桜井議長は、「春闘の賃上げが物価の高騰に全く追いついていない。公務職場で働く職員は、国民、地域住民、子どもたちのいのちと健康、安心・安全を守るため日々奮闘をしている。処遇改善と職場環境改善などを、切実に願っている声に人事院として応えよ」とのべ、人事院勧告にむけた現時点での中間的な回答を求めまました。
これに対して、「要求に対する現段階における検討状況についてお答えする」とのべ、以下の中間回答を示しました。
1.勧告等について
(1) 勧告作業について
今年の職種別民間給与実態調査は、4月24日から6月16日までの期間で実施したところであり、現在集計中である。本年も労働基本権制約の代償機関として、人事院としての責務を着実に果たすよう、国家公務員の給与と民間企業の給与の精緻な調査に基づき、その精確な比較を行い、必要な勧告、報告を行いたいと考えている。
(2) 賃金の改善について
月例給与・一時金については、現在、民調結果を集計中であり、今の段階では何とも言えない状況である。本年においても民調の結果に基づき、適切に対処したいと考えている。
(3) 諸手当について
諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、職員団体の意見も聞きながら、必要となる検討を行っていくこととしたい。
2.非常勤職員制度等について
(1) 非常勤職員の給与について
非常勤職員の給与については、平成20年8月に非常勤職員の給与に関する指針を発出し、各府省において適正な給与の支給が行われるよう、必要な指導を行ってきている。この指針については、非常勤職員の処遇を確保する観点から累次改定を行ってきており、期末手当及び勤勉手当に相当する給与の支給に関して取り組むべき事項を追加するなどの見直しを行ったほか、本年4月からは、給与法等の改正により常勤職員の給与が改定された場合には、非常勤職員の給与についても、常勤職員に準じて遡及改定するよう努める旨を追加したところ。
各府省においては、この指針に基づく取組が進んでいるところであり、引き続き、常勤職員の給与との権衡をより確保し得るよう取り組んでまいりたい。
(2) 非常勤職員の休暇等について
非常勤職員の休暇制度等については、業務の必要に応じて、その都度、任期や勤務時間が設定されて任用されるという非常勤職員の性格を考慮しつつ、民間の状況等を考慮し、必要な措置を行っている。近年の措置を挙げれば、結婚休暇の新設及び忌引休暇の対象職員の要件の削除(平成31年1月施行)、夏季休暇の新設(令和2年1月施行)、出生サポート休暇、配偶者出産休暇及び育児参加のための休暇の新設並びに産前休暇・産後休暇の有給化(令和4年1月施行)、育児休業、介護休暇等の取得要件の緩和(令和4年4月施行)、子が1歳以降の育児休業の取得の柔軟化(令和4年10月施行)などがある。
今後も、引き続き民間の状況等について注視し、必要に応じて検討を行ってまいりたい。
(3) 期間業務職員制度について
各府省において、期間業務職員を含む非常勤職員制度の適切な運用がなされるよう、制度の周知徹底や助言指導を行うなどして取り組んでおり、今後も各府省等の実態を把握し適切な運用等の在り方について検討していきたい。
3.「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について
社会と公務の変化に応じた給与制度の整備については、公務における人員構成の変化や各府省の業務や組織に応じた人事管理、民間における給与の状況等を踏まえつつ、給与制度の様々な側面から一体的に取組を進めることとしている。
取組に当たっては、昨年の職員の給与に関する報告においても述べたとおり、関係者等の意見を聴取しつつ、本年夏に具体的な措置についての骨格案を示すことができるよう検討を進めているところ。その後更に関係者との意見交換を行った上で、令和6年に、その時点で必要な措置の成案を示すことを目指している。
本年夏に示す措置の骨格案については、議論を始めさせていただいているところであり、引き続き職員団体の意見も聞きながら、様々な角度から職員の処遇について検討してまいりたい。
4.高齢期雇用について
(1) 定年延長に伴う給与制度の見直しについて
定年の段階的引上げについては、本年4月から施行されたところ。人事院としては、定年の段階的引上げに係る各種制度が円滑に運用されるよう、引き続き制度の周知や理解促進を図るとともに運用状況の把握に努め、必要に応じて適切に対処してまいりたい。
なお、定年引上げに係る国家公務員法改正法附則で設けられた検討条項について、人事院としては、社会と公務の変化に応じた給与制度の整備を進める中で、民間企業における状況や公務の人事管理の状況等を踏まえ、60歳前の給与カーブを含めた給与カーブの在り方や初任給、中堅層、ベテラン・管理職層などキャリアの各段階における職員の能力・実績の給与への的確な反映について検討を行っていくこととしている。
(2) 再任用制度について
昨年の職員の給与に関する報告において、社会と公務の変化に応じた給与制度の整備の一環として、定年前再任用短時間勤務職員等をめぐる状況を踏まえた再任用職員の給与について取組が必要と述べているところ。近年、公務上の必要性により転居を伴う異動を余儀なくされる再任用職員もいることなど、今後各府省における人事管理の状況等を踏まえつつ、職員団体の意見も聞きながら、引き続き再任用職員の給与の在り方についても必要な検討を行ってまいりたい。
年次有給休暇について、再任用は、一旦、退職した職員を新たに職員として採用するものであるため、新たに年次休暇を付与するものとなっている。
5.労働時間、休暇制度等について
(1) 労働時間の短縮等について
