No. 893
   2014年8月7日

勧告の取り扱いは交渉・協議のもとで検討せよ

= 「給与制度見直し」の実施に反対して内閣人事局に要求書提出 =

 人事院は7日、国家公 務員給与にかかわって、「1,090円、0.27%」の官民較差にもとづいて若年層を重点に置いて月例給を引き上げるとともに、一時金を0.15月引き上 げて年間4.10月とする勧告を国会と内閣に対しておこないました。
 一方、公務労組連絡会が強く反対してきた「給与制度の総合的見直し」を強行し、平均2%の賃金水準引き下げや地域手当の見直し、50歳代後半層職員の最 大4%の賃下げなどを勧告に盛り込みました。
 公務労組連絡会では、勧告当日にただちに内閣人事局に要求書を提出、勧告の取り扱いは労働組合との十分な交渉・協議のもとで検討するよう求めました。

新たな賃下げねらう 「給与体系の抜本改革」の閣議決定は撤回を

 7日の内閣人事局への要求書提出・交渉には、公務労組連絡会から 北村議長、川村事務局長、米田・関口の各事務局次長が参加、内閣人事局側は、辻総括参事官補佐、西山参事官補佐ほかが対応しました。
 はじめに、北村議長は、別添の「要求書」を提出し、「月例給・一 時金ともに引き上げ改定される一方で、賃金水準を平均で2%引き下げる『給与制度の総合的見直し』は認められない。今後、勧告の取り扱いの議論が政府です すめられるもと、要求書にもとづいて公務労働者の賃金・労働条件の改善を求める」とのべ、つづいて川村事務局長が要求書について以下の点を強調しました。
○ 7年ぶりのベア勧告となったが、2年にわたって賃下げがつづい たこと、消費税増税や物価上昇をふまえれば、勧告は公務労働者の生活を改善するまでにはいたらない。政府をあげて労働者の賃上げをめざしていることから も、「勧告尊重」にとどまらずより積極的な賃金改善にむけた検討を求める。
○ こうした立場から、賃金水準を引き下げる「給与制度の総合的見 直し」は認められない。地域手当の見直しで賃金の地域間格差を20%に拡大することは、国公法の「職務給の原則」に反する。55歳を超えるベテラン職員の 最大4%の賃下げは、若年層まで将来不安をひろげるなど数々の問題点がある。また、労働組合との納得の合意もなく勧告された手順にも問題が残る。
○ その点で、「給与制度の総合的見直し」をふくめて勧告の取り扱 いにかかわっては、労働組合との納得と合意のもとですすめるよう求める。また、そもそも、「見直し」勧告は、政府方針が閣議決定した「給与体系の抜本改 革」と一体のものであり、あらためて「給与体系の抜本改革」の方針撤回を求める。
○ 再任用職員の賃金にかかわって、勧告では単身赴任手当等の改善 にとどまった。年金が支給されないなかでの生活を維持するにふさわしい賃金に引き上げるよう、使用者としての検討を求める。
 交渉参加者は、「政府方針を着実に実行する勧告だ。勧告制度を 使って賃下げを押しつけるものであり認められない。とくに、賃下げ法の際のように、政府が地方に同様の措置を押しつけないよう強く求める」「人材確保のた め本府省業務調整手当を新設しているが、人材確保の必要性は地方でも同じであり、全体の賃金底上げこそ必要だ」「学校では、管理職には休日や深夜の労働に 手当が付いても、一般の教員には何もない。全体の協力で成り立っているのに大きな矛盾だ」「職場の要になっている50歳代職員が果たしている役割を無視し て、民間賃金だけを口実にして下げるのは問題であり、使用者として十分な検討を求める」と主張しました。
 これに対して辻総括参事官補佐は、「本日、人事院勧告を受け取っ たところであり、速やかに給与関係閣僚会議の開催をお願いし、その取り扱いの検討に着手したいと考えている」と現状をのべ、「人事院勧告制度は、労働基本 権制約の代償措置の根幹をなすものであり、政府としては、同制度を尊重するとの基本姿勢に立ち、国政全般の観点から検討を進めていくこととなる。その際に は、みなさんからの意見も十分にお聞きしたい」とのべました。
 北村議長は最後に、「民間賃金の低い地域に合わせて公務員賃金を 下げれば、地場賃金にも影響して『賃下げの悪循環』をまねき、政府が労働者の賃上げをめざしていることとも逆行する。そうした方向が今年の人事院勧告で具 体化され、現実のものとなりつつある。その点からも、人事院勧告の取り扱いについては、公務労組連絡会と十分な交渉・協議をすすめ、要求実現にむけた検討 をすすめるよう求める」とのべました。
以  上

【内閣人事局に提出した要求書】
2014 年8月7日
内閣総理大臣 安倍 晋三 殿
内閣官房長官 菅  義偉 殿
公 務 労 組 連 絡 会
 議長  北村 佳久

公務員賃金等に関する要求書

 人事院は本日、国家公務員一般職の給与にかかわって、 「1,090円、0.27%」の官民較差による月例給引き上げ、0.15月の一時金の引き上げなどとともに、「給与制度の総合的見直し」による来年4月か らの俸給水準の平均2%引き下げ、地域手当の支給地域・支給率の見直し、高齢層の賃金抑制などを内容とした勧告を、内閣と国会に対しておこないました。
 「給与制度の総合的見直し」は、現行でも18%の格差がある賃金 の地域間格差をさらに拡大させ、国家公務員法に定める「職務給の原則」にも反する問題を持っています。また、高齢層の賃金抑制は、ベテラン層の働きがいを 失わせ、退職手当の引き下げや年金支給が切り下げられるなか、若年層をふくめて将来に対する不安をひろげることとなります。
 とりわけ、今回の「見直し」が「給与体系の抜本改革」を求める政 府要請にもとづいて勧告され、安倍首相が国会答弁しているように、「給与臨時特例法」に代わる恒久的な賃下げを目的とした点は断じて認められません。地方 の公務員賃金引き下げは地域経済を冷え込ませ、そのことは、政府が労働者の賃上げによる景気回復をめざしていることとも逆行します。
 以上のような問題意識から、14年人事院勧告にあたって下記要求 を取りまとめました。使用者として、要求にそって公務労働者の賃金・労働条件改善に全力をあげるよう求めます。



1、職員の働きがいや仕事に対する誇りとともに、公務員賃金の持つ社会的影響力をふまえ、初任給をはじめ公務労働者の賃金・労働条件の積極的な改善をはか ること。


2、地域の公務員賃金引き下げ、高齢層の賃金抑制などをすすめる 「給与体系の抜本改革」の方針を撤回すること。俸給水準を引き下げる「給与制度の総合的見直し」の勧告は実施せず、勧告の取り扱いは労働組合の納得と合意 のもとで決定すること。

3、臨時・非常勤職員の賃金・労働条件改善をはかり、均等待遇を実 現すること。

4、雇用と年金の確実な接続をはかるため、定年延長を早期に実現す ること。当面、再任用職員の賃金・諸手当は、年金支給開始までの生活を維持するにふさわく引き上げること。

5、地方自治体、独立行政法人等の賃金決定に不当な介入・干渉をお こなわないこと。

6、労働基本権の全面回復など憲法とILO勧告に沿った民主的公務 員制度を確立すること。
以 上