今年の勧告にむけた検討状況を示す

= 「夏季重点要求」で人事院を追及 =

 公務労組連絡会は9月9日、「2020年夏季重点要求書」をめぐって人事院と交渉し、コロナ禍のもとで遅れている勧告の作業状況を質しました。

 交渉には、公務労組連絡会から桜井副議長を先頭に、秋山事務局長以下幹事会7名が参加し、人事院は給与局第一課の福田圭介課長補佐、職員福祉局職員福祉課の本田英章課長補佐が対応しました。

コロナ感染状況等ふまえて必要な対応をすすめる

人事院交渉

 交渉の冒頭、桜井副議長は、「勧告の先行きがわからずに、地方人事委員会などは困惑している。公務労働者の労働や生活の実態は悪化の一途をたどっており、安心して職務につくことができる条件整備が必要であり、国が率先して賃金引き上げを行うべきだ」とのべ、現時点における検討状況について質しました。

 これに対して、人事院側は以下の通り回答しました。

1.勧告等について
(1) 勧告作業について
 今年の民間給与実態調査は、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響から、ボーナス等の調査を先行して実施し、月例給の調査については8月17日から実施しているところである。
 人事院としては、国会と内閣に必要な勧告・報告を行うという国家公務員法に定められた責務を着実に果たしていきたいと考えている。

(2) 賃金の改善について
 一時金については、現在、民調結果を集計中である。また、月例給与については、9月30日までの期間で調査中である。
 したがって、月例給与、一時金とも、今の段階では何とも言えない状況であるが、本年においても民調の結果に基づき、適切に対処したいと考えている。

(3) 諸手当について
 諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、必要となる検討を行っていくこととしたい。

2.非常勤職員制度等について
(1) 非常勤職員の給与について
 非常勤職員の給与については、平成20年8月に非常勤職員の給与についての指針を発出し、各府省において適正な給与の支給が行われるよう、必要な指導を行ってきている。平成29年7月には、常勤職員の給与との権衡をより確保できるよう指針の改正を行い、現在、これに基づく各府省の取組が進んでいるところであり、今後とも、指針の内容に沿った適切な処遇が図られるよう取り組んでいきたい。

(2) 非常勤職員の休暇等について
 非常勤職員の休暇制度等については、民間の状況等を考慮し、必要な措置を行ってきているところであり、今後も、引き続き民間の状況等について注視し、必要に応じて検討を行ってまいりたい。

(3) 期間業務職員制度について
 期間業務職員制度は、従来の日々雇用の非常勤職員の在り方を見直すため、職員団体をはじめ各方面の意見等を踏まえ、平成22年10月に導入したものであり、人事院は、各府省において、本制度を設けた趣旨に則った適正な運用がなされるよう、制度の周知徹底や指導助言を行うなどして取り組んでいる。

3.高齢期雇用について
(1) 定年延長に伴う給与制度の見直しについて
 平成30年の意見の申出において示しているとおり、国家公務員の給与は、社会一般の情勢に適応するように変更することとされており、民間企業における高齢期雇用の実情を考慮し、定年引上げ後の60歳を超える職員の年間給与は、当面、60歳前の7割の水準に設定することが適当であると判断したところ。他方で、60歳を超えて引き続き同一の職務を担う場合は、本来、給与水準が維持されることが望ましいこと等から、60歳を超える職員の給与水準の設定は「当分の間の措置」として位置付けている。

 今後とも、民間企業における状況等や(内閣人事局において行われる)人事評価の改善に係る取組の状況も含む公務の状況を踏まえ、60歳前の給与カーブも含めた給与カーブの在り方について検討を行っていくこととしている。

(2) 再任用制度について
 再任用職員の給与については、民間企業における定年制や高齢層従業員の給与の状況、各府省における再任用制度の運用状況を踏まえつつ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、引き続き必要な検討を行っていくこととしたいと考えている。
 年次有給休暇について、再任用は、一旦、退職した職員を新たに職員として採用するものであるため、新たに年次休暇を付与するものとなっている。

4.労働時間、休暇制度等について
(1) 労働時間の短縮等について
(超過勤務の縮減、上限規制について)
 長時間労働の是正については、昨年2月、人事院規則を改正し、超過勤務命令を行うことができる時間の上限について、原則として1箇月について45時間かつ1年について360時間などと設定して、昨年4月から施行している。

 各府省において、上限を超えて超過勤務を命ぜられた者がいた場合には、その要因について整理、分析及び検証を行うこととしており、多くの府省においては、令和2年3月までの1年間の状況について、本年9月末までの間に整理、分析及び検証を行うこととなる。

 人事院としても、今後、各府省における検証等の結果も含め、制度の運用状況についてフォローアップを行い、必要に応じて各府省を指導していくなど、引き続き適切に役割を果たしてまいりたい。 

