給与構造見直しにともなう現
給保障の廃止を表明
人事院との交渉には、公務労組連絡会から野村議長、北村副議長、黒田事務局長、米田事務局次長、国公労連から渡辺中執が参加しました。人事院側は、給与局
給与第1課の箕浦(みのうら)企画室長、職員福祉局職員福祉課の琴(こと)勤務条件調査官が対応しました。 はじめに野村議長は、
「勧告が延びるなかにあって、被災地をはじめ全国の公務員は、被災者救援、震災の復旧・復興にむけた業務をつづけており、職員の奮闘に人事院がどのように
応えるのかが今年の勧告では求められている。その点では、民間との較差是正にとどまらない賃金改善にむけた積極的な検討を求める。一方では、政府が公務員
賃金をさらに引き下げる法案の提出を強行するなど、労働基本権をふみにじるきわめて重大な事態もおこっている。7月26日に人事院に提出した要求書をふま
えて、誠意を持って検討するよう求める」とのべ、本日時点での検討状況をただしました。 箕浦室長は、「民間給与実態調査が終了した
直後であり、回答できることは限られているが、現時点での考え方をのべたい」として、以下のように回答しました。 ● 東日本大震災
の影響を受けて、民間給与実態調査の実施が遅れ、特段の支障なく8月10日に完了したところだ。今後、集計作業を急ぎ、勧告にむけて取りまとめに努力して
いきたい。 ● 給与臨時特例法案に関する人事院の考え方は、法案の閣議決定直後に発表した人事院総裁談話で申し上げた通りであり、
その内容に尽きている。 ● 給与・一時金については、厚生労働省が7月28日に発表した春季賃金改定の状況では、定期昇給分をふく
む賃上げ率は1.83%であり、昨年からほぼ横ばいだ。他の調査をみても、対前年比で-0.01%〜+0.02%となっており、全体的に見ると、定期昇給
を維持し、ベアはゼロといったところがうかがえる。いずれにしても月例給、一時金ともに、民間給与実態調査をふまえて判断することとなり、現時点では具体
的な話はできない。 ● 高齢層職員の給与では、昨年の勧告で俸給および俸給の特別調整額に1.5%を乗じた額を減じて支給すること
とした。それでも官民の給与差が相当程度残存しており、早期に是正する必要がある。 ● 給与構造改革における経過措置について、給
与構造改革が10年度をもって終了していることから、来年4月からの現給保障の廃止に向けた措置を開始することとし、その旨を勧告したいと考えている。 ●
通勤、単身赴任、寒冷地その他の手当については、引き続き、公務の実態、民間の動向などを見ながら対応していく。 ● 高齢者雇用
にかかわる要求については、定年退職年齢の65歳への段階的な引き上げにむけて、現在、「意見の申出」の作業をすすめている。 ●
超過勤務の縮減については、各府省において管理職員による勤務時間管理を徹底するとともに、幹部職員がみずから率先して早期退庁に努めることなどにより在
庁時間を削減していく必要がある。関係機関と連携してとりくんでいく。今後とも、勤務時間、休暇制度の見直しについて、引き続き民間等の動向を見ながら検
討したい。 ● 心の健康づくりに関しては、こころの健康相談室や職場復帰相談室の設置、管理者等への啓発研修の実施などの施策を推
進するなど、「職員の心の健康づくりのための指針」を基本として対処してきたところだ。引き続き、施策の充実をはかりたい。また、パワーハラスメントの防
止にむけて、きめ細かい対策を講じていきたい。 ● 非常勤職員については、昨年10月に期間業務職員制度を導入し、本年4月からは
非常勤職員への育児休業等の適用を措置した。引き続き、適切な処遇がはかられるよう、関係方面からの要望、民間の状況等を踏まえ、必要な検討をすすめた
い。
「賃下げ法案」提出強行に人事院として意見表明せよ
回答を受けて、黒田事務局
長は主に以下の点について指摘し、検討を求めました。 ○ 6月に提出された「給与臨時特例法案」は、先日の政府交渉(7/26)で
は、公務労組連絡会として法案の撤回を求めてきたところだ。総裁談話は、人事院としての考え方を示したものであり、道理あるものとして受けとめたい。引き
続き、政府や国会に対して強い意見表明を求める。 ○ 4〜6月期の名目GDPは、前期比で1.4%減、年率換算で5.7%減となり
3四半期連続でマイナスとなり、6月の完全失業率も前月よりも悪化するなど、依然として景気回復が遠のいている。不況打開にむけて個人消費を拡大するた
め、賃上げが不可欠だ。連年の「マイナス勧告」は民間賃金にも否定的な影響を与えており、不況打開という積極的な視点から、単なる「民間準拠」にとどまら
