切実な要求からほど遠い不満な回答

= 21春闘統一要求で人事院と最終交渉 =

 3月25日に人事院は、2021年春季統一要求書に対する最終回答を行いました。公務労組連絡会から桜井議長を先頭に7名が交渉に臨み、人事院からは給与局第一課・福田圭介課長補佐と職員福祉局職員福祉課・本田英章課長補佐ほかが対応しました。

賃金、労働条件~中間回答から前進見られず

最終交渉

 桜井議長は、「3月18日に中間的な回答が示されたが、その際、われわれの切実な要求を受け止めてさらなる検討を求めた」とのべ、春闘要求に対する最終的な回答を示すよう求めました。これに対して、人事院側は以下のように回答しました。

【人事院最終回答】
 本年の民間の春闘については、今月17日の大手企業の集中回答日以降、順次明らかになってきているところですが、ここまでの状況をみると、ベースアップを見送る動きや昨年の実績を下回る結果が見られるなど、昨年と比べて厳しい状況にあります。また、年間の一時金についても、昨年の実績を下回る回答が多く見られます。新型コロナウイルス感染症の影響により、社会経済情勢は依然として不透明な状況にありますが、人事院としては、引き続き中小企業を含めた民間の動向を注視していきたいと考えています。

 本日は、皆さんからの要求等に対する現段階における人事院の考え方等について、回答させていただきます。

1.賃金の改善について
 人事院としては、労働基本権制約の代償措置としての勧告制度の意義及び役割を踏まえ、情勢適応の原則に基づき、必要な勧告を行うことを基本に臨むこととしています。

 俸給及び一時金については、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査した上で、その精確な比較を行い、適切に対処したいと考えています。

 諸手当については、民間の状況、官民較差の状況等を踏まえ、必要となる検討を行っていきたいと考えています。

2.労働時間の短縮、休暇等について
 長時間労働の是正に関して、令和元年度から人事院規則により超過勤務の上限を設定しており、この上限を超えた要因の整理、分析及び検証の状況について各府省から報告を受け、その報告を基に各府省に対して指導等を行っているところです。引き続き、制度の適切な運用が図られるよう、必要な指導等を行っていきたいと考えています。

 職員の休暇、休業等については、これまで民間の普及状況等を見ながら改善を行ってきたところです。不妊治療を受けやすい職場環境の整備を含めた両立支援、職員の休暇、休業等については、引き続き、職員団体の皆さんの意見も聴きながら必要な検討を行っていきたいと考えています。

3.非常勤職員の処遇改善について
 非常勤職員の給与については、平成29年7月に改正した指針に基づく各府省の取組が進んでいるところであり、各府省に必要な指導を行うなど、引き続き、常勤職員の給与との権衡をより確保しうるよう取り組んでいきたいと考えています。

 非常勤職員の休暇については、民間の状況等を見ながら、引き続き適切に対応していきたいと考えています。

4.高齢期雇用施策について
 定年引上げに伴う給与制度の在り方については、今後とも、民間企業における状況等や人事評価の改善に係る取組の状況も含む公務の状況を踏まえ、60歳前の給与カーブも含めた給与カーブの在り方について検討を進めていきたいと考えています。

 再任用職員の給与については、民間企業における定年制や高齢層従業員の給与の状況、各府省における再任用制度の運用状況を踏まえつつ、引き続き再任用の給与の在り方について必要な検討を行っていきたいと考えています。

5.障害者雇用について
 障害者雇用に関しては、人事院として、フレックスタイム制の柔軟化等を実現するための人事院規則等の改正や「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針」の発出等の措置を行っています。

 このほか、厚生労働省と連携して、各府省における合理的配慮事例の情報共有などの支援を行っており、今後とも、必要に応じて各府省への支援を行っていきたいと考えています。

6.女性の活躍推進について
 人事院としては、公務における女性の活躍推進を人事行政における重要な課題の一つと認識しており、第5次男女共同参画基本計画が決定されたことを踏まえ、令和3年2月1日、「女性国家公務員の採用・登用の拡大等に向けて」の一部改正を行い、女性を対象とした人材確保活動や女性職員の登用に向けた研修、両立支援策、ハラスメント防止対策等により、引き続き各府省の取組を支援しているところです。
 今後とも、各府省の具体的な取組が進むよう支援していきたいと考えています。

7.健康・安全確保等について
 ハラスメント防止対策について、人事院は、昨年4月、パワー・ハラスメントの防止等の措置を講じるための人事院規則を制定し、あわせて、セクシュアル・ハラスメント及び妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントに係る人事院規則についても、所要の規定の整備を行い、同年6月に施行したところです。人事院としては、今後も、各府省においてハラスメント防止対策が適切に実施されるよう、必要な支援・指導を行っていきたいと考えています。また、苦情相談を含めた公平審査制度において、パワー・ハラスメントに関する事案についても人事院の役割を果たしていきたいと考えています。

 新型コロナウイルス感染症への対応については、感染拡大防止に資するよう、これまで、いわゆる出勤困難休暇や時差出勤に関する休憩時間の特例の措置を行うとともに、職場における感染拡大防止対策の周知などの対策を講じてきたところです。今後とも、感染状況等を注視しつつ、必要な対応を行っていきたいと考えています。

人事院勧告期にむけて要求実現を強く求める

 この回答に対して桜井議長は、「中間回答から前進的なものが見受けられず、われわれの要求からほど遠い回答であり不満だ」とのべ、秋山事務局をはじめ交渉参加者からは、賃金引き上げ、労働時間短縮、非常勤職員の雇用安定と処遇改善、高齢期雇用、両立支援制度などにかかわって、具体的な課題をあげて実現を求めました。

 人事院側は、「さまざまな意見をいただいたが、担当者につたえるとともに、勧告に向けて必要な検討をおこなっていきたい」とのべるにとどまりました。

 桜井議長は、人事院勧告に向けた要求を、あらためてとりまとめたうえで提出することを伝え、春闘期における交渉を締めくくりました。

以 上