桜井議長は、「公務労働者の生活と権利を守るための勧告となることを求める」とのべて、最終回答を求めました。
人事院側は、「6月15日に公務労組連絡会から提出のあった要求のうち、主な事項について回答する」として、以下の回答を示しました。
【人事院最終回答】
(給与改定について)
勧告日は、8月7日(月)となる予定です。
民間給与との比較について、月例給の民間給与との較差は、0.9%台後半となる見込みです。
特別給は、0.10月分の引上げとなる見込みです。
引上げ分は、今年度については、12月期の期末手当及び勤勉手当に配分します。
来年度以降については、6月期及び12月期が均等になるよう配分します。
(俸給表の改定について)
行政職俸給表(一)について、民間企業における初任給の動向や、公務において人材確保が喫緊の課題であること等を踏まえ、総合職試験及び一般職試験(大卒程度)に係る初任給を11,000円、一般職試験(高卒者)に係る初任給を12,000円引き上げることとします。初任給以外の号俸については、若年層に重点を置き、そこから改定率を逓減させる形で全ての職員について改定を行います。
その他の俸給表については、行政職俸給表(一)との均衡を基本に改定します。
定年前再任用短時間勤務職員の基準俸給月額については、各級の改定額を踏まえ、所要の改定を行います。
なお、常勤職員の給与が改定された場合には、非常勤職員の給与についても、非常勤職員の給与に関する指針に沿った給与支給が行われるよう、各府省を指導していきます。
在宅勤務等を中心とした働き方をする職員については、在宅勤務等に伴う光熱・水道費等の費用負担が特に大きいことを考慮し、その費用負担を軽減するため、在宅勤務等手当を新設します。手当額は民間の同種手当の支給状況等を踏まえて月額3,000円とします。なお、在宅勤務等手当の新設に伴う通勤手当の取扱いについてあわせて措置します。
(社会と公務の変化に応じた給与制度の整備について)
職員団体をはじめ幅広く関係者の意見を伺ってきたところであり、本年の報告で令和6年に向けて措置を検討する事項の骨格をお示しします。この骨格は、(1)人材確保への対応、(2)組織パフォーマンスの向上、(3)働き方やライフスタイルの多様化への対応の3つの課題に沿って整理しています。これらの課題に関連する俸給や諸手当等の見直しについて、令和6年に向けて必要な措置を検討していきます。
(公務員人事管理に関する報告について)
報告では、社会経済情勢や国政情勢が激変する中で、行政には、国民の利益を守り、世界最高水準の行政サービスを提供し、活力ある社会を築く重要な役割を担うことが求められる中で、行政の経営管理力、更には国家を運営する力を高め、行政を担う公務組織の各層において有為な人材を誘致し、育成することの重要性について述べた上で、公務職場が直面する課題への対応を推進するため、次のことについて言及することとしています。
長時間労働の是正に向けて、昨年4月に新設した勤務時間調査・指導室において、本年度も勤務時間の管理等の調査を進め、超過勤務時間の適正管理等の指導を行ってまいります。また、国会対応業務による超過勤務の縮減に向けて、各府省に国会答弁作成業務の改善を求めるとともに、行政部内を超えた取組が必要なものについては、引き続き国会を始めとする関係各方面の御理解と御協力をお願いすることとしています。業務量に応じた定員の確保についても、必要に応じ定員管理を担当する部局に御協力をお願いしていくこととしています。
多様なワークスタイル・ライフスタイルを可能とするため、より柔軟な働き方を実装するための制度改革を推進していきます。
「テレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の在り方に関する研究会」の最終報告の提言を基本として、勤務時間法を改正し、一般の職員についてもフレックスタイム制を活用した「ゼロ割振り日」を導入します。また、各職場において勤務間のインターバル確保が図られるよう検討を進めるほか、テレワークガイドラインの策定も進めていきます。夏季休暇については、業務上現行の期間での使用が困難な職員について、使用できる期間を前後各1月拡大し、年次休暇については、交替制等勤務職員を対象に、15分単位での使用を可能にします。
なお、非常勤職員である期間業務職員についても、常勤職員のフレックスタイム制と同様の勤務時間を定めることを可能にします。
民間企業において「健康経営」の重要性が認識されていますが、公務においても、職員のWell-beingを実現させるためには、職員各自の健康増進が極めて重要です。民間における健康経営の取組状況の調査を進め、各官署における健康管理体制の充実や効果的な健康管理施策の推進に向けて検討していきます。
近年、官民を問わず人材獲得競争がし烈になる中、非常勤職員の人材確保が厳しさを増しています。こうした状況において、行政サービスの提供を支える有為な人材を安定的に確保することができる環境を整備することが重要と考えています。
今後、各府省の実態を把握し、非常勤職員制度の適切な運用の在り方の検討を行っていきます。
このほか、公務員人事管理に関する報告においては、人材の確保及び育成、能力・実績に基づく人事管理の推進、仕事と家庭の両立支援、ゼロ・ハラスメントに向けた取組についても言及することとしている。
人事院の最終回答を受け、公務労組連絡会側は主に以下の点を追及しました。
○ 政府の言う「物価高を超える賃上げ」にも到底及ばず、民間の春闘結果を大きく下回るものであり、人事院勧告制度の矛盾と限界を示したものだ。初任給の改善額は高卒で12,000円、大卒11,000円と、大きな金額に見えるが、それでも最低賃金を下回る地域は残る。改めて生計費原則にもとづく勧告を行うことを求める。
○ フレックスタイム制の見直し、勤務間のインターバル確保、夏季休暇の使用可能期間及び年次休暇の使用単位の見直し、テレワークガイドラインの策定については、具体化については、今後も公務労組連絡会との真摯な協議を行うよう強く求める。夏季休暇すら満足に取れない職場実態が問題であり、人員不足の解消、増員こそ解決の道だ。
○ 非常勤職員については、われわれの強い要求である雇用の安定と無給である病気休暇の有給化などが措置されないことは不満だ。人材確保の困難さに言及があったが、それなら最初から正規職員として採用せよ。政府は非正規の正規化、同一労働同一賃金の実現を掲げており、非正規公務員の雇用と処遇の在り方を根本から見直せ。
○ 給与制度のアップデート(社会と公務の変化に応じた給与制度の整備)については、今後、来年度の具体化に向けて、われわれとの真摯な協議を幅広に行うよう求める。
これに対して人事院側は、「インフレ手当等の支給状況も調査しており、その結果が反映されて今回の勧告になっている。様々な格差の問題は、給与制度のアップデートの中で議論していく」などとのべるにとどまりました。
桜井副議長は、「給与制度のアップデートについては、地域間格差の解消や諸手当の改善など労使で検討すべき課題は多くある。引き続き、われわれの声を受け止めるよう求める」とのべ、勧告前の最終交渉を閉じました。