「人事院勧告制度を尊重することが基本だ」と回答
総務省との交渉には、公務
労組連絡会から、野村議長、北村副議長、黒田事務局長、米田・関口の各事務局次長、国公労連から高木中執が参加し、総務省は、人事・恩給局総務課の越尾
(こしお)総括課長補佐、小泉課長補佐ほかが対応しました。 はじめに、野村議長は、「賃下げ法の強行で公務労働者の生活悪化は避け
られない。議員立法による賃下げ法成立に見られるように、政府の使用者責任放棄は重大であり、労使間の交渉の到達点が否定されることは、将来の『自律的労
使関係』の否定にもつながる。政府が使用者としての責任を持ち、春闘要求の実現に全力をあげよ」とのべ、回答を求めました。 越尾総
括課長補佐は、以下の通り回答しました。 【総務省最終回答】 ● 総人件費改革の推進については、行革実行本部を中心に省庁の垣根を越
えた総合的見地からの議論を行い、改革を実行に移すこととされており、総務省としても、同本部におけるとりくみに協力してまいりたいと考えているが、その
際には、国家公務員の人事行政に責任を持つ立場を踏まえて対応してまいりたい。 国の出先機関の原則廃止については、公務能率の確
保に留意しつつ、雇用の確保に努めたい。また、国家公務員の平成25年度の新規採用については、先日の行政改革実行本部において、「これまでの抑制を大幅
に上回る抑制」を行うことが確認され、各府省との調整を行っているところであるが、これは、社会保障・税一体改革において国民に負担をお願いする中、政府
としても、公務員総人件費削減などの行政改革を実施する必要があり、その一環としてとりくんでいるものであるのでご理解いただきたい。 ●
労働基本権の回復に向けては、自律的労使関係制度を措置するための法案を早期に国会でご審議いただき、成立させていただきたいと考えている。 ●
国家公務員の給与については、労働基本権がなお制約されている場合は、人事院勧告制度を尊重することが基本となることから、政府としては、人事院勧告が
出されれば、その内容を真摯に検討し、その取り扱いについて、皆さんの意見を承りながら、国政全般の観点から検討することとなる。
他方、提出している国家公務員制度改革関連法案が成立すれば、自律的労使関係制度が措置され、政府と労働組合とが主体的に労働条件の決定に係わることと
なる。総務省としても、関連法案の早期成立を期すべく、努力してまいりたい。 ● 退職手当の見直しの検討に当たっては、皆様とも真摯
に話し合ってまいりたい。 ● 超過勤務の縮減に当たっては、引き続き、関係機関とも連携しつつ、政府全体の超過勤務縮減にとりくんで
まいりたい。その際、皆様のご意見も伺いつつ、コスト意識を持った抑制策に努めてまいりたい。 ● 高齢雇用対策については、先日、基
本方針が決定したところであるが、雇用と年金の確実な接続に向け、国家公務員制度改革推進本部を中心に、関係機関との間で取り組んでまいりたい。 ●
非常勤職員の処遇改善に当たっては、今後とも皆様のご意見を伺いつつ、関係機関とも相談しながら検討してまいりたい。
消費税増税の露払いとしての人件費削減は断じて認められない
この回答に対して黒田事務
局長は、以下の点を主張しました。 ○ 公務員総人件費削減を実施する必要があるとして、行政改革実行本部に協力するとの回答が示され
たことは重大だ。この間の交渉でも言及がなかったきわめて唐突な回答であり驚いている。総人件費削減は、社会保障・税の「一体改革」によって国民に負担を
押しつけるための露払いだ。断じて認められない。 ○ 賃金にかかわっては、自律的労使関係をめざす政府として、春闘要求をふまえて交
渉して「有額・有率」の回答を使用者として示すことが、本来、政府の取るべき態度ではないのか。賃上げ要求に対しては何の具体的な回答もなく、従来どおり
の「人勧尊重」とする回答が示されたことは極めて不満だ。「勧告制度尊重」の枠内にとどまらず、使用者としての要求実現にむけた努力を求める。 ○
同時に、少なくとも「勧告制度尊重」をみずから表明するのなら、勧告を無視して強行された7.8%の賃金削減は撤回せよ。そのために、法律の廃止をふく
めた措置について検討せよ。 ○ 高齢雇用にかかわって、人事院の「意見の申出」を踏みにじる23日の政府決定は断じて認められない。
すべての職員の雇用を確実に確保するために定年延長を決断せよ。少なくとも定年延長を柱として検討すべき。 ○ 退職給付では、前回調
査の際は、公務が民間を下回ったにもかかわらず、改善にむけた検討さえされなかった。それに比較して、今回はすぐに総務大臣が「見直し」に着手することを
表明した。きわめて重大であり、退職後の不安が高まるなかで、使用者として改善にむけて努力せよ。 ○ その他、労働時間短縮、非常勤
職員にかかわる回答などが示されたが、特に目新しいものはなく、使用者として真剣に検討したとは思えない。使用者責任がまったく感じられない回答であり、
認めることはできない。
また、交渉参加者からは、「この間、いくつかの地方議会では、労使間の交渉を無視した
手当削減などの条例案が議員提案で提出されている。議員立法という国のルール違反の反映だ。その点で、賃下げの強行はきわめて重大だ」「総人件費削減の方
針のもと新規採用の抑制がねらわれている。雇用拡大の政府方針とも論理的に矛盾する。そのことを考えて回答しているのか」「定員削減のなかで、行政サービ
