の給与の改定について、常勤職員に準じて改定することは私たちの長年の要求であり評価する。非常勤職員の処遇改善のための運用となるよう求める。
○ 人事院で検討されている勤務時間の柔軟化と給与制度のアップデートは、どちらも公務労働者にとって極めて重要な勤務条件あり、労働組合との十分な協議と納得、合意の上で、具体化を図るよう重ねて求める。
人事院側は、臨時勧告の要求について、「昭和49年の臨時勧告の時は消費者物価指数が年24.5%の上昇だった。引き続き情勢適応の原則をしっかり踏まえて適切に対応していきたい」とし、また、その他の労働条件の改善にかかわっては、「いずれも安心して働ける環境整備が重要であるとの認識は一致している。勧告にむけて問題意識を持ってとりくみたい」とのべました。
最後に桜井議長は、「公務労働者の生活を守る上で人事院が果たす役割は大きい。勧告に向けた要求については、改めてとりまとめたうえで提出するので、引き続き誠意ある対応を求める」とのべて春闘期の交渉を締めくくりました。