人事行政諮問会議最終提言への談話

人事行政諮問会議「最終提言」について(談話)

2025年4月3日
公 務 労 組 連 絡 会
事務局長  香月 直之

 人事院の人事行政諮問会議は3月24日、国家公務員人事管理の在り方について「最終提言」をまとめ人事院総裁に提出した。提言は、公務の人材確保は危機的状況であるとして、「新時代にふさわしい人材マネジメントにパラダイムシフトを起こす必要がある」としている。

 公務志望者の減少や若手職員の離職増加に歯止めをかけるために、すべての公務労働者の大幅賃上げや労働環境の改善をすすめることは、国民の安全・安心を守る公務・公共サービスを拡充する観点からも不可欠である。

 そもそも、職場実態を無視した定数削減による恒常的な長時間過密労働や、官民給与の比較対象企業規模の切り下げがもたらした低賃金構造などが、公務の人材確保を困難なものとしてきたのである。提言は、政府・人事院のこうした誤った公務員人件費削減政策を反省することなく「長時間労働もやむを得ないとする職場風土や職員意識を抜本的に切り替えることが求められる」などと、職場や職員の意識の問題にすり替えている。

 さらに、「『等級・報酬・評価』の一体的な改革」として、能力・実績主義の強化・拡大やジョブ型給与の導入を推進し、公務職場のさらなる分断と競争、そして労働強化を押しつけようとしている。兼業・副業の緩和なども含めて、財界の新たな賃下げ・リストラ政策を支援する「三位一体の労働市場改革」の公務版と言わざるをえない。

 しかも提言は、「本府省を中心に政策の企画や立案、高度な調整等を担う国家公務員」(以下、キャリア官僚)の処遇ばかりに着目し、その賃金を「外部労働市場と比較して見劣りしない報酬水準」に別建てで引き上げるなど、他の職員との格差を今以上に拡大・固定化しようとするものであり、とうてい容認できない。

 なかでも問題なのは、官民給与の比較対象企業規模について「少なくとも従前の100人以上に戻すべき」としつつ、「特に、政策の企画立案や高度な調整等に関わる本府省職員については…(中略)…少なくとも1,000人以上の企業と比較すべき」と、キャリア官僚のさらなる優遇に言及していることである。これでは、キャリア官僚以外の大多数の公務労働者は報われず、士気の低下を招き、ますます公務の質の低下が懸念される。すべての職員を対象に比較企業規模を1,000人以上とするべきである。

 また、「人材確保が危機的状況」としながらも非正規公務員の正規化や女性の登用拡大、中高年層・再任用職員等の処遇改善等については何の言及もない。「国民の安全・安心な暮らし」を守るのは、中央官庁に働く男性キャリア官僚だけではない。

 公務・公共サービス、教育を拡充し、公務の魅力を取り戻すためには、公務労働者が生き生きと誇りを持って働き続けられる労働条件・職場環境の確保が必要であり、そのためには、公務労働者の重要な人権である労働基本権の回復によって自律的労使関係を確立することが不可欠である。世界的潮流である公務労働者の労働基本権回復の課題から背を向けた提言の姿勢こそが日本の「公務の危機」を象徴している。

 提言の具体化は、国家公務員だけでなく900万人の労働者の賃金・労働条件に強い影響を及ぼす課題である。使用者である政府、そして労働基本権制約の「代償機関」とされる人事院は、公務労組連絡会との労使協議を誠実に行い、一方的な変更を行わないことを強く求める。

 公務労組連絡会は、公務職場に新たな分断と格差を持ち込む提言の一方的な具体化を許さず、国民の安全・安心を確保する公務・公共サービス、教育の拡充のために全力で奮闘する。

以 上