声明・談話など


〜 公務員労働者の労働基本権回復にむけた直実な取り組みを求める 〜

「行政改革推進本部専門調査会『報告』」に対する見解

2007年12月18日
全労連・公務員制度改革闘争本部

はじめに

- 若干の経過 -

(1) 1948年7月、GHQ司令官からの一片の書簡(マッカーサー書簡)によって、成立直後の公務員法が大改悪された。公務員労働者について、刑事罰をともなって争議権を全面禁止し、非現業公務員からは労働協約締結権も奪い、消防職員、監獄職員などは治安(警察)公務員と位置づけて団結権を剥奪した。

 それから、60年近くの年月を経た今日、新自由主義にもとづく「小さな政府」論と反動的な「国家改造」論がないまぜになった行政改革と整合的な公務員制度への改革をめざす動きが強まり、国民的な注目を集める状況となっている。

(2) 90年代後半からの「行政改革」では、中央省庁再編や独立行政法人化(アウトソーシング)が強行され、郵政事業も民営化された。同時に、国と地方の関係見直しや、それとも一体的な市町村合併なども進められ、財政での国と地方の関係見直しが進んでいる。「小さな政府」の具体化であり、ヤミカラ問題も含めた「公務員バッシング」を伴っている点にひとつの特徴がある。

 これらの行政組織の改革は公務員の範囲や役割の変更をともなうだけでなく、同じ仕事をしていても独立行政法人化などによる組織改変で労働基本権が「回復」し、業務委託などによって同じ仕事に就いていながら労働基本権の扱いが異なっている。公務員制度にかかわっては、それまでの理屈では整理できない問題が生じている。

(3) 政府は、2000年12月の「行政改革大綱」で「国家公務員、地方公務員制度の抜本的改革」に言及し、その推進体制として内閣総理大臣を本部長とする「行政改革推進本部」を設置した。

 同本部は、政治主導を支える公務員制度への改革課題を取りまとめた「公務員制度改革大綱」を2001年12月に決定し、法案化をめざした。その内容は、労働基本権制約を維持したままで能力・実績反映の人事管理を強化し、「天下り合法化」と同義の公務と民間の雇用流動化や、キャリア特権制度を温存する「改革」であった。労働組合はもとより多方面から批判が集中し、法案化作業は再三頓挫した。

 また、全労連、連合とも、労働基本権制約の現状維持とする「大綱」の決定が、国債労働基準に反し、結社の自由を侵害しているとする申し立てをILOにおこなった。この申し立てに対してILOは、2002年11月以降、3回に渡り改善勧告をおこなっている。

(4) そのような経緯のもと、2004年12月には、公務員の人員削減や、あらたなアウトソーシング策である「市場化テスト」などの実施を決定する「行政改革の重要方針」を閣議決定した。ここでは、公務員制度にかかわって、「関係者との率直な対話と調整」に言及した。そして、この閣議決定をもとに成立した「行政改革推進法(2006年法律第47号)」で設けられた「行政改革推進本部」のもとに、公務員の労働基本権を集中的に議論する「専門調査会」が設置され、2006年7月から議論を開始した。

 政府は、2007年4月に、「公務員制度改革について」とする閣議決定をおこない、公務員制度の総合的な改革を進めるとし、同時に2008年通常国会への「公務員制度改革基本法」提出を決定した。

 今回の専門調査会「報告」は、以上のような経過もふまえて取りまとめられたものであり、政府が08年通常国会に提出するとしている「公務員制度改革基本法案」作業ともかかわっている。

(5) 本見解は、「報告」の到達点と問題点について、全労連公務員制度改革闘争本部としての「見解」を取りまとめたものである。

 全労連は、2006年5月に、「全労連が考える公務・公共サービスと公務員制度について」を明らかにしている(別添)。その中で、「構造改革」が強行されるもとでの公務員制度改革では、その中心課題に労働基本権回復をおくことの必要性を主張している。そして、ILOからの度重なる勧告を手がかりに、団結権、労働協約権、争議権の現実的なあり方についての基本的な考え方を提起している。
 本見解は、そのような全労連の基本要求をふまえたものでもある。

