使用者責任の見られない回答に終始

= 23春闘要求の実現へ内閣人事局と中間交渉 =

 公務労組連絡会は3月17日、「2023年春闘統一要求書」に対する中間回答を求めて内閣人事局と交渉しました。
 交渉には、公務労組連絡会の桜井議長を先頭に、宮下副議長、香月事務局長以下幹事会8名が出席、内閣人事局は森田総括参事官補佐、北浦参事官補佐(高齢対策担当)ほかが対応しました。

切実な賃上げ要求に具体的な言及なし

中間交渉

 交渉の冒頭に「再任用職員の賃金・労働条件改善を求める署名」48,127名分を提出したうえで、桜井議長は2月17日に提出した23年春闘統一要求に対する現在の検討状況を質しました。これに対して、内閣人事局側は以下の中間回答を示しました。

1 賃金・昇格等の改善
 国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えており、その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。

2 非常勤職員の雇用の安定・処遇改善
 給与については、平成29年(2017年)5月に各府省間での申合せに沿って取組みを行った結果、期末手当や勤勉手当に相当する給与について、確実に支給がなされているところ。また、昨年11月の給与法改正の公布に際し、改めて同申合せの周知を図るとともに、基本となる給与の遡及改定を行うなど、改定時期についても引き続き改善に努めるよう、各府省に求めたところであり、常勤職員の給与改定に係る取扱いに準じて改定することを基本とするよう、同申合せの改正を検討中である。

 他方、休暇・休業についても、これまでにも育児休業の取得回数の制限緩和や介護休暇の分割取得等を可能とする制度改正が行われるなど、着実に制度の整備を進めてきているところである。
 引き続き、人事院とも連携し、各府省に対して、給与や休暇等非常勤職員に関する制度の適切な運用を促してまいりたい。

3 国民本位の行財政・司法の確立と要員確保等
 障害者雇用については、「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」に基づき、非常勤職員として採用された方が、一定期間勤務した後に、選考を経て常勤職員となることを可能とするステップアップの枠組を導入するなど、障害者の多様な任用形態を確保するとともに、人事院が策定した合理的配慮に関する指針を踏まえ、障害者雇用マニュアルを作成するなど、障害のある職員が意欲と能力を発揮し、活躍できる環境の整備に取り組んできたところ。また、相談支援事業の実施や講習会の開催など、各府省における障害者雇用の推進に係る支援等に努めているところ。今後とも、厚生労働省や人事院等の関係機関と連携しながら、各府省において障害者雇用が適切に進むよう、取り組んでまいりたい。

4 高齢期雇用・定年延長
 今年4月から2年に1歳ずつ、段階的に定年を引き上げるところ。昨年3月に策定した「国家公務員の定年引上げに向けた取組指針」において、定年の段階的な引上げ期間中に、定年退職者が再任用を希望する場合には、平成25年(2013年)の閣議決定に準じて、当該職員を公的年金の支給開始年齢に達するまでの間、再任用するものとしている。

 また、定年引上げに当たっては、定年退職者が発生しないことにより、年度ごとの新規採用数が大きく変動することから、組織の円滑な運営や国家公務員の志望者確保に支障をきたすおそれがある。このため、定年引上げ期間中においては、令和6年度から2年に1度、定年退職者が発生しないことによる新規採用への影響を緩和するための措置を行うこととする。

5 民主的公務員制度と労働基本権の確立
 自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、皆様と誠実に意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたいと考えている。人事評価制度については、人材育成・マネジメントの強化を目的とする人事評価の改善を令和3年10月より実施しており、令和4年10月には、職員の状況をきめ細かく把握し、育成等にも活用しやすくするため、評語区分の細分化等を行ったところ。今後とも、皆様とも十分意見交換し、ご理解をいただきつつ、円滑かつ効果的に制度を運用していきたいと考えている。

6 労働時間短縮、休暇制度など働くルールの確立
 超過勤務縮減のため、各府省等は、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づき、取組を行っている。

 具体的には、ルーティン業務の廃止・効率化・デジタル化やテレワークで完結できる業務フローの構築、マネジメント改革のための取組のほか、適正な勤務時間管理の徹底のため、勤務時間管理のシステム化や本府省で開始している業務端末の使用時間の記録等を利用した勤務時間の状況の客観的把握を進めている。勤務時間の状況の客観的把握については、地方支分部局等でも業務に応じた勤務形態の多様性に配慮しつつ、最も効果的な客観把握を計画的に導入することとしている。今後とも、勤務時間などの基準を定めている人事院と連携して超過勤務の縮減に取り組んでまいりたい。

