公務労組連絡会は7月19日、「2024年夏季重点要求書」の実現を求めて人事院との中間回答交渉を行いました。
交渉には、公務労組連絡会から桜井議長を先頭に、宮下副議長、香月事務局長以下幹事会8名が参加、人事院は上村職員福祉課長補佐、橋本給与第一課長補佐ほかが対応しました。
交渉にあたって桜井議長は、「人事院勧告が、労働基本権制約の『代償措置』としての役割を果たしているのかどうか、そのことが国内だけでなく国際的にも厳しく問われている」とのべ、現時点における中間的な回答を求めました。
これに対して人事院側は、以下の中間的な回答を示しました。
【人事院中間回答】
1.勧告等について
(1) 勧告作業について
今年の職種別民間給与実態調査は、4月22日から6月14日までの期間で実施したところであり、現在集計中である。
本年も労働基本権制約の代償機関として、人事院としての責務を着実に果たすよう、国家公務員の給与と民間企業の給与の精緻な調査に基づき、その精確な比較を行い、必要な勧告、報告を行いたいと考えている。
(2) 賃金の改善について
月例給与・一時金については、現在、民調結果を集計中であり、今の段階では何とも申し上げられない状況である。
本年においても民調の結果に基づき、適切に対処したいと考えている。
(3) 諸手当について
諸手当については、民間の状況、公務の実態等を踏まえ、職員団体の御意見もお聴きしながら、必要となる検討を行っていくこととしたい。
なお、寒冷地手当については、令和4年4月に気象庁が公表した「メッシュ平年値2020」の内容等について分析を進めるとともに、本年の職種別民間給与実態調査において、民間における同種の手当の支給状況を調査しているところであり、これらの結果を踏まえ、本年、見直しの勧告を行うことを予定している。
特地勤務手当等については、国勢調査や全国道路・街路交通情勢調査の最新の調査結果等の分析を進め、必要な検討を行ってまいりたい。
2.「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」について
社会と公務の変化に応じた給与制度の整備については、まずは、現下の人事管理上の重点課題に対応するため、(1)人材の確保への対応、(2)組織パフォーマンスの向上、(3)働き方やライフスタイルの多様化への対応のために必要な制度整備に取り組むこととしている。
地方機関への配属も多い一般職試験(大卒・高卒)の初任給水準については、地域手当非支給地における民間並みの水準を確保するとしている。具体的な水準については、本年の「職種別民間給与実態調査」の結果を踏まえながら検討してまいりたい。
勤勉手当については、職員の能力・実績をより給与に反映する措置内容の一つとして、特に高い業績を挙げた者に、より高水準の勤勉手当を支給することを可能とするため、「特に優秀」区分の成績率の上限引上げを検討している。職員の能力・実績に基づく給与という観点から、職員の勤務実績が人事評価により的確に反映されることが重要であると認識している。
通勤手当については、新幹線通勤による通勤手当額を見直し、広域的な異動の円滑化を図ることとしている。通勤手当は、職員の通勤に要する経費を補助することを目的とするものではあるものの、官民比較の対象外給与であり、特に遠距離の通勤者に対し、より高額の手当を支給することについては、民間企業における通勤手当の支給状況を踏まえ、各方面の理解を得ながら合理性や納得性のある内容となるよう必要な検討を進める必要がある。具体的な見直しの内容については、民間企業における通勤手当の支給状況も踏まえて必要な検討を進めていきたい。
新幹線通勤に係る通勤手当や単身赴任手当の適用範囲については、「採用」の場合にも拡大し、より人材確保に資する方向で検討を行っている。なお、在職者の取扱いについては、引き続き検討を行っていくこととしている。
地域手当については、最新の民間賃金の反映と併せ、現在、市町村を単位としている級地区分の設定について、広域化するなど大くくりな調整方法に見直す方向で検討を進めている。
扶養手当については、共働きの増加等を受けて、近年、公務において配偶者に係る扶養手当を受給する職員の割合、民間において配偶者に対し家族手当を支給する事業所の割合がいずれも減少傾向にあることを踏まえ、配偶者等に係る手当を見直す一方、子に係る手当を増額することとしている。その具体化に当たっては、本年の「職種別民間給与実態調査」及び「国家公務員給与等実態調査」の結果を踏まえて検討することとしている。
再任用職員の手当については、再任用職員の多様な人事配置を可能とし、その活躍を支援するため、再任用職員に支給される手当の範囲の拡大について検討を行っているところである。その具体化に向けては、各府省における人事管理の状況等を踏まえつつ検討を行ってまいりたい。
