国会審議にも入れない「賃下げ法案」は撤回せよ
総務省との交渉には、公務労組連絡会から野村議長、黒田事務局長、鈴木事務局次長、また、全教から長尾副委員長が参加、総務省側は、人事・恩給局総務課の
越尾総括課長補佐、小泉課長補佐ほかが対応しました。 はじめに野村議長は、「賃下げ法案の提出強行に抗議する。いまだに審議入りの
見通しがなく、廃案にすべきだ。政府として法案を撤回せよ」と求めたうえ、「今後、長期にわたる被災地の復興を考えれば、公務・公共サービスの拡充こそ求
められている。総人件費削減の方針を撤回し、公務労働者の増員、臨時・非常勤職員をふくめた処遇の改善、賃金・労働条件の改善にむけて、使用者として積極
的に努力せよ」とのべ、夏季重点要求に対する現時点での回答を求めました。 これに対して、越尾総括補佐は、「いただいた要求に対す
る現時点での中間的な回答を申し上げる」として、以下のように答えました。 ● 「給与臨時特例法案」については、国の財政事情の悪
化に加え、東日本大震災の復興にむけた財源を確保する必要から検討されたものだ。みなさんとは見解が一致しなかったが、政府として6月3日に国会提出させ
ていただいた。法案については、国会の判断を仰ぎたい。 なお、自律的労使関係制度をふくむ国家公務員制度改革関連法案を同時に国
会に提出し、労使交渉で労働条件を決定できる制度の実現をめざしているところである。 ● 東日本大震災の救援・復旧に従事する職員
の勤務条件改善、住民サービス向上にむけた緊急な増員の要求については、増員の必要性をふまえて、適切に対応したい。 ● 定年延長
にかかわっては、昨年8月の人事院勧告の報告で、65歳までの定年延長にむけた検討課題が示され、人事院で「意見の申出」へ検討されている。そのこともふ
まえ、今後、総務省としては、関係機関と連携して取り組みたい。 なお、高年齢雇用は、公務員制度改革の課題でもあり、給与制度を
含めた今後の方策については、政府全体で検討をすすめる。 ● 非常勤職員の処遇にかかわっては、昨年、期間業務職員制度が新たに発
足するなど改善がすすんでいる。総務省としては、こうした制度が適切に運用されていることに注視しつつ、今後とも勤務条件の改善にむけて検討をはかる。 ●
労働基本権回復の要求については、自律的労使関係制度にかかわる法案を国会提出しており、国家公務員非現業職員の権利が拡大されることとなる。 ●
その他の要求をふくめて、引き続き、総務省として誠意を持って検討し、しかるべき時期にみなさんの要求に対する最終的な回答を申し上げたい。
定年延
長は、労働組合との交渉・協議にもとづいた検討を求める
回答に対
して、黒田事務局長は、以下の点を指摘し、今後、政府として十分な検討を求めました。 ○ 「給与臨時特例法案」の提出からほぼ2か
月が経とうとしているが、現時点でも趣旨説明さえ行われず、付託される委員会も決まっていない。西岡参議院議長をはじめ、国会でも反対意見が多数出されて
いる。このように矛盾が噴出するもとで、今国会で成立の見通しのないような法案は撤回すべきだ。 ○ 今年1月に総人件費削減に関す
る閣僚会議で確認された「総人件費削減に関する今後の検討の進め方」は、給与だけでなく、定員や退職手当、共済年金の見直しにまで言及したものであり、労
働条件の根幹にかかわる問題を労働組合との話し合いもなく決定したことは認められない。この決定も撤回を求める。 ○ 職場を見れ
ば、定員削減がつづくなかで、長時間・過密労働が押しつけられ、健康破壊も深刻だ。公務サービスを向上させるためにも、行政需要に見合った公務員の増員を
求める。 ○ 賃金では、2年連続の本俸・一時金の引き下げによって、公務労働者の生活実態は悪化している。その点でも、賃下げ法案
は認められないが、なかでも、初任給は、高卒・大卒ともに、官・民の格差がさらにひろがってきていることなどを使用者としてどのように考えているのか。優
秀な人材確保の観点からも、初任給引き上げは急務の課題だ。 ○ 定年延長にむけて、人事院が「意見の申出」にむけた検討作業をすす
めている。60歳を超える職員の賃金は、は50歳台後半職員の7割程度に削減するとの考え方も伝えられている。仕事の内容が変わらないにもかかわらず、賃
金だけを下げることは年齢差別であり認められない。労働組合との交渉・協議にもとづいた検討を求める。
また、
交渉参加者からは、「賃下げの交渉では、政府からまともな説明もなく法案を提出するなど、きわめて乱暴なやり方だ。疑問を持つ自治体首長もいる。異例の措
置というが、『代償措置』としての勧告制度を無視することはあってはならない」「国家公務員制度の改革は法案が出され、地方はこれからの検討となるが、国
の制度をそのまま地方に引きうつすことはあってはならない。地方の特性を理解したうえでの制度検討を求める」「被災地では、どの自治体でも教職員はよく
やってくれているという声を聞く。教員が減らされても、学校の再開に奮闘している。被災地だけでなく、避難所をかかえる自治体など全国で努力している。教
員の増員と処遇改善を強く求める」などの要求がのべられました。
8月下
旬に交渉を配置して総務省から最終回答を求める
越尾総括補佐は、
「指摘があった点は受けとめたい。被災地で奮闘する姿も誇らしいと思っているが、給与削減は、財政状況など全般的な状況から判断したものだ。法案が審議入
