No. 869
   2013年6月13日

賃下げ法の廃止、実支給額にもとづく給与改善勧告を

= 公務労組連絡会が政府・人事院に夏季重点要求書を提出 =

 今年の人事院勧告にむけて、公務労組連絡会は13日、総務省・人事院に対して「夏季重点要求書」を提出 しました。
 総務省には、「賃下げ法」廃止をはじめ、臨時・非常勤職員の賃金・労働条件改善、労働基本権回復など民主的公務員制度の実現を求め、また、人事院には、 「賃下げ法」によって減額された賃金の実支給額で官民比較し、「給与回復・改善」勧告を強く求めました。
 また、「雇用と年金の接続」にむけた国家公務員の高齢期雇用方針が閣議決定されるもと、「公務労働者の高齢期雇用にかかわる要求書」を総務省に提出しま した。


切実な生活実態を訴え、働きがいのある公務労働の実現をせまる

 人事院への要求書提出は、公務労組連絡会から黒田事務局長、米田・関口の各事務局次長、国公労連から国枝中央執行委員が参加、人事院側は、職員福祉局の 井上主任職員団体調査官が対応しました。
 はじめに、黒田事務局長が別添の要求書を提出したうえ、12年勧告では明らかに官民較差がありながらも賃金改善勧告が見送られた経過を指摘し、今年の勧 告では、公務・民間の賃金を実支給額で比較して、賃金減額分を回復する勧告を出すことなどを求めました。
 参加者は、「地方自治体の賃下げがひろがるなかで、今年の勧告は重みが増している。実支給額での比較を強く要求する」「賃下げや退職手当削減は、人材確 保の面からも由々しき事態だ。人事院としての役割を発揮すべきだ」「55歳を超える職員の給与減額や昇給停止は、年齢による賃金差別だ。また、非常勤職員 は、仕事は正規と同じなのに、待遇面では明らかな格差があれば、働きがいもなくなる」などと指摘し、要求書に沿った改善を求めました。井上主任職員団体調 査官は、「要求はうけたまわった。関連の各部局の担当に伝え、検討をすすめたうえで、回答したい」とのべました。

 総務省への要求書提出では、人事・恩給局総務課の西山課長補佐、佐藤課長補佐が対応しました。提出にあたって、黒田事務局長は、地方自治体にまで影響を ひろげている「賃下げ法」をただちに廃止することや、長時間・超過密労働、恒常的な超過勤務を改善するための増員措置、臨時・非常勤職員の待遇改善、国・ 地方の公務員総人件費削減の方針撤回を求めました。
 また、昨年の臨時国会で労働基本権回復にむけた公務員制度改革関連法案が廃案になるもとで、政府としての法案提出をふまえた協約締結権回復の早期実現な どを求めました。
 参加者からは、「国による賃下げの押しつけで、自治体首長は怒っている。全国市長会などからは度重なる反対決議があがっている。もともとの原因となった 『賃下げ法』はすぐに廃止すべきだ」「総務省は、ホームページで賃下げの進捗状況を公開し、賃下げ競争をあおっている。公務員賃金の削減は地域経済や行政 にも打撃だ」「新たな再任用制度は、信賞必罰の能力・実績主義が強調され、人事管理の手段となるのではないか。定年延長の実現が重要だ」などと求めまし た。
 社保庁職員の分限解雇撤回を求めてたたかっている全厚生闘争団の一員でもある国枝国公労連中執は、「分限免職に対する不服審査では、現在まで20人中6 名が処分取り消しの判定が出ている。分限免職自体が不当なものだったことがあらためて明らかになってきているなかで、政府として解雇取り消しに全力をあげ るべきだ」と強く求めました。
 これに対して、西山課長補佐は、「みなさんの要求はうけたまわった。要求内容は多岐にわたっており、今後、総務省としての考え方や対応方針を誠意を持っ て示していきたい」とのべました。

