人事院は10月5日、7月31日に提出した「2020年夏季重点要求書」で公務労組連絡会に対する最終的な回答を示しました。
賃上げ要求に対しては、コロナ禍のもとで調査・集計が遅れている月例給に先行させて、一時金のみの勧告をおこなうとし、0.05月分の引き下げを回答しました。
なお、月例給等にかかわる回答は、後日の交渉で示すように引き続き求めていきます。
人事院との交渉には、公務労組連絡会から過日の総会で新たに選出された桜井議長、宮下副議長を先頭に、秋山事務局長以下幹事会6名が参加、人事院側は給与局第一課福田圭介補佐、職員福祉局職員福祉課の本田英章補佐が対応しました。
交渉の冒頭、桜井議長は「労働基本権制約の『代償措置』としての人事院勧告という性格をふまえ、公務員労働者の生活と権利を守るための勧告を求める」とのべ、人事院に回答を求めました。
これに対して人事院側は、「7月に公務労組連絡会から提出のあった要求のうち、主な事項について回答する」とのべ、以下のように回答しました。
給与改定について、本年は、まず、特別給に関する勧告を行うこととしており、その勧告日は、10月7日(水)となる予定です。
特別給は、0.05月分の引下げとなる見込みです。引下げ分は、今年度については、12月期の期末手当から差し引くこととします。来年度以降については、0.025月分ずつ、6月期と12月期の期末手当から差し引くこととします。
公務員人事管理に関する報告について、報告では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大や大規模な自然災害などの事態が発生している中において、全国各地で多くの国家公務員が、国民の安全・安心を確保するために日々全力で職務にまい進しているという現状について述べた上で、在宅勤務等の新たな働き方への変革といった課題も踏まえた取組などを推進するため、次のことについて言及することとしています。
新型コロナウイルス感染症に係る取組については、時差出勤のための勤務時間割振りの特例の措置、職場の感染拡大防止対策等の周知、非常勤職員も含め出勤困難な場合の特別休暇の適用などを行うとともに、公務災害認定等の事務が速やかに行われるよう指導を行ってきたところです。今後においても、感染拡大の予防を図りつつ、必要な取組を進めていくことについて言及することとしています。
長時間労働の是正については、今後、超過勤務命令の上限を超えた場合における各府省による要因の整理・分析・検証の状況を把握し、必要な指導を行うことについて言及することとしています。
ハラスメント防止対策については、本年6月からパワー・ハラスメントの防止等のための人事院規則等が施行されたところであり、今後も、各府省における防止対策を支援していくことについて言及することとしています。
定年の引上げについては、定年を段階的に65歳に引き上げるための措置が早期に実施されるよう改めて要請することとしています。
このほか、人材の確保及び育成、仕事と家庭の両立支援、心の健康づくりの推進、非常勤職員の適切な処遇の確保、能力・実績に基づく人事管理の推進についても言及することとしています。
人事院の回答を受け、公務労組連絡会の秋山事務局は、次のように述べました。
○ いま、回答いただいたが、月例給が確定しないまま一時金のみ見直すことは受け入れがたいことを表明する。
評価制度に関する見直しなどによって、短期間の評価で大きな格差がつけられている。職場の人間関係に歪みを生じさせ、公務を歪めることにつながっている。したがって、勤勉手当の支給割合を引き下げ、期末手当の割合を引き上げることが必要だ。コロナ対応などですべての公務労働者が昼夜を分かたず奮闘しているにもかかわらず、こうした結果となることは認められない。
○ 非常勤職員の雇用の安定・処遇改善について、まったくのゼロ回答に厳しく抗議する。
非常勤職員は、労働基本権が制約されている。しかし、その代償措置は不十分というほかない。常勤と非常勤で格差がある病気休暇などはただちに措置すべきだ。
○ 労働時間短縮、休暇制度など働くルールの確立について、長時間労働の是正について、必要な指導が確実に行われるよう求めておく。休暇制度に関わっては、不妊治療に対する通院休暇の制度化など、一歩でも前進させるように求める。
○ 人事管理の報告について、多岐にわたる課題について言及があったが、多様な人材を公務に誘致し、活躍できる公務職場の実現のためには、ゆとりある職場であることが必要だ。そうでなければ障害者を含めすべての公務労働者が安心して働くことなどできない。
○ 要員の確保についても言及されるものと思われるが、引き続き、人員を確保することが必要との声を関係機関に上げ、誰もが気兼ねなく休むことができるような環境をつくるよう求める。
交渉参加者からは、一時金の引き下げに対して、「公務の職場は、コロナ禍のなか大変な状況におかれ、終りの見えないなか昼夜たがわず職務を遂行しているのに、冷水を浴びせるようなものだ」「自治体職場では4月から会計年度任用職員制度が導入され、ようやく期末手当が支給されるようになったのに、一時金の削減は認められない」などの怒りの声があがりました。
これに対して人事院は、「一時金の引き下げについてご意見をいただいた。人事院の調査を理解していただきたい。今後ともみなさまのご意見を賜りながらすすめる。月例給の調査については、集計を速やかに進めていきたい。勧告の時期は、いつかは具体的には申し上げられない」などとのべました。
最後に桜井議長は、「人事院の回答は不満であるといわざるを得ない。コロナ禍のもと公務労働者としての使命感を持って働いている。一時金の0.05月の削減はそうした使命感に水を差すようなものだ。また、非常勤労働者の処遇改善にむけて、人事院が積極的に役割を発揮するよう求める」とのべつつ、月例給や手当等にかかわる要求に対する回答が示されていないもとで、改めて交渉の場を持つように求めて交渉を締めくくりました。