賃上げと増員で公務職場の魅力を取り戻せ

= 夏季重点要求をめぐって内閣人事局と中間交渉 =

 公務労組連絡会は7月19日、「2024年夏季重点要求書」の実現を求めて、内閣人事局と中間回答交渉を行いました。
 交渉には、桜井議長を先頭に、宮下副議長、香月事務局長以下幹事会8名が参加、内閣人事局は駒崎総括参事官補佐ほかが対応しました。

あれこれ理屈をつけて常勤化を拒む政府

政府交渉

 交渉にあたって桜井議長は、「円安・物価高が国民の生活を圧迫している。公務労働者も例外ではない、そのうえ、公務員試験の応募者が減少傾向、若年層の退職も増加している。公務職場の魅力を取り戻すためにも、処遇と職場環境改善は急務だ」とのべ、切実な要求に応えるよう強く求めました。

 これに対して、駒﨑総括参事官補佐は、「先月17日に提出された要求書について、現時点における回答をさせていただく」として、以下の中間的な回答を示しました。

1、賃金の改善等」に関し、国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の適正な処遇の確保や、国民の理解を得る観点からも、また、労働基本権制約の代償措置といった観点からも、第三者機関としての人事院が専門的見地から行った官民比較に基づく人事院勧告を尊重することが政府としての基本姿勢である。今後も、国の財政状況、経済社会情勢などを踏まえて対応していく。

2、非常勤職員の雇用の安定・処遇改善」に関し、非常勤職員の常勤化・定員化については、国家公務員の場合、
 ・非常勤職員の官職は、常勤の官職とは、業務の性質や職務の内容が異なるものであること
 ・また、非常勤職員を常勤職員の官職に任用するためには、国家公務員法に基づき、採用試験などにより、常勤職員としての能力の実証を行う必要があること
 から、困難であると考えている。

 無期転換制度については、民間の有期雇用労働者のように、通算5年を超えて雇用される非常勤職員について無期転換をするということは、実質的に見れば、その者を常勤化することと同じである。しかしながら、国家公務員の場合、常勤職員として採用するには、国家公務員法に基づき、採用試験などによって、常勤職員としての能力の実証を行う必要があることから、困難であることを御理解いただきたい。

 なお、非常勤職員についても、公開・平等の採用試験など常勤職員としての能力の実証を行う手続に応募する機会は広く与えられており、こうした手続を経て常勤職員として採用されることはあり得るものと考えている。

 また、昨年の人事院の「公務員人事管理に関する報告」において、表明された「非常勤職員制度の適切な運用の在り方等についての検討」に関係して、先月、いわゆる「3年公募要件」の見直しに係る通知が人事院から各府省に対して発出されたものと承知している。内閣人事局としては、制度の円滑な運用に向け、引き続き適切に対応してまいりたい。

 非常勤職員の処遇改善に係る取組として、まず、給与については、人事院において、常勤職員との均衡をより一層確保することを目的として、昨年4月に非常勤職員の給与に関する指針を改正し、給与法等の改正により常勤職員の給与が改定された場合には、非常勤職員の給与についても、常勤職員に準じて改定するよう努める旨を追加し、この指針に沿った適切な給与支給が行われるよう、各府省を指導していくものと承知している。

 なお、給与の遡及改定については、昨年11月に人事院と内閣人事局から改めて周知を図ったところ。

 また、休暇・休業についても、これまでにも育児休業の取得回数の制限緩和や介護休暇の分割取得等を可能とする制度改正が行われるなど、着実に制度の整備を進めてきているところである。

 引き続き、人事院とも連携し、各府省に対して、非常勤職員に関する給与や休暇等の制度の適切な運用を促してまいりたい。

3、国の責任による公務・公共サービス、教育の拡充」に関し、定員管理については、国民のニーズを踏まえて、新たな行政需要に的確に対応していくためには、既存の業務を不断に見直し、定員の再配置を推進していくことが重要である。

 その上で、新たな行政課題や既存業務の増大に対応するため、各府省官房等から現場の実情を聴取しつつ必要な行政分野に必要な増員を行っているところ。

 引き続き、既存業務の見直しに積極的に取り組みながら、内閣の重要政策に適切に対応できる体制の構築を図ることとしている。

4、高齢期雇用・定年延長」について、シニア職員がその知識・経験を存分に発揮し、働き方改革等にもつながるよう、一昨年3月に策定した「国家公務員の定年引上げに向けた取組指針」を踏まえた取組を計画的かつ着実に進めてまいりたい。

