No. 867
   2013年4月18日

自治体への賃下げ押しつけには毅然とした対応を

= 賃金・労働条件の改善もとめ、公務労組連絡会が全人連に要請 =

 公務労組連絡会は18日、自治労連・全教と共同で、地方公務員・教職員の賃金・労働条件の改善を求めて全国人事委員会連合会(全人連)に要請しました。
 安倍内閣による地方公務員への賃下げの押しつけによって、一部では労働組合に賃下げの提案がされる自治体も出てきています。また、総務省は、約 1,600の自治体が「検討中」とする「地方公共団体における給与減額措置の取組・進捗状況」をホームページで公表し、各自治体に賃下げをあおっていま す。
 こうしたもと、全人連への要請では、労働基本権制約の「代償機関」である全人連として、政府や国会に対する意見表明を強く求めました。


全人連としての見解表明を繰り返し求める

 全人連への申し入れには、公務労組連絡会からは、野村議長(自治労連委員長)、北村副議長(全教委員長)、黒田事務局長、関口・米田の各事務局次長、自治労連から山口毅副委員長、全教から今谷書記長が出席しました。
 全人連側は、関谷会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、中澤(北海道)、高橋(宮城県)、平間(栃木県)、齊藤(愛知県)、栗原(大阪府)、森信(広島県)、小巻(徳島県)、蓑田(福岡県)、岡部(横浜市)の各人事委員会代表ほかが出席しました。
 はじめに、野村議長は、要請書(別掲)を関谷会長に手交し、以下のように要請しました。
 ○ 安倍内閣による地方公務員への賃下げの押しつけに対して、2月の要請の際にも全人連としての毅然とした対応を求めたが、その後も、全国市長会の「緊急アピール」や、各地の地方議会での意見書採択など、反対の声がひろがっている。
 ○ これに対して、総務省は、「給与減額措置の進捗状況」を公表しているが、その内容はきわめて恣意的なもので、地方自治体への押しつけをいっそう強めようとするものだ。
 ○ 賃下げはデフレ脱却の方向とも逆行し、国による地方自治への介入に他ならない。そのうえ、労働基本権制約の代償措置である勧告制度をおびやかす不当な圧力だ。そうした立場から、全人連として意見表明するなど毅然とした対応を重ねて強く要請する。
 ○ 民間給与実態調査を皮切りに、今年の勧告にむけた作業がすすめられるなか、住民の期待に応えて日夜奮闘する地方公務員・教員の賃金等の改善にむけて、本日提出した「要請書」に沿って尽力されることを求める。
 自治労連の山口副委員長は、「労働者の賃下げは、今のデフレ不況と密接に関連している。多くの自治体首長が、賃下げによる地域経済への悪影響を懸念して いる。全人連としてもはっきりとした意見表明を求める」とのべ、全教の今谷書記長は、「労働基本権制約の代償措置として人事委員会勧告制度がある。国から の地方公務員への賃下げ押しつけは、賃金決定の枠組みさえ無視するものだ。全人連として公務員としてのふさわしい賃金や雇用のあり方について検討すべき だ」と求め、あわせて臨時・非常勤職員の賃金・労働条件改善に全力をあげるよう要請しました。

「第三者機関の使命果たす」とのべつつも、賃下げには言及なし

 これに対して、関谷会長は以下のように回答しました。
【関谷会長回答】
 ただいまのみなさんからの要請につきましては、確かにうけたまわりました。さっそく、役員府県市を通じて、全国の人事委員会にお伝えします。
 先週の12日に発表された4月の月例経済報告で、政府は、景気について「一部に弱さが残るものの、このところ持ち直しの動きがみられる」との基調判断を 示しております。先行きについては次第に景気回復へ向かうことが期待される、とする一方で、海外景気の下振れが、景気を下押しするリスクや、雇用・所得環 境の先行き等にも注意が必要であるとしています。
 一方、民間賃金の状況ですが、厚生労働省が4月2日に発表した「毎月勤労統計調査」では、平成24年の冬の賞与は、従業員1人当たりの平均額で、前年比 1.5%の減となり、4年連続で減少したとの結果が示されております。また、本年の春季労使交渉では、3月中旬の大手企業の一斉回答において、一部の企業 において年間一時金の増額など明るい兆しも見受けられましたが、一方で、個々の企業業績には好不調の明暗が見られること、ベースアップについては多くの企 業で見送られるなど、必ずしも楽観できる状況ではないことから、今後、中小企業における回答結果も含め、その動向を注視していく必要があると考えておりま す。
 こうした民間における賃金の状況を的確に把握するため、毎年、各人事委員会は、人事院と共同で民間給与実態調査を行っております。本年も、例年と同様の日程で実施する予定であり、5月初旬からの調査開始へ向けて、現在、準備を進めているところです。
 本日、要請のあった個々の内容は、各人事委員会において、調査の結果や各自治体の実情等をふまえながら、本年の勧告に向けて検討していくことになるものと思います。
 申し上げるまでもなく、人事委員会の重要な使命は、公務員の給与等の勤務条件について、社会情勢に適応した、適正な水準を確保することであると認識して おります。地方公務員の給与を取り巻く環境は、大変厳しい状況にありますが、私ども人事委員会は、中立かつ公正な第三者機関として、本年もその使命を十分 に果たしてまいります。
 全人連といたしましては、今後も、各人事委員会の主体的なとりくみを支援するとともに、各人事委員会や人事院などと十分な意見交換に努めてまいります。
 また、年金支給開始年齢の引上げに伴う「雇用と年金の接続」をはじめとし、公務員の人事給与制度に関する動向につきましても、引き続き適切に対応していく考えです。

