No. 817
    2012年2月8日
自治体職員・教員の賃金改善を要請

= 全国人事委員会連合会に公務労組 連絡会が申し入れ =

 公務労組連絡会は8日、自治労連・全教と共同して、地 方公務員・教員の賃金・労働条件の改善を求めて、全国人事委員会連合会(全人連)への要請にとりくみました。
 申し入れでは、12春 闘における「1万円の賃上げ」要求や臨時・非常勤職員の均等待遇の実現にむけて、人事委員会として尽力するよう求めました。
 とりわ け、「賃下げ法案」が国会に提出され、いまだに審議ができない状況をふまえて、法案の撤回について政府に意見表明するよう申し入れました。

「賃下 げ法案」撤回にむけて政府に対する意見表明を求める

 全人連への申 し入れには、公務労組連絡会からは、野村議長(自治労連委員長)、北村副議長(全教委員長)、黒田事務局長、関口・米田の各事務局次長、自治労連から猿橋 書記長、全教から今谷書記長が出席しました。
 全人連側は、関谷会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、中澤(北海道)、高橋(宮 城県)、林(長野県)、福間(愛知県)、栗原(大阪府)、森信(広島県)、山本(高知県)、蓑田(福岡県)、岡部(横浜市)の各人事委員会代表ほかが出席 しました。
 はじめに、野村議長は、来月で東日本大震災から1年が経過し、被災地をはじめ全国の自治体職員・教職員が復旧・復興にむ けて全力をあげてとりくむもと、今後の本格復興にむけて公務・公共業務の役割はますます重要となっていることからも、公務・公共サービスを支える公務労働 者の賃金・労働条件の改善を求めました。
 また、国家公務員の賃下げ法案が国会に提出されているなかで、全人連としても政府に対して 何らかの意見表明をおこなうよう求めつつ、「景気回復にむけて個人消費の拡大がカギを握っており、公務員賃金の改善は重要課題だ。厳しい情勢のもとで、第 一線で日々奮闘している職員の努力に応えるため、地方公務員・教員の給与等の改善にむけて尽力いただきたい」と要請しました。
 自治 労連の猿橋書記長は、「消費税増税の議論のなかで、ムダを削るとして公務員の賃下げがねらわれているが、公務労働者が全体の奉仕者としての役割を果たすた めにどのような賃金が必要なのかを議論すべきだ。官製ワーキングプアが問題になるなかでも、臨時・非常勤職員の処遇改善を勧告している地方人事委員会はわ ずかであり、均等待遇の実現を求める。高齢期雇用にかかわって、人事院の意見の申出は定年延長の方向を示しており、この枠組みを重視しつつ、職場実態をふ まえて十分な協議が必要だ」とのべ、全教の今谷書記長は、「教員の離職年齢は約51歳で、全国で病休者は約8600人、そのうち5千人以上がメンタルだ。 その要因には、教職員を取り巻く長時間・超過密労働がある。改善にむけて特段の努力を求める。また、臨時教職員の処遇改善にむけて尽力してもらいたい」と 求めました。
 これに対して関谷会長からは、以下の回答が示されました。

【関谷全人連会長の回答】
  ただいまのみなさんからの要請につきましては、確かに承りました。さっそく、役員府県市を通じて、全国の人事委員会にお伝えします。
  さて、最近の社会経済情勢についてですが、去る1月17日に発表された月例経済報告において、政府は、景気の基調判断を、「東日本大震災の影響により依然 として厳しい状況にあるなかで、緩やかに持ち直している」とする一方で、先行きについては、欧州の政府債務危機の影響により景気が下押しされるリスクや、 電力供給の制約、原子力災害の影響など、景気の悪化懸念が残っていることに注意が必要であるとしています。
 また、先月、財務省が発 表した貿易統計速報では、2011年の貿易収支は、31年ぶりに赤字となり、赤字額は過去2番目の大きさとなったとしています。東日本大震災による輸出の 落ち込みと燃料輸入の急増という要因に加え、歴史的な円高や、海外における景気減速などの影響が指摘されています。
 こうした中、本 年の春季労使交渉では、定期昇給の扱いが大きな争点になるものと見られ、今後の行方を注視する必要があると考えています。
 各人事委 員会においては、こうした社会経済情勢も踏まえながら、本日の要請内容も含め、本年の勧告に向けた検討を進めていくことになろうかと思います。現在、人事 院及び各人事委員会では、民間における給与実態を的確に把握できるよう、本年は、例年のスケジュールによる民間給与実態調査の実施へ向け、その準備を進め ているところです。また、年金支給開始年齢の引上げが迫る中、新たな高齢期雇用施策が重要な課題であることから、国の動向も踏まえつつ、人事委員会として 必要な検討をおこなってまいります。
 公務員の給与を取り巻く環境は、大変厳しい状況にありますが、私ども人事委員会は、本年も中立 かつ公正な第三者機関として、その使命を果たしてまいります。
 全人連といたしましても、各人事委員会の主体的な取組を支援するとと もに、人事院、各人事委員会との意見交換に十分努めていきたいと考えております。
 なお、現在、地方公務員の新たな労使関係制度に関 する検討が進められているところですが、地方の公務員制度のあり方に大きな影響を及ぼす改革であることから、全人連といたしましても、引き続きその動向を 注視し、必要な対応に努めてまいります。

