コロナ、賃上げ、大幅増員、非常勤職員改善などで追及

= 夏季重点要求めぐり内閣人事局と中間交渉 =

 公務労組連絡会は8月21日、7月8日に提出した「2020年夏季重点要求書」の実現を求めて、内閣人事局との中間交渉に臨みました。交渉には、公務労組連絡会の桜井副議長を先頭に、秋山事務局長以下幹事会役員が参加、内閣人事局は大堀芳文参事官補佐ほか各分野の担当者が対応しました。

 示された回答は不満な内容にとどまり、9月3日に予定されている最終交渉にむけて、現在とりくみ中の政府あての署名の集約を急ぎ、政府の誠意ある回答を求めます。

「人事院勧告制度の尊重」を繰り返す政府

政府交渉

 交渉にあたって桜井副議長は、「新型コロナウイルスの感染がひろがるもとで、行政体制の拡充と失業者を増加させない観点から、公務・公共サービス・教育の分野での雇用拡大とともに、積極的な経済対策としての賃金引き上げを求める。とくに最低賃金を下回るような臨時・非常勤職員の処遇改善は重要だ」とのべ、中間的な回答を求めました。

 これに対して、大堀参事官補佐は以下の通り回答しました。

「1、賃金の改善等」に関して、国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。

 給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えている。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。

「2、非常勤職員の雇用の安定・処遇改善」に関して、非常勤職員の処遇改善については、平成29年5月に、非常勤職員の基本給・特別給・給与改定に係る平成30年度以降の取扱いについて各府省間で申合せを行っている。この申合せに沿って各府省で取組みを行った結果、期末手当や勤勉手当について、平成28年の内閣人事局の調査では2~3割弱の支給率であったが、平成30年度においては9割超の非常勤職員に対し支給されており、着実に処遇改善が進んでいる。皆様とも引き続き真摯に意見交換を重ねつつ、この申合せに沿った処遇改善が進むよう、必要な取組を進めてまいりたい。

「3、国の責任による公務・公共サービス拡充」に関して、障害者雇用については、「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」に基づき、障害者の多様な任用形態の確保、障害者雇用マニュアルの作成などにより、障害のある職員が意欲と能力を発揮し、活躍できる環境の整備に取り組んできたところ。

 また、職場実習の実施や講習会の開催など、各府省における障害者雇用の推進に係る支援等にも努めており、今後とも、関係機関と連携しながら、各府省において障害者雇用が適切に進むよう、取り組んでまいりたい。

「4、高齢期雇用・定年延長」に関して、国家公務員法等改正法案については、様々な御意見があったことは承知しており、このようなことも踏まえながら、法案の再提出に向けて、検討してまいりたい。

 なお、定年退職者の再任用については、引き続き平成25年3月の閣議決定に沿って、政府全体で着実に推進してまいりたい。

「5、民主的公務員制度と労働基本権の確立」に関して、自律的労使関係制度については、国家公務員制度改革基本法第12条において「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする」とされている。

 この自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があり、引き続き慎重に検討する必要があると考えている。皆様とは、引き続き意見交換をさせていただきたい。

「6、労働時間短縮、休暇制度など働くルールの確立」に関して、長時間労働の是正については、平成26年10月に取りまとめた「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」に基づき、政府一丸となって、
 ・長時間労働を前提とした働き方を改める意識改革や
 ・業務の見直し・効率化や、部下職員の超過勤務時間見込みの事前把握等、管理職のマネジメント改革による超過勤務の縮減
 ・テレワークやフレックスタイム制等による働く時間と場所の柔軟化
等に取り組んできたところ。

 今後とも、働き方改革に積極的に取り組み、全ての職員が存分に能力を発揮できる環境づくりに努めてまいりたい。

 なお、人事院規則の改正により、平成31年4月から、超過勤務命令については、原則として、1箇月につき45時間かつ1年について360時間の範囲内で行うこととされたところであり、政府としては、同制度の適切な運用をはかるとともに、その運用状況を見ながら、必要に応じて、適切に対応してまいりたい。