以 上


【全人連への要請書】
2013年4月18日

全国人事委員会連合会
 会 長  関谷 保夫 殿
公 務 労 組 連 絡 会
議 長   野村 幸裕

日本自治体労働組合総連合
中央執行委員長 野村 幸裕

全 日 本 教 職 員 組 合
中央執行委員長 北村 佳久

政府による給与削減に反対し、地方公務員給与の改善を求める要請書

 日頃から地方公務員の勤務条件の向上に努力いただいていることに敬意を表します。
 春闘は先月13日の民間大手の集中回答を経て、中小組合の労使交渉が続けられています。政府がデフレ脱却を重点にかかげ、安倍首相が財界に賃上げを要請する異例の状況もあり、今年の春闘では、ベースアップを実施する大手企業も見られるなどの変化も見られました。
 しかしながら、公務労働者に対しては、昨年4月から国家公務員給与の平均7.8%の引き下げが強行されるばかりか、政府は、地方交付税等を大幅に削減したうえで、国に準じた地方公務員給与の削減を地方自治体に要請する事態となっています。
 私たちは、前回2月の要請の際にも地方公務員への賃下げ反対を表明してきたところですが、その後も全国市長会が、地方公務員の給与削減は「誠に遺憾である」とする「緊急アピール」を発表するなど、地方自治体からは強い反対の声があがっています。
 国・地方の公務員の賃下げは、公務労働者の生活に直結することはもとより、地域経済を疲弊させ、自治体財政を悪化させることとなります。そのことは、政府がめざすデフレ脱却の政策とも逆行する点で、認められるものではありません。
 自治体・自治体関連職場で働く正規・非正規すべての労働者の暮らしを改善し、日夜献身的に奮闘している自治体労働者・教職員を励まし、誇りと尊厳を持って職務に精励できるように、貴職が積極的な立場に立ち、下記の要求事項の実現にむけて尽力されることを要請いたします。



1、政府による地方公務員給与削減の動きが強められていることに対して、労働基本権制約の代償機関を自認する人事委員会として意見表明をしていただくこと。あわせて、給与削減の根拠となっている給与臨時特例法の廃止にむけて尽力していただくこと。

2、住民の暮らしや子どもたちの教育のため、日夜、献身的に奮闘している自治体労働者・教職員を励ますとともに、誇りを持って公務公共業務に従事できるように、正規・非正規を問わずすべての公務労働者の賃金・労働条件を改善すること。

3、民間給与実態調査にあたっては、単に民間の給与水準と機械的に比較するのではなく、地方自治や地方公共団体のあり方、公務・公共サービスのあり方と密 接不可分であることに十分留意して調査をおこなうこと。とりわけ、勤続・経験年数の加味、雇用形態、民間一時金水準の厳正な把握をするとともに、比較対象 企業規模を100人以上にすること。また、独自に給与カットしている地方公共団体については、減額後の額で公民比較し勧告をおこなうこと。

4、住民に信頼される中立・公正な地方行政を確保する観点から、競争原理、「成果・業績」に基づく給与・人事管理制度実施などの勧告をおこなわないこと。

5、公務員総人件費削減のもとで増加している臨時・非常勤職員について、パート労働法・改正労働契約法の趣旨もふまえつつ、給与をはじめ休暇制度など労働 条件の改善、雇用の安定・均等待遇の実現などにむけて必要な対策をおこなうこと。すべての人事委員会で実態把握の上、改善措置を勧告すること。

6、適正な人員配置をはじめ、両立支援の権利が行使できる職場環境を整備すること。介護休暇制度について、取得期間の延長や対象者の拡大、休業手当金の上 限規制の撤廃、十分な所得補償、社会保険料免除など改善をおこなうこと。短期介護休暇については2週間以上の要介護状態という取得要件を緩和すること。
 育児休業制度についても、無給規定の撤廃をはじめ、十分な所得補償をおこなうこと。当面、育児休業手当金については、適用要件をなくし全期間にわたって支給すること。1か月未満の育児休業取得にともなう一時金減額はおこなわないこと。

7、「雇用と年金の接続」にむけては、定年延長を大原則に、希望するすべての職員の雇用が保障できる制度を確立し、生計費をふまえた賃金水準の確保にむけて、人事委員会としての役割をはたすこと。
以 上