NETニュースNO.987 全人連に要請(2/5)


長時間過密労働解消など自治体職場や学校現場の実態改善を

= 公務労組連絡会が全国人事委員会連合会に申し入れ =


 公務労組連絡会は2月5日、自治労連・全教と共同して、地方公務員・教職員の賃金・労働条件の改善を求めて、全国人事委員会連合会(全人連)への要請を行いました。

 政府が賃上げ政策を課題にすえるなか、景気回復と地域経済の活性化のためにも公務労働者を含めたすべての労働者の賃金改善は不可欠です。申し入れでは、全人連としての積極的な対応を求めました。

 各単産からは、長時間過密労働の是正や地域間格差の解消、初任給の改善、臨時・非常勤職員の処遇改善などに努力するよう要請しました。

地域間格差の解消、臨時・非常勤職員の処遇改善などを要請

 全人連への申し入れは、公務労組連絡会から猿橋議長(自治労連委員長)、中村副議長(全教委員長)、秋山事務局長、杉本・米田の各事務局次長、松井書記、自治労連の中川書記長、全教の小畑書記長が出席しました。

 全人連側は、青山佾(やすし)会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、鍬田(北海道)、千葉(宮城県)、小川(静岡県)、戸田(愛知県)、栗原(大阪府)、津山(広島県)、井川(香川県)、井手(福岡県)、岡部(横浜市)の各人事委員会代表ほかが出席しました。

全人連要請 はじめに、猿橋議長が要請書(別掲)を青山会長に手交しました。
 猿橋議長は、申し入れにあたり「多くの自治体職場や学校現場では長時間労働が蔓延しており、根本的な解決にむけて人員を増やすことが求められている。また、政府において定年延長の検討が行われているが、雇用と年金の確実な接続は使用者としての責務であり、再任用者の雇用保障と生計費にもとづく所得水準の確保を強く求める。地方自治体では『会計年度任用職員制度』導入にむけた本格的な議論がすすめられる。各人事員会においても不利益が生じないよう努力を求める」と要請しました。

 自治労連の中川悟書記長は、自治体での実態を示しながら、地域間格差の解消と初任給の改善などを求めるとともに、「会計年度任用職員」制度によって多くの特別職の非常勤職員は労働基本権が制約されることから、「法の谷間の下で、賃金・雇用は民間より劣悪で、労働基本権さえ奪われ、その『代償措置』もない。これでどうして臨時非常勤職員の生活と権利が守られるのか」と、臨時非常勤職員の賃金・労働条件の改善を強く要請しました。

 全教の小畑雅子書記長は、教職員の長時間過密労働が社会的な問題になり、中教審から「学校における働き方改革」にかかわる答申が示されるもとで、「8時間労働制の原点に立ち、教職員のいのちと健康を守る観点に立つことが重要であり、一刻の猶予もできないない問題だ」とのべ、教職員定数を抜本的に改善するように求めました。

定年延長、教員の長時間労働是正の動きに注視する

 要請に対して、青山会長からは以下のような回答が示されました。

【青山全人連会長の回答】

 ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。早速、全国の人事委員会にお伝えします。さて、折角の機会ですので、現在の状況認識等について、一言、申し上げます。
 最近の経済状況を見ますと、本年1月29日に発表された政府の月例経済報告では、景気について「緩やかに回復している」との判断が示されております。また、先行きについては、「緩やかな回復が続くことが期待される」としつつも、「通商問題の動向が世界経済に与える影響など海外経済の不確実性に留意する必要がある」としております。

 そのような中、既に始まっている本年の春季労使交渉では、賃上げについて様々な議論がなされているところであり、どの程度の水準が実現するのか、賃上げの手段等を含め、今後の行方を注視していく必要があると考えております。

 また、各企業における「働き方改革」関連法への対応や、教員の長時間労働の是正、今後予定される公務員の定年引上げに関する法案の取扱いについても、引き続き注視してまいります。

 現在、人事院及び各人事委員会では、民間給与の実態を的確に把握できるよう、本年の民間給与実態調査の実施に向け、その準備を進めているところです。
 今後、各人事委員会においては、社会経済の動向なども踏まえながら、本日の要請内容も含め、本年の勧告に向けた検討を進めていくことになろうかと思います。

 改めて申すまでもありませんが、公務員の給与等の勤務条件について、社会情勢に適応した適正な水準を確保することは、人事委員会の重要な使命であると認識しております。
 全人連といたしましては、本年も各人事委員会の主体的な取組を支援するとともに、人事院、各人事委員会との意見交換に努めてまいります。