以 上

【人事院あての要求書】
2013年6月13日
人事院総裁 原 恒雄 殿
公 務 労 組 連 絡 会
議長   野村 幸裕

公務労組連絡会2013年夏季重点要求書

 賃金改善によるデフレ脱却が政府全体の課題としてめざされるなか、私たちは13年春闘において、「月額平均1万円」の賃金引き上げ、公務職場で働く労働 者の最低賃金を時間額で1,000円以上に引き上げること、臨時・非常勤職員の均等待遇実現などを要求してきました。
 政府が地方公務員にも国に準じた賃金削減を求めるなど、国・地方の公務労働者の賃下げがひろがっており、賃金改善の要求はより切実なものとなっていま す。人事院は、昨年の勧告では、実際の支給額では7.67%の官民較差を認めながらも、給与改善勧告を見送りましたが、今年も、こうした勧告が繰り返され るならば、労働基本権制約の「代償措置」としての人事院勧告制度の存立さえもおびやかすことになります。
 道理のない理不尽な大幅賃下げは、生活悪化を招くばかりか、働きがいさえも失わせ、さらには、民間賃金や地域経済にも影響することとなり、デフレ脱却の 方向とも逆行します。人事院は、憲法と国公法をふまえて、賃下げの不当性を明らかにし、公務員賃金を回復させる勧告をおこなうべきです。
 また、臨時・非常勤職員の賃金・労働条件改善、常勤職員との均等待遇の実現にむけて、人事行政機関としての役割発揮が強く求められています。
 以上の問題意識から、公務労組連絡会として、春闘要求もふまえた夏季重点要求を下記のとおりとりまとめました。貴職が誠意ある回答を行うよう求めます。



1、勧告の実施について
(1) 官民の給与比較は、賃下げ法により減額されている支給実態をベースに行い、官民較差解消の「給与回復・改善勧告」を行うこと。
  また、民間給与実態調査の対象を拡大したことに伴う影響について検証し、その結果を明らかにすること。
(2) 情勢に適応していない給与支給を行っている政府に対して、労働基本権制約の代償機関として毅然とした意見を表明すること。

2、賃金の改善等について
(1) 従来にもまして厳正・精確な官民給与水準の把握に努めるとともに、公務員給与を職員の生活と労働の実態にふさわしい水準に改善すること。 
(2) 特別給(ボーナス)について、比較対象職種を行政職(一)相当職種に見直すなど現行比較方法を改め、年間支給月数を改善すること。勤勉手当の割合 は縮小すること。特別給の上下格差縮小の観点から管理職加算制度、役職傾斜支給を見直すこと。
(3) 官民較差の配分、手当の決定に当たっては、以下の点を踏まえるとともに、労働組合との十分な交渉・協議の上で行うこと。 
@ 俸給表改定は、初任給近辺の官民較差解消を重点に検討すること。
A 55歳を超える職員に対する1.5%の給与減額措置を直ちに中止すること。加えて、50歳代職員の給与抑制措置を行わないこと。
B 給与構造改革に伴う経過措置額は廃止しないこと。
C 諸手当については、以下の事項を実現すること。
       1) 住居手当の全額支給限度額・最高支給限度額を引き上げること。
       2) 職員に自己負担を生じさせないよう通勤手当の支給要件・支給額を改善すること。
       3) 単身赴任手当の支給要件・支給額を改善すること。
       4) 寒冷地手当の級地区分や指定基準を改め、支給額等を改善すること。
(4) 初任給決定における経験年数調整について改善し、正当に評価すること。
(5) 再任用職員の給与について、年金支給開始までの生活維持にふさわしい水準に引き上げるとともに、現在支給されていない生活関連手当についても支給 対象とすること。

3、労働時間短縮、休暇制度改善等について
(1) 健康で安全なディーセント・ワークの実現およびワークライフバランス確立の観点から、勤務時間および交替制勤務のあり方等について検討すること。
(2) 超過勤務時間の縮減をはじめ、総実勤務時間短縮に向けた実効ある取り組みを引き続き強力に推進すること。そのため、実現の障害となっている定員と 業務量の関係について、公務員の勤務条件改善の観点から必要な意見を表明すること。
(3) 長期勤続休暇(リフレッシュ休暇)を新設すること。

4、非常勤職員の処遇改善について
(1) 非常勤職員制度を抜本的に見直し、雇用の安定、均等待遇などをはかる法制度を整備すること。
(2) 非常勤職員の賃金は行政職(一)1級5号俸を基礎として、学歴、経験年数及び職務内容等の要素を考慮して決定すること。また、諸手当については、 期末手当及び通勤手当の支給額を改善するなど充実すること。
(3) 非常勤職員の休暇を常勤職員と同等の制度とするとともに、以下の事項について早急に改善すること。
@ 無給とされている休暇を有給とすること。
A 非常勤職員の忌引休暇、病気休暇、子の看護休暇について、6か月以上任用の制限を撤廃すること。また、年次有給休暇を採用時から取得できるようにする こと。
B 非常勤職員に対しても、結婚休暇、夏季休暇を制度化すること。また、産前・産後休暇、育児休業などの取得要件の緩和をはかること。
 (4) 年数一律の「雇い止め」を行わないよう各府省庁を指導すること。

5、民主的な公務員制度と労働基本権の確立について
(1) 中立・公正な行政を確立するために、専門・中立的な人事行政機関の責務を果たすこと。
(2) 公務員の市民的・政治的自由を保障する観点から、国公法を改正し、人事院規則14−7(政治的行為)を廃止すること。

6、健康・安全確保、母性保護等について
 (1) 心の病の発生を予防するため、「心の健康づくり」にむけた対策を充実・強化すること。
 (2) パワーハラスメントに対する指針を策定し、具体的な対策を講じること。
(3) 母性が守られ、健康で働き続けられるように、諸権利が行使できる職場環境を整えること。

