公務労組連絡会は3月13日、2月に提出した20春闘統一要求の前進をめざして、政府・内閣人事局および人事院と交渉し、中間的な回答を求めました。
政府・人事院ともに具体的な回答はなく、交渉参加者は、公務員労働者の大幅賃金改善、地域経済の活性化、初任給の改善、非常勤職員の公募要件の撤廃と処遇改
善などを厳しく追及しました。そのうえで、最終交渉にむけてさらなる検討を求めました。
交渉には、公務労組連絡会から小畑雅子議長をはじめ、桜井副議長、秋山事務局長、吹上・西の各事務局次長、大門幹事、松井書記、特殊法人労連から根岸事務 局長が参加し、人事院側は、給与局第一課の本田英章課長補佐、職員福祉局職員福祉課の植田有佐課長補佐、村山大介課長補佐が対応しました。
交渉の冒頭、小畑議長が人事院での検討状況を明らかにするよう求め、次のように回答しました。
● 国家公務員の給与について、本年も情勢適応の原則に基づき、民間給与の実態を精緻に調査した上で、民間給与との精確な比較を行い、必要な
勧告を行うという基本的スタンスに変わりはない。
官民給与の比較方法については、これまでも必要な見直しを行ってきており、比較対象企業規模を含め、現行の取扱いが適当と考えている。
民間の春闘においては、3月中旬以降、経営側からの回答・妥結が行われるので、その動向を注視しているところである。
諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、必要となる検討を行っていくこととしたい。
● 非常勤職員の任用、勤務条件等については、その適切な処遇等を確保するため、法律や人事院規則等で規定しており、これまでも職員団体の皆 さんの意見も聴きながら見直しを行ってきている。今後とも職員団体の皆さんの意見も聴きながら、民間の状況等も考慮し、適切に対処してまいりたい。
● 国家公務員法の平等取扱原則及び任免の根本基準に照らし、非常勤職員を含む職員の採用・再採用に当たっては、国民に広く平等に官職を公開し、最も能力・
適性の面から優れた者を公正に任用することが求められることから、原則として公募を経ることが必要であると考えており、公募要件を撤廃することは適当でないと
の従来からの考え方に変わりはない。
期間業務職員制度については、各府省において、本制度を設けた趣旨に則った適切な運用がなされるよう、制度の周知徹底や助言指導を行うなどして取り組んでい
るところであり、引き続き適切な運用が図られるよう努めてまいりたい。
● 非常勤職員の勤務条件については、民間の状況との均衡や常勤職員の状況を考慮し、基準の設定等の必要な措置を行ってきているところである。
非常勤職員の給与については、平成29年7月に、勤勉手当に相当する給与の支給に努めることを追加するなどの指針の改正を行い、現在、これに
基づく各府省の取組が進んでいるところであり、引き続き、常勤職員の給与との権衡をより確保し得るよう取り組んでまいりたい。
非常勤職員の休暇制度については、民間の状況等を踏まえ、本年1月よりいわゆる夏季休暇を新設する措置を行ったところである。
● 平成30年8月の意見の申出において示したとおり、年金支給開始年齢の引上げが進み、無年金期間が拡大する中で、生活への不安が生じないよう、定
年の段階的な引上げ期間中においては、年金が満額支給される65歳までの間の雇用確保のため、暫定的な措置として、現行の再任用制度
(フルタイム勤務及び短時間勤務)を存置することとしている。
また、人事院としては、定年の引上げの開始前も含めフルタイム再任用の拡大の取組を進める必要があると考えており、フルタイム中心の再任用が実現できるよう
定員上の取扱いについて関係機関への働きかけを行うなど引き続き必要な取組を行ってまいりたい。
● 再任用職員の給与については、公務における人事運用の実態や民間企業の再雇用者の手当の支給状況を踏まえ、これまで
も見直しを行ってきているところである。
人事院としては、民間企業における定年制や高齢層従業員の給与の状況、各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえつつ、職員団体の皆さんの意見も聴きな
がら、引き続き再任用職員の給与の在り方について必要な検討を行ってまいりたい。