1 「報告」の基本的な問題点

- 報告の「はじめに」及び「改革の必要性と方向性」に関して -

(1) 「報告」は、15回の会議の結果として、「(労働基本権のあり方について)改革の方向で見直すという認識を共有」しつつ議論を行った結果、「概ねの合意」得られた事項を取りまとめたとしている。したがって、労働基本権回復を内容とする公務員制度改革で意見が一致しているわけではないこと、「報告」の内容には専門調査会でも異論が残されていることは、率直に見ておかなければならない。

 公表されている10月19日の専門調査会「審議概要」でも、「概ねの合意」との記述には、「労働協約の内容等についてつめ切れていない」、「評論的な議論に終始して論点を深めていない」などの異論が強く出されたことが明らかになっている。

 政府が、「報告」を棚上げにし、労働基本権を回復しないまま、公務員制度改革を進める危険性があることは軽視すべきではない。

(2) 「公務の労使関係改革」の「必要性」について、「行政の取り組むべき課題はますます高度化・多様化」する中で、「行政が迅速かつ適切に対処しきれない事例が発生」していると現状を分析し、「政策の企画立案と実施を担う行政を支える公務員が・・・迅速・的確な対応を行うことを可能にする改革」が求められるとする改革の方向性を掲げ、「適切な人事管理を実現する」ことで「コスト意識を徹底して公務の能率を向上させていく」という目的を明らかにして「労使関係制度等の改革」の必要性を述べている。

 この間の政府の公務員制度改革論議がそうであるように、労働基本権改革(労使関係制度等の改革)の目的も、政策決定を支える公務員の確保、育成と、公務のコスト削減(人件費削減)におかれている。 

 また、「不適切な労使慣行の再発の防止」と「責任ある労使関係の構築」が求められるとも言及している。社会保険庁や大阪市での「労使慣行」の問題点をいたずらに強調しているが、相次ぐ高級官僚の不祥事の根絶とかかわる組織内部からの民主的なチャック機能の強化のための公務員労働者権利擁護と言う視点は全くうかがえない。

 公務員労働者を管理の対象とするばかりで、行政運営にかかわる利害関係者として位置づけない旧い発想で改革の必要性が論じられていることが「報告」の限界であり、個別の課題論議にも否定的な影響を与えている。

(3) 「公務部門に優秀な人材を集め」る目的も掲げた上で、能力・実績主義などとの整合性ある「労使関係制度の改革」を強調している。

 この点は、「労使関係制度の改革」が、「官と民、政と官の関係をふまえた検討」や、使用者として一元的な責任果たす組織の不存在状態の是正検討を「労働基本権制約の見直しにかかわらず議論」すべきとした「議論の整理」(2007年4月・専門調査会)とも異なっている。

 労使関係改革によって、「努力が報われる人事制度」をめざしたいとする政府サイドの思惑が先行している部分とも考えられる。成果主義的な人事管理が、中立・公正な公務を安定的、継続的に提供し続けることを担保するための公務員制度と整合的とは到底考えられない。その点はおくとしても、公務運営に責任を持つ以上、職員の人事管理や運用に責任をもつのは当然であり、「勤務条件詳細法定主義」と言える現状に安住し、「任用」という特別権力関係の亡霊に固執し続けている府省段階での「労使関係制度の改革」と、憲法上の課題である労働基本権回復とは別次元の検討課題であることは整理されていない。

(4) 「改革の方向性」として、@労使関係の自律性の確立(「透明性の高い労使間の交渉」、 「労使が自律的に勤務条件を決定する仕組み」)、A国における使用者機関の確立(「十分な権限と責任を持つ機関を確立」を強調している。

 そして、「一定の非現業職員」に「労働協約締結権を新たに付与」し、「第三者機関の勧告制度を廃止」し、「使用者が主体的に組織パフォーマンス向上の観点から勤務条件を考え、職員の意見を聴いて決定できる機動的かつ柔軟なシステムを確立すべき」とした。

 非現業公務員に労働協約締結権を付与することは当然のことであり、それにともなって「勧告制度」が廃止されるのもまた当然である。しかし、団結に基づく団体行動の権利保障でもあり、労働協約締結権を実質化させる争議権との一体性に言及していないことは、「報告」の最大の問題点である。

 なお「報告」では、協約締結権具体化に消極的な意見にも言及し、「労使交渉費用の増大」、「パフォーマンス向上に対応しない人件費高騰への懸念」、「長期にわたる準備」などをコスト要因とし、「慎重に決断する必要」を述べている。

