はじめに桜井議長は、「物価高がつづくもと、賃上げは参議院選挙の争点ともなった。こうした声に応える責任が政府にはある。国民のいのちと健康、安心・安全を守るため、日々奮闘をしている公務職場で働く職員の願いに、使用者として受けとめるべきだ」とのべ、現時点における内閣人事局での検討状況について回答を求めました。
これに対して近藤総括参事官補佐は、以下のように中間的な回答をのべました。
1.賃金の改善等
国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。
給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたい。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。
2.非常勤職員の雇用の安定・処遇改善
非常勤職員の給与については、平成29年5月に行った各府省間での申合せに沿って取組を行った結果、特別給(期末手当/勤勉手当)に相当する給与について、確実に支給がなされているところ。
また、休暇・休業についても、これまでにも育児休業等の取得や介護休暇の分割取得等を可能とする制度改正が行われるなど、着実に制度の整備を進めてきており、令和4年2月には、非常勤職員も含む育児休業の取得回数の制限緩和について改正法案を提出し、4月に成立・公布し、本年10月から施行されるところである。また、人事院において本年1月から出産や育児に関する非常勤職員の休暇について新設・有給化され、本年4月から育児休業、介護休暇等の取得要件が緩和(在職1年以上の要件が廃止)されたと承知している。
引き続き、人事院とも連携し、各府省に対して、給与や休暇等非常勤職員に関する制度の適切な運用を促してまいりたい。
3.国の責任による公務・公共サービス拡充
障害者雇用については、「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」に基づき、障害のある職員が意欲と能力を発揮し、活躍できる環境の整備に取り組んできたところ。
引き続き、関係機関と連携しながら、各府省において障害者雇用が適切に進むよう、取り組んでまいりたい。
4.高齢期雇用・定年延長
定年の引上げに当たっては、皆様方の御意見も十分に伺いながら、制度を運用してまいりたい。
また、職員の年齢構成に偏りが生じることで、組織における新陳代謝の維持、知識・技術・経験等の継承・蓄積及び計画的な人事配置・人材育成が困難となることなどから、継続的な組織運営に支障が生じないよう、真に必要な規模の新規採用の計画的な継続という点も十分留意する必要があると考えており、本年3月に策定した「国家公務員の定年引上げに向けた取組指針」に従い、今後、各府省等における、60歳以降において勤務する意思のある職員数等の規模や、行政サービス向上のためのシニア職員の職務内容や他の年齢層の職員との職務分担などの検討状況を踏まえて、令和6年度における定員・級別定数措置について検討していくこととしている。
なお、60歳を超える職員の給与に関しては、60歳前後の給与水準が連続的なものとなるよう、人事院において公布後速やかに行われる昇任・昇格の基準、昇給の基準、俸給表などについての検討の状況を踏まえ、定年引上げの完成(令和13年3月31日)までに所要の措置を順次講ずるものとしている。
5.民主的公務員制度と労働基本権の確立
自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があり、引き続き慎重に検討する必要があると考えている。皆様とは、引き続き意見交換をさせていただきたい。
6 労働時間短縮、休暇制度など働くルールの確立
長時間労働の是正と職員のやりがい向上のため、各府省は、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づき、取組を行っているところである。
具体的には、ルーティン業務の廃止・効率化・デジタル化やテレワークで完結できる業務フローを構築するほか、適正な勤務時間管理の徹底のため、本府省で開始している業務端末の使用時間の記録等を利用した勤務時間の状況の客観的把握を着実に実施し、地方支分部局等でも業務に応じた勤務形態の多様性に配慮しつつ、最も効果的な客観把握を計画的に導入することとしている。また、組織全体のマネジメント力を強化するため、全ての管理職にマネジメント研修の受講を義務付けるとともに、管理職のマネジメント評価を通じてマネジメント行動を徹底することとしている。
また、各府省等において令和4年度の超過勤務手当予算について、必要十分な額が措置されたものと承知しているが、予算があるからと超過勤務をさせてよいということではなく、既存業務の廃止・効率化をはじめとした働き方改革をしっかりと進めてまいりたい。加えて、人事院で開催されている勤務時間制度等の在り方に関する研究会において、長時間労働是正に資する方策が取りまとめられるよう、当該研究会のオブザーバーである内閣人事局としても協力してまいりたい。
なお、人手が足りないという部署については、業務の見直しを行った上で、なお不足する定員や、業務見直し・効率化やマネジメント改革を行うための定員を措置することとしている。
7.健康・安全確保、両立支援制度拡充等
「国家公務員健康増進等基本計画」等に基づき、取組を着実に進めているところ。引き続き、各府省における基本計画の実施状況を把握し、必要な措置が講じられるよう取り組んでまいりたい。
また、新型コロナウイルス感染症への対応については、「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(令和2年3月28日新型コロナウイルス感染症対策本部決定)や都道府県の要請を踏まえ、人事院とも連携しながら、各府省に対しテレワークや時差通勤等の活用により、感染拡大防止に向けた取組を依頼してきたところ。引き続き、関係機関と連携しながら、適切に対応してまいりたい。
なお、ワクチン接種については、ワクチン接種する場合及び副反応が生じた場合に職務専念義務の免除を行えるよう、当局から働きかけた結果、昨年5月に人事院により措置がなされているところである。さらに、昨年夏に引き続き、当局が全体の調整を行い、国家公務員を対象とした職域でのワクチン接種に関して、3回目の追加接種についても行ったところである。
中間的な回答に対して、交渉参加者は、各単産の職場の状況や組合員の声なども示しながら、各項目にわたって具体的に追及を強めましたが、内閣人事局側は、「給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢」の回答を繰り返しました。
非常勤職員の休暇制度については、「まずは人事院において検討されるものであり、内閣人事局としても、人事院における検討状況を注視していく」などと使用者としての責任がまったく感じられない回答に終始しました。また、切実な増員要求についても、「厳しい財政状況」を口実にしつつ、「新たな行政需要に的確に対応していくため、定員の再配置を推進する」との回答にとどまりました。
以上のやりとりを経て、最後に桜井議長は、「従前の回答の域を超えておらず、きわめて不満な回答だ」と指摘したうえ、「昨年の人事院勧告による給与法改正が年度を超えて行われ、6月支給の一時金は過去最大の減額となった。物価高騰のもとであってはならないことだ。最終交渉にむけて、私たちの切実な要求について内閣人事局として真摯な検討を求める」とのべて、中間交渉を閉じました。