桜井議長は、「国家公務員の一般職採用試験の申込者が、過去最少になり、若年層の退職も増加している。公務職場の魅力を取り戻すためにも、使用者としての責任は重い。処遇改善と職場環境改善にむけて切実な要求に応えよ」とのべ、夏季重点要求の検討状況について質しました。
森田総括参事官は、「6月15日に提出された要求書について、現時点における回答を行う」とのべ、以下の中間回答を示しました。
「1、賃金の改善等」に関して、国家公務員の給与改定に当たっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。
給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えている。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。
「2、非常勤職員の雇用の安定・処遇改善」に関して、給与については、人事院の指針及び平成29年5月の各府省間での申合せに沿って適切な処遇を進めてまいる。昨年11月の給与法改正の公布に際しては、改めて同申合せの趣旨について周知を図るとともに、基本となる給与の遡及改定を行うなど、改定時期についても引き続き改善に努めるよう、各府省に求めたところであり、今年3月には、更なる改善を図るため、常勤職員の給与改定に係る取扱いに準じて改定することを基本とするよう、同申合せの改正を行った。
また、休暇・休業についても、これまでにも育児休業の取得回数の制限緩和や介護休暇の分割取得等を可能とする制度改正が行われるなど、着実に制度の整備を進めてきているところである。
「3、国の責任による公務・公共サービス拡充」に関して、障害者雇用については、「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」に基づき、障害のある職員が意欲と能力を発揮し、活躍できる環境の整備に取り組んできたところ。
引き続き、関係機関と連携しながら、各府省において障害者雇用が適切に進むよう、取り組んでまいりたい。
「4、高齢期雇用・定年延長」に関して、シニア職員がその知識・経験を存分に発揮し、働き方改革等にもつながるよう、昨年3月に策定した「国家公務員の定年引上げに向けた取組指針」を踏まえた取組を計画的かつ着実に進めてまいりたい。
なお、60歳を超える職員の給与に関しては、60歳前後の給与水準が連続的なものとなるよう、人事院において公布後速やかに行われる昇任・昇格の基準、昇給の基準、俸給表などについての検討の状況を踏まえ、定年引上げの完成までに所要の措置を順次講ずるものとしている。
「5、民主的公務員制度と労働基本権の確立」に関し、自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、皆様と誠実に意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたいと考えている。
「6、労働時間短縮、休暇制度など働くルールの確立」に関し、長時間労働の是正と職員のやりがい向上のため、各府省は、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づき、取組を行っているところである。
具体的には、ルーティン業務の廃止・効率化・デジタル化やテレワークで完結できる業務フローを構築するほか、適正な勤務時間管理の徹底のため、本府省で開始している業務端末の使用時間の記録等を利用した勤務時間の状況の客観的把握を着実に実施し、地方支分部局等でも業務に応じた勤務形態の多様性に配慮しつつ、最も効果的な客観把握を計画的に導入することとしている。
また、令和5年度の超過勤務手当予算について、各府省の勤務実態に鑑みて必要十分な額が措置されたものと承知しているが、予算があるからと超過勤務をさせてよいということではなく、既存業務の廃止・効率化をはじめとした働き方改革をしっかりと進めてまいりたい。
なお、人手が足りないという部署については、業務の見直しを行った上で、なお不足する定員や、業務見直し・効率化やマネジメント改革を行うための定員を措置することとしている。
「7、健康・安全確保、両立支援制度拡充等」については、「国家公務員健康増進等基本計画」等に基づき、取組を着実に進めているところ。引き続き、各府省における基本計画の実施状況を把握し、必要な措置が講じられるよう取り組んでまいりたい。
また、新型コロナウイルス感染症への対応については、感染症法上の位置付けが新型インフルエンザ等感染症から5類感染症に変更され、「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」が廃止されたことを受け、基本的感染対策や各府省等で実施しているその他対策については、個人又は各府省等の判断にて行うこと、感染対策の見直しに当たっては、感染対策上の必要性に加え、経済的・社会的合理性や、持続可能性の観点も考慮すること、職員が新型コロナウイルス感染症に感染した場合の対応等について、周知を依頼したところ。引き続き、人事院等関係機関と連携しながら、適切に対応してまいりたい。
これに対して公務労組連絡会側は、主に以下の点について追及しました。
○ 従来の枠を一歩も出ない「人事院勧告を尊重」との回答は不満だ。民間賃金の改善、ひいては日本経済の再生という観点でも、使用者として、政策的な公務員の賃上げの必要性を強く訴える。
○ 非常勤職員の雇用の安定にむけ、公募の廃止を強く求める。多くの非常勤職員の業務は、臨時・一時的ではなく、継続的で恒常的な業務だ。少なくとも公募要件の撤廃は早急に行うよう求める。
○ 今年度より定年年齢が段階的に引き上げられるなか、現行の再任用制度が暫定措置として存置される。再任用者の処遇改善は待ったなしの課題だ。常勤職員との不合理な格差の解消、定年延長開始による職場混乱や不利益が生じないように、使用者としての責任を果たせ。
○ 長時間労働の是正には増員が必要だ。総定員法の廃止、計画的定員削減の中止を求める。来年夏に新たな定員「合理化」目標が設定されようとしているが、公共の役割の強化が求められている情勢のなかで、実情に合わない「合理化」目標の策定をやめよ。
内閣人事局側は、「人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている」と繰り返すなど、誠意のある回答はありませんでした。また、増員要求に対しては、「厳しい財政状況の中、新たな行政需要に的確に対応していく」として、これまで通りに「定員の再配置(=定員削減)」を実行する考えを示しました。
最後に桜井議長は、「軍事費の倍増や『異次元の少子化対策』の財源確保のために、人件費が圧迫されるようなことは許されない。使用者としてしっかり対応するよう求める。職場の切実な要求について、真摯な検討のうえで最終的な回答を示すよう求める」とのべ、中間交渉を終えました。