No. 804
    2011年9月30 日
3年連続の月例給引き下げは認められない

= 人事院勧告の取り扱いをめぐって 総務省に要求書を提出 =

 人事院は9月30日、「マイナス0.23%・899 円」の官民逆較差にもとづく高齢層を重点とした月例給引き下げ、一時金の改善見送り、給与構造見直しにともなう現給保障の廃止などを勧告しました。
  公務労働者の切実な願いを裏切り、3年連続のマイナス勧告を強行し、年間4か月への改善の見込みがあった一時金さえも、調査もしていない東北3県の「実 態」を都合のいいように類推して、3.95月に据え置きました。
 また、現給保障廃止は、2年間の段階的実施としたものの、高齢層で は月額で数万円の実質的な賃下げが避けられず、40歳代まで影響がおよび、さらには、地方公務員や教員に波及することが考えられます。
  こうした不当な勧告が強行されるもと、公務労組連絡会は、政府(総務省・厚生労働省)に対して要求書を提出し、勧告の取り扱いにあたっては、労働組合との 真摯な交渉・協議をおこなうよう強く求めました。

何より もまず道理のない「賃下げ法案」を撤回せよ

 総務省への要求書提 出・交渉には、公務労組連絡会から、野村議長、北村副議長、黒田事務局長、関口・米田の各事務局次長、国公労連から渡邊中執が参加、総務省側は、人事・恩 給局総務課の越尾(こしお)総括課長補佐、小泉課長補佐ほかが対応しました。
 はじめに、野村議長は、「今年の勧告は、ベテラン職員 を狙い撃ちして、大幅な賃下げが避けられない不当な内容となった。このように極めて問題の多い内容からも、その取り扱いにあたっては、労働組合との十分な 交渉・協議を求める。公務員賃金の改善へ、使用者としての責任ある対応を強く求める」とのべ、別掲の「要求書」を提出しました。
 そ のうえで、黒田事務局長が、以下のように要求書の要点を説明しました。
 ○ 国会提出されている給与臨時特例法案について、勧告前の 夏季交渉でも、撤回を強く求めてきたところだが、交渉は物別れに終わった。何よりもまず、労働組合との合意なく提出した法案の撤回を、あらためて政府に求 める。
 ○ そのことと関連して、賃下げ法案の国会提出を理由にして、勧告をめぐる労働組合との交渉を棚上げにすることなどは認めら れず、労使交渉のもとで11年勧告の取り扱いを決定するよう求める。
 ○ とりわけ、現給保障廃止が勧告されたが、対象者にとっては 数万円規模の賃下げとなり、対象範囲も40歳代にまでおよぶ。昇給やベースアップによって差額が解消されるまで継続するよう、使用者として十分な検討をお こなえ。
 ○ 勧告と同時に示された「意見の申出」に対しては、「夏季重点要求」にもとづいた制度の確立を求める。とりわけ、60歳 以上の職員の7割への賃下げは認められない。労働条件の根幹にかかわる問題であることからも、労働組合との交渉・協議をつくすよう求める。
  交渉参加者からは、「職場からも怒りの声が届いている。ルールがなく、一時金の据え置きは理解不能だ。仲間たちが現場でがんばっているときに、それに報い る対応を求める。また、地方自治体に対する政府による不当な介入・干渉をしないよう求める」「職場のベテラン職員の果たしている役割は大きい。そうした人 たちに対する意図的な賃下げは認められない。労働組合との真摯な交渉・協議を続けよ」「賃下げ法案は、労働組合との合意なく提出したものであり、撤回を求 める。自然災害が多発するなかで、公務員の仕事にふさわしい待遇が必要だ。日本の将来に禍根を残さない対応を求める」「定年延長にともなう賃金引き下げ は、年齢による賃金差別であり、労働組合との交渉・協議による制度の検討は不可欠だ」などと総務省を追及しました。

「勧告 制度尊重」なのに賃下げ法案は撤回せず

 越尾総括課長補佐は、「政 府として、本日、勧告を受け取った。すみやかに給与関係閣僚会議が開かれ、検討がすすめられるように願っている。人事院勧告は、労働基本権制約の代償措置 として尊重するというのが、従来からの政府の基本方針だ。ただし、今回は、勧告制度のもとできわめて異例の措置として、給与臨時特例法案を国会提出してい る。このような状況をふまえつつ、勧告の取り扱いも検討することとなる」と回答しました。
 この回答に対して、黒田事務局長は、「勧 告制度を尊重するというのなら、勧告にもとづかず、労働組合の合意もなかった賃下げ法案は、ただちに撤回せよ」とせまりましたが、「法案が提出されている 状況をふまえて、勧告については検討をすすめる」と回答をそらし、やり取りは平行線のままでした。
 野村議長は、最後に、「8月の完 全失業率は0.4%低下したが、政府は、依然として厳しいと懸念を表明している。懸念を払拭するためには、雇用と賃金を安定させるべきで、賃下げの悪循環 につながる公務員の賃下げはやめるべきだ」とのべ、「給与臨時特例法案は、労働基本権制約の代償諸措置としての人事院勧告を踏みにじり、労働組合との合意 もなく提出を強行した法案だ。人事院の報告でも、さまざまな問題点を指摘している。政府は、こうした意見を真摯に受けとめるべきであり、給与臨時特例法案 を撤回するよう強く求める」とのべ、引き続く十分な交渉・協議を求め、交渉を閉じました。

