No. 916
   2015年8月10日
地方公務 員・教職員の生活改善にむけた勧告を

= 15年人事院勧告をうけて全 人連に申し入れ =

 15年人事院勧告をうけて、公務労組連絡会は8月10日、自治労連・全教 とともに、全国人事委員会連合会(全人連)への申し入れをおこないました。
 2年連続のベースアップが勧告されながらも、賃金の地域 間格差を拡大する地域手当の前倒し引き上げや、真の労働時間短縮につながらない「フレックスタイム制」拡大が勧告されたもとで、人事院勧告に追随すること なく、自治体職員や教員の生活改善と地域経済の活性化にむけた積極的な賃金改善を全人連に申し入れました。
 また、同日には、総務省 に対して要請行動にとりくみ、地方自治体で働く公務労働者の賃金・労働条件の改善を求めました。


地方切り捨ての人事院勧告に追随するな

 全人連への申し入れには、公務労組連絡会から は、猿橋副議長(自治労連委員長代行)、川村事務局長、杉本事務局次長、檀原幹事、自治労連から中川書記長、全教から小畑書記長が出席しました。
  全人連側は、藤田事務局長(青山会長の代理、東京都人事委員会事務局長)をはじめ、赤塚(北海道)、小川(宮城県)、今井(群馬県)、石川(愛知県)、栗 原(大阪府)、森信(広島県)、秋元(高知県)、久保(福岡県)、魚本(横浜市)の各人事委員会代表ほかが出席しました。

  はじめに、猿橋副議長が、要請書(別掲)を藤田事務局長に手交し、「人事院は、昨年に続いて国家公務員の月例給・一時金ともに引き上げる一方で、本来、公 平に配分すべき官民較差の原資の多くを、『給与制度の総合的見直し』の推進として4月に遡って地域手当の支給割合を引き上げることを勧告した。公務員賃金 の地域間格差を拡大する地域手当は、地方自治体での矛盾が大きく、地域経済の活性化にも逆行するものであり、公務労組連絡会として断固反対する。『フレッ クスタイム制』の拡大も勧告されたが、住民と直接かかわる窓口など自治体の職場への導入は困難だ。いま必要なのは、自治体職員を増員して公務・公共サービ スを拡充することであり、地方公務員が安んじて公務に専念できる環境を整備することだ」とのべ、国の「給与制度見直し」に追随せず、地方公務員の生活改 善、地域経済の活性化にむけて尽力するよう強く求めました。

 また、自治労連の中川書記長は、「2年連続の改善 勧告だが、『給与見直し』の賃下げの現給保障中の『名ばかり賃上げ』であり、実際には賃金据え置き勧告だ。昨年は、17政令市、6府県の人事委員会が『給 与制度見直し』を見送ったことをふまえ、『給与制度見直し』は中止したうえすべての職員の賃金引き上げにつながる勧告を求める」とのべ、非常勤職員処遇改 善とともに、「フレックスタイム制」の問題点を指摘しました。
 全教の小畑書記長は、教職員の長時間労働の問題をОECD調査結果や 文科省の業務実態調査もふまえて指摘し、「教職員の長時間過密労働を解消し、実効ある両立支援策を策定するよう求める。雇用と年金の接続について、人事院 の意見の申出にもとづいて『定年延長の段階的実施』の実現のための必要な措置をとるよう強く求める」と要請しました。

中 立、公正な人事行政の専門機関としての使命を果た

 要請に対して、藤田事務局長から、「本来であれば、全人連 会長からお答えするところだが、所用により不在のため、私から全国の人事委員会を代表してお答えする」として、以下のような回答が示されました。

