政府・人事院ともに従来の枠を出ない回答にとどまる

= 新型コロナ対策を追及、春闘統一要求めぐり最終交渉 =

 公務労組連絡会は3月23日、交渉を積み重ねてきた春闘統一要求をめぐって、政府・内閣人事局および人事院との最終交渉に臨みました。政府・人事院ともに、従来の域を出ない不満な回答にとどまりました。
 公務労組連絡会は最終回答を受けて幹事会声明を発表、到達点をふまえて引き続くたたかいへの奮闘を呼びかけました。

(内閣人事局)すべての非常勤職員の期末・勤勉手当支給めざす

政府交渉

 政府・内閣人事局交渉では、対応した岡宏記総括参事官補佐は、「本日は大臣が多忙のため、私からこれまでの検討結果を踏まえた大臣の最終回答をさせていただく」とのべつつ、次のように回答しました。

● 令和2年度の給与については、本年の人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点から検討を行い、方針を決定してまいりたい。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。

● 非常勤職員の処遇改善については、民間における同一労働同一賃金の実現に向けた取組等も踏まえながら、引き続き皆様のご意見も伺いつつ、全ての非常勤職員に対する期末・勤勉手当の支給を目指すなど、各府省申合せに沿った処遇改善が着実に進むよう、関係機関とも連携して、必要な取組を進めてまいりたい。

● 長時間労働の是正については、昨年4月に超過勤務命令を行うことができる上限時間が定められたことを踏まえ、超過勤務の縮減に向けて取組を進めてまいりたい。
 また、政府一丸となって、全ての職員が存分に能力を発揮できる環境づくりに努め、引き続き、皆様のご意見も伺いつつ実効ある施策を推進するとともに、パワーハラスメント防止対策にも適切に取り組んでまいりたい。

● 障害者雇用については、障害者が意欲と能力を発揮し、活躍できる環境の整備や、職員の理解促進に取り組んでまいりたい。

● 国家公務員の定年を段階的に引き上げるための「国家公務員法等の一部を改正する法律案」を先週13日の閣議において決定し国会に提出したところであり、今後は、法案の成立に向けてしっかり取り組んでまいりたい。

● 自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、皆様と意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたい。

● 今後とも公務能率の向上と適正な勤務条件の確保に努めるとともに、安定した労使関係を維持する観点から、職員団体とは誠意を持った話し合いによる一層の意思疎通に努めてまいりたい。
 なお、その他の課題については、前回の交渉(3/13)で私から申し上げたとおりである。

新型コロナ拡大ふまえた賃金・労働条件改善を

 最終回答を受けて秋山事務局長は、「賃上げ要求に対する有額回答がなされなかったことは不満だ。人事院勧告期に向けて引き続く検討を求める」とし、主に以下の点を指摘しました。

○ 新型コロナウイルス感染拡大のもとで、政府による思い切った経済対策が必要だ。公務員賃金も経済対策に含まれる。とりわけ地方では、地域経済に占める公務の割合が高いことから、経済対策として欠かせない課題だ。政府として、積極的な対策を求める。

○ 非常勤職員の雇用の安定は当然だが、採用時からの年休の付与、病気休暇の有給化は急がれる課題だ。今回のコロナウイルスの問題で、出勤困難休暇を有給としたように、病気休暇の有給化を図るべきだ。

○ 行政体制の拡充では、定員削減計画の中止を繰り返し求める。検疫所やハローワークなどをはじめ、緊急に増員をすべき分野が多くある。各省庁からの要求に基づくということにとどまらず、政府として緊急増員を行うよう求める。本省をはじめ地方出先機関のいずれも、健康で安心して働き続けることができる環境をつくるうえで増員が必要だ。

○ 再任用者の処遇改善を強く求める。フルタイムを希望しているにもかかわらず、短時間でしか任用されないのは問題だ。フルタイム再任用の枠を大幅に拡大するよう求める。

 また、交渉参加者からも、定年引き上げにともなう60歳以降の賃金水準維持、独立行政法人の賃金改善、常勤と非常勤の格差是正、均等待遇実現などにかかわって追及しました。