 労働協約権に限定し、しかも「一定の範囲の非現業公務員」にしかそれを付与しないと言う程度の制約的な「報告」さえも否定する意見が強いことを示しており、極めて遺憾な記述である。

(5) 「国における使用者機関の確立」を強調している。労使関係を構築するために使用者が確立されなければならない、とする指摘は当然である。

 問題は、使用者としての「十分な権限と責任を持つ機関」と各府省の人事権限や、地方公務員の「法定労働条件」の範囲の問題である。行政を分担管理する各府省の使用者性や、地方自治との関係調整が求められる課題である。

 また、「国民・住民に対する説明責任の徹底」を強調し、使用者の説明責任だけでなく、「透明性を高め、説明責任を徹底して果たす」ことを公務員労使関係の基本におき、労働組合に対しても「説明責任」を求めている点は極めて特異である。いくつかの不祥事が、労使の密室協議で発生したとする「きめつけ」が前提となっていると考えられるが、憲法上の説明責任を負う使用者当局と道義的な面での説明責任にとどまる労働組合とを同列におくことは認め難い点である。

(6) 「意見の分かれた重要な論点」として、@消防職員及び刑事施設職員の団結権と、A争議権に言及している。問題は、付与を否定する理由である。

 まず消防職員などの団結権については、「団結権を付与すれば、上司と部下の対抗関係をもたらし、上命下服の服務規律の維持が困難」になるとの主張があるとしている。このような特別権力関係にしがみつき、労働基本権と当局の人事管理を対立的なものとする主張は、専門調査会でも繰り返しおこなわれている。無権理状態に置かれた消防職員などの労働条件改善が進まず、人材確保の障害要因になるまでの「上命下服」の職場実態の近代化の意思はすら感じられない主張である。

 争議権については、「(議会制民主主義のもとでは)争議行為の圧力による強制を容認する余地はない」、「『職務の公共性』から争議行為は国民生活等に影響が生じる」などが否定主張の論拠とされている。公務員も憲法第28条に規定する「労働者」であることは前提としても、労働者の基本的人権と議会制民主主義(それと一体的な関係にある財政民主主義)や公務員尾「全体の奉仕者性」とを調整不可能な対立関係と置いているところに、問題の根源がある。このような論理にたつならば、労働条件を共同決定すると言う労働協約締結権も同様に否定され、現状同様、団結権のみが実質保障されるという「労働基本権の空洞化状況」はなんら解決されない。

 団結権や争議権について両論併記にとどまっていること自体が、「改革の方向で見直す」という認識が共有されていないことを露呈している。

(7) 「改革において留意すべき点」として、全農林警職法事件最高裁判決(1973年4月25日)が述べる公務員の労働基本権制約事由について検討したとしている。

 その一つは、議会制民主主義及び財政民主主義という「憲法上の要請」については、今日でも妥当するとしている。この点では、憲法第28条の規定を憲法第25条が規定する生存権の実現との関係だけでなく、自己にかかわる労働条件決定への参加という第13条との関係でも捉えなおす主張もあるように、議会制民主主義などの「要請」は認めつつも、労働条件決定システムへの参加の観点から整理しようと言う主張もある。議会制民主義等の要請が労働基本権制約の絶対的な理由とはならないことへの検討は欠落している。

 その二つに、「公務員の地位の特殊性」と「公務員の職務の公共性」については、独立行政法人制度や指定管理者制度などを引き合いに、「絶対的な制約理由ではない」としている。

 この点では、従来、現業国家公務員についての争議権論議とかかわって、国が運営主体である以上「争議権の付与は困難」とする「経営形態論」が主張され、今日でも一定の影響力を持っているが、その修正とも考えられる記述である。

 その三つは、「市場の抑止力の欠如」という制約理由についてであり、これは、労使交渉結果の公開等で「抑止が期待できる」としている。

 もともと、国民の租税負担で人件費が賄われていることもあって、公務員の労働条件や賃金が、民間のそれと大きく乖離することは適当ではなく、民間均衡は公務員制度に内在する制約要因とも考えられる。議会の「監視」なども機能しているもとで、「市場の抑止力の欠如」が、公務員の労働基本権制約の理由とされていることが、不当だと言える。

