NETニュースNO.930 内閣人事局と中間交渉(7/14)


公務労働者の賃上げと非常勤職員の処遇改善を強く主張

= 「16年夏季重点要求」で内閣人事局と中間交渉 =

 公務労組連絡会は7月14日、16年夏季重点要求にかかる内閣人事局との中間交渉をおこない、賃金改善や非常勤職員の均等待遇と処遇改善、定年延長などを求めました。
 内閣人事局の中間回答は、従来の域を出ない不十分なものであり、7月下旬の最終交渉にむけ、政府あて署名の強化など職場からのたたかいを強化するとともに、7月27日の中央行動への最大結集で要求実現を迫ることが重要となっています。

景気回復のため公務員の賃上げ、非常勤の処遇改善を

 内閣人事局との中間交渉には、蟹澤議長を先頭に猿橋副議長、川村事務局長、米田・杉本の各事務局次長、篠原幹事(特法連)、伊吹幹事(国公)、松井書記が参加し、内閣人事局は西水徹総括参事官補佐のほか各担当参事官補佐が対応しました。

 蟹澤議長は、中間回答を求めるにあたって以下のように発言しました。
 6月17日に夏季重点要求を提出して、ほぼ1か月となった。安倍首相は参議院選挙で、「長時間労働の慣行を断ち切る。雇用形態に関わらない均等待遇を確保する。同一労働同一賃金を実現する。「非正規」という言葉を日本国内から一掃する。その決意で全体の所得の底上げを図り、内需をしっかりと拡大する」と発言している。これは国民に対する公約であり、公務で働く非常勤職員の均等待遇の実現、最低賃金を直ちに1,000円以上に引き上げることをはじめ、同一労働同一賃金の実現を公務職場の足元から実施するよう強く求める。
 また、デフレからの脱却のために大型補正予算を組むとも報じられているが、景気回復のためには国民の購買力を高めることが必要で、そのためにも賃金の改善が不可欠だ。この点は安倍首相をはじめ政府も認めており、「人勧制度の尊重」にとどまるのではなく、公務労組連絡会が要求している非常勤職員の賃上げ、「給与制度の総合的見直し」の中止、とくに地域手当による賃金格差や高齢層賃金抑制の是正は使用者である政府として行うことが可能だ。以上の点も含めて、現時点での政府の検討状況を示していただきたい。

 重点要求に対する内閣人事局の中間回答は以下のとおりです。
● 「非常勤職員の雇用の安定・処遇改善」の要求について、期間業務職員制度の導入、育児休業等の取得、夏季における弾力的な年次休暇付与などの措置が講じられてきているところだ。
 また、給与については、各府省において、人事院から出された指針を踏まえた給与の支給に努めることとされている。内閣人事局としては、人事管理官会議等の場を通じて、期間業務職員制度の適正な運用や非常勤職員に対する適正な給与の支給など、非常勤職員に対する適正な処遇に努めるよう各府省に対し、繰り返し周知等を図ってまいりたい。
 また、期間業務職員制度導入後一定期間が経過しているので、適切に運用されているか、人事院や各府省と連携しつつ、現在実態を調査しているところだ。

● 「高齢期雇用・定年延長」に関して、雇用と年金の接続については、引き続き平成25年3月の閣議決定に沿って、定年退職者の再任用を政府全体で着実に推進していく。
 なお、組織の活力を維持しつつ、再任用職員の能力や経験をより一層本格的に活用するための方策について、各府省の協力を得ながら引き続き検討したい。
 また、平成27年の人事院勧告時の報告において、再任用職員の給与について、民間企業の再雇用者の給与の動向や各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえ、引き続き、その在り方について必要な検討を行っていくこととされており、政府としても人事院における所要の検討を踏まえ適切に対応する。
 今後の雇用と年金の接続の在り方については、同閣議決定において、年金支給開始年齢の段階的な引上げの時期ごとに、再任用制度の活用状況や民間の高年齢者雇用確保措置の実施状況等を勘案し改めて検討を行うこととされており、検討に際しては、皆様も含めた関係者の意見も聞きつつ、進めてまいりたい。

● 「労働時間短縮、休暇制度など働くルールの確立」に関して、一昨年10月に「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」を取りまとめたが、この1月には、女性活躍推進法の成立と第4次男女共同参画基本計画の策定を踏まえた改正を行ったところである。
 各府省では、この指針を踏まえた取組計画に基づく取組を進めているが、内閣人事局としても、各府省の取組を毎年度フォローアップするとともに、必要に応じてサポートを行ってまいりたい。
 超過勤務の縮減や休暇等の取得促進については、昨年に引き続き、7月・8月に「ワークライフバランス推進強化月間」と「ゆう活」を実施しているところである。
 また、フレックスタイム制については、本年4月から原則として全ての職員を対象に拡充されたところであり、職員がより柔軟な働き方ができるよう、制度の円滑な運用にむけて適切に対応していきたい。
 なお、霞が関の働き方の見直しの議論を通じて、広く日本社会の働き方が変わるきっかけとなることを期待し、河野大臣の下で開催していた懇談会から、6月16日に提言が手交された。この提言を受けた政府としての取組方針を現在検討しているところである。