 また、定年引上げ期間中においては、令和6年度から2年に1度、定年退職者が発生しないことによる新規採用への影響を緩和するための措置を行うこととしており、令和6年度は、特例的な定員を1年間の期限付の定員として1,829人措置することとした。

5、民主的公務員制度と労働基本権の確立」に関して、自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、皆様と誠実に意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたいと考えている。

6、労働時間短縮、休暇制度など働くルールの確立」に関し、超過勤務の縮減のため、各府省等は、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づき、ルーティン業務の廃止・効率化・デジタル化、マネジメント改革推進のための取組等を進めている。今後とも、勤務時間などの基準を定めている人事院と連携して超過勤務の縮減に取り組んでまいりたい。

 障害者雇用については、人事院が策定した合理的配慮に関する指針等を踏まえ、「公務部門における障害者雇用マニュアル」を1月に改訂するなど、環境の整備に取り組んでいるところ。

 また、多様性の確保については、平成28年以降、各府省等の人事担当者・ハラスメント担当者を含む全職員を対象とした勉強会等を開催し、国家公務員の性的指向・ジェンダーアイデンティティの多様性に関する理解の促進やハラスメントの防止を一層積極的に推進しているところ。

 今後も全ての職員が働きづらさや不安を感じることなく、安心して働き続けることができる職場にしていくよう取り組んでまいりたい。

7、健康・安全確保、両立支援制度拡充等」の健康・安全確保に関し、内閣人事局としては、各府省の取組を補完するため、メンタルヘルス及びハラスメント防止講習を提供しているところ。

 また、「国家公務員健康増進等基本計画」では、各府省における相談窓口の実施状況や利便性等をフォローアップすることとしており、この結果を踏まえ、各府省の取組を支援してまいりたい。

 育児休業については、国家公務員の育児休業等に関する法律や人事院規則の改正により、一昨年10月から育児休業・育児参加のための休暇が取得しやすくなったことを踏まえ、内閣人事局としても、人事院と連携し、引き続き、各府省に対して休暇・休業制度及び育児時間・育児短時間勤務制度の適切な運用を促してまいりたい。

 また、新型コロナウイルス感染症への対応については、感染症法上の位置付けが新型インフルエンザ等感染症から5類感染症に変更され、「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」が廃止されたことを受け、基本的感染対策や各府省等で実施しているその他対策については、個人又は各府省等の判断にて行うこと、感染対策の見直しに当たっては、感染対策上の必要性に加え、経済的・社会的合理性や、持続可能性の観点も考慮すること、職員が新型コロナウイルス感染症に感染した場合の対応等について、周知を依頼したところ。引き続き、人事院等関係機関と連携しながら、適切に対応してまいりたい。

労働基本権回復へ速やかに協議を開始せよ

 これに対して公務労組連絡会側は、職場実態をふまえつつ主に以下の点について追及しました。

〇 実質賃金が下がり続けているなか、国家公務員賃金が低水準なまま放置されていることを使用者として政府は直視すべきだ。全世代、すべての公務労働者の大幅賃上げを実施することを、あらためて求める。

○ 人事院が非常勤職員の「3年公募制」で改善をはかったことは、長年にわたる公務労組連絡会の要求の実現だが、各府省を適切に指導するなど、内閣人事局として必要な措置を講じるよう求める。多くの非常勤職員は、定員削減による恒常的な業務を肩代わりしており、非常勤職員の無期雇用化を求める。

○ 長時間過密労働によって心身を害したり、ハラスメントの温床になるなど、その背景には慢性的な要員不足がある。川本裕子人事院総裁は、「政府として国家公務員の定員問題を考える時期に来ている」と発言しているように、定員管理政策を抜本的に見直せ。

〇 今年6月のILO総会では、結社の自由・団結権保護で日本案件が議論された。日本政府は「人事院勧告制度は労働基本権制約の代償措置として十分に機能している」などと強弁したが、さまざまな問題がILOから勧告されながらも放置されてきた。労働基本権の確立にむけて、具体的な協議の場を設けることを求める。

 最後に桜井議長は、「日本政府の基本権問題に対する主張は、国際社会から失笑をかっている。基本権回復にむけた具体的な議論を速やかに開始せよ。その他の要求をふくめて、最終交渉では誠意ある回答を求める」とのべ、中間交渉を終えました。

以 上