公務労組連絡会は10月30日、10月7日に提出した「公務員賃金等に関する要求書」に対する内閣人事局との中間交渉をおこないました。28日には人事院が月例給の改定を見送るなかで、人事院勧告にとどまらない積極的な賃金・労働条件の改善を求めて、使用者としての責任を追及しました。
交渉には、公務労組連絡会から桜井議長を先頭に、秋山事務局長以下幹事会7名で臨み、内閣人事局からは、大堀芳文参事官補佐ほか各担当者が対応しました。
はじめに桜井議長は、「提出した要求書もふまえ、人事院勧告尊重にとどまらない積極的な賃金改善、非常勤職員の処遇改善、長時間労働の是正などを求める」とのべ、現在の検討状況を質しました。
これに対し、大堀総括参事官は、次のように回答しました。
● 本年の給与の取扱いについては、去る10月7日に人事院から国家公務員の給与のうちボーナスについての勧告があったことを受け、10月9日に第1回の給与関係閣僚会議が開催された。
同会議においては、勧告の内容について内閣人事局から説明を行った後、関係閣僚からの発言があり、河野国家公務員制度担当大臣からは、「労働基本権制約の代償措置の根幹を成す人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢に立って、国政全般の観点から給与関係閣僚会議において検討を進め、早急に結論を出す必要がある」旨の発言があったところだ。
また、一昨日、月例給については、改定の必要はないとする報告があったところ。
今後、適切な時期に改めて給与関係閣僚会議が開催されることとなっている。
● 非常勤職員の処遇改善については、平成29年5月に、非常勤職員の基本給・特別給・給与改定に係る平成30年度以降の取扱いについて各府省間で申合せを行っている。この申合せに沿って各府省で取組みを行った結果、期末手当や勤勉手当について、平成28年の内閣人事局の調査では2~3割弱の支給率であったが、平成30年度においては9割超の非常勤職員に対し支給されており、着実に処遇改善が進んでいる。
みなさんとも引き続き真摯に意見交換を重ねつつ、この申合せに沿った処遇改善が進むよう、必要な取組を進めてまいりたい。
● 国家公務員の定年の引上げについては、先の通常国会で廃案となった国家公務員法等改正案については、様々な御意見があったものと承知しており、そうしたことも踏まえながら、法案の提出について、改めて検討しているところ。
なお、定年退職者の再任用については、引き続き平成25年3月の閣議決定に沿って、政府全体で着実に推進してまいりたい。
● 長時間労働の是正については、平成26年10月に取りまとめた「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づき、政府一丸となって、
・長時間労働を前提とした働き方を改める意識改革や業務の効率化等を通じた超過勤務の縮減
・テレワークや、フレックスタイム制などによる働く時間と場所の柔軟化
・リモートアクセスとペーパレスの推進
・管理職をはじめとしたマネジメント改革
等に取り組んできたところ。
また、平成29年4月からは、超過勤務を実施する際に、その理由や見込時間等を上司が把握するなど、勤務時間の適切な管理を更に徹底することとしたところ。今後とも、これらを一層推進することによって、働き方改革に積極的に取り組み、全ての職員が存分に能力を発揮できる環境づくりに努めてまいりたい。
なお、人事院規則の改正により、平成31年4月から、超過勤務命令については、原則として、1箇月につき45時間かつ1年について360時間の範囲内で行うこととされた。
このような制度改正を踏まえ、政府としても、職員の超過勤務時間管理など、同制度の適切な運用をはかりつつ、その運用状況を見ながら、必要に応じて、適切に対応してまいりたい。
● 国家公務員の労働基本権については、国家公務員制度改革基本法第12条において「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする」とされている。
自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があり、引き続き慎重に検討する必要があると考えている。みなさんとは、引き続き意見交換をさせていただきたい。
これに対して、秋山事務局長は主に以下の点を追及しました。
○ 政府として、積極的な賃上げを行うことが必要と考えるのであれば、民間に率先して大幅な賃金引き上げを行うべきではないか。この数年間、賃金引き上げの勧告が出されてきたものの、中高年層は賃上げされていない。あらためて、大幅な引き上げを要求する。
○ 非常勤職員の処遇改善は遅々として進んでいない。特に、常勤との大きな格差となっている無給の特別休暇はただちに有給とすべきだ。10月15日の最高裁判決をふまえて、手当の支給を含め、病気休暇を有給にするなど速やかに措置すべきだ。
○ 長時間労働など過重労働の是正について、公務職場にも時間外の上限規制が導入されたが、多くの職場では、一人一人の業務範囲が広範囲となり、やるべき仕事量は増える一方だ。長時間労働を是正し、過重労働をなくすためにも、定員管理の方法をあらためるよう強く求める。
○ 定年引き上げにむけて、検察庁法案とは切り離して速やかに法案の提出を求める。本来は一括で提出すべきものではない。
内閣人事局側は次の通り見解をのべました。
● 給与については、人勧制度の尊重が基本姿勢だ。人事院勧告を踏まえて、国政全般の観点から総合的に検討していくと判断したもの。今回の場も含めて十分な意見交換をおこなってまいりたい。
● 初任給について、国家公務員は最低賃金法は適用されないが、全国一律に適用された俸給表を地域手当で補完しており、全体として給与体系は確保されている。
● 非常勤職員の処遇については、国の非常勤職員の処遇は民間とは法令が異なが、同一労働・同一賃金をふまえつつ非正規職員の処遇改善を図ることは重要だ。人事院とも連携して、各省庁に対して給与や休暇等の適切な運用を促していきたい。
● 長時間労働については、勤務時間管理システムで実態の把握にも努めており、10・11月に本省における各日の在庁時間を調査している。性別や年齢別などに分類して調査している。業務の効率化とともに、やりがいをもって働ける職場づくりをすすめたい。
● 定年引き上げの法案については、国会でも様々な意見があったと承知している。提出については、あらためて検討しているところだ。
桜井議長は、「9月に示された夏季統一要求に対する回答と何ら変わるものがなく、公務労組連絡会の要求を誠実に検討したものと思えない。昼夜を分かたず奮闘している公務労働者の労苦に応える積極的な賃金・労働条件の改善にむけ、内閣人事局が使用者としての責任を自覚し、あらためて要求を踏まえて検討するよう求める」とのべ、中間交渉を閉じました。