人事院勧告にむけて各課題で具体的に追及

= 夏季重点要求の実現へ人事院と中間交渉 =

 公務労組連絡会は7月20日、「2022年夏季重点要求書」の今夏勧告での実現を求めて、人事院との中間交渉に臨みました。
 交渉には、桜井議長を先頭に、宮下副議長、秋山事務局長以下幹事会7名で参加、人事院側は給与局第一課の橋本課長補佐、職員福祉局職員福祉課の内田課長補佐ほかが対応しました。

物価急騰のもと賃上げの声に人事院は応えよ

人事院交渉

 はじめに桜井議長は、「参議院選挙では、何よりも国民の暮らしが争点となった。とりわけ、日本の低賃金構造を打破するうえで、賃上げの必要性が共通の認識となった。人事院としてもこうした声に応えることが求められている」とのべ、現時点における中間的な回答を求めました。

 これに対して人事院側は、「現段階における検討状況についてお答えする」とのべ、以下のような回答を示しました。

1.勧告等について
(1)勧告作業について
 今年の職種別民間給与実態調査は、4月25日から6月17日までの期間で実施したところであり、現在集計中である。
 本年も労働基本権制約の代償機関として、人事院としての責務を着実に果たすよう、国家公務員の給与と民間企業の給与の精緻な調査に基づき、その精確な比較を行い、必要な勧告、報告を行いたいと考えている。

(2)賃金の改善について
 月例給与・一時金については、現在、民調結果を集計中であり、今の段階では何とも言えない状況である。
 本年においても民調の結果に基づき、適切に対処したいと考えている。

(3)諸手当について
 諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、必要となる検討を行っていくこととしたい。

2.非常勤職員制度等について
(1)非常勤職員の給与について
 非常勤職員の給与については、平成20年8月に非常勤職員の給与に関する指針を発出し、各府省において適正な給与の支給が行われるよう、必要な指導を行ってきている。この指針は、これまで2度改正し、期末手当及び勤勉手当に相当する給与の支給に関して取り組むべき事項を追加するなどの見直しを行い、現在、これに基づく各府省の取組が進んでいるところであり、引き続き、常勤職員の給与との権衡をより確保し得るよう取り組んでまいりたい。

(2)非常勤職員の休暇等について
 非常勤職員の休暇制度等については、業務の必要に応じて、その都度、任期や勤務時間が設定されて任用されるという非常勤職員の性格を考慮しつつ、民間の状況等を考慮し、必要な措置を行っている。

 近年の措置を挙げれば、結婚休暇の新設及び忌引休暇の対象職員の要件の削除(平成31年1月施行)、夏季休暇の新設(令和2年1月施行)、出生サポート休暇、配偶者出産休暇及び育児参加のための休暇の新設並びに産前休暇・産後休暇の有給化(令和4年1月施行)、育児休業、介護休暇等の取得要件の緩和(令和4年4月施行)、子が1歳以降の育児休業の取得の柔軟化(令和4年10月施行)などがある。

 今後も、引き続き民間の状況等について注視し、必要に応じて検討を行ってまいりたい。

(3)期間業務職員制度について
 期間業務職員制度は、従来の日々雇用の非常勤職員の在り方を見直すため、職員団体をはじめ各方面の意見等を踏まえ、平成22年10月に導入したものであり、人事院は、各府省において、本制度を設けた趣旨に則った適正な運用がなされるよう、制度の周知徹底や指導助言を行うなどして取り組んでいる。

3.高齢期雇用について
(1)定年延長に伴う給与制度の見直しについて
 人事院においては、各府省等及び職員団体からの意見等も踏まえつつ検討を行い、令和4年2月18日に定年の段階的引上げに伴う人事院規則の制定・改正等を行ったところ(令和5年4月1日施行)。人事院としては、高齢層職員の能力及び経験の本格的な活用に向けて、定年の引上げが円滑に行われるよう、規則等の内容を周知するなど、必要な準備を進めていくこととしている。具体的には、各府省等に対し、60歳以降に適用される任用、給与、退職手当の制度をとりまとめた情報提供パンフレット等を作成し、提供するとともに、地方機関も含めた人事担当者等を対象に制度説明会を実施するなどしているところ。

 また、定年引上げに係る国家公務員法改正法附則で検討事項とされた給与制度の検討に当たっては、60歳前後の給与水準が連続的なものとなるよう、民間企業における状況等や公務の人事管理の状況等を踏まえつつ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、検討してまいりたい。

(2)再任用制度について
 再任用職員の給与については、民間企業における定年制や高齢層従業員の給与の状況、定年引上げに伴い設けられる定年前再任用短時間勤務制等も含めた再任用制度の各府省における運用を踏まえつつ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、引き続き必要な検討を行っていくこととしたいと考えている。

 年次有給休暇について、再任用は、一旦、退職した職員を新たに職員として採用するものであるため、新たに年次休暇を付与するものとなっている。

4.労働時間、休暇制度等について
(1)労働時間の短縮等について
 各府省においては、人事院規則に定める上限を超えて超過勤務を命じた場合には、その要因の整理、分析及び検証を行わなければならないとしており、その結果を活用して超過勤務の更なる縮減に向けて取り組んでいる。人事院としても、各府省の令和2年度の整理、分析及び検証の状況について報告を受け、それを踏まえて、昨年11月から本年3月にかけて、勤務時間の担当課長が各府省人事担当課長等にヒアリングを行った。

