使用者責任なく「人事院勧告の尊重」を繰り返す
= 勧告の取り扱いめぐって内閣人事局と中間交渉 =
公務労組連絡会は9月14日、政府・内閣人事局へ8月に提出した「公務員賃金等に関する要求書」にかかわる中間交渉を行いました。焦点となっている人事院勧告の取り扱いをめぐっては、内閣人事局からは明確な回答は示されませんでした。
交渉には、公務労組連絡会の桜井議長を先頭に、宮下副議長、秋山事務局長以下幹事会9名が参加、内閣人事局から森田悠介総括参事官補佐ほかが対応しました。
長時間労働解消にむけた増員要求には消極的
はじめに桜井議長は「要求書を提出してから1か月が過ぎた。政府としての検討状況を示すよう求める」とのべ回答を求めました。これに対して森田悠介総括参事官補佐は、「8月9日に提出された要求書について、本日までの検討状況を回答する」として、以下のようにのべました。
● 本年の給与の取扱いについては、去る8月8日に人事院から国家公務員の給与についての報告及び勧告があったことを受け、同日、第1回の給与関係閣僚会議が持ち回りで開催された。
同会議においては、労働基本権制約の代償措置の根幹を成す人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢に立って、国政全般の観点から給与関係閣僚会議において検討を進め、早急に結論を出す必要がある旨、確認されたところである。
今後、適切な時期に改めて給与関係閣僚会議が開催されることとなっている。
● 非常勤職員の処遇改善に関して、給与については、平成29年5月に行った各府省間での申合せに沿って取組を行った結果、特別給である期末手当・勤勉手当に相当する給与については、確実に支給がなされている。
また、休暇・休業についても、これまでに育児休業等の取得や介護休暇の分割取得等を可能とする制度改正が行われるなど、着実に制度の整備を進めてきており、非常勤職員も含む育児休業の取得回数の制限緩和についての改正法も、本年10月から施行されるところである。
この点、人事院においても、本年1月から出産や育児に関する非常勤職員の休暇を新設・有給化して、本年4月から育児休業、介護休暇等の取得要件が緩和され、「在職1年以上」との要件が廃止されたと承知している。
さらに、非常勤職員に退職手当法が適用される要件である、月の要勤務日数(18日)に関して、勤務すべき日数自体が少ない月については、本年10月から要件を一部緩和することとしたところ。
引き続き、人事院とも連携し、各府省に対して、非常勤職員に関する給与や休暇等の制度の適切な運用を促してまいりたい。
● 高齢期雇用に関して、定年の引上げに当たっては、皆様方の御意見も十分に伺いながら、制度を運用してまいりたい。
また、職員の年齢構成に偏りが生じることで、組織における新陳代謝の維持、知識・技術・経験等の継承・蓄積及び計画的な人事配置・人材育成が困難となることなどから、継続的な組織運営に支障が生じないよう、真に必要な規模の新規採用の計画的な継続という点も十分留意する必要があると考えている。
そこで、本年3月に策定した「国家公務員の定年引上げに向けた取組指針」に従い、今後、各府省等における、60歳以降において勤務する意思のある職員数等の規模や、行政サービス向上のためのシニア職員の職務内容や他の年齢層の職員との職務分担などの検討状況を踏まえて、令和6年度における定員・級別定数措置について検討していくこととしている。
なお、60歳を超える職員の給与に関しては、60歳前後の給与水準が連続的なものとなるよう、人事院において公布後速やかに行われる昇任・昇格の基準、昇給の基準、俸給表などについての検討の状況を踏まえ、定年引上げの完成前である令和13年3月31日までに所要の措置を順次講ずるものとしている。
● 長時間労働の是正等については、長時間労働の是正と職員のやりがい向上のため、各府省は、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」等に基づき、取組を行っているところである。
具体的には、ルーティン業務の廃止・効率化・デジタル化やテレワークで完結できる業務フローを構築するほか、適正な勤務時間管理の徹底のため、勤務時間の状況の客観的把握を着実に実施し、また、組織全体のマネジメント力を強化するため、全ての管理職にマネジメント研修の受講を義務付けるとともに、管理職のマネジメント評価を通じてマネジメント行動を徹底することとしている。
他方、各府省等において令和4年度の超過勤務手当予算について、必要十分な額が措置されたものと承知しているが、予算があるからと超過勤務をさせてよいということではなく、働き方改革をしっかりと進めてまいりたい。
加えて、人事院で開催されている勤務時間制度等の在り方に関する研究会において、長時間労働是正に資する方策が取りまとめられるよう、当該研究会のオブザーバーである内閣人事局としても協力してまいりたい。
なお、人手が足りないという部署については、業務の見直しを行った上で、なお不足する定員や、業務見直し・効率化やマネジメント改革を行うための定員を要求した上で、必要性を踏まえた措置がなされるものと考えている。
● 国家公務員の労働基本権に関して、自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、皆様と誠実に意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたいと考えている。
財界でさえも「民間準拠」の賃金決定方式に疑問
中間回答に対して公務労組連絡会側は、「われわれが提出した要求に対し不十分なものであり、不満な内容だ」とのべたうえ、主に以下の点を追及しました。
○ 地方経済の活性化をはじめ、個人消費を拡大するには、賃金の改善が不可欠だ。長年にわたる賃金水準の低下は、政府の経済政策が大きく影響している。経団連のシンクタンクは、公共部門の賃上げの効果は民間部門にも波及すると指摘している。政府が勧告尊重にとどまるのではなく、経済対策として積極的な賃金改善を行うよう求める。
○ 臨時・非常勤職員は、職場で欠かすことの出来ない人材であり、均等待遇に向けたさらなる処遇改善が必要だ。期末手当とともに勤勉手当も含め、正規職員と同様の働き方をしている非常勤職員に同等の支給とともに、非常勤職員の安定した雇用への転換を図るよう強く求める。
○ 長時間労働の解消にむけて、人手が足りない部署は、業務の見直しを行った上で増員を行うとの回答だが、長時間労働の根本的な解決にむけてはまず増員が必要だ。「過労死ライン」を超えて働かされるケースが後を絶たないもと、あらめて大幅な増員を強く求める。
非常勤職員は「着実に処遇改善が図られている」と強弁
これに対して内閣人事局側は、「国家公務員の給与改定に当たっては、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢だ」とするこれまでの立場を繰り返し、非常勤職員の処遇改善は、「各府省において適正な給与の支給が行われている。特別給についても着実に支給されるなど、着実に処遇改善が図られている」と強弁しました。
また、長時間労働の解消にむけて大幅な増員を求めたことに対しては、「既存業務の見直しに積極的に取り組みながら、定員の再配置を推進し、内閣の重要政策に適切に対応できる体制の構築を図っていく」とのべ、職場の切実な要求に使用者として向き合おうとする姿勢は見られませんでした。
最後に桜井議長は、「国民のいのちとくらしを守るため、昼夜を分かたず奮闘している公務労働者の労苦に応えるために、内閣人事局は使用者責任を果たすよう重ねて求める」とのべ、最終回答に向けて真摯な検討を求めて中間交渉を閉じました。
以 上