一時金を0.1月引き上げ、月例給は若年層のみ改善

= 夏季重点要求の実現を求めて人事院と最終交渉 =

 公務労組連絡会は8月4日、「2022年夏季重点要求書」にかかわる人事院との最終交渉を行いました。交渉には、宮下副議長を先頭に6名が参加し、人事院は、橋本給与第一課課長補佐・内田職員福祉課課長補佐が対応しました。
 人事院は、初任給水準の改善を求める公務労組連絡会の要求にももとづいて、若年層を重点に3年ぶりのベア勧告を回答、また、一時金についても0.1月分引き上げを回答しました。
 最終交渉に先立って、人事院総裁宛の「賃金格差とあらゆる格差の解消を求める署名」9,408人分を提出しました。署名数は累計で64,932人分となりました。

テレワーク手当を検討、柔軟な働き方を推進

人事院交渉

 宮下副議長は、「労働基本権制約の『代償措置』としての人事院勧告という性格をふまえ、公務員労働者の生活と権利を守るための勧告となることを期待している」とのべて最終回答を求めました。人事院側は以下の通り回答しました。

【人事院最終回答】

(給与改定)

 勧告日は、8月8日(月)となる予定です。

 民間給与との比較について、月例給の民間給与との較差は、0.2%台前半となる見込みです。

 特別給は、0.10月分の引上げとなる見込みです。引上げ分は、今年度については、12月期の勤勉手当に配分します。来年度以降については、6月期及び12月期が均等になるよう配分します。
 なお、勤務実績をより適切に反映し得るよう、勤勉手当の支給月数の引上げ分の一部(0.02月分)を用いて、上位の成績区分に係る原資の確保を図ります。

 俸給表の改定については、行政職俸給表(一)について、民間企業における初任給の動向等を踏まえ、総合職試験及び一般職試験(大卒程度)に係る初任給を3,000円、一般職試験(高卒者)に係る初任給を4,000円引き上げることとします。これを踏まえ、20歳台半ばに重点を置き、初任の係長級の若手職員にも一定の改善が及ぶよう、30歳台半ばまでの職員が在職する号俸について改定を行います。

 その他の俸給表については、行政職俸給表(一)との均衡を基本に改定します。なお、専門スタッフ職俸給表及び指定職俸給表については改定しないこととします。

 博士課程修了者等については、その処遇を改善するため、本年中に初任給基準の改正を行い、令和5年4月から実施します。

 テレワークに関する給与面での対応については、テレワークの実施に係る光熱・水道費等の職員の負担軽減等の観点から、テレワークを行う場合に支給する新たな手当について、具体的な枠組みを検討します。

 能率的で活力ある公務組織の実現に向けて様々な取組を進める中で、給与面においても、社会と公務の変化に応じた給与制度のアップデートに向けて取り組んでいきます。

(公務員人事管理に関する報告について)

 社会情勢が急速に変化し、行政課題は複雑化・高度化しています。その中にあって、世界最高水準の行政サービスを国民に提供していくためには、行政を支える公務組織が、国民本位の、能率的で活力のある組織であり続けなければなりません。

 そのためには、能力のある多様な人材を継続的に採用し、戦略的に育成すること、そして、組織の構成員である職員のWell-beingの実現を図り、一人一人が意欲とやりがいを持って生き生きと働き続けられる職場環境を整えることが不可欠です。

 これにより、公務全体のパフォーマンスが向上するとともに公務職場の魅力が高まり、より多くの人材を惹きつける。そのような「好循環」を生み出していきたいと考えます。
 公務職場が魅力的であるためには、職員が働きやすい勤務環境を整備し、働き方改革を推進することが喫緊の課題です。

 今回の報告においては、このような公務職場が置かれている課題を述べた上で、人事院がスピード感を持って推し進める取組として次のことについて言及することとしています。

 長時間労働の是正に向けて、本年4月に新設した勤務時間調査・指導室において、各府省に対する超過勤務時間の適正管理等の指導を行ってまいります。また、業務量に応じた定員の確保について定員管理を担当する部局に対し必要な働きかけを行うとともに、国会対応業務による超過勤務の縮減に向けて、国会等に一層の御理解と御協力をお願いすることとしております。

 働き方に関する価値観やライフスタイルが多様化する中、職員がその希望や置かれている事情に応じて能力を発揮できるようにすることも重要です。テレワークをはじめとする柔軟な働き方を一層促進するため、フレックスタイム制及び休憩時間制度の柔軟化について職員団体の皆さんの意見も聴きながら、本年度内に措置します。勤務間インターバルの確保等についても引き続き検討を行います。

 職員の健康増進は、職員のWell-being実現の土台となるものです。各府省における健康管理体制の充実に向けて、官民の実態等を調査し、取組を進めてまいります。

 このほか、公務員人事管理に関する報告においては、人材の確保及び育成、能力・実績に基づく人事管理の推進、仕事と家庭の両立支援、ハラスメントの防止についても言及することとしています。

物価上昇分にも満たない低勧告に強い不満

 人事院の最終回答を受け、公務労組連絡会側は主に以下の点を追及しました。

○ 3年ぶりの賃上げ勧告だが、物価上昇分にも満たず、改定される俸給も限定的であり、強い不満を表明する。われわれの要求は、最低賃金を下回る俸給をなくすこと、すべての公務労働者の賃金を改善することだ。人事院勧告制度に限界があることは明らかだ。

○ 一時金の改定では、勤勉手当の改定は部内での格差を広げるものだ。また、地方自治体における会計年度任用職員の改定につながらず、この点でも強い不満を表明する。

○ テレワークに関する新たな手当の支給については、われわれの納得と合意を得るよう求める。公務労組連絡会との真摯な協議を行うよう強く求める。

○ 長時間労働の是正について、客観的な勤務時間管理とともに健康指導だけでなく、業務量の調整などが必要だ。全体として、一人あたりの業務量の縮減を求める。

○ 非常勤職員は、われわれの強い要求である雇用の安定と、病気休暇の有給化などが措置されないことは不満だ。これらを早急に措置すべきだ。

○ 博士課程修了者の初任給基準改正は、官民較差からなされるものと理解するが、全体的に初任給水準を改善すべきだ。最低賃金を下回るような初任給をなくすよう強く求める。

○ 給与制度の改定では、初任給水準や給与カーブのあり方、地域間・機関間格差の是正、人事評価による格差是正など、改善すべき課題は多い。検討にあたっては、今後、公務労組連絡会との真摯な協議を求める。

 これに対し人事院側は、「ご意見はうかがった。非常勤職員の処遇改善に関して重ねて強いご要望があることを承った。今後ともこうした場を通じてご意見をいただきたい」とのべました。

 宮下副議長は、「第一線では、終わりなきコロナ禍で疲弊している。こうした職場実態を踏まえるならば、職員の働きがいを引き出すためにも、処遇改善こそ行うべきだ。検討すべき課題は多くある。引き続き、われわれの声を受け止めるよう求める」とのべて交渉を閉じました。

以 上