 その際、特例業務の考え方や、他律的業務の比重が高い部署の指定の考え方、業務の状況を踏まえた指定の見直しについて、各府省における運用の統一がより図られるよう、指導・助言を行ったところである。超過勤務の上限を超えた職員等については、各府省から把握した状況を整理した上で、本年5月に公表するとともに、各府省や職員団体に共有している。

 また、本年4月1日に、超過勤務の縮減に向けた指導を徹底するため、勤務時間調査・指導室を新設した。各府省における超過勤務の実状を把握し、超過勤務の上限規制が適切に運用されるよう、指導・助言を行うこととしており、6月から実施している。

 引き続き、令和3年度に上限を超えて超過勤務を命じた場合における各府省による要因の整理、分析及び検証の状況を把握するとともに、制度の適正な運用に向け、勤務時間調査・指導室を通じて、各府省への指導・支援を行ってまいりたい。

(2)両立支援制度を含む休暇制度等の改善について
 本年1月から出生サポート休暇を新設したことや、本年4月から各省各庁の長等に対して育児休業を取得しやすい勤務環境の整備に関する措置等を義務付けたこと等に伴い、本年3月、「仕事と育児・介護の両立支援制度の活用に関する指針」の改正を行い、「妊娠・出産・育児・介護と仕事の両立支援制度の活用に関する指針」として発出したところであり、これらの内容が各府省において徹底されるよう周知に取り組んでまいりたい。

 出生サポート休暇については、制度導入当初の周知啓発の重要性にも鑑み、取得したい職員が取得できるよう、各府省への指導や周知啓発等に取り組むこととし、各府省の実態の把握等については、今後必要に応じて検討してまいりたい。

 職員の休暇については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきたところであり、今後も社会情勢等を踏まえつつ、制度の改善や環境整備に努めていきたいと考えている。

(3)障害者雇用について
 障害を有する職員が自らの希望や障害等の特性に応じて、無理なく、かつ、安定的に働くことができるよう、平成30年12月にフレックスタイム制の柔軟化等を実現するための人事院規則等の改正(平成31年1月施行)を行うとともに、公務の職場における障害者雇用に関する理解を促進し、障害を有する職員が必要な配慮を受けられるよう、「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針」を平成30年12月に発出し、各府省に対して、当該指針に沿って適切に対応することを求めている。

 このほか、厚生労働省と連携して、各府省における合理的配慮事例の情報共有などの支援を行っている。今後とも、必要に応じて各府省への支援を行ってまいりたい。

5.健康確保等について
(1)心の健康づくり対策について
 心の健康づくりについては、これまでも研修の充実・強化、心の健康相談室の運営、ストレスチェック制度の実施など、様々な取組を行い対処してきたところである。引き続き心の健康づくり対策にしっかりと取り組んでいきたいと考えている。

(2)ハラスメントの防止について
 人事院は、令和2年4月、パワー・ハラスメントの防止等の措置を講じるための人事院規則を制定し、あわせて、セクシュアル・ハラスメント及び妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントに係る人事院規則についても、所要の規定の整備を行い、同年6月に施行したところである。

 これらの人事院規則においては、ハラスメントの防止等のための各省各庁の長の責務や、研修等の実施、苦情相談への対応等が定められているところ、人事院はこれまで、各府省における取組状況を把握しつつ、研修教材の作成・提供や、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーの開催など、各府省に対する支援を行ってきているところである。

 今後も、各府省のハラスメント防止対策の実施状況を把握するほか、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーを引き続き開催し、研修用教材の改訂等を行うなど、各府省においてハラスメント防止対策が適切に実施されるよう、必要な支援・指導を行ってまいりたい。また、苦情相談を含めた公平審査制度において、パワー・ハラスメントに関する事案についても人事院の役割を果たしてまいりたい。

(3)新型コロナウイルス感染症への対応について
 新型コロナウイルス感染症への対応については、これまで、感染拡大防止に資するよう、職場における感染拡大防止対策の周知、柔軟な時差出勤のための勤務時間割振りの特例措置、出勤困難な場合の特別休暇の取扱いに関する通知の発出、予防接種を受ける場合等における職務専念義務の免除などの対策を講じてきたところである。今後とも、感染状況等を注視しつつ、必要な対応を行ってまいりたい。

きわめて不満な回答、職場からの追及強化へ

 以上の中間回答に対して、交渉団からは、物価の急上昇をふまえた勧告を出すこと、最低賃金を下回るような初任給を生計費原則にもとづいて引き上げること、非常勤職員の常勤職員との賃金格差解消、病休の有給化と年次有給休暇の採用時からの付与、定年年齢の段階的引き上げにともなう再任用職員の処遇改善、所定労働時間の短縮と恒常的な超過勤務の解消などで、職場の実態を示しながら人事院を具体的に追及しました。

 人事院側は、「初任給は、俸給表の全体バランスなどを総合的に勘案し決定している。民調の結果もふまえて対処する」「非常勤職員の公募廃止は、民間の状況も考慮しながら引き続き意見交換したい」「所定労働時間の短縮は民間の動向を注視したい」などとのべ、従来の回答の枠を超えるものはなく、勧告にむけて人事院あての署名集約とあわせて、職場・地域からの追及を強める必要があります。

 以上のやりとりを経て桜井議長は、「きわめて不満な回答だ。公務労働者の切実な要求について人事院として真摯な検討を行い、勧告前には誠意ある回答を求める」とのべ、中間交渉を閉じました。

以 上