以 上

【政府あての要求書】
2013年6月13日
内閣総理大臣 安倍 晋三 殿
総務大臣   新藤 義孝 殿
公 務 労 組 連 絡 会
議  長    野村 幸裕
公務労組連絡会2013年夏季重点要求書

 賃金改善によるデフレ脱却が政府全体の課題としてめざされるなか、公務労組連絡会は13年春闘において、「月額平均1万円」の賃金引き上げ、公務職場で 働く労働者の最低賃金を時間給で1,000円以上に引き上げること、臨時・非常勤職員の均等待遇実現などを要求してきました。とくに、国家公務員の賃金を 平均7.8%引き下げている「賃下げ法」の廃止を強く求めてきたところです。
 ところが、政府は、こうした切実な要求に応えるどころか、地方公務員に対しても国に準じた賃下げをせまり、現在、各自治体では、地方交付税や義務教育費 国庫負担金など国の予算が大幅に削減されるなかで、国の押しつけに反対しつつも、職員の賃金削減を対応せざるを得ない状況がひろがっています。
 こうしたもと、職場には、国・地方ともに道理のない理不尽な大幅賃下げの強行への怒りが渦巻いています。賃下げは、生活悪化を招くばかりか、働きがいさ えも失わせ、さらには、民間賃金や地域経済にも影響することとなり、デフレ脱却の方向とも逆行します。
 政府は、使用者としての責任をあらためて認識し、公務労働者の賃金・労働条件改善に全力をあげる必要があります。とりわけ、国・地方の公務員総人件費削 減の方針をただちに撤回し、公務・公共サービスの拡充、働きがいのある職場づくりをすすめることが強く求められています。
 以上の問題意識から、公務労組連絡会として、春闘要求もふまえた夏季重点要求を下記のとおりとりまとめました。貴職が誠意ある回答を行うよう求めます。



1、公務員賃金の改善等について
(1) 職員の生活と労働の実態もふまえて公務員給与の改善をおこなうこと。給与臨時特例法をただちに廃止すること。
(2) 地方自治体・独立行政法人に対する給与削減の押しつけをおこなわないこと。
(3) 民間初任給との格差を是正するため、行政職(一)一般職高卒初任給(1級5号俸)を160,000円、一般職大卒初任給(1級25号俸)を 196,000円に引き上げること。
(4) 一時金について、大幅な改善をはかること。改善部分をすべて期末手当にあてるとともに、役職傾斜支給、管理職加算制度は廃止し、全職員の一時金改 善にあてること。
(5) 退職手当をもとにもどして、退職手当のあり方をふくめた根本的な議論をおこなうこと。
(6) 諸手当については、住居手当(高額家賃の負担軽減)、通勤手当(ガソリン代高騰のもとでの自動車通勤者の負担軽減)、単身赴任手当(生活・交通負 担の軽減)、寒冷地手当(寒冷地生計費の増嵩)の改善を重視すること。
(7) 55歳超職員の給与減額措置を廃止すること。また、高齢層の昇格、昇給制度の改悪など年齢による給与抑制措置などの差別を行わないこと。

2、労働時間短縮、休暇制度改善、健康・安全の確保等について
(1) 正規職員の増員により、東日本大震災の被災地復旧に従事する職員の勤務条件を改善すること。
(2) 超過勤務時間の縮減をはじめ、総実労働時間短縮に向けた実効ある取り組みを引き続き強力に推進すること。とりわけ、業務量に見合った必要な増員を おこなうこと。
(3) 長期勤続休暇(リフレッシュ休暇)を早期に新設すること。
(4) 健康で安全なディーセント・ワークの実現およびワークライフバランス確立の観点から、勤務時間および交替制勤務のあり方等について検討すること。
(5) 心の病の発生を予防するための施策を充実すること。
(6) パワーハラスメントに対する防止指針を策定し、具体的な対策を講じること。

3、高齢期雇用・定年延長について
  (別途提出の「公務労働者の高齢期雇用にかかわる要求書」の通り)

4、非常勤職員の処遇改善について
(1) 非常勤職員制度を抜本的に見直し、雇用の安定、均等待遇などをはかる法制度を整備すること。
(2) 非常勤職員をはじめ、公務職場で働く労働者の最低賃金を「時給1,000円」「日額7,500円」「月額160,000円」以上に引き上げるこ と。
(3) 非常勤職員の賃金は行政職(一)1級5号俸を基礎として、学歴、経験年数及び職務内容等の要素を考慮して決定すること。また、諸手当については、 期末手当及び通勤手当の支給額を改善するなど充実すること。
(4) 非常勤職員の休暇を常勤職員と同等の制度とするとともに、以下の事項について早急に改善すること。
@ 無給とされている休暇を有給とすること。
A 非常勤職員の忌引休暇、病気休暇、子の看護休暇について、6か月以上任用の制限を撤廃すること。また、年次有給休暇を採用時から取得できるようにする こと。
B 非常勤職員に対しても、結婚休暇、夏季休暇を制度化すること。また、産前・産後休暇、育児休業などの取得要件の緩和をはかること。
 (5) 年数一律の「雇い止め」をおこなわないよう各府省庁を指導すること。

