NETニュースNO.977 夏季重点要求で内閣人事局と最終交渉(7/30)


賃金・初任給の改善、均等待遇の実現にきわめて不満な回答

= 夏季重点要求をめぐって内閣人事局と最終交渉 =

 公務労組連絡会は7月30日、政府・人事院に提出した夏季重点要求にかかわって内閣人事局との最終交渉を行いました。交渉には、猿橋議長を先頭に中村副議長(全教委員長)、竹内副議長(特殊法人労連議長)、秋山事務局長、杉本事務局次長、松井書記、国公労連から中本中執が参加しました。内閣人事局側は岡総括補佐ほかが対応しました。


賃金要求に対して「勧告制度の尊重が基本姿勢」の回答にとどまる

内閣人事局交渉 最終交渉にあたって猿橋議長は、「毎年のように発生する大規模自然災害のもとで、国民、住民の命とくらしを守ることは、国や自治体の責務だ。その責務を果たすうえで必要な行政や教育の体制を確立し、拡充することが政府の責任であり、正規の公務員を増員するよう強く求めておく。非常勤職員の賃上げ、地域手当による賃金格差や高齢層賃金抑制の是正は、使用者である政府としての責任だ。人事院勧告前の最終交渉として、誠意ある回答を求める」として最終回答を求めました。

 内閣人事局側は、次のように最終回答を行いました。
 ● 6月20日に提出された要求書について、7月18日に中間回答を行ったところだが、その後本日までの検討結果を踏まえ、最終回答を行う。

 ● 「賃金の改善等」に関して、国家公務員の給与改定にあたっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則のもと、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。
 本年の給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点にたって総合的に検討を行ったうえで方針を決定してまいりたいと考えている。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。

 ● 「非常勤職員の雇用の安定・処遇改善」に関して、非常勤職員の処遇改善については、昨年5月に、非常勤職員の基本給・特別給・給与改定にかかる平成30年度以降の取り扱いについて各府省で申し合わせたところであるが、引き続き、各府省においてこの申合せに沿った処遇改善が着実に進むよう、関係機関とも連携しながら必要なとりくみを進めてまいりたい。

 ● 「高齢期雇用・定年延長」に関して、国家公務員の定年の引き上げについては、関係省庁の局長級により構成される「公務員の定年の引上げに関する検討会」において論点を整理し、本年2月16日付で、人事院に対して検討を要請したところであり、6月の「経済財政運営と改革の基本方針2018」においても、「平均寿命の伸長や少子高齢化の進展を踏まえ、複雑高度化する行政課題に的確に対応する観点から、公務員の定年を段階的に65歳に引き上げる方向で検討する。その際、人事評価に基づく能力・実績主義の人事管理の徹底等について、併せて検討を行う」こととしている。今後、人事院における検討を踏まえたうえで、具体的な制度設計を行い、結論を得てまいりたいと考えているところであり、その際、皆様も含めた関係者の意見も聞きつつ、進めてまいりたい。
 なお、定年退職者の再任用については、引き続き平成25年3月の閣議決定にそって、政府全体で着実に推進してまいりたい。

 ● 「民主的公務員制度と労働基本権の確立」に関して、国家公務員の労働基本権については、国家公務員制度改革基本法第12条において、「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする」とされている。
  自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、引き続き慎重に検討する必要があると考えている。皆様とは、引き続き意見交換をさせていただきたい。

 ● 「労働時間短縮、休暇制度など働くルールの確立」に関して、平成26年10月に取りまとめた「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」にもとづき、政府一丸となって、長時間労働を前提とした働き方をあらためる意識改革や業務の効率化等を通じた超過勤務の縮減・テレワークや、フレックスタイム制などによる働く時間と場所の柔軟化等にとりくんできたところ。
 平成29年4月からは、超過勤務を実施する際に、その理由や見込時間等を上司が把握するなど、勤務時間の適切な管理をさらに徹底することとしたところ。今後とも、リモートアクセスとペーパレスの推進、管理職をはじめとしたマネジメント改革等にも積極的にとりくみつつ、すべての職員が存分に能力を発揮できる環境づくりに努めてまいりたい。

 なお、超過勤務の上限規制等については、超過勤務を含めた国家公務員の勤務条件は、一義的には人事院において検討していただく必要があると考えているが、政府としても、(1)長時間労働を前提とした働き方をあらためる意識改革や業務効率化等を通じた超過勤務の縮減、(2)超過勤務を実施する際に、その理由や見込み時間等を上司が把握するなどの超過勤務時間の適切な管理の徹底等にとりくんでおり、引き続き、皆様のご意見も伺いながら、長時間労働の是正にむけた、実効性のある対策を検討してまいりたい。