● 長時間労働の是正については、昨年2月、人事院規則を改正し、超過勤務命令を行うことができる時間の上限について、
原則として1か月について45時間かつ1年について360時間などと設定して、昨年4月から施行している。
他律的業務の比重が高い部署の範囲や、どのような業務が上限を超えて超過勤務を命ずることができる特例業務に該当するかの判断について、人事院が主な府省に
おける制度の運用状況を聴取したところ、各府省においては、制度の趣旨に沿った運用が行われていると認められた。各府省において、上限を超えて超過勤務を命ぜ
られた者がいた場合には、その要因について整理、分析及び検証が行われることとなる。
公務における長時間労働の是正については重要な課題であり、政府全体で連携して取り組んでいくことが必要であり、人事院としても、今後、検証等の結果も含 め、制度の運用状況についてフォローアップを行い、必要に応じて各府省を指導していくなど、引き続き適切に役割を果たしていきたい。
また、勤務時間管理については、超過勤務の運用の適正を図るため、課室長等による超過勤務予定の事前確認や、所要見込時間と異なる場合の課室長等への事後 報告を徹底させるとともに、超過勤務時間の確認を行う場合は、課室長等や周囲の職員による現認等を通じて行うものとし、客観的な記録を基礎として在庁の状況を 把握している場合は、これを参照することもできる旨を職員福祉局長通知で規定したところである。
● 職員の休暇、休業制度については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜
見直しを行ってきたところであり、引き続き民間の動向等を注視してまいりたい。
なお、ご要望のうち、不妊治療のための支援については、昨年の勧告時報告において、民間の動向等を注視しつつ、不妊治療を受けやすい職場環境の醸成等を図っ
ていく旨言及したところであり、その他の休暇等も含め、引き続き民間の動向等を注視してまいりたい。なお、新型肺炎への対応についても、時差出勤に関する休憩
時間の特例や、出勤困難休暇に関する通知を発出したところである。
● 障害者雇用に関しては、「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」に基づき、その推進に全力で取り組むことと
されている。
人事院としては、障害を有する職員が自らの希望や障害等の特性に応じて、無理なく、かつ、安定的に働くことができるよう、フレックスタイム制の柔軟化等を実
現するための人事院規則等の改正を行い、平成31年1月から施行している。
また、公務の職場における障害者雇用に関する理解を促進し、障害を有する職員が必要な配慮を受けられるよう、平成30年12月に「職員の募集及び採用時並び
に採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針」を発出し、各府省に対して、当該指針に沿って適切に対応することを求めている。
さらに、平成30年度及び2019年度に障害者選考試験を実施したほか、厚生労働省と連携して、各府省における合理的配慮事例の情報共有などの支援を行って
おり、今後とも、必要に応じて各府省への支援を行ってまいりたい。
● 職員の休暇については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを
行ってきたところであり、引き続き民間の動向等を注視してまいりたい。
また、両立支援制度の活用については、平成30年3月に発出した「仕事と育児・介護の両立支援制度の活用に関する指針」の内容が各府省において徹底されるよ
うに更なる周知に取り組んでまいりたい。
● 心の健康づくり対策については、平成16年3月に発出した「職員の心の健康づくりのための指針」を基本として対処し ており、これまでも「こころの健康相談室」の運営など様々な取組を進めてきている。引き続き、各府省と連携しつつ、適切に対応してまいりたい。
● パワー・ハラスメントの防止については、本年1月14日に、「公務職場におけるパワー・ハラスメント防止対策検討
会」から報告書を受け取ったところ。今後、当該報告書の提言を踏まえつつ、皆様のご意見を伺いながら、民間労働法制の施行日である6月1日に新たな人事院規則
