2023年人事院勧告にあたっての幹事会声明

2023年8月7日
公務労組連絡会幹事会

俸給表全体の改定も生活改善に及ばず
 人事院は本日、政府と国会に対して、国家公務員の給与に関する報告・勧告、職員の勤務時間の改定に関する勧告、公務員人事管理に関する報告をおこなった。給与に関する勧告は、本俸について官民較差が3,869円(0.96%)であることから、高卒初任給を12,000円、大卒初任給を11,000円引上げるとともに、その他の職員についても若年層に重点を置きつつ、そこから改定率を逓減する形で全体の俸給表の引上げ改定を行った。また、一時金では、期末・勤勉手当を双方0.05月引上げることを勧告した。

 昨年を上回る引上げ勧告であると同時に、俸給表は初任給・若年層だけでなく、再任用職員も含む全体の改善であること、一時金については期末手当の引上げを勧告するなど、私たちの切実な要求の反映といえる。これは、春闘期における「緊急勧告」要求と職場決議、12万筆を超える「賃金改善署名」など、官民共同による公務員賃金引上げを求めるたたかいの成果である。

 しかし、今回の俸給引上げ額は、天井知らずの物価高による生活悪化の改善には到底及ばない。改善されたとはいえ最低賃金水準の初任給では、公務の魅力を取り戻すにはまだ不十分である。期待された非常勤職員や再任用職員の差別的な処遇についても手付かずのままだ。慢性的な要員不足のもとにあっても、新型コロナ感染症拡大や度重なる災害などから国民の安全・安心を守るために、奮闘してきたにもかかわらず、このような不十分な勧告にとどまったことに対し、強い不満を表明する。

政府責任で賃金引上げを求める
 全労連・国民春闘共闘に結集する民間労働組合は、ストライキを含むたたかいの強化で、23年ぶりの高い賃金引上げを勝ち取ったが、物価高騰による実質賃金低下で、生活を維持することすら困難である。今回の勧告はその春闘水準も下回っている。

 本来、労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度が、民間給与実態調査における比較企業規模の下方修正等により、公務員賃金を抑制する装置と化している。私たちが春闘期に提出した「情勢適応原則に基づく緊急勧告」の要求に、人事院が誠実な対応をとらなかったことは深刻な問題だ。今こそ労働基本権を回復させ、労使対等の立場で労働条件を決定すべきである。

 賃金の引上げを政府が直接的にコントロールできるのは公務員賃金であり、政府はただちに、日本経済の好循環を生み出すためにも、物価上昇に負けない賃金の引上げを提案すべきだ。また、地域間、初任給、非正規と正規などの格差是正を図ることは、政府の責任であり、公務労働者の賃金改善は大きな意味を持つ。勧告の取扱いについて政府で検討を進めるにあたっては、民間の範となる先駆的な改善を判断するよう求める。

賃金の底上げと地域間格差の是正で地域経済の活性化を図れ
 中央最低賃金審議会の目安を参考として、地方最低賃金審議会で最低賃金が審議されている。10月頃から順次、地域別最低賃金が改定され、加重平均で1,002円程度となることが見込まれる。今回の改定で、国の高卒初任給も引上げられたが、地域別最低賃金を下回る地域はまだ残されている。

 政府が行うべきことは、賃金引上げによる経済の活性化、とりわけ、公務員の賃金が直接結びつく地方経済の活性化策だ。全国各地域で働く公務員賃金の底上げ・引上げは、地域間格差の是正にもつながる。最低賃金とともに、公務員賃金の地域間格差を是正すべきだ。

 さらに、非常勤職員と再任用職員の処遇改善も求められている。また再任用職員は、俸給と一時金が低水準の上に生活関連手当が支給されていない。今年度から定年延長が始まったが、年金の特別支給などがないことをふまえ、高齢期の生活と職務に相応しい処遇改善を求める。

 公務労組連絡会は、全国一律最賃制の実現と賃金の底上げ・引上とともに公務職場の地域間格差の解消に向けて全力をあげてたたかうものである。

「給与制度のアップデート」労使協議を尽くせ
 人事院が一年かけて検討してきた「給与制度のアップデート」(「社会と公務の変化に応じた給与制度の整備」)については、来年勧告にむけての「骨格案」が示された。これまで私たちが強く要求してきた地域手当や通勤手当、再任用職員の処遇の見直し等が検討課題として列挙されたことは評価するものの、「アップデート」の狙いは、人事評価の給与反映を拡大するなど「能力・実績主義」の強化にほかならない。評価結果にもとづく格差の拡大は、今以上に労働者の不公平感の増大、士気の低下を招き、職場のチームワークを破壊することは、すでに民間での数多くの失敗例からも明らかである。

 公務の魅力を取り戻すためにも、働くものの視点にもとづく公務員賃金制度の改善が求められている。労働組合との合意を前提とした真摯な協議を尽くすことを要求する。

長時間過密労働を解消せよ、小手先の対策では解決しない
 「公務員人事管理に関する報告」において、フレックスタイム制の見直し、勤務間のインターバル確保、夏季休暇の使用可能期間及び年次休暇の使用単位の見直し、テレワークガイドラインの策定などについて触れられているが、定員そのものが不足している上に、慢性的な欠員が生じており、小手先の対策を講じたところで、長時間過密労働の実態は改善されない。直ちに行うべきは定員削減計画を撤回し、必要な人員増をはかることだ。

 また、管理職のマネジメント能力の向上を図るとされているが、それだけで長時間過密労働が是正されるわけではない。現場を含め根本的に人手が足りないことを認識すべきだ。

地方人事委員会での改善にむけた取り組みを強めよう
 コロナ禍のもとで、公務が果たしている役割が社会的に注目された。一方で、行政や医療・福祉などの分野における脆弱さが露呈するとともに、長時間過密労働で懸命に働き続ける実態に、体制拡充と処遇改善を求める声が高まっている。

 秋のたたかいでは、地方人事委員会でのすべての労働者が生活改善できる勧告を求める取り組みをすすめるとともに、確定闘争として再任用職員と会計年度任用職員の処遇改善など均等待遇にむけたたたかい強化していく。独立行政法人での賃金改善を勝ちとるため、公務大産別の団結を強化していく。

国民のいのちとくらしを最優先にする政治に転換しよう
 「官から民へ」のかけ声のもとですすめられてきた公務部門の民営化などの問題点が明らかになり、国民のいのちとくらしを守るために、公務が果たすべき役割が注目されている。今こそ「公共」を国民の手に取り戻す共同の運動を広げていくことが求められている。

 官民共同のたたかいで、賃金引上げなどの情勢を切り拓いてきたことに確信を持ち、全ての労働者のさらなる賃上げをめざす運動を職場から大きく広げよう。

 公務労組連絡会は、新自由主義経済推進、大企業優先の政治からの転換をめざし、自らの要求と結びつけて、岸田政権がすすめる大軍拡・大増税路線を阻止するために全力をあげる。そして、憲法を擁護し、遵守する責務を負う公務労働者として、憲法を守り、いかすために職場と地域から奮闘する決意である。

以 上

(参考資料)
(PDFファイル)
  給与に関する勧告・報告、勤務時間に関する勧告の骨子