2 個別検討事項での「報告」の問題点@

- 改革の具体化にあたり検討すべき論点に関して -

 「労使関係制度等の改革」の具体化にあたって、「検討し結論を得る必要」がある論点として、@基本権付与の前提、A協約締結権、B争議権、C協約締結権を支える仕組み、について課題や論議状況を列記している。

(1) 一つ目の「基本権付与の前提」については、「労使の理念の共有」、「労使交渉の透明性の向上」、「国における使用者機関の確立」、「交渉当事者の体制の整備」に言及している。

1) 「労使の理念の共有」については、効率性のみが強調されており、違和感がある。

現行の制度でも強調されるように、営利を目的とする民間企業における労使関係とは異なり、国民の権利や共通の利益実現をめざす公務労働では、効率的であると同時に国民のニーズに応える民主的な公務運営を軽視することは出来ない。この点は、公務員制度の「基本理念」であり、公務では労使ともに共有すべき理念であることはいうまでもない。

しかし、前述もしているように、「報告」は「効率性」に偏った論理で、公務の労使関係を見ていることは問題である。

2) 「労使交渉の透明性の向上」について、交渉過程までの情報公開を求めているが、労使の自律的な交渉との軋轢や、労使自治への不当な介入も懸念されるところであり、慎重な検討が求められる。

3) 「国における使用者機関の確立」にかかわって、「報告」でも、「いかなる機関のいかなる権限が、責任ある使用者器官が担うべき権限として移管されるべきか、早急な検討が必要」としている。この点は、先に指摘した問題点とも通じるところであり、制度検討での実際的なポイントの一つとも考えられる。

4) 「交渉当事者の体制整備」では、「国の中央レベル、各府省レベル及び地方支分部局レベル、地方公共団体」で労使交渉に必要な体制の整備が必要としている。

「使用者機関の確立」とも関連し、あるいは予算制度など関連制度ともかかわる論点であり、それらの関連性もふまえ、権利確立の観点からの現実的な論議も必要な課題である。

(2) 協約締結権についての論点では、「付与する職員の範囲」、「交渉事項・協約事項の範囲」、「法律・条例、予算と協約との関係」、「少数組合等の協約締結権の制限」、「協約締結権が付与されない職員の取扱い」について言及している。

 これらの検討の前提には、@憲法第28条に規定される労働基本権は、議会制民主主義や財政民主主義という「憲法上の要請」が制約理由となること、Aしたがって、労働協約締結権を認めるとしても、民間営利企業と同様の労使共同決定的な労使関係の形成については限界(制約)がある、とする最高裁判例(全農林警職法事件判決、名古屋中郵事件判決など)をめぐる意見の対立があると考えられる。したがって、いずれの論点でも複数以上の意見が記述されている。

 前述しているように議会制民主主義などと憲法第28条の関係を対立的に捉えるだけでなく、公務員労働者が自らの労働条件決定に参加することで、権利実現をはかる観点での対応や、ILO勧告の詳細検討も必要と考えられる。

 1) 協約締結権を付与する職員の範囲については、非現業公務員のうち、@民間同様に管理職員等を除外する、A権利義務設定・企画立案など行政に固有の業務に従事する職員を除外する、という主張が列記されている。

 ILOの勧告では、労働条件決定に参画することが利益相反となる「国家意思の形成にかかわる公務員とその補助者」を労働協約締結権付与の対象から除外することは肯定している。それは、団体交渉権に言及したILO第98号条約を補完する第151号条約(「公務における団結権の保護及び雇用条件決定のための手続きに関する条約」・日本は未批准)採択の過程で整理された考え方によっている。

 「管理職員等」を協約締結権の付与対象から除外することについては、一定の根拠がある。しかし、「権利義務設定・企画立案」や「行政に固有の業務」などという曖昧で抽象的な除外には妥当性がない。このような除外規定を認めるならば、本府省・庁の大部分の職員や、税務関係、労働基準監督官、航空管制官などの公務員には、引き続き労働協約締結権も認められないこととなる。

 2) 交渉事項・協約事項の範囲については、交渉事項の全てを協約事項にするか否か、民間労使関係との相違点の検討、「管理運営事項」の範囲の明確化の必要性に言及している。

 交渉事項と協約事項の関係については、任用・分限・懲戒に関する事項が例示されている。少なくとも、それらの基準については交渉事項でありかつ協約締結事項とすべきであることは、現業公務員との均衡からしても当然のことと考える。