【全 人連の回答】
 ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。さっそく、役員府県市を通じて、全国の人事委員会にお伝 えいたします。
 ご存じのとおり、8月6日に人事院勧告が行われました。本年の官民較差は、ベースアップを実施した民間事業所の割合 が昨年よりさらに増加するなど、引き続き、賃金の引上げを図る傾向が認められたことから、平均1,469円、率にして0.36%、民間給与が公務員給与を 上回るとしております。
 この較差を埋めるため、初任給を引き上げるとともに、若年層における俸給表水準についても同程度の改定を行 う一方、高齢層においては、給与制度の総合的見直し等により官民の給与差が縮小することを踏まえ、引上げを行うこととしております。
  特別給につきましても、民間の支給割合と均衡するよう、支給月数を0.1月分引き上げることとし、引上げ分は勤勉手当に配分することとしております。
ま た、本年は、勤務時間に関する勧告として、適切な公務運営の確保に配慮しつつ、原則として全ての職員を対象にフレックスタイム制を拡充することとしており ます。
 このほか、公務員人事管理に関する報告では、能力・実績に基づく人事管理の推進や女性の採用・登用の拡大、仕事と家庭の両立 支援の促進、高齢層職員の能力及び経験の活用等について意見が述べられております。
 詳細につきましては、これから人事院の説明を受 けますが、国家公務員と地方公務員の立場の違いはありつつも、人事院の勧告は、各人事委員会が勧告作業を行う上で、参考となるものであることから、その内 容については、十分に吟味する必要があると考えております。
 今後、各人事委員会は、皆様からの要請の趣旨も考慮しながら、それぞれ の実情等を勘案し、主体性をもって対処していくことになるものと考えております。
 改めて申すまでもありませんが、各人事委員会とい たしましては、本年も、中立かつ公正な人事行政の専門機関として、その使命を果たしてまいります。
 全人連といたしましても、各人事 委員会の主体的な取組を支援するとともに、人事院、各人事委員会との意見交換に十分努めていきたいと考えております。
 ただいまの皆 様からの要請につきましては、確かに承りました。さっそく、役員府県市を通じて、全国の人事委員会にお伝えいたします。

総 務省に要請書提出
賃金・労働条件決定にあたり自治体の自主性・主体性の尊重を

 公務労組連絡会は8月10日、自治労連、全教 と連名で、総務省に対して「2015年人事院勧告の取り扱いに関する要請」(別掲)を提出しました。要請には、米田公務労組連事務局次長・全教副委員長、 田川自治労連副委員長、熊谷自治労連中執が参加。総務省側は公務員部の佐藤給与能率推進室課長補佐、松田公務員課課長補佐が対応しました。
  要請団からは、今回の勧告が地域間の賃金格差をいっそう拡大する重大な問題点を持つものであり、地方の賃金・労働条件決定にあたり、自治体の自主性・主体 性を尊重すること、加えて、財政措置を利用した賃金・労働条件切り下げの強制は行わないことを強く求めました。


【全人連・総務省に提出した要請書】
2015 年8月10日
全国人事委員会連合会
 会 長  青 山  
 殿
公 務 労 組 連 絡 会   
   議  長   蟹澤 昭三 
全国自治体労働組合総連合 
中央執行委員長 野村 幸裕
                       全日本教職員組合            
中央執行委員長 蟹澤 昭三

地方人事委員会の勧告に関する要請書

 日頃から地方公務員の労働条件の改善に努力さ れていることに敬意を表します。
 人事院は8月6日、国家公務員一般職の給与にかかわって、本年4月にさかのぼって月例給および一時 金を引き上げるとともに、「給与制度の総合的見直し」による地域手当の支給率を引き上げる勧告を内閣と国会に対しておこないました。
  この勧告は、地域手当の不支給地域を多く抱える地方自治体に、賃金における分断と格差の拡大をもたらすとともに、地域間の賃金格差の拡大は、地場賃金にも 連動して地域経済を冷え込ませるものです。
 あわせて、「フレックスタイム制度」の拡大に関する勤務時間法の改正を勧告しています。 この制度は、現行の勤務時間の割り振り変更を用いた「変形労働制」ともいうべきものであり、希望する公務労働者の「申告」を前提にしているものの、ぎりぎ りの職員が過大な業務量にとりくんでいる自治体・学校職場になじむものではありません。
 26か月連続で実質賃金が減少・停滞するな か、生活改善をはかるうえで、地方公務員・教職員の賃金改善が強く求められます。また、来年4月には報酬比例部分年金の支給開始年齢が62歳に引き上げら れることから、雇用と年金の確実な接続と賃金改善は喫緊の課題となっています。今後、各地の人事委員会においても、本年の勧告にむけた作業がおこなわれま すが、住民の暮らしを支える公務労働者の労苦に応えるためにも、下記要求の実現に尽力されることを強く要請いたします。



