コロナ禍のもと地域経済活性化へ大幅賃上げを

= 21春闘統一要求で人事院と中間交渉 =

 公務労組連絡会は3月18日、21年春闘統一要求の実現を求めて人事院と交渉しました。
 交渉には公務労組連絡会から桜井議長を先頭に幹事会役員8名が参加、人事院側は給与局第一課の福田圭介課長補佐、職員福祉局職員福祉課の本田英章課長補佐らが対応しました。

民間給与実態調査は例年通りにすすめる

中間交渉

 交渉の冒頭、桜井議長は「新型コロナウイルス感染拡大が始まって1年が経過するなかで、公務職場で働く職員の日々の奮闘がつづいている。一方で、企業の休業・倒産が相次ぐもと、地域経済活性化のためにも労働者の賃金の大幅な引き上げが求められる。公務労働者の生活改善へ人事院が積極的な役割を果たすよう求める」とのべ、春闘要求に対する現時点での中間的な回答を求めました。

 これに対して人事院側は以下の通り回答しました。
● 賃金の改善について、国家公務員の給与について、本年も情勢適応の原則に基づき、民間給与の実態を精緻に調査した上で、民間給与との精確な比較を行い、必要な勧告を行うという基本的スタンスに変わりはない。

 本年の職種別民間給与実態調査については、新型コロナウイルス感染症の状況が今後どのように推移するかはわからないが、例年のスケジュール感で実施できるよう準備を進めていきたいと考えている。

 なお、官民給与の比較方法については、これまでも必要な見直しを行ってきており、比較対象企業規模を含め、現行の取扱いが適当と考えている。 民間の春闘においては、3月中旬以降、経営側からの回答・妥結が行われるので、その動向を注視しているところである。

● 諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、必要となる検討を行っていくこととしたい。

● 非常勤職員の任用、勤務条件等については、その適切な処遇等を確保するため、法律や人事院規則等で規定しており、これまでも職員団体の皆さんの意見も聞きながら見直しを行ってきているところである。今後とも職員団体の皆さんの意見も聴きながら、民間の状況等も考慮し、適切に対処してまいりたい。

● 雇用の安定と身分保障の確立について、国家公務員法において、公正な人事管理を行うために、平等取扱の原則(第27条)や、任免の根本基準(成績主義の原則・第33条)等が定められており、これは非常勤職員の任用に対しても適用される。

 国家公務員法の平等取扱原則及び任免の根本基準に照らし、非常勤職員を含む職員の採用・再採用に当たっては、国民に広く平等に官職を公開し、最も能力・適性の面から優れた者を公正に任用することが求められることから、原則として公募を経ることが必要であると考えており、公募要件を撤廃することは適当でないとの従来からの考え方に変わりはない。

非常勤職員の休暇制度は民間の状況に注視

● 非常勤職員の任用、勤務条件等については、その適切な処遇等を確保するため、法律や人事院規則等で規定しており、これまでも職員団体の皆さんの意見も聞きながら見直しを行ってきているところである。

● 非常勤職員の給与については、平成29年7月に、勤勉手当に相当する給与の支給に努めることを追加するなどの指針の改正を行い、現在、これに基づく各府省の取組が進んでいるところであり、引き続き、職員団体の皆さんの意見も聞きながら常勤職員の給与との権衡をより確保し得るよう取り組んでまいりたい。

● 非常勤職員の休暇制度等については、業務の必要に応じてその都度任期や勤務時間が設定されて任用されるという非常勤職員の性格を考慮しつつ、民間の状況等を考慮し、必要な措置を行っているところであり、今後も、引き続き民間の状況等について注視し、必要に応じて検討を行ってまいりたい。

● 高齢期雇用について、定年引上げに伴う給与制度の在り方については、平成30年の意見の申出において人事院の考え方をお示ししたとおり、民間企業における高齢期雇用の実情を考慮し、定年引上げ後の60歳を超える職員の年間給与は、当面、60歳前の7割の水準に設定することが適当であると判断したところである。

