コロナ禍、豪雨災害下での職員の奮闘に応えよ

= 勧告作業がつづくなか人事院と中間交渉 =

 公務労組連絡会は7月19日、夏季重点要求書の実現を求めて人事院と交渉しました。交渉には、桜井眞吾議長を先頭に8名が参加し、人事院は、給与局の福田圭介課長補佐、職員福祉局の本田英章課長補佐が対応しました。

賃金改善とあらゆる格差の解消へ8万人分の署名を提出

人事院交渉

 交渉で桜井議長は、「コロナ収束のめどが立たないことに加えて、集中豪雨による災害が発生するなか、各地の公務労働者は奮闘している。この奮闘に応え、働きがいや将来展望の持てる職場にするためにも、賃金・労働条件の改善へ人事院の役割発揮がいまこそ求められている」とのべ、夏季重点要求に対する現時点での検討状況を質しました。

 これに対して、以下のような回答が示されました。

● 勧告等について
(1) 勧告作業について
 今年の職種別民間給与実態調査は、4月26日から6月22日までの期間で実施したところであり、現在集計中である。
 本年も労働基本権制約の代償機関として、人事院としての責務を着実に果たすよう、国家公務員の給与と民間企業の給与の精緻な調査に基づき、その精確な比較を行い、必要な勧告、報告を行いたいと考えている。

(2) 賃金の改善について
 月例給与・一時金については、現在、民調結果を集計中であり、今の段階では何とも言えない状況である。
 本年においても民調の結果に基づき、適切に対処したいと考えている。

(3) 諸手当について
 諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、必要となる検討を行っていくこととしたい。

● 非常勤職員制度等について
(1) 非常勤職員の給与について
 非常勤職員の給与については、平成20年8月に非常勤職員の給与に関する指針を発出し、各府省において適正な給与の支給が行われるよう、必要な指導を行ってきている。平成29年7月には、勤勉手当に相当する給与の支給に努めることを追加するなどの指針の改正を行い、現在、これに基づく各府省の取組が進んでいるところであり、引き続き、常勤職員の給与との権衡をより確保し得るよう取り組んでまいりたい。

 その一環として、任期が相当長期にわたり、かつ、常勤職員と職務、勤務形態等が類似する非常勤職員の期末手当及び勤勉手当に相当する給与の支給月数については、常勤職員と同等とすることが適当と判断し、この度、指針を改正したところである。

(2) 非常勤職員の休暇等について
 非常勤職員の休暇制度等については、業務の必要に応じて、その都度、任期や勤務時間が設定されて任用されるという非常勤職員の性格を考慮しつつ、情勢適応の原則の下、必要な措置を行ってきているところであり、今後も、引き続き民間の状況等について注視し、必要に応じて検討を行ってまいりたい。

(3) 期間業務職員制度について
 期間業務職員制度は、従来の日々雇用の非常勤職員の在り方を見直すため、職員団体をはじめ各方面の意見等を踏まえ、平成22年10月に導入したものであり、人事院は、各府省において、本制度を設けた趣旨に則った適正な運用がなされるよう、制度の周知徹底や指導助言を行うなどして取り組んでいる。

● 高齢期雇用について
(1) 定年延長に伴う給与制度の見直しについて
 定年引上げに伴う給与制度の在り方については、平成30年の意見の申出において人事院の考え方を示したとおり、国家公務員の給与は、社会一般の情勢に適応するように変更することとされており、民間企業における高齢期雇用の実情を考慮し、定年引上げ後の60歳を超える職員の年間給与は、当面、60歳前の7割の水準に設定することが適当であると判断したところ。他方で、60歳を超えて引き続き同一の職務を担う場合は、本来、給与水準が維持されることが望ましいこと等から、60歳を超える職員の給与水準の設定は「当分の間の措置」として位置付けている。

 本年の通常国会で成立した国家公務員法等の改正法においては、このような意見の申出に沿った内容が定められるとともに、政府は、給与水準が60歳前後で連続的なものとなるよう、国家公務員の給与制度について、人事院において行われる検討の状況を踏まえ、(令和13年3月31日(2030年度末)までに)所要の措置を順次講ずる旨の規定が設けられている。今後とも、民間企業における状況等や(内閣人事局において行われる)人事評価の改善に係る取組の状況も含む公務の状況を踏まえ、60歳前の給与カーブも含めた給与カーブの在り方について検討を行っていくこととしている。

(2) 再任用制度について
 再任用職員の給与については、民間企業における定年制や高齢層従業員の給与の状況、定年引上げに伴い設けられる定年前再任用短時間勤務制等も含めた再任用制度の各府省における運用を踏まえつつ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、引き続き必要な検討を行っていくこととしたいと考えている。

 年次有給休暇について、再任用は、一旦、退職した職員を新たに職員として採用するものであるため、新たに年次休暇を付与するものとなっている。

● 労働時間、休暇制度等について
(1) 労働時間の短縮等について
 国家公務員の超過勤務については、平成31年4月から、人事院規則により、超過勤務命令を行うことができる上限を設定し、この人事院規則等の規定の下で、超過勤務の縮減に取り組んでいるところである。
 各府省において、人事院規則に定める上限を超えて超過勤務を命じた場合には、その要因の整理、分析及び検証を行わなければならないとしており、各府省においては、それぞれが行った令和元年度の整理、分析及び検証の結果を活用し、超過勤務の更なる縮減に向けて取り組んでいる。人事院としても、各府省の令和元年度の整理、分析及び検証の状況について報告を受け、それを踏まえて、昨年11月から本年2月にかけて、勤務時間制度の担当課長が各府省人事担当課長等にヒアリングを行い、特例業務の考え方や、他律的業務の比重が高い部署の指定の考え方、業務の状況を踏まえた指定の見直しなどについて指導・助言を行ったところである。なお、把握した状況については、整理した上で本年3月に公表するとともに、超過勤務の更なる縮減に向けた取組を促進する観点から各府省及び職員団体に共有している。