「7、健康・安全確保、両立支援制度拡充等」については、平成28年3月に改正した「国家公務員健康増進等基本計画」に基づき、各府省において職員の心身の健康の保持増進等に努めているところ。引き続き、各府省における基本計画の実施状況を把握し、必要な措置が講じられるよう取り組んでまいりたい。

 なお、パワー・ハラスメント防止対策については、本年6月に施行された人事院規則等に基づき、各府省及び人事院において取組を行っているところ。人事院規則等の内容を踏まえ、関係機関とも連携しながら、引き続き、適切に対応してまいりたい。

 また、新型コロナウイルス対策については、「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(令和2年3月28日新型コロナウイルス感染症対策本部決定)等を踏まえ、人事院とも連携しながら、各府省に対し感染拡大防止に向けた取組を依頼しているところ。引き続き、関係機関とも連携しながら、適切に対応してまいりたい。

定員管理の限界を示したコロナ感染

 以上の中間回答に対し、秋山事務局長は次のように述べました。

○ 賃金引き上げの中でもとくに改善を求めたいのは初任給だ。最低賃金法が適用されないからといって、初任給が最低賃金を下回っていいはずがない。中卒者であっても最低賃金が適用されるのであって、1級1号俸の俸給が最低賃金を上回っていることが必要だ。

○ 賃金の地域間格差の問題も重大だ。特別区と地域手当非支給地の労働者間では、生涯賃金にすれば大きな開きがでる。このような格差が地方を疲弊させ、東京一極集中を強めている。地域間格差の是正を図るよう強く求める。

○ 再任用者に対する処遇改善は、喫緊の課題だ。現役の公務員労働者と同じような仕事をさせられているが、同じ格付けの現役職員との賃金格差があまりにも大きい。生活関連手当の支給も行うべきだ。

○ 臨時・非常勤職員の公募要件の撤廃が必要だ。公募によってメンタル疾患が発症するような現状を改善するうえでも、現場で起きている問題から目を背けることなく、改善を図るべきだ。

○ コロナ感染拡大により、公務職場の脆弱さが明らかとなった。定員管理の手法が限界に来ていることに加え、民間委託の拡大によって行政責任が曖昧にされている。民間委託推進を行うべきではない。障害者も安心して働き続けられるよう大幅増員が必要だ。

○ 災害対応で長時間過密労働が止まらない。根本原因は人が足りないことであり、必要な要員確保に努めることを求める。

 その他、定年延長の実現、労働基本権の回復、職場におけるコロナ感染防止対策の拡充、母性保護などかかわって、交渉参加者もまじえて政府を追及しました。

賃金・手当などは人事院勧告をふまえて対応

 これらの主張に対し、以下のように再回答しました。

● 災害対応、賃金引き上げ、初任給、地域間格差の是正などの要望がだされた。それぞれ人勧を踏まえて対応を進める。民間との均衡などから給与体系ができており、全体として処遇は確保されていると考えている。いずれにしても、総合的に検討する。

● 非常勤職員についても意見をいただいた。昨年、夏季休暇や忌引き休暇の改善など進めてきている。各府省とも連携してとりくんでいく。

● 定員については、総定員法によって総数が定められ、その中で簡素で効率的な観点から人員を配置するという重要な枠組みがある。不断の見直しと再配置を進め、体制の確保を図っていきたい。

● 高齢期雇用について、フルタイムと短時間再任用など多様な働き方がある。引き続き人勧や意見の申し出にもとづき、みなさんとも意見交換しながら検討を進めたい。

● 長時間労働について、実態把握など進めているが、我々も職員の一人であり、認識は共有しておりとりくみをすすめていきたい。

● その他、多岐にわたり意見を頂戴した。いただいた意見については引き続き検討していきたい。

不満な回答、「いのちの格差」をなくせ

 最後に桜井副議長は、「要求を誠実に検討したものとは受けとめられず、今日の回答は不満だ。コロナ対策で自治体が独自の対策もとっているが、財政的な格差が見られ、医療の分野でも格差が生じており、いのちの格差につながっている。賃金でも地域間の格差をなくしていくために積極的な賃上げが必要だ」とのべ、最終交渉にむけてさらなる検討を求め、交渉を終えました。

以 上