 他方で、60歳を超えて引き続き同一の職務を担う場合は、本来、給与水準が維持されることが望ましいこと等から、60歳を超える職員の給与水準の設定は「当分の間の措置」として位置付けている。

 今後とも、民間企業における状況等や人事評価の改善に係る取組の状況も含む公務の状況を踏まえ、60歳前の給与カーブも含めた給与カーブの在り方について検討を行っていくこととしている。

● 再任用職員制度について、平成30年8月の意見の申出において示したとおり、年金支給開始年齢の引上げが進み、無年金期間が拡大する中で、生活への不安が生じないよう、定年の段階的な引上げ期間中においては、年金が満額支給される65歳までの間の雇用確保のため、暫定的な措置として、現行の再任用制度(フルタイム勤務及び短時間勤務)を存置することとしている。また、人事院としては、定年の引上げの開始前も含めフルタイム再任用の拡大の取組を進める必要があると考えており、フルタイム中心の再任用が実現できるよう定員上の取扱いについて関係機関への働きかけを行うなど引き続き必要な取組を行ってまいりたい。

● 再任用職員の給与については、公務における人事運用の実態や民間企業の再雇用者の手当の支給状況を踏まえ、これまでも見直しを行ってきているところである。人事院としては、民間企業における定年制や高齢層従業員の給与の状況、各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえつつ、職員団体の皆さんの意見も聴きながら、引き続き再任用職員の給与の在り方について必要な検討を行ってまいりたい。

人事院規則を超える超勤は分析・検討する

● 超過勤務の縮減等について、国家公務員の超過勤務については、平成31年4月から、超過勤務命令を行うことができる上限を人事院規則で設定したところである。勤務時間管理については、上限設定の規則を制定した際に発出した職員福祉局長通知において、超過勤務の運用の適正を図るため、課室長等による超過勤務予定の事前確認や、所要見込み時間と異なる場合の課室長等への事後報告を徹底させるとともに、超過勤務時間の確認を行う場合は課室長等や周囲の職員による現認等を通じて行うものとし、客観的な記録を基礎として在庁の状況を把握している場合は、これを参照することもできる旨を規定したところである。

 なお、本年1月29日に改正された「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」(女性職員活躍・ワークライフバランス推進協議会決定)において、各府省等は「勤務時間管理システム」の導入等により勤務時間管理をシステム化し、職員の勤務時間を「見える化」することとされており、人事院としても、超過勤務の運用の適正を図る観点から、必要な協力をしてまいりたい。

● 各府省において、人事院規則に定める上限を超えて超過勤務を命じた者がいた場合には、その要因の整理、分析及び検証を行わなければならないとしており、人事院としても、各府省から提出された整理、分析及び検証の状況に関する報告を分析するとともに、その報告に基づいて、他律的部署の指定状況、上限を超えるに至った業務の内容、上限超えを回避するための取組等を聴取し、超過勤務の状況の改善方策について指導、意見交換を行ったところである。

 引き続き、制度の適切な運用が図られるよう、必要な指導等を行ってまいりたい。なお、要因の整理、分析及び検証については、取りまとまり次第、職員団体の皆さんに適切に情報提供することとしたい。

● 職員の休暇、休業制度については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきたところであり、引き続き民間の動向等を注視してまいりたい。

● 障がい者雇用について、障がいを有する職員が自らの希望や障害等の特性に応じて、無理なく、かつ、安定的に働くことができるよう、平成30年12月にフレックスタイム制の柔軟化等を実現するための人事院規則等の改正(平成31年1月施行)を行うとともに、公務の職場における障害者雇用に関する理解を促進し、障がいを有する職員が必要な配慮を受けられるよう、「職員の募集及び採用時並びに採用後において障害者に対して各省各庁の長が講ずべき措置に関する指針」を平成30年12月に発出し、各府省に対して、当該指針に沿って適切に対応することを求めている。

 このほか、厚生労働省と連携して、各府省における合理的配慮事例の情報共有などの支援を行っており、今後とも、必要に応じて各府省への支援を行ってまいりたい。

● 人事評価制度について、人事評価は、職員の能力・実績等を的確に把握し、人事管理の基礎とするものであり、各府省において人事評価が厳格に実施されるように、実情把握に努めることが重要と考えている。