民間営利企業の労使関係とは異なり、公務では、例えば予算や定員、機構などについては法律・条例事項であり、労働条件の共同決定の制約要因となっている。

民間労使関係との比較のみならず、公務の労使関係や公務運営の安定を求める観点からも、労働条件決定への公務員労働組合の参加を保障することを基本において検討すべきである。例えば、交渉事項は可能な限り広範に設定し、管理運営事項についてはその範囲の明確化をおこなったうえで、協約事項からは除外することなども考えられる。

 3) 「法律・条例、予算と協約との関係」について、協約の締結を認めるべきとし、抵触する場合の「必要な手続き」検討を求めている。公務員労働者の労働条件改定が、予算や法律・条例改定によって具体化される以上、妥当な検討結果だと考える。

 「必要な手続き」については、労働協約締結の結果、法律改正等が必要となる場合は、直近の議会開催時に、改正案や予算案の提出を使用者に義務付けることなども検討されるべきである。

 4) 「少数組合等の協約締結権の制限」について、交渉コストが多大になることを理由に、「一定の組織率を有しない少数組合・職員団体には協約締結権を付与しないか否か」について検討するとしている。

 民間との比較から、そのような制限を否定する意見も記述されている。組合の結成は、労働者の権利であり、結社の自由を保障する上からも、「数」を理由とした労働基本権の制限は、差別的なものといわざるを得ず、認められる検討課題ではない。

 ただし、同一使用者のもとに複数以上の労働組合が存在し、労働協約の内容が異なった場合の調整などは、公務の労使関係の特殊性を考慮した検討が必要となる可能性はある。例えば、法律・条例改正を必要とする場合に、異なる労働協約が締結された場合の法案等の提出はいずれを尊重するのかと言うような場合である。

 先に言及している「交渉当事者の体制整備」とも関連する検討課題でもある。

 5) 「協約締結権が付与されない職員の取扱い」については、「現行どおり人事院勧告等により定める」とする意見と、「協約締結権を付与された職員の協約をふまえ当局が定める」とする意見が併記されている。

 団結権が制約される公務員も含め、労働基本権制約の「代償措置」を講ずるべきは当然であるが、それは必ずしも「現行の人事院勧告」を意味しない。労働協約締結権を全面的に「代償」している「現行の人事院勧告制度」を存続させることは、結果として協約締結権の形骸化を招きかねず、その意見には賛成できない。

 ILO勧告が指摘するように、労働基本権を制約された労働者が「あらゆる段階で関与できる代償措置」を検討すべきであり、その際の考慮要素に「協約」を義務付け、「責任ある使用者器官」において必要な事務を処理することを検討すべきである。

(3) 争議権については、それを付与した場合の「争議行為の制限等」、「争議行為を行うことのできる事項」について、検討課題としてふれている。

 労働関係調整法が規定するように、公益事業などを対象に、争議権が一定の制約を受ける業務(職種)があるのは、ILOの勧告などからしても避けられない。問題は、その程度であり、規定いかんによっては、争議権の形骸化を招くことになりかねないことから、個別詳細な検討が必要である。

 1) 争議権の制限等の検討として、「労働関係調整法(民間公益事業を対象とした制限)と同様の仕組みは当然」とした上で、@労働委員会による争議行為の可否判断の仕組み、A 総理大臣の決定による(強制)仲裁の仕組み、に言及している。

 このうち、@については、すべての争議行為ではなく、使用者側に緊急性や回避の必要性、代替性がない等の立証責任を果した上で、使用者側の申し立てた場合に限定するなどの制約は検討される必要がある。

また、Aについては、その乱用を規制するなどの検討が必要である。

 2) 争議を行うことができる事項について、@議会への圧力を避けるため法律、条例、予算にかかる事項は除外すべき、A争議行為の対象は、協約事項全てとすべき、との対立する意見を記述している。

@の意見は、公務員の労働条件決定が法律等の改定によらざるを得ないと言う特殊性を前提にすれば、事実上の争議権の否定意見に外ならず、到底認められない。

3 個別検討事項での「報告」の問題点A

- 協約締結権等を支える仕組みに関して -

「地方公共団体における交渉円滑化のための全国レベルの仕組み」、「交渉不調の場合の調整」、「民間準拠原則の必要性」、「民間給与等の実態調査」、「労使協議制度」について、労働基本権を支える仕組みの検討課題として列記している。