 内閣人事局・岡総括参事官補佐は「ご意見は承った。今後ともみなさまと意思疎通に努めていきたい」とのべました。

 最後に小畑議長は、「使用者としての責任ある回答とは受けとめられず、不満である。すべての労働者の大幅な賃金改善は、働く者の生活を改善し、国内需要を喚起するためにも必要不可欠な課題だ。また、地域間、男女間などあらゆる格差の是正に向け、政府として政策を推進するよう求める」などとのべ、引き続く誠実な交渉・協議を求めて、今春闘での最終交渉を閉じました。

(人事院)新型コロナ対策では事態を注視して対応

人事院交渉

 人事院との交渉は、本田英章給与第一課補佐ほかが対応し、次のように回答しました。

 本年の民間の春闘については、今月11日の大手企業の集中回答日以降、順次明らかになってきており、ここまでの状況をみると、月例賃金については、ベースアップを見送る企業や昨年の実績を下回る企業が相次ぐなど、昨年と比べて厳しい状況にある。また、一時金についても、昨年の実績を下回る企業が多く見られるところである。
 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴う企業活動の停滞など経済情勢は一層不透明感を増しているが、人事院としては、引き続き中小企業を含めた民間の動向を注視していきたいと考えている。
 本日は、皆さんからの要求等に対する現段階における人事院の考え方等について、回答させていただく。

1.賃金の改善について
 人事院としては、労働基本権制約の代償措置としての勧告制度の意義及び役割を踏まえ、情勢適応の原則に基づき、必要な勧告を行うことを基本に臨むこととしている。
 俸給及び一時金については、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査した上で、その精確な比較を行い、適切に対処してまいりたい。
 諸手当については、民間の状況、官民較差の状況等を踏まえ、必要となる検討を行ってまいりたい。

2.労働時間の短縮、休暇等について
 長時間労働の是正については、昨年、人事院規則を改正し、超過勤務を行うことができる時間の上限の設定等を行って、昨年4月から施行している。
 長時間労働の是正は、政府全体で取り組む必要のある重要な課題であり、人事院として、今後とも、制度の運用状況についてフォローアップを行い、必要に応じて各府省を指導していくなど、引き続き適切に役割を果たしてまいりたい。
 両立支援制度を含む職員の休暇、休業等については、これまで民間の普及状況等を見ながら改善を行ってきたところであり、引き続き、職員団体の皆さんの意見も聴きながら必要な検討を行ってまいりたい。

3.非常勤職員の処遇改善について
 非常勤職員の給与については、平成29年7月に改正した指針に基づく各府省の取組が進んでいるところであり、引き続き、常勤職員の給与との権衡をより確保しうるよう取り組んでまいりたい。
 非常勤職員の休暇については、民間の状況等を見ながら、引き続き適切に対応してまいりたい。

4.高齢期雇用施策について
 定年引上げに関しては、今月13日に国家公務員法等の一部を改正する法律案が国会に提出された。人事院としても、成立に向けて国会審議等に適切に対応してまいりたい。また、定年引上げ後の給与制度の在り方については、職員団体の皆さんの意見を聞きながら検討を進めてまいりたい。
 再任用職員制度については、民間企業における定年制や高齢層従業員の給与の状況、各府省における再任用制度の運用状況を踏まえつつ、引き続き再任用の給与の在り方について必要な検討を行ってまいりたい。

5.障害者雇用について
 障害者雇用に関しては、政府一体となった対応が進められており、人事院としても、フレックスタイム制の柔軟化等を実現するための人事院規則等の改正や「合理的配慮に関する指針」の発出等の措置を行ったほか、障害者選考試験を実施するなどしている。
 このほか、厚生労働省と連携して、各府省における合理的配慮事例の情報共有などの支援を行っており、今後とも、必要に応じて各府省への支援を行ってまいりたい。

