俸給表の改定を見送り、一時金0.15月引き下げ
= 夏季重点要求をめぐって人事院と最終交渉 =
公務労組連絡会は8月5日、「2021年夏季重点要求書」にかかわる人事院との最終交渉を行いました。
人事院は、今年の給与勧告で給与改定を見送るとともに、一時金を0.15月分引き下げると回答しました。また、育児休業の取得回数制限にむけて法改正を求める「意見の申出」を給与勧告と同日に行うことも明らかにしました。
育児休業法の改正へ「意見の申出」を予定
人事院との交渉には、公務労組連絡会から桜井議長を先頭に、宮下副議長、秋山事務局長以下幹事会7名が出席、人事院は給与局第一課福田圭介補佐、職員福祉局職員福祉課の本田英章補佐が対応しました。
桜井議長は、「本日職場から集めた署名の追加分29,897人を提出する。累計で11万を超える署名が集まっている。職場の仲間の思いが詰まっていることを受け止めていただきたい」とのべ、最終回答を求めました。
【人事院最終回答】
(給与勧告について)
● 勧告日は、8月10日(火)となる予定です。
● 民間給与との比較について、本年4月分の給与について、官民較差を算出したところ、国家公務員給与が民間給与をわずかに上回っていました。官民給与の較差が極めて小さく、俸給表及び諸手当の適切な改定を行うことが困難であることから、月例給の改定は行わない予定です。
● 特別給は、0.15月分の引下げとなる見込みです。
引下げ分は、今年度については、12月期の期末手当から差し引くこととします。
来年度以降については、6月期と12月期の期末手当の支給月数が均等になるように定めることとします。
(公務員人事管理に関する報告について)
● 近年、就業意識の多様化や勤務環境への関心の高まりなどを背景に、公務の志望者が減少しており、若年層職員の離職も増加しているなど、人材の確保は喫緊の課題です。官民の垣根を越えて時代環境に適応できる能力を有する人材を誘致することが不可欠です。
公務職場全体の魅力を高め、個々の職員が能力や経験を十全に発揮し、意欲を持って全力で働くことのできる環境を実現するためには、幹部職員等の組織マネジメントが重要であることに加えて、長時間労働の是正が必要です。仕事と家庭の両立を図るため、勤務時間制度の柔軟な運用を通じたテレワークの活用等を含め、個々の職員の事情に応じた働き方が可能となる働きやすい勤務環境を整備することが求められています。
今回の報告においては、このような公務職場が置かれている課題を述べた上で、人事院が全力で推し進める取組として、次のことについて言及することとしています。
● 長時間労働の是正について、人員配置や業務分担の見直しを通じて超過勤務を必要最小限のものとなるよう、各府省の人事管理責任者に対し指導するとともに、各府省の組織全体としての取組を促していきます。また、超過勤務手当の適正な支給について、人事院が実施している調査や監査等のあらゆる機会を通じて各府省に対する指導を徹底していきます。
また、長時間労働を是正するためには、業務量に応じた要員が確保される必要があることを改めて指摘します。さらに、国会対応業務の改善を通じた超過勤務の縮減が喫緊の課題であることから、国会等の一層の御理解と御協力をお願いするということを述べます。
テレワークの推進は業務プロセスの変革やデジタルトランスフォーメーションの推進を通じた行動変容の観点やワーク・ライフ・バランスの観点等から重要であることから、テレワーク等の柔軟な働き方に対応した勤務時間制度等の在り方について、有識者による研究会を設けて検討を行います。加えて、勤務時間インターバルの確保の方策についても検討します。
● このほか、公務員人事管理に関する報告においては、人材の確保及び育成、ハラスメントの防止、心の健康づくりの推進、定年の引上げ及び能力・実績に基づく人事管理の推進についても言及することとしています。
(育児休業等に関する意見の申出等について)
● 男性職員による育児の促進や女性職員の活躍促進のため、育児休業の取得回数制限を緩和するよう、国家公務員の育児休業等に関する法律の改正についての意見の申出を人事院勧告と同日に国会及び内閣に対して行う予定としています。あわせて、妊娠、出産、育児等と仕事の両立支援のため、人事院規則の改正等により、休暇の新設、休業等の取得要件緩和等を措置します。
● 昨年5月に閣議決定された「少子化社会対策大綱」において不妊治療と仕事の両立のための職場環境整備の推進が掲げられる等の状況を踏まえ、公務においても、不妊治療のための休暇を有給で原則として年5日、頻繁な通院を要する場合は更に5日加えた範囲内として新設します。
● 非常勤職員については、非常勤職員の出産・育児等に係る休暇を新設・改善する等、妊娠、出産、育児等と仕事の両立支援のための措置を一体的に講じていきます。
職場の願い踏みにじる給与改善見送りは認められない
この回答に対して、主に以下の点について追及しました。
○ コロナ対応や自然災害への対応など非常事態のもとで奮闘しているにもかかわらず、賃金改善を見送り、一時金を引き下げることは認められない。非常勤を含めた勤勉手当の支給割合拡大は、短期の評価で賃金格差をつける点で反対する。
○ 最低賃金の目安額が一律28円引き上げられるもとで、今でも最低賃金を下回る公務員の初任給は、最賃との差がさらに開くことになる。公務員が最賃法適用除外との言い逃れは認められない。ただちに初任給を大幅に引き上げよ。
○ 地方の人材確保や地域経済への深刻な影響をふまえ、地域手当の本俸に繰り入れなど、地域間格差をなくすよう強く求める。地域手当は、市町村単位ではなく広域的な地域指定も検討するべきだ。
○ 再任用職員の手当や一時金引き上げを要求してきたが、改善が示されなかったのはきわめて不満だ。再任用職員については、期末手当引き下げの対象としないことを強く求める。
○ 非常勤職員は、われわれの強い要求である雇用の安定と無給である病気休暇の有給化などが措置されないことはきわめて不満だ。安心して働けるようにするためにも、早急に措置すべきだ。
○ 国家公務員の育児休業制度を改正するよう求める意見の申し出は、来年4月から育児介護休業法改正法が施行されることにあわせるものであり、早期の制度整備を求める。
○ 「人材の確保は喫緊の課題」と言いつつも、給与改善を見送り、一時金を引き下げては、公務員志望者の減少や、若い職員の離職に歯止めがかけられるのか。職場環境の改善こそ必要であり、そのために賃金改善とともに、一人当たりの業務量を減少させるための要員確保を改めて求める。
これに対して人事院側は、「いただいたご意見は受け止め、引き続き議論していきたい」とのべるにとどまりました。
桜井議長は、「一時金を引き下げることへの責任の重さを、人事院は感じるべきだ。現場第一線では、仕事を続けるのか、生きるか死ぬかの選択を迫られるような事態になっている。こうした現場実態を踏まえるならば、職員の働きがいやりがいを引き出すためにも、処遇改善こそ行うべきだ」とのべ、人事院勧告前の最終交渉を閉じました。
以 上