社会と公務の変化に応じた給与制度の整備の措置内容について多くのご要望をいただいているところであるが、措置内容の具体化に向けては、関係者の意見を伺いながら検討を進めているところであり、引き続き職員団体のご意見を伺ってまいりたい。
3.非常勤職員制度等について
(1) 非常勤職員の給与について
非常勤職員の給与については、非常勤職員の給与に関する指針において、基本となる給与については、非常勤職員の職務と類似する職務に従事する常勤職員の属する職務の級の初号俸の俸給月額を基礎として、職務内容及び職務経験等を考慮して決定することとしている。
また、指針においては、給与法等の改正により常勤職員の給与が改定された場合には、非常勤職員の給与についても、常勤職員に準じて改定するよう努めることとしている。
指針に基づく各府省の取組状況等については、定期的にフォローアップを行っているほか、機会を捉えて各府省から状況を聴取し、必要な指導を行ってきている。今後とも、各府省において指針の内容に沿った適切な処遇が図られるよう取り組んでまいりたい。
(2) 非常勤職員の休暇等について
非常勤職員の休暇制度等については、業務の必要に応じて、その都度任期や勤務時間が設定されて任用されるという非常勤職員の性格を考慮しつつ、民間の状況等を考慮し、必要な措置を行っているところであり、今後も必要に応じて検討を行ってまいりたい。なお、近年の措置を挙げれば、結婚休暇の新設及び忌引休暇の対象職員の要件の削除(平成31年1月施行)、夏季休暇の新設(令和2年1月施行)、出生サポート休暇、配偶者出産休暇及び育児参加のための休暇の新設並びに産前休暇・産後休暇の有給化(令和4年1月施行)などがある。
今後も、引き続き民間の状況等について注視し、必要に応じて検討を行ってまいりたい。
(3) 非常勤職員制度の適切な運用の在り方について
令和5年の勧告時報告において記載した「非常勤職員制度の運用の在り方の検討」については、各府省の実態等を把握しつつ検討を行い、今回、公募要件の在り方の見直しを行ったところ。今後とも職員団体の意見も聴きながら、適切に対処してまいりたい。
4.高齢期雇用について
(1) 定年延長に伴う給与制度の見直しについて
定年の段階的引上げについては、昨年4月から施行されたところ。人事院としては、定年の段階的引上げに係る各種制度が円滑に運用されるよう、引き続き制度の周知や理解促進を図るとともに運用状況の把握に努め、必要に応じて適切に対処してまいりたい。
なお、人事院としては、60歳前の給与カーブも含めた給与カーブの在り方について、令和6年の勧告以降も見据え、社会と公務の変化に応じた給与制度の整備の一環として、昨年度から段階的に定年が引き上げられる中での公務における人事管理の在り方の変化や、民間における高齢期雇用や高齢層従業員の給与水準の状況を注視しつつ、職員の役割・貢献に応じた処遇の観点から人事管理に係る他の制度と一体で、職員団体の意見も聴きながら引き続き検討を行ってまいりたい。
(2) 高齢層職員の勤務条件等の整備について
人事院では、令和4年度以降、勤務時間調査・指導室が超過勤務時間の適正な管理について指導を行うなど、高齢層職員を含めて超過勤務の縮減に取り組んできている。
また、定年前再任用短時間勤務職員及び暫定再任用短時間勤務職員は希望に応じて短時間勤務を行うことが可能であり、短時間勤務職員に超過勤務を命ずる場合には、正規の勤務時間がフルタイム勤務職員より短く定められている趣旨に十分留意しなければならないとされている。交替制勤務についても、短時間勤務職員であれば、フルタイム勤務の場合と比べて正規の勤務時間が短い分、業務負荷は軽減されることになる。
いずれにしても、職員の勤務時間、休暇については、従来より情勢適応原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、官民均衡の観点から必要があれば適宜見直しを行ってきたところであり、高齢層職員に係る民間の動向を注視し必要な検討を行ってまいりたい。
(3) 再任用制度について
先ほど「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」のところで述べたとおり、再任用職員の手当については、再任用職員の多様な人事配置を可能とし、その活躍を支援するため、再任用職員に支給される手当の範囲の拡大について検討を行っているところであり、各府省における人事管理の状況等を踏まえつつ、職員団体の意見を聴きながら、検討を行ってまいりたい。
また、原則定年年齢を60歳から65歳に段階的に引き上げる改正国家公務員法が令和5年4月1日から施行されており、令和13年度以降の定年年齢は原則65歳となるが、定年の段階的な引上げ期間中の暫定再任用制度においても、できるだけ職員の希望が叶い活躍していただけるよう、人事院としても、引き続き状況の把握に努め、必要な取組を進めてまいりたい。
