2021年人事院勧告にあたっての幹事会声明

2021年8月10日
公務労組連絡会幹事会

職場の願いに応えない勧告に抗議する
 人事院は本日、政府と国会に対して、国家公務員の給与に関する勧告と人事管理に関する報告と意見の申し出をおこなった。給与に関する勧告は、本俸について官民較差が△19円(0.00%)とわずかな較差にとどまったことから、改定を行わないこととした。また、一時金では、期末手当を0.15月引き下げることを勧告した。

 今年の勧告は、新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受ける2度目となる。国民のいのちとくらしを守るため、非常事態のもとで働いている公務労働者の賃上げに対する期待に背き、生活や現場実態が反映されなかった。また、職場の切実な要求に対し十分に応えておらず、強く抗議する。

 一方で、育児休業の拡充に関する意見の申し出のほか、労働時間・休暇制度、非常勤職員に関する処遇改善など人事管理に関する報告では、不妊治療休暇の制度創設、非常勤職員の休暇制度改善、テレワークにかかる費用負担問題について言及し、政府に対処を求めるなど、職場の要求に応えたことは一定の評価をしたい。

政府責任で制度改善を求める
 昨年の勧告は、民間給与実態調査が緊急事態宣言により、例年から大幅に遅れるなど異例なものであったが、今年はほぼ例年のスケジュールで作業が進められた。人事院の発表によると、民間給与実態調査の完了率は82.7%となっており、例年とほぼ変わらない。コロナ禍であることから、昨年と同じく病院が調査対象外となったが、全労連・国民春闘共闘に結集する民間の奮闘がうかがえる勧告となった。

 人事院勧告は、公務員労働者の労働基本権制約の代償措置であり、政府及び国会が尊重することは基本である。そもそも労働条件は、労使当事者間の話し合いによって定められるものであるが、不利益変更となる労働条件の引き下げについては、当事者の合意が必須となるものであり、政治的な思惑によって決定されるべきものではない。

 しかし、労働条件の引上げとなる修正であれば、大いに歓迎する。地域間格差、初任給の官民較差、そして非正規と正規の格差などの格差是正を図ることは、政府の責任であり、国家公務員の制度改善は大きな意味を持つ。勧告の取扱いについて政府で検討を進めるにあたっては、民間の範となる先駆的な制度改善を求める。

賃金の底上げと地域間格差の是正を図れ
 中央最低賃金審議会の目安を参考として、地方最低賃金審議会で最低賃金が審議されている。10月1日から順次、地域別最低賃金が改定され、加重平均で930円以上となる見込みだ。国の高卒初任給の時間単価は897円と加重平均を下回り、11都府県よりも低くなる。公務員は最低賃金法の適用除外であるとして、最低賃金を下回っていても問題ないと政府・人事院は強弁し、初任給の低さを放置している。

 政府が行うべきことは、賃金引き上げによる経済の活性化、とりわけ、公務員の賃金が直接結びつく地方経済の活性化策だ。地方で働く公務員賃金の底上げ・引上げは、地域間格差の是正にもつながる。最低賃金とともに、公務員賃金の地域間格差を是正すべきだ。

 さらに、正規職員との格差是正こそ求められているにもかかわらず、ただでさえ低い処遇に抑えられている再任用職員の一時金引き下げが行われようとしている。このような暴挙は絶対に認められない。再任用者の処遇改善を直ちに行うよう求める。

 公務労組連絡会は、全国一律最賃制の実現と賃金の底上げ・引上とともに公務職場の地域間格差の解消に向けて全力をあげてたたかうものである。

定員削減計画を撤回して長時間過密労働を解消せよ
 新型コロナウイルスの感染拡大により、公衆衛生職場や医療現場では終わりなき長時間過密労働が続いている。現場第一線では、「退職」もしくは「生死」の選択を迫るような事態となっている。これは、公衆衛生職場や医療現場だけにとどまらない。各種の給付金支給担当をはじめすべての公務職場では、国民のいのちとくらしを守るため、自らのいのちを削るだけでなく、家庭などあらゆることを犠牲にして働き続けている。

 人事管理に関する報告では、長時間過密労働の解消について多く触れられているが、人員増の必要性は、対策をすべて講じた上とされている。現場第一線では、あらゆる対策が講じられており、八方塞がりの状態にある。行うべきは定員削減計画の撤回など、人員増をはかるほかない。

 また、「能力・実績に基づく人事管理の推進」が述べられているが、評価制度が引き起こしている負の側面について、政府はしっかりと受け止めなければならない。

地方人事委員会での改善にたたかいを強めよう
 公務が果たしている役割が社会的に注目された。一方で、行政や医療・福祉などの分野における脆弱さが露呈するとともに、長時間過密労働で懸命に働き続ける実態に、体制拡充を求める声が高まった。職場の切実な声は、政府あての「体制拡充要求署名」と人事院あての「公務員賃金改善署名」として全国から寄せられ、およそ10万筆を集約した。

 新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、中央行動をはじめとするたたかいを大幅に縮小せざるを得なかったが、人事院前などで職場の切実な声を上げ、諸要求前進めざして奮闘してきた。

 秋のたたかいでは、確定闘争として再任用職員と会計年度任用職員の期末手当削減を許さないたたかいとともに、勤勉手当支給など均等待遇に向けたたたかいを強化することが求められる。また、定年延長の実施に向け、地方自治体との交渉強化とともに、給与カーブの見直しに向けたたたかいを強化しなければならない。

 人事院が不妊治療休暇の新設を勧告したことは、地方でのたたかいが制度改善を前進させたことに確信を持ち、確定闘争、独立行政法人等での賃金改善を勝ちとるため、官民共同を追求しつつ、公務大産別の団結を強めてたたかいを継続・強化していく。

国民のいのちとくらしを最優先にする政治に転換しよう
 菅首相は、オリンピックを強行したが、新型コロナウイルス感染者は拡大の一途となっている。そのため、医療現場のひっ迫が続いており、国民のいのちに関わる厳しい状況が続いている。にもかかわらず、政府は経済対策を重視する姿勢を続けている。

 オリンピックの開催に対しては、多くの国民が反対してきた。昨日オリンピックは閉会したが、パラリンピックがまもなく開催されようとしている。緊急事態宣言が続けられているが、ワクチン接種も十分に進んでおらず、感染者が増え続ける一方だ。国民のいのちとくらしを守る施策の不十分さが感染拡大に歯止めをかけられない。

 公務労組連絡会は、国民のいのちとくらしを守るため、大企業優先、新自由主義経済を推進する政治からの転換をめざし、みずからの要求と結びつけて、憲法改悪を阻止するために全力をあげる。そして、まもなく行われる総選挙を視野に、憲法を擁護し、遵守する責務を負う公務労働者として、憲法を守りいかすために職場と地域から奮闘する決意である。

以 上

(参考資料)
(PDFファイル)
  (1) 給 与 勧 告 の 骨 子
  (2) 公務員人事管理に関する報告の骨子