(厚労 省要請)公務員賃金の社会的影響をふまえて検討を求める

 総務省交 渉につづいて、厚生労働省への申し入れをおこないました。厚生労働省側は、谷中労使関係担当参事官ほかが対応しました。
 野村議長 は、「今年の勧告の取り扱いにあたっては、労働組合との十分な交渉・協議を求める。とりわけ、厚労省としては、貧困と格差の解消にむけて労働者の賃金・雇 用の改善が重要課題となっており、公務員賃金の社会的影響力という視点からの検討も必要だ。同時に、継続審議となっている給与臨時特例法案は、労働組合と の合意もなく提出を強行した法案だ。人事院の報告でも、さまざま問題点が指摘されており、こうした意見を真摯に受けとめて、政府は給与臨時特例法案を撤回 すべきだ」と要請しました。また、公務員制度改革や「賃下げ法案」にかかわって、この間、全労連がILOに「追加情報」を提出したことを伝えました。
  これに対して、谷中労使関係担当参事官は、「今後、給与関係閣僚会議で勧告の取り扱いが議論されていくと考える。その際、給与臨時特例法案もふまえて議論 されることとなる。法案は、震災復興の財源や厳しい財政事情を考慮したものであり、きわめて異例の措置として提出されたものだ。こうした状況のもと、現段 階では勧告の扱いについてのべられる段階ではないが、みなさんの意見をふまえて対応していく」と全般的な考えをのべました。(以上)


【総務省への要求書】
2011年9月30日
内閣総理大臣 野田 佳彦 殿
総務大臣   川端 達夫 殿
公 務 労 組 連 絡 会
議 長    野村 幸裕

公務員賃金等に関する要求書

 人事院は本日、内閣と国会に対して、「マイナス0.23%・899円」とする官民逆較差による高齢層を重点とした月例給の引き下げ、一時金の据え置き、給与構造見直しにともなう現給保障の廃止などを内容とした勧告および報告をおこないました。
 3年連続の「マイナス勧告」に加え、05年の給与構造見直しにともなう給与減額を補うために、現在まで続いてきた経過措置(現給保障)を廃止することで、高齢層を中心とした大幅な賃下げにつながることなど今年の勧告は、きわめて重大な問題を持っています。
 こうした内容からも、勧告の取り扱いにかかわっては、公務労働者の生活と労働条件を向上させる立場で、労働組合との十分な交渉・協議のもとで決定していくよう求めます。
  一方、菅前内閣は労働組合の反対を押し切って、「給与臨時特例法案」の通常国会への提出を強行し、法案は継続審議となっていますが、6月初めの提出から一 度も審議されることなかったこと、労働基本権を踏みにじる点で憲法違反の法案であることなどからも、すみやかに撤回すべきと考えます。
 なお、勧 告と同時におこなわれた高齢期雇用にかかわる「意見の申出」は、65歳までの定年延長とセットで、60歳以上の職員の年収を7割に削減するなどきわめて重 大な問題を持っており、断じて認められません。定年延長にかかわっては、夏季交渉の際にすでに提出している要求にもとづき、改善をはかるよう重ねて求める ものです。
 以上の点をふまえて、夏季要求を取りまとめました。使用者として、公務労働者の賃金・労働条件改善に全力をあげるよう求めます。



1、労働基本権制約の代償措置としての人事院勧告制度を踏みにじり、労働組合との合意なく国会提出を強行した「給与臨時特例法案」を撤回すること。

2、職員の働きがいや仕事に対する誇りとともに、公務員賃金の持つ社会的影響力をふまえ、公務労働者の賃金・労働条件の改善にむけて、11年人事院勧告の取り扱いは、労働組合との交渉のもとで決定すること。

3、年齢による賃金差別となる55歳を超える職員への給与減額措置は撤廃すること。

4、05年の給与構造見直しによる給与引き下げにともなって実施されてきた差額の支給について、昇給・ベースアップによって差額が解消されるまで継続すること。

5、臨時・非常勤職員の賃金・労働条件改善をはかり、均等待遇を実現すること。

6、地方自治体、独立行政法人等の賃金決定に不当な介入・干渉をおこなわないこと。

7、労働基本権の全面回復など憲法とILO勧告に沿った民主的公務員制度を確立すること。
以 上