なお、再任用職員の年次休暇については、再任用は、一旦、退職した職員を新たに職員として採用するものであるため、新たに付与するものとなっている。
5.労働時間、休暇制度等について
(1) 労働時間の短縮等について
人事院は、各府省における勤務時間の客観的把握を開始している部局においては、これに基づき、適正に超過勤務時間を管理することを職員福祉局長通知で求めている。また、勤務時間調査・指導室において、勤務時間の管理等に関する調査を令和4年度から実施しており、客観的に記録された在庁時間を基礎とした超過勤務時間の適正な管理について指導を行っている。令和6年度以降、調査対象を増加させるなど、勤務時間の管理等に関する調査・指導を更に充実させていくこととしている。
各府省においては、人事院規則に定める上限を超えて超過勤務を命じた場合には、その要因の整理、分析及び検証を行わなければならないとしており、その結果を活用して超過勤務の更なる縮減に向けて取り組んでいる。人事院としても、各府省の令和4年度の整理、分析及び検証の状況について報告を受け、それも踏まえて、各府省における超過勤務制度の運用状況を聴取する機会を通じて、超過勤務の縮減に向けた取組について御協力をお願いしている。また、他律部署・特例業務については、それらの範囲が必要最小限のものとなるよう指導している。
今後も引き続き、上限を超えて超過勤務を命じた場合における各府省による要因の整理、分析及び検証の状況を把握するとともに、制度の適正な運用に向け、勤務時間調査・指導室を通じて、各府省への指導・支援を行ってまいりたい。
(2) 勤務間のインターバル確保について
各省各庁の長の勤務間のインターバル確保に努める責務を法令上明確にするため、本年4月より、人事院規則に努力義務規定を導入した。
また、併せて発出した職員福祉局長通知において、各府省に対し、勤務間のインターバルを確保するためには、長時間の超過勤務を減らしていくことが重要であり、超過勤務命令の上限等に関する制度について人事院規則等に沿った適切な運用を行うことが有効であることや、勤務間のインターバルの目安となる時間、具体的な取組の例を示しているほか、日々確保することが困難である場合であっても、職員が睡眠時間を含む生活時間を少しでも長く確保できるよう努めること等を求めている。
現在、国家公務員の勤務間のインターバル確保状況の実態や課題を把握するための調査・研究事業を実施しており、この結果も踏まえつつ、各職場で勤務間のインターバル確保が図られるよう引き続き取り組んでまいりたい。
(3) 両立支援制度を含む休暇制度等の改善について
両立支援制度を含む職員の休暇、休業等については、従来より情勢適応の原則の下、民間における普及状況に合わせることを基本に、適宜見直しを行ってきたところである。
両立支援制度については、本年5月に成立した「民間育児・介護休業法等の一部を改正する法律」において、「子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充」や「介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等」の内容が含まれており、人事院としては、同法の内容も踏まえて、国家公務員の両立支援制度の見直しについて検討を行ってまいりたい。
(4) 男女平等・共同参画の推進について
性別による差別については、国家公務員法に定める平等取扱いの原則(第27条)により禁止されているほか、人事院規則8―12においてもその旨明らかにしているところ。また、平等取扱の原則に違反して差別をした者については罰則(第109条第8号)が設けられているところである。
人事院としては、公務における女性の活躍推進を人事行政における重要な課題の一つと認識しており、女性職員の登用拡大に向け、管理職等へのアプローチや女性職員へのアプローチを通じて、女性職員が働きやすい勤務環境の整備等に努めるとともに、女性の採用拡大に向け、各種説明会等を通じた人材確保・啓発活動に努めているところである。
(5) 性的マイノリティ職員への対応等について
人事院は、人事院規則10-10(セクシュアル・ハラスメントの防止等)により、職員はセクシュアル・ハラスメントをしてはならないとしているところ、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関しては、同規則運用通知において、偏見に基づく言動について、セクシュアル・ハラスメントに含まれることを制度上明確にしており、令和2年4月には、「性的指向・性自認を本人の承諾なしに第三者に漏らしたりすること」(いわゆるアウティング)をセクシュアル・ハラスメントになり得る言動として例示するなどの施策を講じている。また、研修等により各府省への周知・啓発を行ってきている。
