使用者として不利益変更を許すのか
= 人勧の取り扱いめぐり内閣人事局交渉 =
公務労組連絡会は9月26日、政府・内閣人事局へ8月9日に提出した「公務員賃金等に関する要求書」に対する中間交渉を行いました。
交渉には、公務労組連絡会の桜井議長を先頭に、宮下副議長、香月事務局長以下幹事会6名が参加、内閣人事局から駒崎総括参事官補佐ほかが対応しました。
非常勤職員の改善を着実に進めていく
桜井議長は「人事院勧告は、民間の春闘結果や最低賃金の引上率と比べても、決して十分な改善額と言えない。また、地域手当や寒冷地手当、扶養手当の見直しは、不利益変更にもかかわらず、人事院の十分な説明はなかった」とのべたうえ、勧告の取り扱いにかかわる現時点での検討状況を示すよう求めました。
これに対して、駒崎総括参事官補佐は以下の通り回答しました。
【内閣人事局中間回答】
1、賃金等の改善について
本年の給与の取扱いについては、去る8月8日に人事院から国家公務員の給与についての報告及び勧告があったことを受け、同日、第1回の給与関係閣僚会議が持ち回りで開催されたところ。同会議においては、人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢に立って、国政全般の観点から給与関係閣僚会議において検討を進め、早急に結論を出す必要がある旨、確認されたところである。今後、適切な時期に改めて給与関係閣僚会議が開催されることとなっている。
2、非常勤職員の雇用の安定と処遇改善について
非常勤職員の常勤化・定員化については、国家公務員の場合、
・非常勤職員の官職は、常勤の官職とは、業務の性質や職務の内容が異なるものであること
・また、非常勤職員を常勤職員の官職に任用するためには、国家公務員法に基づき、採用試験などにより、常勤職員としての能力の実証を行う必要があること
から、困難であると考えている。
無期転換制度については、国家公務員の場合、常勤職員として採用するには、国家公務員法に基づき、採用試験などによって、常勤職員としての能力の実証を行う必要があることから、困難であることを御理解いただきたい。
なお、非常勤職員についても、公開・平等の採用試験など常勤職員としての能力の実証を行う手続に応募する機会は広く与えられており、こうした手続を経て常勤職員として採用されることはあり得るものと考えている。
また、昨年の人事院の「公務員人事管理に関する報告」において表明された「非常勤職員制度の適切な運用の在り方等についての検討」に関係して、本年6月に、いわゆる「3年公募要件」の見直しに係る通知が人事院から各府省に対して発出されたものと承知している。内閣人事局としては、制度の円滑な運用に向け、引き続き適切に対応してまいりたい。
非常勤職員の処遇改善に係る取組として、まず、給与については、人事院において、常勤職員との均衡をより一層確保することを目的として、昨年4月に非常勤職員の給与に関する指針を改正し、給与法等の改正により常勤職員の給与が改定された場合には、非常勤職員の給与についても、常勤職員に準じて改定するよう努める旨を追加し、この指針に沿った適切な給与支給が行われるよう、各府省を指導していくものと承知している。なお、給与の遡及改定については、昨年11月に人事院と内閣人事局から改めて周知を図ったところ。
また、休暇・休業等については、本年の人事院の「公務員人事管理に関する報告」において
・非常勤職員の育児時間について、対象となる子の範囲を小学校就学前の子に拡大する
・非常勤職員の子の看護休暇の取得要件並びに同様の取得要件を定めている、出生サポート休暇、配偶者出産休暇及び育児参加のための休暇の取得要件を緩和し、任期の短い非常勤職員も採用当初からこれらの休暇を取得可能とする
・非常勤職員の短期介護休暇の取得要件を緩和し、任期の短い非常勤職員も採用当初から取得可能とする
とされたところ。
これらを踏まえ、国家公務員の育児休業等に関する法律の改正等について、必要な検討を進めているところである。
3、60歳を超える職員の賃金について
昨年の人事院の「公務員人事管理に関する報告」において、「令和6年以降も見据え、65歳定年の完成を視野に入れた60歳前・60歳超の各職員層の給与水準(給与カーブ)の在り方については、本年度から段階的に定年が引き上げられる中での公務における人事管理の在り方の変化や、民間における高齢期雇用や高齢層従業員の給与水準の状況を注視しつつ、職員の役割・貢献に応じた処遇の確保の観点から、人事管理に係る他の制度と一体で引き続き検討を行っていく」こととされたところ。
内閣人事局としても、人事院における所要の検討の内容を踏まえ、適切に対応してまいりたい。
4、希望者全員の再任用について
国家公務員の雇用と年金の接続については、平成25年3月の閣議決定において、年金支給開始年齢の引上げが開始された平成25年度以降、定年退職者が年金支給開始年齢に達するまでの間、再任用を希望する職員については再任用することとし、雇用と年金の接続を図っているところ。