スの維持が困難となっており、個人の努力に頼るには限界が来ている。人を減らしては超過勤務の縮減がさらに遠のく」「自律的労使関係制度の関連法案の早期
成立が言及されたが、地方公務員の関連法案は提出の見通しがたっていない。国・地方の公務労働者の労働基本権回復を求める」などと追及しました。
賃上げによる景気の回復こそ国政の最重要課題だ
越尾総括課長補佐は、「政
府の一員として総人件費削減に協力するとともに、人事行政に責任を持つ総務省としての立場を申し上げた。人事院勧告の取り扱いは、国政全般との観点から総
合的に判断して決めていくのが基本的な姿勢だ。退職給付の官民較差が示されるもと、見直しについてはこれからの検討となる。超過勤務の縮減には、仕事のあ
り方を見直していく必要があり、政府としては業務の効率化を検討している。地方公務員の労働基本権回復については、現在、総務省で検討している」などとあ
らためて回答しました。 これに対して、黒田事務局長は、「新規採用6割減のマスコミ報道もある。政府の一員であるとしても、むちゃ
くちゃな民主党政権のやり方に、きちんと意見表明するのが人事行政に責任を持つ総務省としての役割ではないのか。労働条件に直接かかわる問題であり、労働
組合と話し合うことも使用者として当然だ。公務員削減は増税の露払いであり、国民的にも認められない」とかさねて指摘しました。
野村議長は、「地方では議員提出条例案に自治体首長が反対し、労使間の交渉成果の尊重に最大限努力した。そこが国と決定的に違うところだ。川端総務大臣
は、反対するどころか三党共同提出法案を歓迎した。使用者責任の放棄であり、納得できるものではない。政府は使用者としての責任を果たせ。また、国政全般
の観点から勧告の取り扱いを検討するというが、政府は国の財政状況しか見ていない。賃上げで景気を良くすることが国政の最重要課題ではないのか」とせまり
ました。
これに対して、越尾総括課長補佐は、「使用者責任を果たせというご指摘は重く受け
とめる。今後とも、みなさんとの話し合いなどに努力していきたい」とのべました。 最後に野村議長は、「東日本大震災から1年、あら
ためて公務労働の役割を政府は考えるべきだ。多くの公務労働者が奮闘してきたにもかかわらず、公務員総人件費削減にむけて行革実行本部に協力するとの本日
の回答は、断じて認められない。自律的労使関係制度をめざすのならば、使用者としての責任を持って、公務労働者の賃金・労働条件改善をはかるよう求める」
とのべ、交渉を閉じました。
以
上
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2012年春闘における政府・人事院回答に対する声明
2012年3月28日 公務労組
連絡会幹事会
1、公務労組連絡会は、すべての労働者の賃上げをめざし、月額1万円の賃金
引き上げ、非常勤職員の「時給1,000円以上」など12春闘要求の実現を求めて政府・人事院と交渉してきた。 これらは、連年の賃
下げによる生活悪化のもとで公務労働者にとって一歩も譲れない切実な要求だったが、最終回答は、「民間給与との比較にもとづく勧告」(人事院)、「人事院
勧告制度の尊重」(総務省)とする従来の枠を出ないきわめて不満な内容にとどまった。
2、とりわけ、協約締結権
回復を念頭に、政府には使用者責任を徹底して追及してきたが、要求に対する具体的な回答が示されないばかりか、「人事院勧告尊重」とする回答は、政府みず
からが勧告制度を踏みにじって「賃下げ法案」を提出してきたこととも矛盾し、賃下げの道理のなさをあらためて明らかにしている。 さ
らに、政府回答では、公務員総人件費削減を実施する必要があるとし、行政改革実行本部への協力が表明された。民主党政権のねらう「行政改革」とは、消費税
増税などで国民犠牲を押しつける突破口であり、示された回答は国民的にも断じて認められるものではない。
3、政
府は23日、定年延長を求めた人事院の「意見の申出」を棚上げにして、再任用義務化を柱にした国家公務員の高齢雇用の基本方針を決定した。この決定が、定
年延長が少数にとどまっている民間の状況を口実にして、民主党政権がめざす公務員総人件費削減を達成するために安上がりの労働力確保をねらったことは明ら
かである。 公務労働者には、賃下げにつづいて退職手当の見直し改悪もねらわれている。こうした矢継ぎ早の公務員攻撃をはね返すた
め、この間の運動で積み上げてきた国民共同のたたかいをいっそう発展させる必要がある。
4、東日本大震災から1
年が経過するなか、被災地の早期復興にむけても、賃上げによる景気回復は緊急の課題である。しかしながら、大企業は、膨大な内部留保をため込みながらも、
ベアゼロと定期昇給の凍結にまで手をつけて春闘の幕引きをはかろうとしている。 一方で、国民春闘共闘の加盟組合は、ねばり強い交渉
で回答の上積みをはかっている。公務労組連絡会に結集する郵産労は、連合労組がベア要求をおこなわないなか、果敢にストライキでたたかい、月給制契約社員
の2,000円賃上げ、正社員登用継続の成果を勝ちとった。 公務労組連絡会は、賃上げ実現とたたかう労働運動の前進にむけ、民間労
働組合への連帯・激励を強めつつ、12春闘のたたかいを継続・強化するとともに、公務労働者の労働基本権回復、公務・公共サービス拡充を求め、野田内閣が
ねらう社会保障・税の「一体改革」を断固阻止するため、引き続き全力をあげてたたかう決意である。 |