今後も、「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」(LGBT理解増進法)に基づく基本計画や指針等の策定に向けた政府全体での検討を踏まえながら、人事院としての役割を適切に果たしてまいりたい。
また、国家公務員の手当制度及び休暇制度においては、従前から、民法における婚姻の取扱いや、税制・社会保障等の他の法律における取扱いも踏まえ、同性パートナーを制度の対象とはしていないところである。
今後の取扱いについては、民法における婚姻の取扱いや、同性のパートナーが配偶者に含まれないものとして取り扱っている他の法令における状況を踏まえながら適切に検討してまいりたい。
6.健康確保等について
(1) 心の健康づくり対策について
心の健康づくり対策については、「職員の心の健康づくりのための指針」を基本として、管理監督者をはじめとする職員に対する研修の充実・強化、職員の意識啓発のためのガイドブックの作成、心の不調を未然に防止するためのストレスチェックの導入、心の不調への早期対応のための「こころの健康相談室」の運営、円滑な職場復帰の促進、再発防止のための「こころの健康にかかる職場復帰相談室」の運営や「試し出勤」の活用に取り組んでいる。
なお、「こころの健康相談室」については、より相談しやすい環境の整備に資するため、オンラインによる相談を令和4年度から一部の窓口で開始し、令和5年7月には、全ての窓口でオンライン相談に対応できる体制としている。引き続き、オンライン相談の活用を周知するなど、取組を一層推進してまいりたい。
(2) ハラスメントの防止について
人事院は、ハラスメント防止等の措置を講じるための人事院規則等に基づき、これまで、研修教材の作成・提供や、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーの開催など、各府省に対する支援を行ってきている。
また、令和5年度から「幹部・管理職員ハラスメント防止研修」について、組織マネジメントの観点も反映したより実効性のあるものとなるよう見直して実施するほか、ハラスメント相談員向けの専門家の相談窓口の設置の試行等の取組を行っている。
今後も、各府省のハラスメント相談員を対象としたセミナーの開催、研修用教材の改訂等を外部の専門家と連携しつつ行うなど、各府省においてハラスメント防止対策が適切に実施されるよう、必要な支援・指導を行ってまいりたい。また、人事院の苦情相談体制については、例年、高度な知識と豊かな経験を有するカウンセリングの専門家から助言を受け、業務の適切な遂行に取り組んでいるところ。今後も、苦情相談体制強化について努めてまいりたい。
この中間回答に対して、公務労組連絡会側は以下のような点を中心に人事院を追及しました。
○ 初任給をはじめ中高年層も含めてすべての世代で賃金引き上げが必要だ。24年度の国家公務員採用試験の一般職の申込状況は、23年度から7.9%も減少している。職場では、若年層の離職者の増加しており、就職先として公務が選ばれない実態が広がっている。魅力のある給与体系とその水準を確保する必要があり、全世代、すべての公務労働者の大幅賃上げをあらためて求める。
〇 「給与制度のアップデート」(社会と公務の変化に応じた給与制度の整備)については、現時点でも具体的な内容が示されず、実効ある労使協議が行われていない。勤務条件がどのように改定されるのか、職場では漠然とした不安が蔓延している。一方的な労働条件の変更は認められない。最終回答までに、「給与制度のアップデート」の検討状況を示し、労使協議を求める。
○ 非常勤職員の「3年公募制」について人事院が改善をはかったことは、長年にわたる公務労組連絡会の要求と運動の反映と受けとめるが、一方で、制度が恣意的に運用されることへの不安も残されている。各府省を適切に指導するなど、必要な措置を講じることを求める。
○ 同一労働同一賃金にむけた非常勤職員の賃上げとともに、休暇制度などの改善を求める。特に病気休暇などの有給化は切実だ。現場の非正規公務員からは強い要求として出されており、病気休暇等の有給化をあらためて求める。
○ 人事院総裁はNHK番組で、「政府として国家公務員の定員問題を考える時期に来ているかもしれない」と定員管理のあり方を検討する必要性に言及した。公務・公共サービスを提供するためにも、すべての労働者が安心して働くことができるように、大幅な増員による体制確保にむけて人事院としても尽力せよ。
最後に桜井議長は、「勧告を間近に控えて全般的な中間回答が示されたが、内容は公務労組連絡会の要求からすれば不満なものだ。特に『給与制度のアップデート』にかかわっては、本日時点でも具体的な検討状況が示されなかった。勧告にむけて実効ある労使協調をかさねて求める」とのべて交渉を終えました。