高物価のなか賃金改善は使用者の責任

= 人勧取り扱いめぐって内閣人事局交渉 =

 公務労組連絡会は9月14日、今年度の人事院勧告の取り扱いをめぐって、内閣人事局と交渉しました。交渉には、公務労組連絡会の桜井議長を先頭に、宮下副議長、香月事務局長以下幹事会7名が出席、内閣人事局は森田悠介総括参事官補佐ほかが対応しました。

フレックス制の更なる柔軟化を検討

政府交渉

 交渉の冒頭、桜井議長は、「8月の人事院勧告直後に要求書を提出してから約1か月が経つ。勧告の取り扱いについて検討が進められていると承知するが、公務労組連絡会の要求書に対して現在の検討状況を示していただきたい」とのべ、回答を求めました。

<内閣人事局中間回答>

1.賃金等の改善について
 本年の給与の取扱いについては、去る8月7日に人事院から国家公務員の給与についての報告及び勧告があったことを受け、同日、第1回の給与関係閣僚会議が持ち回りで開催された。

 同会議においては、人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢に立って、国政全般の観点から給与関係閣僚会議において検討を進め、早急に結論を出す必要がある旨、確認されたところである。
 今後、適切な時期に改めて給与関係閣僚会議が開催されることとなっている。

 また、フレックス制の更なる柔軟化ついても、併せて検討を進めているところである。

2.非常勤職員の処遇改善について
 非常勤職員の処遇改善に関して、まず、給与については、人事院の指針及び平成29年5月の各府省間での申合せに沿って適切な処遇を進めてまいる。
 また、休暇・休業については、これまでにも育児休業の取得回数の制限緩和や介護休暇の分割取得等を可能とする制度改正が行われるなど、着実に制度の整備を進めてきているところである。
 引き続き、人事院とも連携し、各府省に対して、非常勤職員に関する給与や休暇等の制度の適切な運用を促してまいりたい。

3.60歳を超える職員の賃金について
 60歳を超える職員の給与に関しては、令和5年8月の人事院勧告時の報告において、令和6年以降も見据え、65歳定年の完成を視野に入れた60歳前・60歳超の各職員層の給与水準(給与カーブ)の在り方については、本年度から段階的に定年が引き上げられる中での公務における人事管理の在り方の変化や、民間における高齢期雇用や高齢層従業員の給与水準の状況を注視しつつ、職員の役割・貢献に応じた処遇の確保の観点から、人事管理に係る他の制度と一体で引き続き検討を行っていくこととされている。
 政府としても、人事院における所要の検討の内容を踏まえ、適切に対応してまいりたい。

4.再任用職員の賃金等の改善について
 再任用職員の給与水準や諸手当の措置については、今後の職務・働き方の実情や民間の給与実態等を踏まえて検討を行うべきものと考える。政府としては平成25年3月の閣議決定で人事院に対して給与制度上の措置についての検討を要請したところ。

 再任用職員の給与については、平成29年8月の人事院勧告時の報告において、民間企業の再雇用者の給与の動向、各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえつつ、引き続き、その在り方について必要な検討を行っていくこととされている。政府としても人事院における所要の検討を踏まえ、適切に対応してまいりたい。

5.客観的な勤務時間管理の徹底について
 勤務時間の状況の客観的把握については、本府省で開始している業務端末の使用時間の記録等の利用を進めているところであり、地方支分部局等でも業務に応じた勤務形態の多様性に配慮しつつ、最も効果的な客観把握を計画的に導入することとしている。

 併せて、フレックスタイム制の活用など柔軟な働き方が広がる中で、適正な勤務時間管理を徹底するためには、人事当局や各職場における職員の勤務時間の把握や管理が正確かつ簡便にできるようにすることが必要であり、勤務時間管理のシステム化を推進してまいりたい。

6.両立支援策の充実について
 両立支援のための、休暇・休業制度及び育児時間・育児短時間勤務制度などの勤務条件に関する内容については、まずは人事院において検討されるものである。

 その上で、育児休業については、国家公務員の育児休業等に関する法律や人事院規則の改正により、昨年10月から育児休業・育児参加のための休暇が取得しやすくなったことを踏まえ、内閣人事局としても、人事院と連携し、引き続き、各府省に対して休暇・休業制度及び育児時間・育児短時間勤務制度の適切な運用を促してまいりたい。

7.労働基本権について
 国家公務員の労働基本権に関して、自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、皆様と誠実に意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたいと考えている。

非常勤職員の安定した雇用への転換を

 これに対して公務労組連絡会側は、「われわれが提出した要求に対し不十分なものであり、不満な内容だ」とのべたうえ、主に以下の点を追及しました。

○ 人事院勧告は、900万人を超える労働者に影響するといわれている。賃金改善は岸田政権においても最重要課題の一つにあげられており、政府をあげた特別な対策が求められている。政府が従来通りの「勧告尊重」にとどまるのではなく、経済対策としての側面からも積極的な賃金改善を求める。

○ 臨時・非常勤職員は、職場で欠かすことの出来ない存在だ。その労苦に報いるためにも、労働条件の引き上げが必要であり、均等待遇に向けたさらなる処遇改善が必要だ。最大の要求は雇用の安定だ。人事院も非常勤職員の実態を調査し、制度の見直しを図ると言及している。安定した雇用への転換を図るよう強く求める。

○ 再任用者の処遇改善を求める。人事院の民間実態調査(民調)では、60歳以降の賃金水準は7割以上であることに比べ、再任用者の給与水準は低すぎる。格付けを引き上げるなど、各省庁に対し強く指導するなどただちに改善を求める。

○ 長時間労働解消にむけて、何よりも客観的な勤務時間管理が徹底されるよう求める。そもそも残業しなくてもこなせる仕事量でなければならないはずです。政府・人事院は業務の見直しを求めるが、職場はそうした見直しを検討する余裕さえない。増員なしに根本的な解決はない。改めて大幅な増員を強く求める。

従来の枠を一歩も出ない不満な回答

 これに対して内閣人事局側は、「国家公務員の給与改定に当たっては、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢だ」とのべ、非常勤職員の処遇改善は、「各府省において適正な給与の支給が行われている。特別給についても着実に支給されるなど、着実に処遇改善が図られている」とこれまで通りの回答を繰り返しました。

 最後に桜井議長は、「本日は中間的な回答として聞いた。公務労組連絡会の要求について真摯な検討を行い、使用者責任をふまえた回答を示すよう求める」とのべ、交渉を終えました。

以 上