 ● 「健康・安全確保、母性保護等」に関して、職員の勤務能率の発揮及び増進をはかるため、平成28年3月に改正した「国家公務員健康増進等基本計画」にもとづき、職員の心身の健康の保持増進等に努めてまいりたい。
 基本計画には数値目標(実施率100%)を導入しているが、このうち、28年度におけるストレスチェックの実施はほぼ100%であり、管理職員等に対する心の健康づくりやハラスメント防止に関する研修の受講率は約9割、要医療該当職員や二次健診対象職員の受診率は約6割などとなっている。
 引き続き、各府省における基本計画の実施状況を把握し、各府省において必要な措置が講じられるようとりくんでまいりたい。

定年延長は民間の規範とせよ 公務職場から過労死をなくせ

 以上の回答を受けて秋山事務局長は、「最終回答が示されたが、何ら具体的なものはなく、公務労組連絡会の要求について誠実に検討したものとは到底受け止めることはできない。従来の域をでない不満な回答であることを表明する」として、以下のように発言しました。

 ○ 1つは、公務員賃金の改善について。景気回復のためにも「人事院勧告制度の尊重」にとどまらない政府としての対応こそが求められていることを申し上げておく。今年の最賃の目安額が示されたが目安通りの引き上げならば東京は時間額985円となる。あらためて、初任給の改善を強く求める。同時に、国の行政で働く臨時・非常勤職員などの時間額について委託労働者を含め直ちに1,000円以上、少なくとも1,500円に引き上げるよう強く求める。

 ○ 2つは、非常勤職員について。画一的な「公募要件」は、行政サービスや公務の能率的運営を阻害するものであるとともに、非常勤職員の働きがいや誇りを損ねる人権侵害の制度である。良質な行政サービスを確保する点からも、無期雇用転換など労働契約法の準用も含め、政府・使用者として制度の抜本見直しに着手するよう求めてきた。我々は、恒常的、専門的業務は正規の公務員で行うことが必要だと考えるが、現に働いている非常勤職員について、政府・使用者として、均等待遇の実現や常勤化を含む雇用の安定化、無期雇用化にむけた具体的な検討・協議を行うよう求める。

 ○ 3つは、高齢期雇用・定年延長について。公務の定年年齢の引き上げは、民間に先行した制度であり、65歳まで働くうえでの規範となることを指摘しておく。同時に、国民に対して質の高い行政サービスを提供するためにも、60歳を過ぎても公務労働者が誇りとやりがいをもって働き、知識と経験、能力を発揮することが重要だ。60歳前と同じ職務に従事しているのに賃下げとなれば、やる気を失い、能力発揮を阻害することは明白だ。賃下げなしで、安心して働き続けられる定年引き上げの制度をつくることを求める。

 定年引き上げを段階的に行うとすると、定年延長者と再任用者が混在することとなるが、賃金に乖離があると再任用者はやる気を失う。あらためて、政府として希望者全員のフルタイム再任用の確保と定員管理の柔軟化、賃金水準の改善を強く求める。

 ○ 4つは、労働時間短縮について。人事院において超勤の上限規制が検討されているが、民間法制と同様に、単月100時間未満、年間720時間という過労死水準の規制となっている。使用者である政府として公務職場から過労死をなくす方針をしっかり据えて、そのためのすべての省庁での勤務時間管理の徹底をはかるよう求める。同時に、国民が求める公務・公共サービスの維持・拡充のためにも、定員削減計画は中止・撤回し、地方自治体も含めて行政需要や業務量にふさわしい定員の確保・配置を行うよう求める。

 ○ 最後に、労働基本権問題について、従来と同じ回答が示されたが、ILО勧告で指摘されている「期限を区切った行動計画の策定」についての協議の場を早急に設けるようあらためて要求する。

 交渉参加者からも各職場での状況を具体的に示しながら発言があり、これらの追及に対して内閣人事局は次のように再回答しました。

 ● 給与に関しては人勧を尊重することが基本。勧告をふまえ、総合的に検討して方針を確立する。その際には、十分な意見交換を行いたい。
 ● 非常勤職員については、これまで昨年の申し合わせなどをふまえ、各省庁での対応を促していく。
 ● 高齢期雇用に関しては、人事院における検討を踏まえたうえで、具体的な制度設計を行い、結論を得たい。
 ● 時間外の規制は一義的には人事院。意見もふまえ、是正にむけた検討を行いたい。
 ● 基本権に関する課題は多岐にわたる。引き続き検討を行うとともに、意見交換を行っていきたい。
 ● きびしい財政状況の中ではあるが、不断の見直しで定員の再配置などを進めている。現場の状況などいただいた意見は担当に伝えたい。

人事院勧告後にあらためて要求書を提出、誠意ある交渉を求める

 最後に猿橋議長が、「当初より私たちが求めてきた初任給の改善、非常勤職員の休暇の改善をはじめとする均等待遇の実現、賃下げなしの定年年齢の引き上げ、長時間過密労働の是正などの重点要求に関わる回答内容は、要求に対する具体的な検討内容すら示さない、まったく不十分なものだ。8月上旬頃には人事院勧告が予定されているが、勧告が出されれば、あらためて勧告取り扱いにかかる要求を提出する。真摯な対応を強く求める」とのべて交渉を締めくくりました。

以 上