を施行できるよう、作業を進めてまいりたい。
パワー・ハラスメントに限らず、職場のハラスメントは、職員の尊厳を傷つけるものであり、引き続き、取組を強化してまいりたい。
この中間回答に対して秋山事務局長は、「具体的な回答がなく不満だ。新型コロナウイルスへが拡大するなかで、行政が果たす役割への国民の期待は大きい。ま た、賃金の底上げ、引上げを通じ、国内経済、地域経済の活性化を図るべきだ」とのべつつ、以下の点を追及しました。
○ 賃金底上げとともに、賃金水準が上がらず実質賃金が下がり続けている高齢層の賃金引き上げ、地域間格差の是正、雇用形態による格差の是正、男女間の格差 是正が求められており、その点から最終交渉での有額回答を求める。
○ 通勤手当では、テレワークや在宅勤務における取り扱いについて再検討をすべきだ。また、通勤手当の支給単位期間を1か月に戻すことや、災害時における通 勤経路の変更などに対して、より迅速な対応が図られるよう求める。
○ 非常勤職員の雇用の安定・処遇改善について、公募要件の撤廃をはじめ、手当や休暇制度を正規職員と同様に措置し、病休の有給化、年休を採用時から取得可 能にするよう求める。
○ 労働時間短縮、休暇制度など働くルールの確立について、長時間労働が蔓延する根本原因は人が足りないことであり、必要な要員確保がされるよう人事院とし て政府に意見を上げるよう求める。不妊治療は、通院休暇の制度化は不可欠だ。
その他、両立支援制度の拡充、男女平等・共同参画、健康・安全確保、母性保護、ハラスメント防止、自然災害等にともなう労働条件改善などにかかわって、統 一要求も踏まえつつ改善をもとめました。
これらの追及に対し、人事院から次のような再回答がありました。
● 賃金は民間の動向を注視しながら、検討していきたい。地域における公務員給与が高いとの批判があり、地域手当を導入した経過がある。意見は担当に伝え
る。
● 非常勤の休暇は、業務の性質などに応じて措置してきた。引き続き民間の動向を注視しながら措置をしていきたい。
● 勤務時間管理については、客観的な管理を行うよう局長通知で示している。実際の勤務に対して手当を支給することは当然。定員問題とも関連することは認識し
ており、要員確保の必要性について問題意識を持っている。
● パワハラの問題は幹部から連鎖していく場合もあり、トップが重要であることをふまえ制度設計を進めている。
最後に小畑議長は、「多くの公務労働者は、行政の中立・公正性をゆがめることなく、現場第一線で国民の怒りを直接受けながらも、公務・公共サービスの提供 に奮闘している」とのべ、その公務労働者の切実な要求を誠実に受けとめ、最終交渉でさらに具体的な回答をおこなうよう求め、交渉を終えました。
内閣人事局との交渉では、岡宏記総括参事官補佐を筆頭に各部局の担当ら14名が対応しました。小畑議長の求めに応じて、岡総括参事官補佐は主に以下の通り 中間的な回答を示しました。
● 国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を 尊重することが基本姿勢だ。人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行う。その際には、皆様とも十分に意見交換を行っていく。
● 非常勤職員の雇用の安定・処遇改善については、期末手当や勤勉手当は、平成28年は2~3割弱の支給率だったが、平 成30年度には9割超の非常勤職員に対し支給されており、着実に処遇改善が進んでいる。皆様とも引き続き意見交換を重ねつつ、処遇改善へ必要な取組を進めてい く。
● 障害者雇用については、障害のある職員が意欲と能力を発揮し、活躍できる環境の整備に取り組んできたところであり、 今後とも、関係機関と連携しながら、各府省において障害者雇用が適切に進むよう、取り組んでいく。
● 労働基本権の確立にかかわって、自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があり、引き続き慎重に検討する必 要があると考えている。人事評価制度については、評語区分の趣旨の徹底や、評価者訓練の充実等を図っているところである。