6.女性の活躍推進について
 人事院としては、女性の活躍推進を人事行政における重要な課題の一つと認識しており、女性の採用・登用の拡大や両立支援策の拡充など様々な施策を行ってきているところである。
 引き続き、女性を対象とした人材確保活動や女性職員の登用に向けた研修、両立支援施策等により、各府省の取組が進むよう支援してまいりたい。

7.健康・安全確保等について
 心の健康づくりをはじめとした健康管理対策やハラスメント対策の推進については、公務全体の共通の課題として、これまでも各府省と協力して積極的に取り組んできたところである。
 パワー・ハラスメントの防止については、先週、職員福祉局長が説明したとおり、人事院規則等の制度措置について4月1日に公布、6月1日に施行できるよう準備を進めているところであり、人事院としてしっかりと取り組んでまいりたい。
 人事院としては、引き続き健康安全対策の取組を進めてまいりたい。

8.新型コロナウイルス感染症対策について
 今般の新型コロナウイルス感染症対策については、いわゆる出勤困難休暇や時差出勤に関する休憩時間の特例の措置を行い、また、防疫等作業手当について適用範囲と額の特例を設けたところである。今後とも事態を注視し、必要な対応を行ってまいりたい。

民間賃金実態調査では労働組合との十分な意思疎通を

 人事院の最終回答に対し、「従来回答にとどまり不満」であると表明したのち、秋山事務局長が人事院勧告に向けた課題もふまえつつ次の点を指摘しました。

○ 社会一般の情勢をふまえるならば、経済対策として思い切った賃上げが必要になっている情勢ではないのか。その観点から、公務員賃金を大幅に引き上げる情勢であるということを強調しておく。

○ 通勤手当では、支給単位期間を1か月に戻し、事務簡素化にもつなげるほか、災害時における通勤経路の変更などに対し、より迅速な対応がはかられるよう求める。

○ 国家公務員の定年引き上げに関する法案が国会提出されたが、60歳を超えた賃金を引き下げることは、同一労働・同一賃金の観点から断じて認めることができない。また、能力実績主義の強化と一体となった賃金の検討は、職場に差別と分断を持ち込むもので、国民・住民本位の行財政とあいいれない。

○ 非常勤職員の公募要件の撤廃が必要であり、回答には全く納得ができない。また、病休の有給化、年休を採用時から取得可能にすべきことを再度強く求める。

○ 新型コロナ対策などで、長時間労働が蔓延している。人員確保が必要であり、人事院として関係機関への働きかけをいっそう強めるよう求める。

○ ハラスメントの防止では、外部への発信も重要な課題だ。また、職員への啓蒙のため、パワーハラスメントを題材にしたドラマをつくるなどの対応も検討すべきだ。

○ 今年の人事院勧告にむけて民間実態調査が実施されるが、新型コロナウイルス感染拡大という異常な状況下での実施に危惧している。今後、人事院としても検討することになると考えるが、必要な情報提供とともにわれわれとの交渉・協議を求める。

 また、交渉参加者からも、非常勤職員の処遇改善、賃金の地域間格差の解消、不妊治療への措置などにかかわって追及しました。

 これに対して、本田課長補佐と高田企画官は次のようにのべました。
● 通勤手当については、強い要求として前回も要望を受けたまわった。担当に伝えたい。
● 定年引き上げに伴う給与カーブの問題・人事評価については、これから検討していく。
● 非常勤職員の待遇については、これまでも措置してきたが、引き続き民間の状況を注視しながら、必要に応じて措置していく。
● 定員の問題については、昨年の勧告の報告でも言及している。引き続き関係機関へも要請を行っていく。
● 不妊治療については、民間における普及の状況は芳しくない。今後とも注視していきたい。

 最後に小畑議長は、「全体として不満な回答だ。経済対策として賃金引き上げこそ必要であり、今年の人事院勧告では公務員賃金の積極的な引き上げを検討すべきだ。勧告に向けてはあらためて重点要求をとりまとめるので、引き続く交渉・協議を求める」とのべ、春闘段階での最終交渉を終えました。

以 上