一昨年3月に策定した「国家公務員の定年引上げに向けた取組指針」において、定年の段階的な引上げ期間中に、定年退職者が再任用を希望する場合には、平成25年の閣議決定に準じて、当該職員を公的年金の支給開始年齢に達するまでの間、再任用するものとしており、平成25年3月の閣議決定及び取組指針に基づき、各任命権者を含め、政府全体で適切に対応してまいりたい。
5、客観的な勤務時間管理、長時間労働の是正のための定員増について
勤務時間管理については、本年の人事院の「公務員人事管理に関する報告」において「人事管理業務に係るシステム化の全体設計の中で、各府省共通の勤務時間管理システムについて令和8年度末までに必要な整備を行えるよう、内閣人事局やデジタル庁と連携して取り組む」とされたところ。
フレックスタイム制の活用など柔軟な働き方が広がる中で、適正な勤務時間管理を徹底するためには、人事当局や各職場における職員の勤務時間の把握や管理が正確かつ簡便にできるようにすることが必要であり、勤務時間管理のシステム化を推進してまいりたい。
また、定員管理については、国民のニーズを踏まえて、新たな行政需要に的確に対応していくためには、既存の業務を不断に見直し、定員の再配置を推進していくことが重要である。
その上で、新たな行政課題や既存業務の増大に対応するため、各府省官房等から現場の実情を聴取しつつ必要な行政分野に必要な増員を行っているところ。
引き続き、既存業務の見直しに積極的に取り組みながら、内閣の重要政策に適切に対応できる体制の構築を図ってまいりたい。
6、両立支援策の充実について
両立支援のための、休暇・休業制度及び育児時間・育児短時間勤務制度などの勤務条件に関する内容については、まずは人事院において検討されるものである。その上で、育児時間については、人事院から国家公務員の育児休業等に関する法律の改正についての意見の申出があったところ。国家公務員の育児休業等に関する法律の改正について、必要な検討を進めているところである。
7、労働基本権について
自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、皆様と誠実に意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたいと考えている。
全世代の大幅賃上げを、不利益変更は行うな
これに対して、公務労組連絡会側は主に以下の点を追及しました。
○ 官民較差を初任給など若年層に大きく配分した結果、中高年職員や再任用職員は、1%程度の引上げにとどまっている。物価高騰に対する給与の目減りを補うには全く足りていない。経済対策の側面からも、勧告尊重にとどまることなく、全世代にわたる積極的な賃金改善を求める。
○ 給与制度のアップデートでは、地域手当や寒冷地手当の見直しによって、地方で働く多くの公務労働者の賃金が切り下げられる。公務員の手取りが減少し、地域経済の低迷、地域間格差の拡大は避けられない。不利益変更をやめ、あらためて政策的な賃上げを求める。
○ 非常勤職員の劣悪な処遇と不安定雇用を放置してきた、使用者の責任は逃れることはできない。ただちに同一労働同一賃金の実現、不当な雇止めの撤廃、さらには無期雇用化や正規化を実現せよ。とりわけ、職場からの要求の強い病気休暇の有給化や年休の採用時からの付与を求める。
○ 定年延長にともない、賃金水準が7割に引き下げられるが、年齢を理由として処遇を切り下げることは、職務給原則を揺るがすものだ。教育など子どもに関わる生活費がかさむ中高年世代の賃金水準を下げるな。
○ 先月8月に「過労死防止大綱」の変更が閣議決定されたが、過労死ラインを超えて働かされるケースが後を絶たない。長時間労働解消の政策をすすめているが、増員がなければ根本的な解決にはならない。あらためて、来年度予算案の決定にむけて大幅な増員を図るよう強く求める。
「勧告尊重」ではなく使用者責任の発揮を
これに対して内閣人事局側は、「繰り返しの回答となるが、国家公務員の給与改定に当たっては、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢だ」「非常勤職員の給与は、人事院の指針にもとづいて、適正な給与の支給が行われている」などとのべ、増員については、「定員の再配置を推進し、内閣の重要政策に適切に対応できる体制の構築を図っていく」と、大幅増員の切実な要求には正面から答えませんでした。
最後に桜井議長は、「人事院勧告を尊重するとしても、最終的に決めるのは使用者である政府だ。人事院を横で眺めているのではなく、現場の状況等を踏まえたうえで、どういった労働条件、公務職場を築いていくかを積極的に発信して決めることが求められている」とのべ、最終回答にむけてさらに検討を深めるよう求めて、交渉を終えました。
以 上