 勤務時間管理については、超過勤務の運用の適正を図るため、課室長等による超過勤務予定の事前確認等を徹底させるとともに、超過勤務時間の確認を行う場合は課室長等による現認等を通じて行うものとし、客観的な記録を基礎として在庁の状況を把握している場合は、これを参照することもできる旨を職員福祉局長通知で規定したところである。

(2) 両立支援制度を含む休暇制度等の改善について
 職員の休暇、休業については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきたところであり、今後も社会情勢等を踏まえつつ、制度の改善や環境整備に努めていきたいと考えている。

(3) 障害者雇用について
 障害を有する職員が自らの希望や障害等の特性に応じて、無理なく、かつ、安定的に働くことができるよう、平成30年12月にフレックスタイム制の柔軟化等を実現するための人事院規則等の改正(平成31年1月施行)を行うとともに、公務の職場における障害者雇用に関する理解を促進し、障害を有する職員が必要な配慮を受けられるよう、「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針」を平成30年12月に発出し、各府省に対して、当該指針に沿って適切に対応することを求めている。

 さらに、平成30年度及び2019年度に障害者選考試験を実施するなどしている。(平成31年2月及び令和元年9月実施)
 このほか、厚生労働省と連携して、各府省における合理的配慮事例の情報共有などの支援を行っている。今後とも、必要に応じて各府省への支援を行ってまいりたい。

5.健康確保等について
(1) 心の健康づくり対策について
 心の健康づくりについては、これまでも研修の充実・強化、心の健康相談室の運営、ストレスチェック制度の実施など、様々な取組を行い対処してきたところである。引き続き心の健康づくり対策にしっかりと取り組んでいきたいと考えている。

(2) ハラスメントの防止について
 人事院は、本年4月、パワー・ハラスメントの防止等の措置を講じるための人事院規則を制定し、あわせて、セクシュアル・ハラスメント及び妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントに係る人事院規則についても、所要の規定の整備を行ったところである(本年6月施行)。各種ハラスメントの防止等のため、人事院規則において各省各庁の長は、研修の実施、苦情相談体制の整備等の措置を講じなければならないこととされており、人事院としては、各府省における取組状況を把握しながら、研修で活用するための教材の作成・提供や、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーの開催などにより、各府省を支援するとともに制度の適切かつ円滑な運用に向けて指導を行ってまいりたい。また、苦情相談を含めた公平審査制度において、パワー・ハラスメントに関する事案についても人事院の役割を適切に果たしてまいりたい。

(3) 新型コロナウイルス感染症への対応について
 新型コロナウイルス感染症への対応については、これまで、感染拡大防止に資するよう、柔軟な時差出勤のための勤務時間割振りの特例措置、出勤困難な場合の特別休暇の取扱いに関する通知の発出、職場における感染拡大防止対策や、妊娠中の女子職員の業務軽減等に関する取扱いの周知などの対策を講じてきたところ。また、新型コロナウイルスにさらされる業務に従事したため発症した疾病については、公務上の災害となるので、公務災害の認定等を速やかに行うこと等について各実施機関に対して周知をしているところ。

 さらに、職員が新型コロナウイルス感染症対策のための緊急措置に係る作業に従事した場合に特例的に防疫等作業手当を支給できるよう、規則改正を行った。
 今後も感染状況、感染症対策業務に関する状況等を踏まえつつ、必要な対応を行ってまいりたい。(以上)

常勤と非常勤職員との格差を一掃せよ

 これに対して、遅れている給与実態調査の進行状況、完了している一時金の調査結果など、勧告作業の現状について質しましたが、人事院は、「月例給の調査はまさに進行中。一時金も集計中であり、お答えすることはできない」との回答にとどまり、強く求めてきた最低賃金を下回る高卒初任給の引き上げについては、「初任給については人材確保の観点から、問題意識をもち過去も重点的に配分をしてきている。情勢適応の原則として世代間のバランスもみながら、検討していきたい」と回答しました。

 非常勤職員の病休について、公務労組連絡会側が「民間が何もしないと人事院も何もしないのか。労働基本権制約が制約されているなか、不合理な格差はすぐに一掃せよ」と迫ると、「病気休暇や公募要件の撤廃については、強い要望と受けとめている。常勤とは異なるということもふまえつつ、徐々にではあるが改善をはかってきたところだ」とのべるにとどまりました。

 その他、諸手当の改善、再任用者の賃金引き上げ、超過勤務の縮減、休暇制度の整備、ハラスメントの防止など、夏季重点要求に沿って人事院を追及しました。
 最後に桜井副議長は、「人事院として公務労組連絡会の要求を誠実に検討したものとは受けとめられず、不満を表明する。誠意を持ってさらなる検討をおこない、あらためて回答するよう求める」とのべ、交渉を終えました。

以 上