 評価結果の活用については、国公法において人事評価が「任用、給与、分限その他の人事管理の基礎」となるものとして位置づけられており、人事院規則等において、能力・実績に基づく人事管理を推進する観点から、評価結果を任免や給与の決定に活用する基準を定めているところである。

男性の育休促進、不妊治療へ必要な検討をすすめる

● 両立支援制度について、職員の休暇については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきたところであり、引き続き民間の動向等を注視してまいりたい。

 また、両立支援制度の活用については、平成30年3月に発出した「仕事と育児・介護の両立支援制度の活用に関する指針」の内容が各府省において徹底されるように更なる周知に取り組んでまいりたい。男性の育児休業取得促進などに向けた育児介護休業法改正法案が国会に提出されている。法案の状況を注視し、必要な検討を行っていく。

 不妊治療に関することは、昨年の勧告・報告で必要なとりくみを行うことについて検討することに言及した。これにもとづき、職員を対象とするアンケートを1月中旬から2月中旬にかけて行ったところである。現在、アンケートの集計を進め、分析を行っている。また、不妊治療に関する制度導入について、自治体に対するヒアリングを実施している。これらをふまえ、検討を進めていくこととしている。

● 男女平等・共同参画について、人事院としては、公務における女性の活躍推進を人事行政における重要な課題の一つと認識しており、第5次男女共同参画基本計画が決定されたことを踏まえ、令和3年2月1日、「女性国家公務員の採用・登用の拡大等に向けて」(平成27年12月25日人事院事務総長通知)の一部改正を行い、国家公務員法に定める平等取扱の原則、成績主義の原則の枠組みを前提とした女性の参画のための採用・登用の拡大、両立支援、ハラスメント防止対策など様々な施策を行ってきているところである。引き続き、各府省の具体的な取組が進むよう支援してまいりたい。

● ハラスメント防止対策について、人事院は、昨年4月、パワー・ハラスメントの防止等の措置を講じるための人事院規則を制定し、あわせて、セクシュアル・ハラスメント及び妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントに係る人事院規則についても、所要の規定の整備を行い、同年6月に施行した。これらの人事院規則においては、ハラスメントの防止等のための各省各庁の長の責務や、研修等の実施、苦情相談への対応等が定められているところ。

 人事院はこれまで、各府省における取組状況を把握しつつ、研修教材の作成・提供や、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーの開催など、各府省に対する支援を行ってきており、今後も、各府省においてハラスメント防止対策が適切に実施されるよう、必要な支援・指導を行ってまいりたい。また、苦情相談を含めた公平審査制度において、パワー・ハラスメントに関する事案についても人事院の役割を果たしてまいりたい。

● 新型コロナウイルス感染症への対応については、これまで、感染拡大防止に資するよう、柔軟な時差出勤のための勤務時間割振りの特例措置、出勤困難な場合の特別休暇の取扱いに関する通知の発出、職場における感染拡大防止対策の周知などの対策を講じてきたところである。今後とも、感染状況等を注視しつつ、必要な対応を行ってまいりたい。

 以上、主な要求事項に対する検討状況について回答させていただいた。本日以降の進捗状況等については、後日、しかるべく回答したい。

最終交渉にむけて職場・地域からの追及を

 中間回答に対して、秋山事務局は「全体として昨年の回答の域にとどまっており、不満な回答だ」とのべ、公務労組連絡会側は主に、賃金の地域格差の解消、法定の最低賃金を下回る高卒初任給のすみやかな引き上げ、「過労死ライン」を大幅に超える実態が明らかになった超過勤務の解消など、賃金・労働条件の改善をはじめ、非常勤職員の雇用の安定・処遇改善、高齢期雇用まで多岐にわたる課題で人事院を追及しました。

 最後に桜井議長は、「私たちの切実な要求についてさらなる検討を行い、2021年春闘統一要求に対する最終的な回答を3月25日に示すよう求める」とのべ、統一要求に対する中間的な交渉を閉じました。

以 上