 引き続き、令和2年度に上限を超えて超過勤務を命じた場合における各府省による要因の整理、分析及び検証の状況を把握するとともに、制度の適正な運用に向けた各府省への指導・支援を行ってまいりたい。

(2) 両立支援制度を含む休暇制度等の改善について
 職員の休暇、休業については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況も踏まえて、適宜見直しを行ってきたところであり、今後も社会情勢等を注視しつつ、制度の改善や環境整備に努めていきたいと考えている。

 不妊治療と仕事の両立については、昨年の勧告時報告において、民間の状況を注視しつつ、不妊治療と仕事の両立に関する実態や職場環境の課題等を把握し、必要な取組の検討を進めていく旨言及したところであり、具体的には、職員向けの、不妊治療と仕事の両立のための職場環境に関するアンケート調査を、本年1月中旬から2月上旬にかけて実施し、その集計結果については、先般、職員団体にもお示ししたところである。今後、アンケートの結果等を踏まえ、必要な取組の検討を進めてまいりたい。

(3) 障害者雇用について
 障害を有する職員が自らの希望や障害等の特性に応じて、無理なく、かつ、安定的に働くことができるよう、平成30年12月にフレックスタイム制の柔軟化等を実現するための人事院規則等の改正(平成31年1月施行)を行うとともに、公務の職場における障害者雇用に関する理解を促進し、障害を有する職員が必要な配慮を受けられるよう、「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針」を平成30年12月に発出し、各府省に対して、当該指針に沿って適切に対応することを求めている。

 このほか、厚生労働省と連携して、各府省における合理的配慮事例の情報共有などの支援を行っている。今後とも、必要に応じて各府省への支援を行ってまいりたい。

● 健康確保等について
(1) 心の健康づくり対策について
 心の健康づくりについては、これまでも研修の充実・強化、心の健康相談室の運営、ストレスチェック制度の実施など、様々な取組を行い対処してきたところである。引き続き心の健康づくり対策にしっかりと取り組んでいきたいと考えている。

(2) ハラスメントの防止について
 人事院は、昨年4月、パワー・ハラスメントの防止等の措置を講じるための人事院規則を制定し、あわせて、セクシュアル・ハラスメント及び妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントに係る人事院規則についても、所要の規定の整備を行い、同年6月に施行したところである。これらの人事院規則においては、ハラスメントの防止等のための各省各庁の長の責務や、研修等の実施、苦情相談への対応等が定められているところ、人事院はこれまで、各府省における取組状況を把握しつつ、研修教材の作成・提供や、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーの開催など、各府省に対する支援を行ってきているところである。今後も、各府省のハラスメント防止対策の実施状況を把握するほか、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーを引き続き開催し、研修用教材の改訂等を行うなど、各府省においてハラスメント防止対策が適切に実施されるよう、必要な支援・指導を行ってまいりたい。また、苦情相談を含めた公平審査制度において、パワー・ハラスメントに関する事案についても人事院の役割を果たしてまいりたい。

(3) 新型コロナウイルス感染症への対応について
 新型コロナウイルス感染症への対応については、これまで、感染拡大防止に資するよう、柔軟な時差出勤のための勤務時間割振りの特例措置、出勤困難な場合の特別休暇の取扱いに関する通知の発出、職場における感染拡大防止対策の周知などの対策を講じてきたところである。さらに、新型コロナウイルス感染症の予防接種について、本年5月、職員が新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を受ける場合又は当該ワクチン接種により副反応が発生し療養する必要がある場合で、勤務しないことがやむを得ないと認められるときに勤務しないことを各府省等において承認することができるよう措置したところである。今後とも、感染状況等を注視しつつ、必要な対応を行ってまいりたい。

課題は山積 最終回答へさらなる検討を求める

 以上の回答をうけ、秋山事務局長は、地域最低賃金の引き上げが想定されるもとで、それをも下回るような高卒初任給の引き上げ、正規・非正規間の格差、ジェンダー格差をはじめ、あらゆる格差を解消すること、非常勤職員の雇用安定と処遇改善などを重ねて求めました。

 また、定年延長や再任用者の処遇改善など高齢期雇用の問題、テレワークやメンタルヘルスなどコロナ禍のもとでの働くルールの確立などにかかわって、自治労連や全教などからの交渉参加者とともに、人事院を追及しました。

 これに対して人事院は、「人材確保の観点から、格差がプラスの際に初任給へ重点的に配分してきた。方向性は基本的に変わらない」「非常勤職員に対する休暇の要望は、以前から強い要望として承っている。引き続き、要望を受け止めたい」などとのべました。

 最後に桜井議長は、切実な要求について人事院として真摯な検討をおこない、人事院勧告前には最終的な回答を示すよう求めて、中間交渉を閉じました。

 なお、交渉にあたって、人事院勧告にむけて全国の仲間の声を集めた「賃金改善とあらゆる格差の解消を求める署名」80,692人分を手渡しました。

以 上