No. 805
    2011年10月3 日
「マイナス勧告」に追随せず、積極的な賃金改善を

= 11年人勧をうけて全人連に賃 金・労働条件改善を要請 =

 3年連続のマイナス勧告をうけて、公務労組連絡会は 10月3日、自治労連、全教と共同して、全国人事委員会連合会(全人連)に対して、地方公務員の賃金・労働条件の改善を申し入れました。
  要請では、月例給の引き下げ、一時金改善の据え置き、現給保障の廃止などを内容とした人事院勧告に追随せず、地方公務員や教員の賃金・労働条件の改善を強 く求めました。
 また、同日、財務大臣に対して、勧告の取り扱いにかかわる「要求書」を提出しました。


人事院勧告は、必ずしも従うべきものではない(全人 連会長)

  全人連への申し入れには、公務労組連絡会からは、黒田事務局長、米田・関口の各事務局次長、自治労連から猿橋書記長、全教から磯崎副委員長、今谷書記長が 出席しました。
 全人連側は、関谷会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、中澤(北海道)、高橋(宮城県)、伊東(長野県)、齋藤 (愛知県)、栗原(大阪府)、林(広島県)、川村(高知県)、蓑田(福岡県)、小高(横浜市)の各人事委員会代表ほかが出席しました。
  はじめに別添の「要請書」を関谷会長に手交し、3年連続の月例給引き下げ、現給保障の廃止などのベテラン職員を重点に公務労働者に賃下げをせまる勧告は認 められるものではなく、人事院勧告に追随せず、地方公務員の生活改善や地域経済の活性化をふまえた積極的な立場での検討を要請しました。
  自治労連の猿橋書記長は、「東日本大震災や台風災害で、全国の公務労働者が奮闘している実態に、今年の給与勧告でどう応えるのかが問われている。公務員賃 金が復興財源を理由にして削減されようとしているもと、国会に提出されている賃下げ法案に対して全人連としても何らかの意見を表明すべきだ」とのべ、全教 の今谷書記長は、「人事院勧告の内容は、労働基本権制約の代償措置としての役割と責任を疑わせるものだ。高齢者の官民給与差を理由にベテラン層を狙い撃ち しているが、国と地方との賃金体系は明確に違っている。現給保障は、現在でも約4割に支給されており、不可欠なものだ。廃止は認められない」と実態も示し て、要請しました。
 これに対して、関谷会長からは、以下の回答が示されました。

【全人連・関谷会長回答】
  ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。
 早速、役員県を通じて、全国の人事委員会にお伝えいたします。
  さて、去る9月30日に、人事院勧告が行われ、その概要について改めて申し上げますと、本年の民間給与との較差は、899円、率にして0.23%、公務員 給与が民間給与を上回るとしております。
 人事院は、この較差を解消するため、俸給表の引下げ改定を勧告し、改定に当たっては、50 歳台の職員が在職する号俸を中心に40歳台以上の俸給に限定して引下げを行うとしております。一方、医師に適用する俸給表については、医師の処遇確保の観 点から、本年も改定は行わないとしております。
 特別給についてですが、東北3県を除く民間の調査結果は、国の現行支給割合を上回っ たものの、東北3県において調査が行われていないことを考慮し、改定を見送るとしております。
 給与構造改革に伴う経過措置について は、平成25年4月までに廃止する一方で、廃止に伴って生じる原資により、若年・中堅層を中心に、抑制されてきた昇給を回復するとしております。
  また、人事院は、国家公務員の定年を段階的に65歳まで引き上げることが適当であるとする意見の申出を行い、60歳を超える職員の給与制度や、役職定年制 の導入等について言及しております。
 このほか、本年は、公務員制度改革に関する報告が行われ、人事行政の公正の確保や協約締結権付 与に関する論点が提示されております。
 人事院勧告につきましては、必ずしも、これに従うべきものではございませんが、今後、各人事 委員会が勧告作業を行う上で、参考となるものであることから、その内容については、十分に吟味する必要があると考えております。
 現 在、各人事委員会では、勧告へ向け、鋭意作業を進めているところです。
 今後は、皆様からの要請の趣旨も十分考慮しながら、それぞれ の人事委員会が、地域の実情を踏まえつつ、主体性をもって対処していくことになるものと考えております。
 公務員の給与を取り巻く環 境は、厳しい状況にありますが、人事委員会といたしましては、本年も、中立かつ公正な人事行政の専門機関として、その使命を十分に果たしてまいります。
  全人連といたしましても、各人事委員会の主体的な取組を支援するとともに、人事院、各人事委員会との意見交換に十分努めていきたいと考えております。