りできないなかで撤回せよとの意見だが、まだ国会の会期が1か月以上残っており、残された期間のなかで審議していただくよう努力したい」と回答しました。
これに対して、交渉参加者は、「法案の撤回要求に対して、審議に努力するという回答は認められない」「財政状況というが、総務省は財務省とは違う。財務省
と違う立場から、公務員の使用者として、どのように意見をのべていくべきなのかをきちんと考えるべきだ」などと追及が集中しました。
最後に野村議長は、「本日は、要求に対する中間的な回答としてうかがった。本格的な被災地の復興には、国・地方の公務労働者の役割発揮が強く求められてい
る。一方では、政府による賃下げ強行などで職場の不満や将来に対する不安も高まっている。安心して職務に精励できる職場をつくるのは、使用者の最大の責任
だ。その点からも、本日指摘した賃金の改善をはじめ、高齢者雇用の課題、非常勤職員の処遇改善などにむけて、引き続き使用者としての誠意ある検討を求め
る」とのべ、中間交渉を閉じました。 公務労組連絡会として、8月下旬にふたたび交渉を配置し、「夏季重点要求」に対する最終回答を
求めていきます。 賃金底上げ、初任給改善などを求めて人事院に要求書提出 総務省交渉終了後、人事院に「夏季重
点要求書」(別掲)を提出しました。黒田事務局長、鈴木事務局次長、米田幹事が参加、人事院側は、職員福祉局の井上主任職員団体調査官が要求書を受け取り
ました。 黒田事務局長が要求のポイントをのべ、今後、人事院勧告にむけて公務労組連絡会と交渉をすすめるよう求めました。井上調査
官は、「要求はうけたまわった。関連の各部局の担当に伝え、検討をすすめたうえで、回答したい」とのべました。
以 上
2011年7月26日
人
事院総裁 江利川 毅 殿
公 務 労 組 連 絡 会 議
長 野村 幸裕
2011年夏季重点要求書
政府は6月3日、国家公務員の俸給・一時金の1割カットなどを内容とした「給与臨時特例法案」の閣議決定を、国公労連など労働組合の反対を押し切って強行
しました。 法案の提出は、労働基本権制約の「代償措置」としての人事院勧告にもとづかないもので、労働基本権保障をさだめた憲法に
違反する暴挙であり、断じて認められません。貴院も、「労働基本権制約の代償措置が本来の機能を果たさないことにならないか」と懸念を表明し、給与減額措
置を遺憾とする総裁談話を発表しています。このようにきわめて問題が多い法案は、ただちに撤回すべきです。 こうしたもと、震災の影
響で民間給与実態調査が約1月半遅れで開始され、秋にむけて勧告作業がすすめられています。2年連続で「マイナス勧告」となり、公務労働者の生活が悪化す
るもとで、初任給の改善をはじめ、働きがい、生きがいの持てる勤務環境をつくるため、賃金・労働条件の積極的な改善が求められています。そのことは、東日
本大震災の被災地をはじめ全国で震災の復旧・復興にむけて勤務する公務労働者の奮闘に応えるうでも重要です。 さらに、臨時・非常勤
職員の労働条件改善やメンタルヘルス対策強化、定年延長をふくめた新たな高齢期雇用への対応が求められています。人事院勧告にむけて、春闘期に提出した統
一要求もふまえながら、以下の重点要求を取りまとめました。貴職が、この要求に対して誠意を持って検討し、実現に努力するよう求めます。
記
1、
勧告の時期等について (1) 現行制度に基づかない公務員賃金引き下げの動きに対しては、労働基本権制約の代償機関として毅然と対応
し、政府と国会に対して必要な意見の申出等を行うこと。 (2) 民調を含む勧告作業を着実に進めるとともに、早期勧告に努めること。
2、
賃金の改善等について (1) 従来にもまして厳正・精確な官民給与水準の把握に努めるとともに、公務員給与を職員の生活と労働の実態
にふさわしい水準に改善すること。 (2) 特別給(ボーナス)について、比較対象職種を行政職(一)相当職種に見直すなど現行比較
方法を改め、年間支給月数を改善すること。勤勉手当の割合は縮小すること。特別給の上下格差縮小の観点から管理職加算制度、役職傾斜支給を見直すこと。 (3)
官民較差の配分、手当の決定に当たっては、以下の点を踏まえるとともに、労働組合との十分な交渉・協議の上で行うこと。 @ 俸給
表改定は、初任給近辺の官民較差解消を重点に検討すること。 A 55歳を超える職員の給与抑制を中止するとともに年齢による給与抑制
措置を行わないこと。 B 給与構造改革に伴う経過措置額は廃止しないこと。 C 諸手当については、以下の事項を
実現すること。 1) 職員に自己負担を生じさせないよう通勤手当を改善すること。 2) 単身赴任手当の支給要
件・支給額を改善すること。 3) 寒冷地手当の級地区分や指定基準を改め、支給額等を改善すること。
3、
労働時間短縮、休暇制度改善等について (1) 健康で安全なディーセント・ワークの実現およびワークライフバランス確立の観点から、
勤務時間および交替制勤務のあり方等について検討すること。 (2) 超過勤務時間の縮減をはじめ、総実勤務時間短縮に向けた実効ある
取り組みを引き続き強力に推進すること。そのため、実現の障害となっている定員と業務量の関係について、公務員の勤務条件改善の観点から必要な意見を表明
すること。 (3) 長期勤続休暇(リフレッシュ休暇)を新設すること。
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