各府省においては、人事院規則に定める上限を超えて超過勤務を命じた場合には、その要因の整理、分析及び検証を行わなければならないとしており、その結果を活用して超過勤務の更なる縮減に向けて取り組んでいる。人事院では、令和4年4月に、超過勤務の縮減に向けた指導を徹底するため、勤務時間調査・指導室を新設し、勤務時間の管理等に関する調査を実施して、客観的な記録を基礎とした超過勤務時間の適正な管理について指導を行っている。また、同調査や制度の運用状況の聴取の機会などを通じて、他律部署・特例業務の範囲等について指導している。
今後も引き続き、上限を超えて超過勤務を命じた場合における各府省による要因の整理、分析及び検証の状況を把握するとともに、制度の適正な運用に向け、勤務時間調査・指導室を通じて、各府省への指導・支援を行ってまいりたい。
(2) 両立支援制度を含む休暇制度等の改善について
両立支援制度を含む職員の休暇、休業等については、従来より情勢適応の原則の、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきたところ。
両立支援制度の活用については、改正人事院規則等により令和4年4月から各省各庁の長等に対して育児休業を取得しやすい勤務環境の整備に関する措置等を義務付けたところであり、これらの制度が職員に広く活用されるよう、職員向けのリーフレットや管理職員向けの研修教材の提供等により、周知啓発や各府省に対する支援・指導に取り組んでまいりたい。
なお、妊娠・出産・育児に関わる休暇については、昨年1月から出生サポート休暇を新設したことや、同年4月に育児休業を取得しやすい勤務環境の整備を行ったこと等に伴い、同年3月に「仕事と育児・介護の両立支援制度の活用に関する指針」の改正を行い、「妊娠・出産・育児・介護と仕事の両立支援制度の活用に関する指針」として発出したところであり、これらの内容が各府省において徹底されるよう周知に取り組んでまいりたい。
(3) 障害者雇用について
障害を有する職員が自らの希望や障害等の特性に応じて、無理なく、かつ、安定的に働くことができるよう、平成30年12月にフレックスタイム制の柔軟化等を実現するための人事院規則等の改正(平成31年1月施行)を行うとともに、公務の職場における障害者雇用に関する理解を促進し、障害を有する職員が必要な配慮を受けられるよう、「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針」を平成30年12月に発出し、各府省に対して、当該指針に沿って適切に対応することを求めている。
このほか、厚生労働省と連携して、各府省における合理的配慮事例の情報共有などの支援を行っている。今後とも、必要に応じて各府省への支援を行ってまいりたい。
6.健康確保等について
(1) 心の健康づくり対策について
心の健康づくりについては、これまでも研修の充実・強化、心の健康相談室の運営、ストレスチェック制度の実施など、様々な取組を行い対処してきたところである。引き続き心の健康づくり対策にしっかりと取り組んでいきたいと考えている。
なお、本年度中には、全ての地方事務局で「心の健康相談室」のオンライン相談に対応できるよう準備を進めている。
(2) ハラスメントの防止について
人事院は、ハラスメント防止等の措置を講じるための人事院規則等に基づき、これまで、研修教材の作成・提供や、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーの開催など、各府省に対する支援を行ってきている。
また、令和4年12月から同5年1月にかけて、各府省における相談体制等に係る実情・課題を把握するためのアンケート調査を実施した。今後、この結果も踏まえて必要な対応を検討していく。
さらに、「幹部・管理職員ハラスメント防止研修」について、組織マネジメントの観点も反映したより実効性のあるものとなるよう研修内容を見直して令和5年度から実施することとし、研修の具体的な内容の企画等を進めている。
今後も、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーを引き続き開催し、研修用教材の改訂等を行うなど、各府省においてハラスメント防止対策が適切に実施されるよう、必要な支援・指導を行ってまいりたい。また、苦情相談を含めた公平審査制度において、パワー・ハラスメントに関する事案についても人事院の役割を果たしてまいりたい。
(3) 新型コロナウイルス感染症への対応について
新型コロナウイルス感染症については、今後とも、感染状況等を注視し、再度の感染拡大が明らかとなった場合など、感染拡大防止に向けた対策を講じる必要が生じた場合には、職員団体の意見も聞きながら、必要な対応を行ってまいりたい。
以上の中間回答に対して、交渉団からは、「従前の回答の域を超えておらず、きわめて不満な回答だ」とのべたうえで、賃上げについて、人事院勧告が900万人以上の国民生活に影響を及ぼすとされることからも、記録的な物価高をふまえた賃上げ勧告が求められることや、最低賃金の引き上げが議論されるもとで、初任給が最賃を下回る実態の解消など、今夏勧告での改善を強く求めました。
また、非常勤職員の公募の廃止とともに、病気休暇の有給化と年次有給休暇の採用時からの付与、正規職員との格差是正など、この間、繰り返し強く要求してきた処遇の改善を、過日の「オンラインミィーティング」で出された数々の意見を示して、具体的な対応を求めました。
人事院側からは、「様々なご意見は受け止めたい。地域間格差の解消については、通勤手当の改善を含めて、『給与制度のアップデート』でも検討されているところだ」「非常勤の処遇改善についても、必要な検討は進めていきたい」などとのべました。
桜井議長は、「今日は中間的な回答としてうかがった。切実な要求について人事院として真摯な検討を行い、勧告前に最終的な回答を行うよう求める」とのべ、交渉を閉じました。