(財務省要請)公務員の賃下げは景気と税収入の悪化をまねく

  全人連の要請終了後、11年人勧の取り扱いにかかわる要求書を財務省に提出しました。要請には、黒田事務局長、米田・関口の各事務局次長が参加し、財務省 側は、大臣官房地方課の吉盛課長補佐、吉田連絡係長が対応しました。
 要請では、今年の勧告は、公務労働者の生活悪化とともに、民間 賃金にも影響を与え、結果的には税収減や景気の悪化を招くという問題点を持っており、財政当局であるとともに給与関係閣僚の一員として十分な検討を求めま した。
 吉盛課長補佐は、「要請はうけたまわった。関係部局に伝えるとともに、政務三役にも伝えたい」とのべました。

以 上



【別添 全人連への要請書】

2011年10月3日

全 国人事委員会連合会委員長
  会 長  関谷 保夫 殿

公 務 労 組 連 絡 会
議 長   野村 幸裕


地方人事委員会の勧告に関する要請書


  貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けた努力に敬意を表します。
 人事院は9月30日、内閣と国会に対して、昨年を上回るマ イナスの官民逆較差による高齢層を重点とした月例給の引き下げ、一時金の据え置き、給与構造見直しにともなう現給保障の廃止などを内容とした勧告および報 告をおこないました。
 3年連続となる月例給の引き下げは、公務労働者のいっそうの生活悪化をまねくこととなり、05年の給与構造見 直しにともなう大幅な給与水準の引き下げを補うために、現在まで続いてきた経過措置(現給保障)を撤廃することは、高齢層を中心とした大幅な賃下げにつな がる点できわめて重大です。
 そのほかにも、民間実態調査では改善の見込みがあった一時金を、調査しなかった東北三県の状況を類推し て、意図的に改善を見送るなど、今年の人事院勧告は多くの問題を持っており、各地の地方人事委員会では、人事院勧告に追随することなく、公務労働者の生活 と労働条件の向上、住民の暮らしといのちを守る公務労働に対する誇りや働きがいをふまえて、検討を深めるよう求めるものです。
 ま た、勧告と同時に定年延長にむけた「意見の申出」がおこなわれましたが、60歳を超えた職員の年収を60歳前の7割に削減するなど、きわめて重大な問題を 持っています。高齢期雇用にあたっては、何よりも、健康で働きがいを持って働きつづけられる職場環境の実現こそ重要課題となっており、そうした観点からの 検討を強く求めます。
 これから各地の人事委員会においても、本年の勧告にむけた作業にとりかかるものと考えますが、各地の人事委員 会勧告にあたっては、下記事項をふまえて、その実現に向けて努力されることを強く要請するものです。


1、 地方公務員・関連労働者の暮らしを守り、「全体の奉仕者」として誇りと尊厳を持って職務に専念できるよう、月例給の引き下げ、一時金の据え置き、現給保障 の廃止などの人事院勧告に追随することなく、賃金・労働条件の改善・充実をはかる勧告をおこなうこと。

2、政府 が、労働基本権制約の代償措置としての人事院勧告制度を踏みにじり、労働組合との合意なく国会提出を強行した「給与臨時特例法案」を撤回するよう求めるこ と。

3、消費拡大による景気の回復、地域経済の活性化などをめざして、公務員賃金の持つ社会的影響力を考慮して 賃上げをはかり、そのため、比較対象企業規模を「100人以上」にするなど積極的な改善を行うこと。

4、人事委 員会の勧告と関わりなく行われている「賃金カット」などの労働条件の切り下げに対しては、即時中止を求めるなど毅然とした対応を行うこと。また、独自に 「賃金カット」を行っている自治体では、実態賃金との比較で公民較差に基づく賃金改善を行うこと。

5、給料表に ついては、職務による格差の拡大、中高年層の給与の抑制をやめ、生計費原則に立った構造とし、号給足伸ばしなど必要な措置を講じること。査定昇給及び勤勉 手当の格差拡大の導入は、人事評価制度の未確立の状況を踏まえ、当該労働組合との交渉経過等を尊重し、慎重に対処すること。

6、 教員の給与勧告にあたっては、義務教育費国庫負担金の見直しなどの動向に影響されず、地方公務員法および教員人材確保法にもとづき、勤務実態に応じた適切 な給与水準を確保すること。

7、超過勤務縮減へ向けた具体的措置を講じること。

8、 非常勤職員等非正規職員の雇用の安定をはかるとともに、賃金及び労働条件の改善を行うよう勧告すること。

9、憲 法とILO勧告に基づき公務員労働者の労働基本権を保障するなど、民主的公務員制度確立にむけ積極的に政府に働きかけること。

10、 現在の職場実態を改善し、健康で働きがいを持てる職場環境を実現し、定年まで働き続けられる条件整備をはかること。定年年齢の引き上げにむけては、給与の 引き下げ改悪をおこなわず、制度の検討にあたっては、労働組合との交渉・協議にもとづき、労使合意のもとですすめること。

以 上