ない賃金改善を検討すべきだ。 ○ 初任給について、人事院の民間賃金実態調査でも、高卒・大卒ともに官・民の格差がひろがってい
る。優秀な人材確保の観点からも、初任給引き上げは急務の課題であり具体的な検討を求める。 ○ 昨年の55歳を超える職員への給与
削減は、年齢による賃金差別であると繰り返し主張してきた。高齢層の官民の給与格差が相当程度あるというが、民間では継続雇用や再雇用、出向などによって
賃金が下がっており、単純な比較はできない。さらに、高齢者給与の高止まりを理由として、給与構造見直しにおける現給保障措置を廃止することは、実質的な
賃下げにつながるものであり、認められない。 ○ 給与勧告と同時に、定年延長にむけた「意見の申出」が検討されているものと承知し
ているが、要求をふまえた検討を求める。とりわけ、この間、人事院が「60歳以降の給与を相当程度引き下げる措置」や「60歳前の給与の在り方の見直し」
にも言及し、民間では60歳前半は60歳前にくらべて3割程度低いとも指摘してきたが、年齢で区切った賃下げには反対する。その他、国家公務員の制度は、
地方公務員や教職員にも連動することからも、労働組合との十分な交渉・協議を求める。 また、北村副議長は、「給与構造見直しにとも
なう現給保障は、国が廃止すれば確実に地方公務員や教職員に影響する。多くの教職員が現給保障をうけており、今後、差を埋める手段もない。廃止は容認でき
ない。定年延長では、50歳代でも勤務継続は困難な状況だ。無収入の期間はあってはならないが、選択肢の多様性や働き続けられる職場環境作りにむけて、第
三者機関としての立場をふまえた検討を求める」とのべ、また、政府による賃下げに対して、「賃下げ法案への職場の怒りがひろがっている。今年の勧告でも言
及するなど人事院として意見表明すべきだ」と求めました。また、公務員制度改革がすすむもと、公務員の市民的・政治的自由を保障するために国公法改正の必
要性を指摘しました。 その他、交渉参加者からは、現給保障は廃止しないことや、若年層のモチベーションを高め、人材確保をはかるた
めにも初任給改善の必要なことが指摘され、人事院を追及しました。 箕浦室長からは、「みなさんの要求はうかがった。作業を急ぎ、で
きるだけ早く勧告を出したい。年齢差別という意見は認識している。その一方、配分の適正化という観点も必要だ。政府による給与削減について意見表明せよと
言う要請は受けとめたい。人事院の責任を認識して対応していきたい。高齢雇用では、働きがいのある職場づくりという観点が強調された。みなさんの要求もふ
まえ、意見の申出にむけて詰めていきたい」と見解が表明されました。 最後に野村議長は、「本日は、要求に対する中間的な回答として
うかがった」として、「公務員制度改革関連法案は成立の見通しは立っておらず、労働基本権制約下においては、代償措置としての人事院勧告制度が、公務労働
者の賃金・労働条件改善への積極的な役割を果たすべきであることをあらためて申し上げておく。また、震災のもとで公務労働の重要性が明らかとなり、国民の
期待にも応えて公務労働者の役割発揮が求められている。こうしたもと、人事院が公務労働者の処遇をどのように改善するのか国民から注目が集まっている。勧
告にむけて、そのこともふまえた検討作業を求めたい」とのべて交渉を締めくくりました。
8月30日、9月14日に人事院への要求行動を配置
交渉を通して、今年の勧告
において給与構造見直しにかかわる経過措置としての現給保障を、来年4月に廃止することが表明され、また、昨年に続いて高齢者に対するさらなる賃下げをね
らっていることも明らかとなりました。 勧告の時期は9月中下旬が想定され、人事院による賃下げの動きに対して、職場・地域からのと
りくみを急速に強化していく必要があります。 こうしたもと、公務労組連絡会・全労連公務部会では、8月30日に人事院前の要求行
動、官庁街のデモ行進にとりくみ、公務員賃金改善、高齢者の給与抑制をやめ、働き続けられる職場づくりを求めてたたかいます。 ま
た、9月5日からの週を「行動強化ゾーン」に設定し、職場集会の開催、人事院への職場決議の集中を提起しています。さらに、14日には再度、人事院への要
求行動を配置します。 こうした行動にも連動させて、現在とりくみ中の「ジャンボハガキ(寄せ書き)」の集約を急ぎ、職場からの声を
人事院に集中していきましょう。
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