(1) 地方自治体における交渉円滑化のための全国レベルの仕組みについて、その必要性や内容の検討が必要としている。

 この内、中央交渉については、地方交付税が地方公務員賃金の原資の重要な一部になっている現状など予算制度との関係や、地方公務員法などの基本的な法律のもとに自治体での条例改定がおこなわれること、「同一価値労働同一賃金」の原則、地方公務員の最低賃金が重要であることなどから、全国レベルの交渉は必要であり、交渉当事者をはじめ、そのための仕組みを検討すべきである。

 その際、労働条件とかかわる諸制度を所管する省庁と産別全国組織との間での交渉機構や、産別全国組織が複数存在している場合のあり方などについて検討が必要である。

(2) 交渉不調の場合の調整については、争議権を付与する場合には、民間と同様、労使双方の同意にもとづく第3者機関のあっせん、調停、仲裁手続きを設けるとしている。

 争議権を付与しない場合には、現在の現業等と同様に「労使一方の申請等による仲裁」と、それを基本としつつ「組合、職員団体の意見を沿えて法案等を提出」するという両論が併記されている。

 公務の労働協約締結の意味をふまえれば、交渉不調の状態を回避することを使用者の責任とするなどの工夫は必要である。その上で、第三者機関による仲裁等の仕組みを基本に検討すべきあり、交渉「打ち切り」を制度的に認めかねない仕組みを検討すべきではない。

 なお、交渉不調等の処理をする機関は、公務の労使関係を専門に処理する機関を検討すべきであろう。

(3) 「民間準拠原則の必要性」にかかわっては、準拠すべきか否か、準拠すべき場合の程度について検討が必要としている。

 先にも言及しているように、公務員の労働条件が民間と乖離したものとなることは必ずしも適当ではなく、民間均衡原則は確認されるべきである。しかし、その程度は、現行のように詳細な準拠ではなく、給与の総額人件費の増減(いわゆるベア)での民間均衡や、労働時間での労働基準法適用程度にとどめるべきであり、その枠内での主体的、自律的な労使交渉の促進を図るべきである。

 なお、民間賃金調査や労働条件調査については、必要な範囲の簡易な調査にとどめるべきである。

(4) 「民間給与の実態調査等」については、交渉や仲裁の基準としての第三者機関の調査の必要性や、その調査の詳細さなどが検討課題となっている。

 民間給与の実態調査を第三者機関がおこなうことは考えられるが、それは詳細におこなう必要はなく、交渉等の参考資料足りうる程度のものを検討すべきである。労働協約締結権を認める以上、少なくとも、現在のような詳細な調査をおこなう必要は全くない。

(5) 「労使協議制」について、団体交渉を補完することや、労使間の意思疎通を図るツールとしての検討に言及している。

 民間労働法制でも、「36協定」や労働安全衛生委員会など法律で規定される「労働者代表制度」があり、労使協議の一形態として機能している。これら以外にも、交渉前協議、経営参加などを「報告」でも列記している。

 職員参加を促進することを目的に、労使協議制度を論議することは必要であろうが、一方で、団体交渉・労働協約締結を回避する「手段」として「活用」される懸念もあり、慎重に検討されるべきである。

4 おわりに

 報告は、「終わりに」の記述で、「労使関係制度の改革」には、「概ね5年程度の期間が必要」としている。それも、「報告」を起点としているのではなく、公務員制度改革基本法の成立時期を起点としているものと考えられる。

 政府サイド、特に官僚には、労働基本権回復をサボタージュする動きが見えなくもない。全労連は、参議院選挙後の政治状況を積極的に捉え、「国民が政治を動かす政治状況」と分析している。

 公務員の労働基本権問題は、1948年に一方的に剥奪され時から、時々の政治の中心的課題であった。今も、そのことは変わらない。公務員労働者の労働基本権回復に対する国民的支持を広げ、変化した政治状況をいかす取り組みが求められている。

 国民的支持が自然に広がるわけではない。国民的支持が、正論を述べ合うだけで広がるわけではない。専門調査会が、労働協約締結権に限定したとはいえ、前進的な「報告」を出したことをふまえても、歴史の歯車を回すか否かの選択は、公務員労働組合のたたかいにかかっている。
以 上