5、国の責任による公務・公共サービス拡充にむけて
(1) 公務員総人件費削減をやめること。行政サービスの拡充と職場の労働条件改善をはかるため、総定員法・行革推進法を廃止すること。公契約法を制定す ること。
(2) 東日本大震災の復旧・復興のために行政体制の確立・拡充をはかること。事務・権限の移譲や国の地方出先機関の廃止は行わないこと。
(3) 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律(市場化テスト法)を、廃止すること。
(4) 定員削減計画を中止するとともに、総人件費の削減ではなく、必要な予算・要員を確保すること。
(5) 社会保険庁職員の分限免職を撤回すること。人事院判定をふまえて、ただちに職場復帰させること。
(6) 独立行政法人の制度および組織の見直しにあたっては、各法人の自主性・自律性を尊重し、運営費交付金を拡充すること。

6、民主的な公務員制度と労働基本権の確立について
(1) 憲法28条の原則やILO条約・勧告など国際基準にそって、基本的人権としての労働基本権の全面的な回復を実現すること。
(2) 当面、国・地方の公務員制度改革関連法案を国会提出した到達点をふまえ、協約締結権を早期に回復させること。新しい制度の確立にむけては、労働組 合との交渉・協議のもとで検討をすすめること。
(3) 労働組合の団結と自治を破壊する組織介入、不当労働行為は一切行わないこと。また、労働組合所属による人事・給与、交渉、組合活動などへの差別的 取扱いを行わないこと。
(4) 公正・中立・民主的な公務員制度の確立に向けて、国民的な議論を保障するとともに、関係労働組合や専門家の意見をふまえた慎重な検討を行うこと。
(5) 基本的人権である言論・表現の自由を守り、公務員の市民的・政治的自由を保障する観点から、国公法を改正すること。
以 上


【高齢期雇用にかかわる要求書】
2013年6月13日
内閣総理大臣 安倍 晋三 殿
総務大臣   新藤 義孝 殿
公 務 労 組 連 絡 会
議 長  野村 幸裕

公務労働者の高齢期雇用にかかわる要求書

 公務労働者の定年退職後の雇用にかかわって、安倍内閣は3月26日、「国家公務員の雇用と年金の接続について」を閣議決定しました。
 その内容は、現行の再任用制度を基本にして、フルタイムでの再任用が困難な場合は短時間勤務で対応することや、能力・実績にもとづいて人事管理を徹底し ながら、職員を選別して再任用する方向も示されるなど、希望する職員全員への再任用を保障する制度とはなっておらず、「再任用の義務化」という昨年3月の 政府決定からも後退したものとなっています。
 年金支給開始年齢が繰り延べられるもと、一昨年9月には人事院が65歳までの定年延長を求める「意見の申出」を国会と内閣におこなっています。しかし、 政府は、労働基本権制約の「代償措置」である「意見の申出」を棚上げにしたうえ、現行の再任用での対応を決めたことは、公務労働者の生活と雇用を守るとい う面から重大な事態です。
 民間では、「高年齢者雇用安定法」が改正され、65歳までの雇用確保が使用者に義務付けられました。そのことと比較しても、公務における高齢期雇用への 対応はきわめて不十分なものにとどまっています。
 国家公務員の制度は、地方公務員や独立行政法人職員等にも影響します。私たちは、すべての公務労働者が安心して働けるようにするため、下記事項の実現を 貴職に要求します。



1、すべての職員の雇用と年金の確実な接続をはかるため、定年延長を前提にした必要な法整備をおこなうこと。
2、政府の「基本方針」にもとづく制度の具体化にあたっては、以下の点を実現すること。
 (1) フルタイムでの勤務を希望する職員は、全員をフルタイムで再任用することとし、必要な定員・級別定数を確保すること。
  (2) 能力・実績にもとづく人事管理を口実にして、再任用制度の恣意的な運用をおこなわないこと。
  (3) 再任用後も、職員が健康で働きがいの持てる職場環境や昇給制度を確保すること。
3、再任用職員の賃金は、年金支給開始までの生活維持にふさわしい水準に引き上げること。また、諸手当をはじめ労働条件について退職前の水準を維持するこ と。
4、地方自治体や独立行政法人等に対して、政府方針の押しつけをおこなわないこと。

以 上