1、公務員賃金の持つ社会的影響力を考慮し、賃 金を改善する勧告をおこなうこと。特に、最低賃金以下の水準となっている高卒初任給と1年以上年金の空白期間が生ずる再任用職員給料を大幅に引き上げ、初 任給については在職者調整をおこなうこと。また、地域経済を冷え込ませ、高齢者の生活を破壊する「給与制度の総合的見直し」はおこなわないこと。
2、 地方公務員・関連労働者、臨時・非常勤職員の生活実態をふまえ、「全体の奉仕者」として誇りと尊厳を持って職務に専念できるよう、賃金・労働条件の改善・ 充実をはかる勧告をおこなうこと。
3、給料表については生計費原則に立った構造とし、職務による格差の拡大、中高年層の給与の抑制を やめるとともに、初任給改善、号給足伸ばしなど必要な措置を講じること。また、比較対象企業規模を「100人以上」にすること。
4、 職員の誰もが意欲をもって働き、住民に信頼される中立・公正な地方行政を確保する観点から、人事評価制度は能力開発に限定し、評価結果を給与や手当に反映 させないこと。
5、教員の給与勧告にあたっては、地方公務員法および人材確保法にもとづき、勤務実態に応じた適切な給与水準を確保す ること。
6、超過勤務縮減へ向けた具体的措置を講じること。
7、臨時・非常勤職員について、パート労働法・改正 労働契約法の趣旨もふまえつつ、賃金をはじめ休暇制度など労働条件の改善、雇用の安定・均等待遇の実現などにむけて必要な対策をおこなうこと。すべての人 事委員会で実態把握の上、改善措置を勧告すること。
8、確実な「雇用と年金の接続」のため、定年延長により希望するすべての職員の雇 用を保障すること。現行の再任用職員の賃金については、生活を維持するにふさわしく引き上げること。
以 上


2015年8月10日
総務大臣 
  高市 早苗 様
公 務 労 組 連 絡 会    
   議 長     蟹澤 昭三 
        全国自治体労働組合総連合 
中央執行委員長 野村 幸裕
                                                全日本教職員組合
中央執行委員長 蟹澤 昭三

2015年人事院勧告の取り扱いに関する要請

 貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善に向 けたご努力に敬意を表します。
 人事院は8月6日、政府と国会に対して2015年度の給与勧告等を行いました。勧告は、2015年春 闘における民間賃金の引き上げ状況を反映し、月例給・一時金ともにプラス改定となりましたが、月例給の引き上げ率は極めて低く、引き続き高齢層の賃金を抑 制するとともに、一時金の改善をすべて勤勉手当に割り振ることや臨時・非常勤職員の賃金・労働条件改善を見送るなどの問題点を持つものです。
  同時に、低額勧告は、政府・与党も推進する「経済の好循環」「地方創生」にも水を差すものと言わざるをえません。
 人事管理に関する 報告では、ワークライフバランスを口実に、民間とは全く異なる「フレックスタイム制」導入に言及しました。これに対しては、職員の労働時間管理を困難に し、さらに定数改善抜きの導入は、この間、首相官邸主導で行われている「ゆう活」同様に、職員の生活リズムを崩し、かえって長時間労働を助長するとの懸念 が広がっているのが現実です。
 貴職におかれては、今後、地方自治体における人事委員会勧告の内容や取り扱い等について、地方自治の 原則にのっとり、地方自治体の実情に即して行われる労使間の交渉・協議を踏まえた自主的な賃金・労働条件決定過程を尊重することなど、下記の通り要請しま す。



1、地方公務員の賃金・労働条件の決定にあた り、地方自治体の自主性・主体性を尊重すること。
2、「行革インセンティブ」として、財政措置を利用した賃金・労働条件切り下げの強 制は行わないこと。
3、将来にわたって地方公務員の賃下げを進める「給与制度の総合的見直し」の押し付けはやめること。
以 上