交渉には、公務労組連絡会の桜井副議長を先頭に、秋山事務局長以下幹事会8名でのぞみ、内閣人事局側は大堀芳文参事官補佐ほか担当者が対応しました。
交渉の冒頭、職場の切実な思いがこもった政府あての署名を114,240筆提出しました(写真)。桜井副議長は、「コロナ禍のもとで、公務が最大限の役割を発揮するために公務職場の増員を求める。また、政府として積極的な賃金引き上げを行うよう強く求める」とのべ、最終回答を求めました。
これに対して、内閣人事局から以下の最終回答が示されました。
「1、賃金の改善等」に関して、国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。
給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えている。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。
「2、非常勤職員の雇用の安定・処遇改善」に関して、非常勤職員の処遇改善については、平成29年5月に、非常勤職員の基本給・特別給・給与改定に係る平成30年度以降の取扱いについて各府省間で申合せを行っている。この申合せに沿って各府省で取組みを行った結果、期末手当や勤勉手当について、平成28年の内閣人事局の調査では2~3割弱の支給率であったが、平成30年度においては9割超の非常勤職員に対し支給されており、着実に処遇改善が進んでいる。皆様とも引き続き真摯に意見交換を重ねつつ、この申合せに沿った処遇改善が進むよう、必要な取組を進めてまいりたい。
「3、国の責任による公務・公共サービス拡充」に関して、障害者雇用については、「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」に基づき、障害者の多様な任用形態の確保、障害者雇用マニュアルの作成などにより、障害のある職員が意欲と能力を発揮し、活躍できる環境の整備に取り組んできたところ。
また、職場実習の実施や講習会の開催など、各府省における障害者雇用の推進に係る支援等にも努めており、今後とも、関係機関と連携しながら、各府省において障害者雇用が適切に進むよう、取り組んでまいりたい。
「4、高齢期雇用・定年延長」に関して、国家公務員法等改正法案については、様々な御意見があったことは承知しており、このようなことも踏まえながら、法案の再提出に向けて、検討してまいりたい。
なお、定年退職者の再任用については、引き続き平成25年3月の閣議決定に沿って、政府全体で着実に推進してまいりたい。
「5、民主的公務員制度と労働基本権の確立」に関して、自律的労使関係制度については、国家公務員制度改革基本法第12条において「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする」とされている。
この自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があり、引き続き慎重に検討する必要があると考えている。皆様とは、引き続き意見交換をさせていただきたい。
「6、労働時間短縮、休暇制度など働くルールの確立」に関して、長時間労働の是正については、平成26年10月に取りまとめた「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づき、政府一丸となって、
・長時間労働を前提とした働き方を改める意識改革や
・業務の見直し・効率化や、部下職員の超過勤務時間見込みの事前把握等、管理職のマネジメント改革による超過勤務の縮減
・テレワークやフレックスタイム制等による働く時間と場所の柔軟化
等に取り組んできたところ。
今後とも、働き方改革に積極的に取り組み、全ての職員が存分に能力を発揮できる環境づくりに努めてまいりたい。
なお、人事院規則の改正により、平成31年4月から、超過勤務命令については、原則として、1箇月につき45時間かつ1年について360時間の範囲内で行うこととされたところであり、政府としては、同制度の適切な運用をはかるとともに、その運用状況を見ながら、必要に応じて、適切に対応してまいりたい。
「7、健康・安全確保、両立支援制度拡充等」については、平成28年3月に改正した「国家公務員健康増進等基本計画」に基づき、各府省において職員の心身の健康の保持増進等に努めているところ。引き続き、各府省における基本計画の実施状況を把握し、必要な措置が講じられるよう取り組んでまいりたい。
なお、パワー・ハラスメント防止対策については、本年6月に施行された人事院規則等に基づき、各府省及び人事院において取組を行っているところ。人事院規則等の内容を踏まえ、関係機関とも連携しながら、引き続き、適切に対応してまいりたい。
また、新型コロナウイルス対策については、「新型コロナウィルス感染症対策の基本的対処方針」(令和2年3月28日新型コロナウイルス感染症対策本部決定)等を踏まえ、人事院とも連携しながら、各府省に対し感染拡大防止に向けた取組を依頼しているところ。引き続き、関係機関とも連携しながら、適切に対応してまいりたい。
これに対して秋山事務局は、主に以下の点を追及しました。
○ 賃金等の改善について、人事院勧告尊重にとどまらず、現在の経済情勢を打破するため、政府として政策として賃上げを行うべきだ。非常勤職員は、現場で業務運営に欠かせない職員であり、安定した雇用と処遇改善が必要だ。非常勤職員の公募要件の撤廃をかさねて求める。
○ 公務・公共サービスの拡充にむけて、現行の定員管理は限界であり、定員合理化目標を中止・凍結するよう求める。民間委託の推進は、行政責任が曖昧にされる。行政サービスは直接雇用の公務労働者が行うという、公務員法の原則をふまえるよう求める。
○ 長時間労働が蔓延している根本原因は人が足りないということだ。自然災害の多発も相次いでいる。感染症の感染防止からも公務職場への増員をはかれ。また、休暇制度では、不妊治療に対する休暇創設、非常勤職員の病気休暇は直ちに有給にせよ。
○ 両立支援策として、子どもの看護休暇など、就学前とされているものを小学校在学時までに対象を拡大することを改めて求めておく。
○ 「人事評価の改善に向けた有識者検討会」が7月から開催されている。職員の代表でもある労働組合の声を聴かないまま、議論を進めるようなことがあってはならない。議論の中身を明らかにするとともに、意見表明の機会を求める。
その他、交渉参加者からも、コロナ禍に対応した国の財政による自治体への支援強化、性別にかかわらず能力を発揮できるために、両立支援制度の拡充やハラスメントの根絶、コロナによる休学・退学の増加に対応した給付制の奨学金などを求めました。
これに対して、内閣人事局側からは、以下の見解が示されました。
● 政府としては賃金については、人勧尊重が基本姿勢だ。勧告が出されれば政府としては適切に対応していきたい。なお、取扱いについては意見交換していきたい。
● 定員について多くの意見をいただいた。定員管理は、行政需要に的確に対応することとしている。既存業務を見直しながら、適切に人員配置を行う。
● 非職員職員の公募撤廃については、公募が原則とされており、平等取扱いの原則で定められていると承知している。原則として、人事院の検討をふまえ、検討する。なお、病休の有給化についても、まずは人事院であり、人事院の検討状況を注視していきたい。
● 労働基本権については、基本法12条に基づき適切に対処していくこととされている。慎重な検討が必要であり、このような場でも意見を伺っている。
● 不妊治療や子の看護休暇については、勤務条件、休暇制度として人事院の検討を注視していきたい。
最後に桜井副議長は、「最終回答は、きわめて不満だ。いまのコロナ禍で政府が何をするのかが問われており、その点で、人事院勧告を待つことなく、使用者として積極的な賃金・労働条件の改善をはかれ。とくに臨時・非常勤職員は公務職場に欠かせない存在であり、処遇の改善を強く求める」と述べ、最終交渉を終えました。