 フレックスタイム制および休憩時間制度については、人事院主催の「テレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の在り方に関する研究会」において柔軟化が提言され、本年1月に改正規則等が公布されたことを踏まえ、導入後の制度の利用を促進してまいりたい。加えて、当該研究会において、勤務間インターバル確保の方策等についても検討されているところであり、報告書が取りまとめられた後、当該報告書を受けた人事院の検討を踏まえ、内閣人事局としても必要な対応を講じてまいりたい。

7 両立支援制度の拡充、男女平等・共同参画の推進
 男女双方のワークライフバランス及び女性職員の活躍推進については、女性活躍推進法及び「第5次男女共同参画基本計画」を踏まえ、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づき、女性の採用・登用の拡大、男性職員の育休取得促進等の取組を進めているところ。この結果、令和3年度に新たに育休を取得した男性職員の取得率が34%となり、第5次男女共同参画基本計画に定める成果目標(30%)を上回った。引き続き、各府省の取組のフォローアップ等により、男性職員の育休取得を一層推進するとともに、男女問わず全ての職員のワークライフバランスを実現し、女性活躍の動きを更に加速してまいりたい。

8 健康・安全確保、母性保護等
 「国家公務員健康増進等基本計画」等に基づき、職員の能率増進のため、ハラスメント防止対策に関する研修・啓発の確実な実施や相談体制の整備等の取組を進めているところ。引き続き、各府省における基本計画の実施状況を把握し、必要な措置が講じられるよう取り組んでまいりたい。

 また、新型コロナウイルス感染症への対応については、これまで人事院とも連携しながら、各府省に対しテレワークや時差通勤の活用により、感染拡大防止に向けた取組を依頼してきたところ。テレワークや時差通勤の活用などは「柔軟な働き方」の観点からも引き続き重要であり、関係機関と連携しながら、適切に対応してまいりたい。

岸田首相が率先してまず公務員の賃金を上げよ

 中間回答に対して、香月事務局長はじめ交渉団は主に以下の点を主張しました。

○ 要求書の提出後も物価上昇が続いており、もはや自助努力でしのげる状況ではない。岸田内閣が労働者の賃上げをめざし、「公的セクター」の賃上げを強調するなか、記録的な物価高から職員の生活を守るために、使用者である政府が率先して公務員の賃金を大幅に引き上げるよう重ねて求める。とりわけ時給換算で最低賃金を下回る高卒初任給の引き上げ、賃金の地域格差の解消は重要課題だ。

○ 非常勤職員の処遇改善へ、「時給250円以上」の賃金引き上げをはじめ、恒常的・専門的・継続的業務に従事する非常勤職員の常勤化・定員化を求める。施政方針演説で岸田首相は、希望する非正規雇用労働者の正規化が欠かせないとのべている。少なくとも改正労働契約法で定められている無期雇用への転換が可能な制度を早急に整備せよ。

○ 再任用職員は、人員不足の職場環境のなか、公務・公共サービス、教育を提供していく上で大きな役割を果たしているが、賃金は常勤職員の約半分なうえ、多くが希望してもフルタイムになれない。抜本的な処遇改善とフルタイム任用の保障を強く求める。また、定員不足のもと新規採用数の確保のため、暗黙の退職強要はあってはならない。

○ 労働基本権確立の要求については、この間の回答から一歩も踏み出していないものであり、誠実な意見交換をする姿勢が見られない。問題点や課題を具体的に明らかにしたうえ、早急に労使協議の場を設定するよう繰り返し求める。

○ 独立行政法人予算にかかわって、医療系独立行政法人の積立金を防衛費倍増の財源に利用しようと準備されていることは、国民の命と健康にかかわる重大問題だ。職員がコロナ感染症に命がけで対応するもと、積立金を特別立法で横取りするような手法は断じて認められず、将来に禍根を残す。国の医療機関の安定的な運営のためにも撤回せよ。

 これに対して森田総括補佐は、賃金要求にかかわって「人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢だ。勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定しいく」などと繰り返すだけで、「月額25,000円以上」の賃上げ要求への言及はなく、不誠実な回答にどどまりました。

 桜井議長は最後に、「昨年の回答の域を出ておらず、不満な回答だ」とのべ、「われわれは、物価高を上回る賃上げを要求している。使用者・政府として真剣に検討せよ。また、公務職場の人員不足は解消されず、長時間過密労働にもつながるなかで、人員増は職場の切実な声だ。統一要求について引き続き真摯に検討するよう求める」とのべ、内閣人事局との中間交渉を締めくくりました。

以 上