以 上


【全人連への要請書】

2012年2月8日

全 国人事委員会連合会委員長
  会 長  関谷 保夫 殿

公 務 労 組 連 絡 会 
議 長   野村 幸 裕

地方公務員の給与等の改善にかかわる要請書

  日頃から地方公務員の勤務条件の向上にご努力いただいていることに敬意を表します。
 未曾有の災害となった東日本大震災からすでに1 年が経過しようとしているもと、被災地の住民の暮らしや営業を元通りにするため、本格的な復旧・復興作業を加速させることが求められています。この間、被 災地はもとより全国各地の自治体職員・教員は、被災地支援の業務に奮闘をつづけてきましたが、今後、長期にわたる復興にむけても、公務・公共サービスの役 割が重要となっており、そのためにも、第一線で働く公務労働者の賃金・労働条件の改善が求められています。
 一方では、労働者の雇用 情勢の深刻さとともに、生活保護受給者が過去最多となるもとで、景気回復が重要課題となっていますが、デフレ不況から抜け出すためには、個人消費を拡大す るために労働者の賃金改善が不可欠です。地場賃金にも影響する公務労働者の賃金改善は、地域経済の活性化にもつながります。
 こうし たことからも、現在、野田内閣がめざしている国家公務員賃金の引き下げは認められるものではなく、これに連動する地方交付税や義務教育費国庫負担金の引き 下げにもつながりかねず、自治体財政への波及も懸念されています。
 以上をふまえ、自治体・自治体関連職場で働く労働者の暮らしを改 善するために、貴職が積極的な立場に立ち、下記の要求事項の実現にむけて尽力されることを要請するものです。



1、 教職員や自治体労働者など地方公務員に影響を及ぼす国家公務員に対する給与臨時特例法案の撤回を政府・総務省に求めること。

2、 住民の暮らしや子どもたちの教育のため、日夜、献身的に奮闘している自治体労働者・教職員を励ますとともに、誇りを持って公務公共業務に従事できるよう に、正規・非正規を問わずすべての公務労働者の賃金・労働条件を改善すること。

3、民間給与実態調査にあたって は、単に民間の給与水準と機械的に比較するのではなく、地方自治や地方公共団体のあり方、公務・公共サービスのあり方と密接不可分であることに十分留意し て調査をおこなうこと。とりわけ、勤続・経験年数の加味、民間一時金水準の厳正な把握をするとともに、比較対象企業規模を100人以上にすること。

4、 連続して引き下げられている地方公務員給与について、勤務実態に応じた適切な給与水準を確保すること。とりわけ、子どもたちのさまざまな困難に対応してい る教職員のモチベーションを支えるためにも、賃金引き下げはおこなわないこと。

5、公務員総人件費削減のもとで 増加している臨時・非常勤職員について、人事院の「指針」等をふまえつつ、給与をはじめ休暇制度など労働条件の改善、雇用の安定・均等待遇の実現などにむ けて必要な対策をおこなうこと。

6、新たな高齢期の雇用施策の策定にあたっては、定年延長による「雇用と年金の 接続」を大原則とし、制度設計にあたっては労使間での十分な協議をおこなうこと。

以 上