以上

【全人連に提出した要請書】

2019年2月5日
全国人事委員会連合会
 会 長  青山 佾 殿
公 務 労 組 連 絡 会
議 長  猿橋 均 

日本自治体労働組合総連合 
  中央執行委員長 猿橋 均 
全 日 本 教 職 員 組 合    
 中央執行委員長 中村 尚史

地方公務員の賃金等の改善にかかわる要請書

 日頃から地方公務員の勤務条件の向上に努力されていることに敬意を表します。
 さて、政府が賃上げを政策課題にすえるなど、日本経済との関係でもすべての労働者の賃上げは喫緊の課題になっています。とりわけ、地域の公務員賃金は地場賃金にも影響し、地域経済と密接な関係にあり、その改善が求められます。

 昨年4月に国家公務員の「給与制度の総合的見直し」が完成し、地域間・年代間の賃金格差が固定され、地方では、この地域間格差が公務員離れを加速させ、人材確保を困難にしています。
 また、人事院は昨年8月に定年年齢を65歳に引き上げるための意見申し出を行いましたが、その後の政府の検討状況が明らかになっておらず、職員の不安と職場の困惑が高まっています。定年年齢の引き上げは、職員や労働組合の合意と納得のもとに進めなければなりませんが、雇用と年金を確実につなげることは使用者としての責務であり、現時点では、再任用希望者の雇用保障と生計費にもとづく所得水準の確保ならびに65歳まで働き続けられる職場・仕事の確保が重要な課題です。

 地方公務員の長時間過密労働はますます拡大し、メンタル不調で長期休業した職員は1%を超え高止まりしており、人員増は待ったなしの課題です。あわせて、2020年4月の改正地方公務員法および地方自治法施行にむけて各自治体で会計年度任用職員制度移行の検討や移行後の賃金・労働条件の交渉が行われています。

 第一線で奮闘する公務労働者の労苦に報い、良質な行政サービス・教育を提供するためにも、各地の人事委員会が労働基本権制約の代償機関としての責務と役割をふまえて、下記要求の実現に尽力されることを要請いたします。



1、住民の暮らしや子どもたちの教育のため、日夜、献身的に奮闘している自治体労働者・教職員を励ますとともに、「全体の奉仕者」としての誇りと尊厳を持って職務に専念できるように、生計費原則をふまえ、正規・非正規を問わずすべての公務労働者の賃金・労働条件を改善すること。

2、民間給与実態調査にあたっては、単に民間の賃金水準と機械的に比較するのではなく、地方自治や地方公共団体のあり方、公務・公共サービスのあり方と密接不可分であることに十分留意して調査を行うこと。とりわけ、勤続・経験年数の加味、雇用形態、民間一時金水準の厳正な把握とともに、比較対象企業規模を100人以上にすること。

3、職務給原則に反した賃金格差の拡大や高齢層の昇給抑制等をやめること。全労連が実施した最低生計費調査の結果、全国各地でほとんど差がないことや、20歳代でも時給換算で1,300円以上必要であることが明らかとなっており、地域間格差を拡大する地域手当を廃止し基本給に繰り入れるとともに、初任給を改善すること。

4、地方の公務員賃金引き下げにつながる政府・人事院による給与制度の改悪に対して、人事委員会として意見表明していただくこと。

5、子どもたちのさまざまな困難に対応している教職員のモチベーションを支えるためにも、職責と勤務実態に応じた教職員の適正な賃金水準を確保すること。

6、障がい者雇用を進めるための職場環境、人員の確保について意見申し出や勧告を行っていただくこと

7、職員の異常な長時間過密労働を解消するため、必要な人員の確保を勧告すること。また、労働基準監督機関として適切な労働時間管理が行われているか監督するとともに、必要な措置を行うこと。労働基準法33条3項の拡大解釈を認めず、同法36条にもとづく協定の締結を指導すること。

8、教職員の長時間過密労働の解消に向けた定数増を地方教育委員会に求めること。また、政府が進めようとする一年単位の変形労働時間制の導入は行わないこと。

9、男女共同参画推進、女性の活躍推進の立場から、不妊治療、妊娠、出産、育児、家族看護や介護に関する休暇・休業制度等を拡充するとともに、休暇・休業制度が取得しやすい職場環境を整備すること。

10、臨時・非常勤職員について、賃金をはじめ休暇制度など労働条件の改善、雇用の安定・均等待遇の実現などにむけて必要な対策を行うこと。
  とくに、会計年度任用職員制度の導入にあたっては、正規職員との均等待遇確保を念頭に置いた賃金・労働条件の改善勧告を行うこと。

11、定年年齢の引き上げにあたっては、生計費をふまえた所得水準を確保するとともに、65歳まで働き続けられる職場・仕事となるよう人事委員会としての役割をはたすこと。

以 上