 職員の皆さんが、その能力を十分に発揮し、高い士気をもって効率的に勤務し、公務能率の一層の向上につながるよう、皆様のご意見も伺いながら、超過勤務の縮減等に政府一丸となってとりくんでまいりたい。

非常勤職員の雇用の安定化を、一律公募要件は撤廃せよ

 この中間回答を受けて、川村事務局長は以下のように発言し、政府としての真摯な検討を求めました。
○ 中間回答であるとしても、とても納得できる回答ではない。非常勤職員問題、高齢期雇用、労働時間問題の3点に絞り込んでの回答であるが、それぞれについてこの間の公務労組連絡会の要求と現状についての検討、検証を行ったのか。回答内容からは、使用者としての誠実な検討は全く感じられない。以下6点について申し上げるので、最終回答にむけて真摯な検討、対応を行うよう強く求める。

 1つは、公務員賃金の改善について。国際通貨基金(IMF)も公務部門での賃金引き上げの必要性・有効性を指摘しているが、公務員賃金は770万の労働者に直接影響するものであり、議長が申し上げたように、賃金改善にむけた政府としての積極的な対応を求める。

 2つは、配偶者にかかる扶養手当について。政府は、配偶者手当の見直しを女性の働きやすい環境整備の方策に位置づけているが、13,000円の手当が女性の就業を抑制しているわけではない。手当受給者にとっては毎月の生計費の一部であり、長年定着してきた労働条件であり、一方的な扶養手当の改悪は認められない。人事院への要請は直ちに撤回せよ。

 3つは、非常勤職員の賃金・処遇の改善について、労働条件の問題とあわせて指摘しなければならないのは、雇用の不安定さだ。画一的な「公募要件」や3年一律の雇い止めが人権問題となっているが、良質な行政サービスを確保する点からも大きな問題である。いま、非常勤職員の実態調査が行われているが、政府・使用者として、労働契約法の準用も含め、制度の抜本見直しに着手すべきであり、均等待遇や常勤化を含む雇用の安定化、無期雇用化にむけた具体的な検討・協議を行うよう求める。

 4つは、雇用と年金の確実な接続について。年金支給開始年齢が65歳となるまであと5年だ。また、来年度末の定年退職者の支給開始年齢は63歳であり、少なくとも今年度内に対応方針を決めなければ予算を確保できない。雇用と年金の確実な接続を行うためには、定年延長以外にはなく、直ちに具体化に向けた協議を開始せよ。
 政府は、再任用の義務化で雇用と年金の接続を図るとしているが、雇用責任の主体をはっきりさせなければならない。再任用の主体を各省の長とした場合、義務的再任用は不可能であり、政府自身に雇用責任があることを明らかにするよう求める。そのうえで、政府・使用者として、定員管理の在り方を見直し希望者全員のフルタイム再任用を担保するべきだ。また、そのためにも柔軟な人員配置が可能となる仕組みを早急に検討するよう求める。
 あわせて、経験と能力を活かすことのできる官職の確保、再任用職員が安心して生活できる賃金水準の確保が必要であり、使用者としての責任ある対応を求める。

 5つは、労働時間短縮について。超過勤務増大の最大要因は、画一的な定員削減がもたらした業務実施体制の脆弱化にあることから、勤務時間の柔軟化など「働き方改革」では解決できない。「ゆう活」や「フレックスタイム制」は、勤務時間管理にかかる業務が増大するとともに、チームを基本とした業務実施体制を阻害しかねず、超過勤務の縮減にはむしろ逆効果であり、「ゆう活」は中止せよ。
 「霞が関の働き方改革の懇談会」でも、今の働き方を続ければ、政策の質や行政サービスが低下し、時代の変化や国民の求めるニーズに対応できなくなり、人材確保にも支障をきたすことが指摘されている。本気で超過勤務縮減を実現しようとするならば、超過勤務時間の上限規制や、全府省共通の窓口時間の設定が必要だ。同時に、国民が求める公務・公共サービスの維持・拡充のためにも、定員削減計画を中止・撤回し、地方自治体も含めて行政需要や業務量にふさわしい定員の確保・配置を行うよう求める。

 6つは、労働基本権について。6月11日に日本政府に対して10回目となるILO勧告がだされた。政府は勧告を真摯に受け止め、労働基本権を回復すべきだ。政府が1月に提出した情報には、実態に反したものがあり、その問題も含めて協議の場をつくるよう求める。

 これに対して、西水総括補佐は、「貴重な意見をいただいた。最終回答にむけて検討したい」と述べるにとどまったことから、猿橋副議長が「国家公務員制度改革によって設置された内閣人事局には、公務員の賃金・労働条件を主体的に改善する責任がある。そのことをふまえて、最終回答にむけて誠意をもって検討せよ」と強く求めました。

 最後に、蟹沢議長が、「公務労組連絡会の要求に正面から向き合い、検討したものとはとても受け止められない。河野大臣は『国の非常勤職員については人事院の指針に沿って対応され、同じ労働であれば同じ処遇という原則で対応されていると承知している。現状の非常勤職員の実態は調査したい』と国会で答弁している。この点の検証は内閣人事局の責任であることを指摘しておく。最終回答にむけて、政府としての真摯な検討と、実現にむけた努力を求める」と述べて交渉を終わりました。

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