● 長時間労働の是正については、平成26年10月に取りまとめた「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進の
ための取組指針」に基づき、政府一丸となって、
・長時間労働を前提とした働き方を改める意識改革や
・業務の見直し・効率化や、部下職員の超過勤務時間見込みの事前把握等、管理職のマネジメント改革による超過勤務の縮減
・テレワークやフレックスタイム制等による働く時間と場所の柔軟化
等に取り組んできたところ。
今後とも、働き方改革に積極的に取り組み、全ての職員が存分に能力を発揮できる環境づくりに努めてまいりたい。
なお、人事院規則の改正により、平成31年4月から、超過勤務命令については、原則として、1箇月につき45時間かつ1年について360時間の範囲内で行う
こととされたところであり、政府としては、同制度の適切な運用をはかるとともに、その運用状況を見ながら、必要に応じて、適切に対応してまいりたい。
● 両立支援制度の拡充、男女平等・共同参画の推進にむけて、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のため の取組指針」等に基づき、各府省の取組を引き続きフォローアップし、その取組を促進させるようなサポートを行うことにより、職員のワークライフバランスを実現 し、女性活躍の動きを更に加速してまいりたい。
● 健康・安全確保、母性保護等については、「国家公務員健康増進等基本計画」に基づき、職員の心身の健康の保持増進等 に努めているところだ。引き続き、各府省における基本計画の実施状況を把握し、必要な措置が講じられるよう取り組んでまいりたい。
● パワー・ハラスメント防止対策については、民間におけるパワー・ハラスメント防止の法制化に伴い、国家公務員につい ても、人事院においてパワー・ハラスメント防止に関する人事院規則等を制定する予定だ。人事院規則等の内容を踏まえ、関係機関とも連携しながら、公務における パワー・ハラスメント防止対策について対応してまいりたい。
● 転居を伴う異動に関わる職員の負担については、昨年12月に各府省に対し、4月期人事異動に伴う引越時期の分散につ いて協力を依頼したところだ。引き続き、各府省等に対して必要な検討と協力を求めてまいりたい。
内閣人事局の中間回答に対し、秋山事務局長から各項目についてさらなる検討を行うよう指摘しました。
○ 消費税増税で国内景気が冷え込んだうえに、コロナウイルスの打撃は大きく、この状況を改善するには、国が率先して賃上げを行うなど明確なメッセージを発 信することが必要だ。地域経済にも影響を与える全国一律、最低賃金の大幅引き上げが地域経済活性化にも有効な経済対策だ。最終交渉では、使用者としての有額回 答を求める。
○ 非常勤職員の雇用の安定・処遇改善については、使用者として現場で起きている問題から目を背けることなく、改善を図るよう求める。国と同じく、地方でも 対応できるよう予算を増額するなど、政府として使用者責任を果たすよう求める。
○ 今回の新型肺炎や自然災害に対応するためにも増員が必要だ。何よりも職員の健康保持のために職場体制の充実・確保を求める。改めて、総人件費抑制方針を あらためるとともに、総定員法は廃止し、定員削減計画を中止・撤回せよ。長時間労働を根本的に解消するうえでも、必要な要員確保を重ねて要求する。
○ 政府は定年延長の改正法案を国会提出したが、60歳以降の賃金水準を7割に切り下げることには反対する。定員の確保とともに、再任用者の処遇改善などを 求める。
○ 労働基本権の確立へ、繰り返して具体的な論議の場を求めてきた。そのことをしっかりと受け止めるべきだ。国民の間に政府に対する不信感が広がっていお り、その解消には公正で民主的な公務員制度確立が必要だ。
その他の労働条件の改善についても、使用者としての政府の責任を果たすように、統一要求に沿って追及しました。
最後に小畑議長は、「責任ある回答とは受けとめられず、不満だ。労働者の大幅な賃金改善は、働く者の生活を改善し、国内需要を喚起するためにも不可欠であ り、社会的な要請でもある」とのべ、最終交渉に向けて誠意ある検討を求めて交渉を閉じました。